平凡な日常こそが愛おしい。これは、誰にでも起こりうる物語。
Twitterで100日間に渡り投稿され大きな話題を集めた、きくちゆうきの4コマ漫画『100日後に死ぬワニ』が、『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督によりアニメ映画化となりました。
アニメ映画版『100日間生きたワニ』は、主人公のワニが生きた100日間の何気ない日常を描いた原作に加え、そこから100日後、大切なものを失った仲間たちの「その後」が描き足されています。
続くのが当たり前と思っていた日常が、突然終わりを告げたお花見の日。それまでのワニの日常は平凡でありふれたものでした。
かけがえのないものを失くした仲間たち。それでも日々は続いていきます。あのお花見の日から100日後。
Twitterでは描かれなかったその後の物語。2021年7月9日(金)に公開された映画『100日間生きたワニ』を紹介します。
映画『100日間生きたワニ』の作品情報
【公開】
2021年(日本映画)
【原作】
きくちゆうき
【監督】
上田慎一郎、ふくだみゆき
【キャスト】
神木隆之介、中村倫也、木村昴、新木優子、ファーストサマーウイカ、清水くるみ、Kaito、池谷のぶえ、杉田智和、山田裕貴
【作品概要】
2019年12月12日から、原作者きくちゆうきのTwitterで100日間にわたり毎日投稿された4コマ漫画『100日後に死ぬワニ』のアニメ映画化。
監督・脚本は、原作に込められた想いに強く共感し映画化を熱望したという、『カメラを止めるな!』の監督・上田慎一郎と、アニメーション監督としても活躍するふくだみゆき夫妻。
主人公ワニ役には神木隆之介、ワニの親友のネズミ役には中村倫也、モグラ役に木村昴、憧れの先輩ワニ役に新木優子、そして映画オリジナルキャラクターとなるカエル役に山田裕貴と豪華俳優たちが声の共演を果たします。
また、スタッフには『宇宙戦艦ヤマト』を手掛けてきたアニメーター湖川友謙が、コンテ・アニメーションディレクターとして参加。
音楽は、数々の有名アーティストのサウンドプロデュース、楽曲アレンジを手掛ける亀田誠治が担当。いきものがかりによる映画書き下ろし曲『TSUZUKU』が主題歌となっています。
映画『100日間生きたワニ』のあらすじとネタバレ
満開の桜の木の下、今日はみんなで約束したお花見の日です。言い出しっぺのワニが、まだ来ていません。心配した親友のネズミは、バイクで迎えに走ります。
赤信号で止まった百景坂交差点の桜並木があまりにも美しく、ネズミはスマホで写真を撮りグループラインに送ります。
しかし、それを受け取ったはずのワニのスマホは、画面が割れ道路に転がっていました。パラパラパラ、飛ばされたフォトアルバムがめくられていきます。
100日前。ワニは、バイク事故で入院したネズミの見舞いに来ていました。「やっちゃいましたね。でもケガで済んで良かったね」。「人はそんな簡単には死なねーよ」。
しんみりする中、ワニは口をパカリと開け「6時のまね」を披露します。「すげー、5時もやって」。ネズミも気に入ったようです。2人は親友です。
ワニの実家から「みかん」が届きました。「年末、たまには帰ってきたら」。母からの電話に「帰ろうと思えばいつでも帰れるし」と返すワニ。
世の中はクリスマスムード一色です。バイト先の「CAFÉ CAFÉ」には、ワニの憧れのセンパイがいます。ワニは勇気を出してクリスマスデートに誘うもタイミングが合いません。
年越しは、ネズミと2人で初詣に。引いたおみくじは大吉でした。「素晴らしい一年になるでしょうだって」。
バイト先でセンパイとバイトちゃんの会話を聞き、自分は拒否られてると勘違いしたワニは、咄嗟にバイトを止めてしまいます。
落ち込むワニをバイクの後ろに乗せ連れ出したネズミ。夜中にバイクをぶっ飛ばしやってきた山の上から見る朝陽は格別でした。そして、こんな時はいつもの「極真ラーメン」が一番です。
2月。仲間のモグラが働いているリサイクルショップでバイトを始めたワニ。モグラは同じバイトのイヌを好きなようです。
「おれ、バイト辞めて就職するわ。そして、コクるわ」。男らしいモグラ。めでたくハッピーボーイとなりました。
「さて君はどうする?いかずに後悔するか、いって後悔するか」。イヌの後押しもあり、ワニはもう一度センパイに会いに行くことにします。
ラインの交換で一気に距離が縮まる2人。デートの約束をこぎつけるも、水族館は閉館日。2人でみた映画『ドクターアニマル2』では、大きな音にびっくりしたワニがポップコーンを盛大にぶちまけてしまいます。
