凄腕ドライバー、パク・ソダムが韓国の街を駆け抜ける!
『パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女』は、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』で半地下の家族の長女役を演じたパク・ソダムが、天才的なドライブテクニックを持つ運び屋に扮する痛快なカーアクション映画です。
彼女が守ろうとする少年に『パラサイト』以来の再共演となるチョン・ヒョンジュンが扮し、キム・ウィソン、ソン・セビョク、ヨム・ヘラン等、個性的な俳優が顔を揃えています。
CONTENTS
映画『パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女』の作品情報
【日本公開】
2023年公開(韓国映画)
【原題】
특송(英題:Special Delivery)
【監督・脚本】
パク・デミン
【キャスト】
パク・ソダム、ソン・セビョク、キム・ウィソン、チョン・ヒョンジュン、ヨン・ウジン、ヨム・ヘラン、ハン・ヒョンミン
【作品概要】
ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(2019)で、半地下に住む家族の長女を演じたパク・ソダムが凄腕のドライバーを演じるアクションドラマ。
彼女が守ろうとする少年に『パラサイト 半地下の家族』以来の再共演となるチョン・ヒョンジュンが扮し、キム・ウィソンがワケあり荷物を届ける特殊配送会社「特送(とくそう)」のボスを演じています。
映画『パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女』あらすじとネタバレ
天才的なドライビングテクニックを持つチャン・ウナは、ワケあり荷物を届ける特殊配送会社「特送(とくそう)」で働いています。
表向きは釜山にあるペッカン産業という名の廃車処理場ですが、裏の業界と通ずるペク社長の元には頻繁に「特送」の依頼があり、ウナはその任務を完璧にこなしていました。
彼女はある日、賭博ブローカーと、その息子ソウォンを港まで運ぶという依頼を引き受けます。
野球賭博をしきっていたブローカーは選手からの内部告発を受け、海外逃亡を図っていました。
息子が使っていたスマホから彼の居場所を突き止めたブロ―カー仲間たちが彼の元へ向かい、送迎者が来たと勘違いした男は車に向かって飛び出しますが、すぐに自分の立場を把握します。
息子に金の入ったリュックと300億ウォンが入った貸金庫の鍵を渡して、逃げるように言うと、その時間稼ぎに、追手の前に飛び出して行きました。
依頼者を待つウナのところにやってきたのは必死に走ってきたソウォンでした。
大人と子供、ふたりを送るという話だったのに、子どもしか現れず、ウナはドアを開けるのを躊躇しますが、すぐに追手が来たのを見て、車をスタートさせます。
敵は執拗に追ってきて、それをウナは高度なドライブテクニックで次々にかわしていきました。
しかし、相手の車が正面からやってきて、緊張が高まったとき、瀕死の父親が現れて、敵を阻止し、ウナたちは車をかいくぐることが出来ました。しかし、父親が殺されるのを目の当たりにした息子は泣き崩れます。
ペク社長に連絡を入れると、子どもを集めている業者に連絡するからその男に子供を渡して終わりにしろと命じられます。
しかし、不安を感じたウナはソウォンを取り戻して車に乗せました。
その頃、賭博ブローカーの事件を追っていた警察は、姿を消した幼い息子と300億ウォンの資金の行方を追っていました。
しかし、その場で指揮を執っていた刑事は、ブローカーの男を殺したギョンピルでした。彼は捜査にかこつけて300億ウォンをせしめようと企んでいました。
ウナはソウォンを母親の元に届けようとしますが、女は自分は母親ではないと答えました。本当なら息子を抱きしめたいのですが、追われているなら真っ先に母親の元にやってくるだろうと彼女は判断し、知らないふりをしたのです。
「返品」不可の「荷物」を抱え込むことになり途方に暮れるウナでしたが、彼女たちの前にはギョンピルの仲間たちが次々に現れ、ソウォンをさらおうとします。
ドライブテクニックを駆使して、敵を倒したウナはペク社長に連絡。釜山へと向かうことになりました。
その頃、国家情報院がウナの追跡を始めていました。ウナは脱北者で、国境を超える際、家族は皆死に、一人生き残ったといいます。
ウナには殺人と誘拐の疑いがあり、脱北者の犯罪となると国家情報院の責任になるのだと責任者の女性職員は警察に説明し、協力を要請してきました。
ギョンピルは国家情報院に真実を突き止められる前に金を手にいれようと躍起になります。
ギョンピルは部下の刑事たちに命令して、ペッカン産業を割り出しました。
情報を与えてもまったく対処できない警察にしびれを切らした国家情報院は独自に調査を開始し、ウナは殺人犯でも誘拐犯でもなく、黒幕はギョンピルであることを突き止めます。
映画『パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女』解説と評価
ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(2019)で、半地下に住む家族の中でも最も悲劇的な役柄を演じたパク・ソダムが、訳あり物件(主に人)を確実に送り届ける腕利きドライバーに扮しています。
また、彼女が運ぶ「訳あり物件」が、『パラサイト 半地下の家族』で裕福家庭の長男を演じていた子役のチョン・ヒョンジュンというのが面白く、『パラサイト 半地下の家族』では師弟関係にあった二人ですが、本作ではジョン・カサヴェテス監督の『グロリア』のジーナ・ローランズと少年を連想させる関係として息のあったところを見せています。
全編に渡る激しいカーチェイスは、韓国ならではの狭く入り組んだ路地や、坂道などを駆け抜けるもので、その疾走感や、巧みなドライブテクニックにすっかり魅了されます。
立体駐車場で敵に追われ、電源を壊して暗闇にした中での車同士の駆け引きも見応えがあります。パク・ソダムの動きひとつひとつに、依頼された「物件」を必ず安全に配送するという任務を追ったプロとしての矜持が現れています。
パク・ソダムは次々と車を乗り換えていくのですが、ドライバー一本でそれを可能にしていく描写や、そのドライバーが武器となるフィジカルなアクションシーンも迫力満点で、スリルとサスペンス溢れる十分に満足のいくアクション映画に仕上がっています。
まとめ
「返品できない荷物」を怪しげなブローガーに譲渡して終わりにしろと命じられるも、少年を見殺しにできないパク・ソダムのやさしさは、冒頭の飼い猫をかわいがるシーンからすでに現れていて、その猫が最後まで忘れ去られず、しっかり人間に面倒をみてもらっているところにこの映画の本質が詰まっているように思えます。
少年の母親と思しき女性が、長い間会っていなかった少年に後ろ髪をひかれながらも、少年の無事を祈って身を引く場面など、人間の心理の細やかな描写がなされているのも本作の特徴の一つでしょう。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)などのキム・ウィソン、『真犯人』(2019)のソン・セビョク、『偽りの隣人 ある諜報員の告白』(2020)などのヨム・ヘランなど韓国映画でおなじみの芸達者な顔ぶれが揃い、映画に不思議な安心感を与えています。。