映画『TENET テネット』は2020年9月18日(金)全国ロードショーされます。
“ダークナイト3部作”「インセプション」「インターステラー」「ダンケルク」のクリストファー・ノーラン監督の3年ぶりの作品です。
「現在から未来に進む“時間のルール”から脱出する」というミッションを課せられた主人公が、第3次世界大戦に伴う人類滅亡の危機に立ち向かう姿を描いています。
主演は名優デンゼル・ワシントンの息子で、スパイク・リー監督がアカデミー脚色賞を受賞した『ブラック・クランズマン』で映画初主演を務めたジョン・デビッド・ワシントンが務めます。
時間の逆行という能力と第三次世界大戦の危機に瀕した世界で、危険な任務に挑む“名もなき男”の闘いの姿を描くスパイアクション。
映画『TENET テネット』の作品情報
【日本公開】
2020年(アメリカ映画)
【原題】
TENET
【脚本・監督】
クリストファー・ノーラン
【キャスト】
ジョン・デヴィッド・ワシントン、ロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、ケネス・ブラナー、マイケル・ケイン、アーロン・テイラー=ジョンソン、ディンプル・カバディア、ユーリ・コロコリニコフ、ヒメーシュ・パテル、マーティン・ドノヴァン、クレマンス・ポエジー
【作品概要】
『TENET テネット』はクリストファー・ノーラン監督の3年ぶりとなる作品です。時間を逆行する能力と第三次世界大戦の危機に瀕した世界で奮闘する“名もなき男”の姿を描くSF&スパイアクション。
主演は『ブラック・クランズマン』のジョン・デヴィッド・ワシントン。共演には新たにバットマンを演じることになったロバート・パティンソン、ノーラン映画常連のケネス・ブラナー、マイケル・ケインなど。
映画『TENET テネット』のあらすじ
満席の観客でにぎわうウクライナのオペラハウスで、テロリストによる占拠事件が勃発。多数の人質を救出するために特殊部隊が館内に突入します。
突入部隊に紛れ込んだ“名もなき男”(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は混乱の中で、オペラ会場にいた仲間の救出に動きます。
仲間の救出を果たした男ですが、その後、身代わりとなって捕まってしまいます。男は、自殺用の毒薬を飲んだのですが、薬は鎮痛剤にすり替えらえていました。
昏睡状態から目覚めた男は、そこであるミッションを命じられます。それは未来からやって来た脅威と戦い、世界を救うというモノでした。
“時間の逆行”を可能とする装置が極秘に現代に送られてきたことを男は知らされます。
人や物が過去に移動できるようになっていたこの技術は、“第三次世界大戦”を引き起こしかねない危険性を孕んでいました。
大きな謎を孕んだこの任務に挑むことになった男に、すべてのカギを握る存在として“TENET(テネット)”という言葉が伝えられます。
映画『TENET テネット』の感想と評価
英国出身でありアメリカとの二重国籍を持つクリストファー・ノーラン。今年で50歳となる彼ですが、自らの映画原体験に『スター・ウォーズ』(1977)『ブレードランナー』(1982)を挙げています。年齢からみれば、10歳前後のことです。
そして、これらの作品と並んで自身への大きな影響を与えた作品として、“007”シリーズを挙げています(特にお気に入りは『女王陛下の007』(1969))。
2010年の『インセプション』を発表したときに「いつか、ボンド映画を監督したい!」と語っており、実際に007の製作陣にコンタクトを取ったこともあるそうです。
『TENET テネット』はそんな007愛、スパイ映画愛が今までの作品の中で最も濃い作品と言えます。
主人公の“名もなき男は特殊工作員であり、世界各国をまたにかけるスパイでもあります。世界各国でロケが行われ、風光明媚なリゾート地や都市の各国の様子が描かれます。
予告でも使われたボートのシーンなどそのままボンド映画に転用できそうな画角です。
エリザベス・デビッキ演じるヒロインの立ち位置も、今までのノーランの映画のヒロインというよりは歴代の“ボンドガール”を想起させるキャラクターになっています。
謎多き“テネット”がいわゆるマクガフィンであることも、これまで多くの作品をコラージュしてきたノーランらしい設定であると言えるでしょう。
また、『TENET テネット』を見ると、クリストファー・ノーラン監督はやはり時間というものをテーマにすることを好んでいるのだなということがわかります。
デビュー作の『フォロウィング』(1998)とブレイク作となった『メメント』(2000)では、エピソードの時勢を意図的に入れ替えました。
『インセプション』(2010)では夢の階層ごとに時間の流れを変えて描きましたし、『インターステラー』(2014)でも地球と宇宙空間、ワームホールの先の星では時間の流れが大きく変わります。
これまで、『フォロウィング』と『メメント』では”物語”(記憶と記録)を挟み『インセプション』は”夢”を、『インターステラー』では宇宙探検というモノをクッションにして“時間”を描いてきたノーランですが、今作の『TENET テネット』は間に何も挟まず、直に“時間”を描いてきました。
自身が常に突き詰めてきた“時間”の在り方をダイレクトに描くという意味では、『TENET テネット』はクリストファー・ノーラン史上もっと挑戦的で野心的な作品といっていいと思います。
まとめ
クリストファー・ノーランはかつて自分を育ててくれたSF映画、スパイ映画などのブロックバスター大作への思いが強い監督でもあり、消費される大衆娯楽の一環で終わらせたくないという使命感を持っています。
“ダークナイト3部作”でも、かつて、ティム・バートンとジョエル・シュマッカーが作り上げたゴシックとビザールなセンスに溢れた世界感をリアルな犯罪映画として一新。
『インセプション』も古典的な泥棒ものを舞台を“人の夢の中”に設定したことで、斬新な映像作品に生まれ変わらせることに成功しました。
『インターステラー』でも曖昧になりがちな宇宙の仕組みを現役の物理学者を監修に招いて特殊相対性理論やワームホール理論を組み込み“リアル”を創り上げました。
『ダンケルク』では戦争映画を陸の一ヶ月、海の一日、空の一時間という風に場面ごとに時間の大枠を変えて描いて見せることで、今までになかった臨場感を与えてくれました。
そして『TENET テネット』は、王道のスパイ映画的な展開に時間の逆行という能力を持ち込んで、またもや“見たことのない映画”を創り上げました。
今回は時間の逆行のシステムについて、“未来からテクノロジー由来というかなり強引な力業”の設定を持ち込んできました。全てを整理して語り切ることを止め、わからないことが多い物事のままで物語を推し進めています。
ここが少し乱暴というか強引な印象を受ける人もいるかもしれません。今まで多くの作品で共同脚本として、作品に参加してきた弟のジョナサン・ノーランが、不在ということも影響しているかもしれません。