「『ドクターアニマル3』でリベンジさせてください」ワニの告白にうなずくセンパイ。どうやらワニもハッピーボーイの仲間入りです。
「何かやりたいことないの?」ネズミの言葉に「ない」と答えるも、ワニはプロゲーマーを目指し一歩を踏み出そうとしていました。
満を持してネズミとペアで挑んだゲーム大会では、あっさり敗退。「相手、中1だって。プロも最初はこんな感じなのかねぇ。次は?」。「でるっしょ」。まだまだ先は長いようです。
ワニ、センパイ、ネズミ、モグラ、イヌが集まった家飲みでの集合写真は、照れ臭いものになりました。「今年も花見するっしょ」。約束をして別れます。
ワニの毎日は平凡でありふれたものでした。友達と行くラーメン屋、大好きなゲーム、映画、家族との電話、そして大好きな人。しかし、どれもかけがえのない時間だったのです。
映画『100日間生きたワニ』の感想と評価
Twitterで100日間にわたり毎日投稿され話題を呼んだ4コマ漫画『100日後に死ぬワニ』が、タイトルも新たにその後のストーリーも加えられアニメ映画として帰ってきました。
主人公のワニが100日後に死ぬことを想定し、カウントダウン形式で書かれた原作は、切なすぎると注目を集め、最終話は「いいね」の数が214万という国内Twitterの最多数を記録しました。
自分が100日後に死ぬなんて考えもしなかった主人公ワニと仲間たちの日常を描いた原作は、平凡に思える毎日こそ実は大切なものだと考えさせられる作品です。
アニメ映画版『100日間生きたワニ』では、原作に加え、ワニが亡くなってからさらに100日後。残された者たちの「その後」が付け加えられています。
ワニの仲間だったネズミにモグラ、イヌ、そしてお付き合いが始まったばかりだったセンパイ。ワニとの思い出に向き合えず、疎遠になっていく仲間たち。
ワニがいなくなったその後を描くことで、より原作の持つメッセージ、日常の大切さが際立って感じられ、残された側の人たちが悲しみから立ち直っていく姿に、前向きな気持ちになれる作品となっています。
4コマ漫画から飛び出したキャラクターたちは、動物でありながら人間らしく、会話のテンポも絶秒でほのぼのしています。
アニメならではの動きのあるシーンが盛り込まれ、より楽しい世界となっています。
例えば、ワニがセンパイと観た映画『ドクターアニマル2』は、原作ではワニひとりで鑑賞する場面しか出てきませんが、アニメ版では映画の内容も追加されています。
ネズミと参加したゲーム大会では、ゲーム対戦の様子がアニメで見れます。ゲーム画面に登場するワニとネズミのキャラが戦う姿に思わず笑いがこぼれます。
また、原作では仲間がみんな揃った集合写真は撮られませんが、アニメ版ではワニがセンパイとお付き合いを始めたばかりの頃、みんなと集まった時に撮った写真が残ります。
照れながらも撮られた写真は、みんなの笑顔がすごく幸せそうで、特に印象に残る追加シーンとなっています。
そして何と言っても、アニメオリジナルキャラクター・カエルの登場に衝撃を受けることになります。「どもどもどもー」と、グイグイ強引に仲間に入ろうとするチャラ男のカエル。
始めはその軽さに、苛立ちを覚える人も多いことでしょう。しかし、そんなカエルにも辛い経験があり、抱える悲しみがありました。
カエルの存在を通して、どんな人にも同じような経験があり、出会いと別れを繰り返し、人は生きていくのだと気付かされます。
カエルを担当した山田裕貴の声が、カエルの存在を大きくさせ、最後は明るい気持ちにさせてくれます。
声の担当といえば、主人公のワニ役の神木隆之介は、穏やかで素朴な性格のワニを見事に声で表現し、愛すべきキャラに仕上げました。
ワニの親友ネズミ役には、甘い声が心地いい中村倫也が担当。友達想いの優しいネズミを演じています。
その他にも木村昴、新木優子、ファーストサマーウイカ、池谷のぶえなど、それぞれのキャラにぴったりハマった声にも注目です。
まとめ
2020年Twitterで最もバズッた4コマ漫画『100日後に死ぬワニ』の、アニメ映画版『100日間生きたワニ』を紹介しました。
続くのが当たり前と思っていた日常が、突然終わりをつげる。平凡な毎日がどれだけ幸せだったかを、その時知っても遅いのです。
そして、残されたものたちはどう生きるのか。別れと出会いを繰り返し、大切な思い出と共に生き続ける限り、また人生が輝き出すはずです。
アニメ版『100日間生きたワニ』は、改めて日々の大切さに気付き、一日一日を大切に生きようと思える前向きな作品でした。