大いなる夢を歩む信と政の前に“過去”が立ち塞がる!
累計発行部数が9900万部を突破した原泰久による大人気漫画「キングダム」。
2019年には初の実写映画『キングダム』(2019)が公開され、2022年には続編『キングダム 遥かなる大地へ』(2023)が公開。2作とも興行収入50億円以上を達成し、邦画の実写映画シリーズとして最も注目を集めていると言えます。
そして2023年、前作のラストであらかじめ予告されていたシリーズ第3弾がついに公開されました。
今回は実写映画版3作目となる映画『キングダム 運命の炎』(2023)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
CONTENTS
映画『キングダム 運命の炎』の作品情報
【公開】
2023年(日本映画)
【原作】
原泰久
【監督】
佐藤信介
【脚本】
黒岩勉、原泰久
【キャスト】
山﨑賢人、吉沢亮、橋本環奈、清野菜名、満島真之介、岡山天音、三浦貴大、杏、山田裕貴、高嶋政宏、要潤、加藤雅也、高橋光臣、平山祐介、片岡愛之助、山本耕史、長澤まさみ、玉木宏、佐藤浩市、大沢たかお
【作品概要】
2006年から『週刊ヤングジャンプ』で連載が開始された原泰久による漫画シリーズ「キングダム」の実写映画シリーズ第3弾。
シリーズ前2作を監督した佐藤信介が手がけた本作は、山﨑賢人らシリーズのメインキャストが続投し、新たに『東京リベンジャーズ』(2021)の山田裕貴や『シン・ウルトラマン』(2022)の山本耕史が参加しました。
映画『キングダム 運命の炎』のあらすじとネタバレ
「蛇甘平原の戦い」を生き延び、「百人将」へと昇進した信は、伝説の大将軍である王騎のもとで将としての鍛錬を積んでいました。
王騎は信に部族同士の争いが絶えない荒地を平定するように命じ、信は戦力の低い部族に肩入れをしながらも見事に平定を成し遂げました。
その頃、政のもとに隣国・趙が秦に攻め入り、攻め落とした城下の住民を女子どもに至るまで鏖殺したという知らせが入ります。
秦は韓に対する侵攻を進めていることから、迫り来る趙の10万人もの大群に立ち向かう兵も将も不足しており、農民たちを徴兵することを余儀なくされました。
政が王となる前、秦は「長平の戦い」で四十万人にも登る趙の捕虜を生き埋めにした過去があり、趙の将である万極は喜々として農民たちの惨殺を行います。
窮地に立たされた政は昌平君を軍議に招きますが、昌平君は政を暗殺しようと暗躍した呂不韋の配下であるため、政の忠臣である昌文君は不安を覚えました。
軍議に参加した呂不韋は、配下の蒙武を対趙戦の大将軍に任命しようとしますが、昌文君は「蒙武は攻の分野では随一だが守には疎い」と提言。呂不韋は「他に適任者がいない」と軍議を押し切ろうとしますが、そこに昌平君に呼ばれた王騎と彼の右腕の騰、そして信が現れます。
蒙武は王騎を過去の遺物として不適格だと言い放ちますが、軍議は王騎を大将軍として任命する方針で決定。蒙武は苛立ちながらその場を去っていきました。
王騎は政に人払いを頼むと、自身が大将軍となることを承諾することの条件として、政に「中華統一を目指す理由」を訪ねます。政は「ある人との約束だ」と言うと、自身が趙の人質となっていた時代のことを語り始めます……。
7年前、趙の王都で人質となっていた子楚と趙姫の間に生まれた政。
しかし子楚が政を残し秦へと戻ったことで、趙の民の「長平の戦い」での虐殺の恨みは政へ向けられ、政は趙の民に暴力を振るわれ続ける日々を過ごしていました。
ある時、秦の王である昭王が亡くなり、子楚が王となったことで政に王位継承権が生まれ、趙王は政の暗殺を目論み始めます。
子楚は政を秦へと脱走させるため、配下の道剣と闇商人である紫夏を趙へと送り込み、政を密輸品とともに脱出させる計画を実行。
