連載コラム「最強アメコミ番付評」第23回戦
こんにちは、野洲川亮です。
今回はDCEUシリーズの第5作目となる『ジャスティス・リーグ』を考察していきます。
2019年2月8日公開の『アクアマン』を控えて、バットマン、スーパーマン、ワンダーウーマンのおなじみヒーローに加え、アクアマンやフラッシュ、サイボーグなどの、スクリーン初登場のヒーローたちが大結集し活躍する、本作の魅力に迫っていきます。
『ジャスティス・リーグ』のあらすじとネタバレ
『バットマンvsスーパーマン』の戦いでスーパーマンが死亡してから数ヶ月、恋人ロイス・レイン(エイミー・アダムス)、母親マーサ・ケント(ダイアン・レイン)だけでなく、世界中の人々がその死を嘆き、街には犯罪が溢れていました。
そんな中、バットマンことブルース・ウェイン(ベン・アフレック)は、ゴッサムシティで人の恐怖を嗅ぎ付けて襲い掛かる怪物「パラデーモン」に遭遇します。
パラデーモンが敵の偵察だと悟ったバットマンは、その襲来の備え世界中にいる超人「メタヒューマン」たちを仲間にするために旅立ち、水の力を操るアクアマンことアーサー・カリー(ジェイソン・モモア)を仲間に誘いますが、あえなく撥ね付けられてしまいます。
その頃、アマゾン族の王女ワンダーウーマンことダイアナ・プリンス(ガル・ガドット)の生まれ故郷、アマゾン族の女性たちが住む島セミッシラで、古来から管理されてきたボックスが突然活動を始め、宇宙からエイリアン、ステッペンウルフがパラデーモンたちが引き連れて現れます。
アマゾン族も抵抗しますが、ステッペンウルフの力の前に敗れ、ボックスは奪われてしまいます。
アマゾン族から発せられた外の世界への警告に気付いたワンダーウーマンは、バットマンの元を訪れ、世界の危機と、大昔にステッペンウルフが起こした地球侵略戦争を語り始めます。
強大な力を持つ3つの「マザーボックス」を融合させ、地球侵略を企んだステッペンウルフに対し、アマゾン族、水中人類のアトランティス族、人間、銀河の守護者グリーンランタンが力を合わせボックスを奪い、ステッペンウルフたちを追い払いました。
その後、アマゾン、アトランティス、人間の3者がそれぞれボックスを管理することになります。
早急に仲間を集めるため、バットマンは超高速移動能力をもつフラッシュことバリー・アレン(エズラ・ミラー)の元へ、ワンダーウーマンは元アメフト選手で機械の身体を持つサイボーグことビクター・ストーン(レイ・フィッシャー)に声を掛けます。
しかし、アトランティスもステッペンウルフの襲撃を受け、アクアマンも奮闘しますが、二つ目のボックスも奪われてしまいました。
その頃、パラデーモンによる誘拐事件が発生し、情報を得たバットマン、ワンダーウーマン、フラッシュ、そして父親をさらわれたサイボーグも合流し、四人はゴッサム港付近にある敵のアジトへと向かいます。
人間側のボックスを見つけるため、科学者たちをさらったステッペンウルフが尋問を始めますが、サイボーグ、ワンダーウーマンがステッペンウルフに立ち向かい、その間にバットマン、フラッシュが人質たちを救出していきます。
ステッペンウルフの戦いの最中、大量の水がアジトに流れ込み四人は飲み込まれかけますが、そこへアクアマンが登場し水をせき止め、一同は無事に脱出します。
アクアマンも加わり、バットマンの基地バットケイブに集結した一同に、サイボーグは人間側のボックスを見せ、一度死んだ自分がボックスの力で復活したと告げます。
ボックスの力を知ったバットマンは、そのパワーを利用してスーパーマンを復活させることを提案します。
ワンダーウーマンの反対を受けるものの、結局一同は協力してスーパーマンを蘇らせるために棺桶を運び出し、クリプトンの宇宙船へと運びました。
ボックスのパワーにより、スーパーマンは目を覚まし、自らのモニュメントの立つ場所へと飛び出しました。
追いかけてきた一同は、スーパーマンの記憶が混乱していることに気付きますが、その力にサイボーグの身体のシステムが反応し、サイボーグの意志とは別に攻撃を仕掛けてしまいます。