秦の兵士ですらない紫夏とその部下である亜門が命を賭けてまで自身を助ける理由が分からなかった政でしたが、紫夏はかつて育ての親に救われたが返すことの出来なかった恩を同じように見知らぬ誰かに返すために行動していること政に話します。
脱出計画を順調に進める4人でしたが、政は日夜振るわれ続けた暴力によって痛覚も味覚も嗅覚も失った「壊れた自分」に王になる資格がないと不安を覚え、その場から逃げ出してしまいます。
政を追いかけ抱きしめた紫夏は、ともに秦に逃げ、政が失った五感の全てを自分が代わりに感じると誓いました。その誓いに、政は応じました。
政は亜門と道剣の待つ馬車に紫夏とともに戻りましたが、4人の脱出計画は見抜かれており、趙の騎馬兵からの追撃を受けます。
騎馬兵の激しい攻撃によって亜門と道剣が命を落とし、秦軍の待つ合流地点に着いた時、紫夏もまた政を守るために多量の矢と槍をその身に受けてしまいました。そして安全な場所で紫夏の絶命を見届けた政は、紫夏に託された王としての使命を胸に刻んだのでした……。
政の過去を聞いた王騎は、政の覚悟を受け止めると大将軍の任命を承諾し、農民兵8万人を引き連れ趙兵10万人が攻める馬陽へと向かいました。
戦地へ向かう中、尾平や尾到、澤圭と再開した信は、百人将として彼らを配下に加えた100人を集めると、王騎のもとでともに鍛錬をした渕と、隊に戻ってきた羌瘣を副将に任命しました。
映画『キングダム 運命の炎』の感想と評価
知られざる政の過去と信の成り上がり物語
漫画『キングダム』の実写映画シリーズの3作目となる本作では、原作の「馬陽防衛編」と政の過去を描いた「紫夏編」を中心に物語が構成されていました。
初作から「弟によるクーデターから逃げ延びた王」として登場する政は、決して優雅な暮らしをする王という印象はありませんでしたが、本作ではさらに過酷な政の過去が丁寧に描写されます。
一方、『キングダム」の魅力の一つである元奴隷の信による“成り上がり”の物語は、奴隷脱却を成し遂げた1作目、兵卒から百人将に昇進した2作目と順調に進みながらも決してマンネリ化はしておらず、むしろ3作目となる本作でシリーズ最大ともいえる爽快さを感じました。
王として苦渋の決断を迫られる政と、将としての飛躍を見せる信の物語は、本シリーズにしかない魅力を改めて放っていました。
隠されていたキャスト、隠されていた“後編”
山田裕貴、片岡愛之助、山本耕史と公開前から明かされていたキャストだけでも充分に豪華なキャスト陣だった本作ですが、「馬陽防衛編」を描くにあたって重要な登場人物のキャストが明かされていないことは、原作ファンたちの間でも話題となっていました。
実は本作は「馬陽防衛編」を描いた“前編”映画であり、隠されていた新規キャストは公開未定の後編で物語の主軸となることが明らかになります。
隠されていたキャストの1人は、秦と敵対する趙の大将軍であり自身を「武神」と名乗る龐煖を演じた吉川晃司。
王騎とただならぬ因縁を持つ龐煖は本作の後に王騎とぶつかり合うことになり、「馬陽防衛編」のあまりにも衝撃的なクライマックスを引き起こします。
そしてもう一人のキャストが、趙の軍師・李牧を演じた小栗旬。
本作でこそ一瞬しか登場しなかった李牧ですが、本作以降の物語で秦を何度も苦しめる敵としてシリーズの人気を牽引する重要な登場人物となります。
まとめ
ロケ地に本場・中国を採用し、圧倒的なスケールで戦場を描く『キングダム』の実写映画シリーズ。
作品を重ねるごとにその魅力を進化させる本シリーズは、3作目となる『キングダム 運命の炎』でも、信の成り上がりの物語としての爽快さを感じられるものとなっていました。
本作のラストから、まだまだシリーズを続けるという製作陣の気概を観る事ができる本作は、今後の展開がさらに楽しみになる作品でした。