反撃してくるスーパーマンを止めるため、ワンダーウーマン、サイボーグ、アクアマン、フラッシュが一斉に取り囲みますが、その圧倒的な力に退けられます。
そこに駆け付けたバットマンもねじ伏せられていると、バットマンの命によりアルフレッド(ジェレミー・アイアンズ)が連れて来たロイス・レインが姿をみせ、スーパーマンは冷静さを取り戻しますが、彼女と共に飛び去っていきました。
その時、最後のボックスが光に包まれ、ステッペンウルフに奪われてしまいます。
スーパーマンの協力が得られず落胆する一同でしたが、ステッペンウルフとボックスを止めるため、ロシアにある敵の根城へと向かいました。
観客の評価を得た『アベンジャーズ』化
MCUシリーズに対抗し始まったDCEUシリーズ、その第5作目で遂にDCヒーローたちが大集結することになった本作は、正に鳴り物入りで公開されましたが、興行収入の面では思わぬ苦戦を強いられます。
全世界での興行収入は6億5千万ドルで、DCEUシリーズ歴代1位の『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)の8億7千万ドルに遠く及ばず、シリーズ歴代の最低の成績となってしまいました。
しかし、ヒットにこそ恵まれなかったものの、本作の評価は思わぬ形で良い方向へと転んでいきます。
監督を務めていたザック・スナイダー、そしてプロデューサーである妻のデボラ・スナイダーが、身内の不幸により追加撮影の期間中に降板してしまいます。
残りの撮影と最終編集のバトンを引き継いだのは、「アベンジャーズ」シリーズの監督を務めたジョス・ウェドンでした。
ウェドンはそれまでザック・スナイダーらが推し進めていた、DCEUシリーズ全体がまとっていた重厚で壮大な世界観を大幅に希釈することを選択します。
ヒーローたちの誕生譚、バックボーンや背負ったドラマなどを省略していき、正に「アベンジャーズ」的なヒーロー同士の軽妙なやり取り、テンポ良く進むストーリー展開で、よりライトでどんな観客にも受け入れやすい作品へと編集していきます。
それは、ウェドンが編集した劇場版の上映時間が120分、比べてスナイダーのオリジナル版が50分以上長いことからもうかがい知れます。
アメリカの大手映画評論サイトであるRotten Tomatoesで、批評家たちから40%という評価を受ける一方で、一般観客によるオーディエンススコアが80%を超えた事実からも、本作がより“一般受け”を狙って仕上げられたことが分かります。
今後観客の評価を得たMCUシリーズとライトな作風に“同化”していくのか、それともDCEUシリーズならでの“胃もたれするほど濃厚な世界観”へと再び舵を切っていくのか、ザック・スナイダーやジョス・ウェドンなどの“監督人事”と合わせて注目となります。
『ジャスティス・リーグ』を観た人へのオススメ作品
参考映像:『アベンジャーズ』(2012)
本作の最終仕上げを請け負ったジョス・ウェドン監督作『アベンジャーズ』(2012)、『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)からは、本作に通じるウェドンの作風を感じることが出来ます。
それは複雑かつ多様に入り組んだキャラクターたちのエピソードを的確に取捨選択しつつ、ドラマとして飽きさせないテンポを保持するという、ウェドンの高い“交通整理力”であり、MCUとDCEUシリーズの面白い比較となるでしょう。
他にこれまでのDCEUシリーズ4作品も本作を楽しむ上で是非見てほしいところですが、「全部見るのはちょっと…」という人は、まず本作に物語が直結している『バットマンvsスーパーマン』だけでも鑑賞をオススメします。
また、ザック・スナイダー監督がグラフィックノーベルの傑作を映画化した『ウォッチメン』(2009)は、MCUやDCEUシリーズとは違う、R指定作品のダークなスーパーヒーローを堪能できる作品に仕上がっています。
次回の「最強アメコミ番付評」は…
いかがでしたか。
次回の第24回戦は、2019年2月8日公開のDCEUシリーズ最新作『アクアマン』を考察していきます。
お楽しみに!