小説『ヘルドッグス 地獄の犬たち』が映画化され、2022年9月16日(金)より全国公開!
デビュー作『果てしなき渇き』で2004年の『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した深町秋生。その後、『果てしなき渇き』は2014年に『渇き。』として映画化されました。
続く映画化第2弾は、警官がヤクザの世界に潜入捜査する物語『ヘルドッグス 地獄の犬たち』。本作は、2022年9月16日(金)より全国公開となります。
腕っぷしひとつでヤクザ組織に潜入し、のし上がる元警官・兼高昭吾。兼高は、愛する人が殺される事件を止められなかったというトラウマを抱え、復讐にのみ生きる男です。
その狂犬ぶりに目をつけた警察組織から、ヤクザ組織への潜入という危険なミッションを強要されます。もと警官という身分がばれないよう、兼高は人一倍凶悪かつ冷酷なヤクザになりきります。心の痛みを隠して……。
小説『ヘルドッグス 地獄の犬たち』を原田眞人監督が岡田准一を主演に迎え、バイオレンスアクションにまとめあげました。
映画『ヘルドッグス』公開に先駆けて、小説『ヘルドッグス 地獄の犬たち』をネタバレ有りでご紹介します。
CONTENTS
小説『ヘルドッグス 地獄の犬たち』の主な登場人物
【兼高昭吾(本名・出月梧郎)】
警視庁の潜入捜査官として暴力団・東鞘会に潜入し若頭補佐の地位に就きます。
【室岡秀喜】
兼高の弟分。特異な家庭環境で育ったため、食欲旺盛で無慈悲な暴力にも抵抗のないシリアルキラー。
【阿内将】
兼高の上司。同僚の十朱に、幼馴染でもあった警官・木羽を殺され、十朱と東鞘会を壊滅させることに執念を燃やします。
【十朱義孝(本名・是安総)】
元潜入捜査官。警察を裏切り、現在は東鞘会七代目会長としてグループのトップに君臨しています。
【衣笠典子】
腕の良いマッサージ師。息子をヤクザに惨殺され、恨みをはらすため警察に情報提供を行う、阿内と兼高の仲介役もこなす。兼高を息子のように思っています。
小説『ヘルドッグス 地獄の犬たち』のあらすじとネタバレ
沖縄に潜伏していたヤクザの喜納修三が何者かに惨殺されました。犯人は、東鞘会系神津組若頭補佐の兼高昭吾とその弟分の室岡秀喜です。
兼高昭吾は、東鞘会系神津組若頭補佐ですが、実は潜入捜査官。
本名は出月梧郎と言い、組体部特捜隊の隊長阿内将に命じられ、東鞘会会長十朱義孝への接近を試みています。
ターゲットの十朱は、かつては兼高と同じく潜入捜査官でしたが、暴力団のトップとして生きる道を見出し、上司の木羽保明を裏切り、上司の木羽を自殺にみせかけて殺害しました。
警視庁を揺るがす“秘密”を握っている十朱。そのために彼は今日まで消されもせず、警察も東鞘会に手出しが出来ない状況にあります。
5年前。東鞘会五代目会長氏家必勝が肝硬変により獄中死しました。
関東最大の暴力団・東鞘会は、後継者問題で六代目会長に任命された神津太一と必勝の実息子で和鞘連合を結成した氏家勝一が対立。
その後、神津太一は、和鞘連合組員に撃ち殺されました。
東鞘会トップの神津を殺害した和鞘連合でしたが、神津太一の片腕だった十朱義孝と「東鞘会三羽ガラス」と呼ばれた 土岐勉、 大前田忠治、 熊沢伸雄が中心となって、反撃を計画します。
東鞘会は若手に武器を握らせ幹部を襲撃することはせず、暴力に長けた組員を海外に派遣し、民間軍事施設で特殊訓練を受けさせていました。
さらに盗聴器、GPS、小型カメラを駆使し、警視庁が設置しているNシステム、防犯カメラを把握したうえで和鞘連合幹部を消した。
警察は、犯人逮捕のため捜査を開始しましたが、死体や凶器を見つけることができません。力を失った和鞘連合は崩壊し、会長の氏家勝一はメキシコに逃亡しました。
和鞘連合がなくなり沖縄に潜伏していた喜納修三が、兼高と室岡により惨殺されます。この手柄により、兼高は神津組のなかでその存在を圧倒的なものにしました。
警察の命令ではあるものの、これまで両手では足りない位の人間を殺してきた兼高は苦悩しています。
少年時代に犯罪により命を落とした初恋の相手の復讐を誓い、悪を嫌悪してきた兼高だっただけに、何食わぬ顔で人の命を奪うのはとても辛いこと。
そんな兼高が唯一、心許せる場所が池端リラクゼーションサロンでした。
ここで施術する衣笠典子は、かつて息子を惨殺したヤクザが許せず、極道のところへ出張マッサージを行っては情報を得て、阿内に提供していました。
衣笠は、阿内と兼高の仲介役。兼高を死んだ息子のように思ってくれています。兼高が本来の出月梧郎に戻れる唯一の心休まる場所だったのです。
小説『ヘルドッグス 地獄の犬たち』の感想と評価
小説の兼高昭吾はヤクザも恐れおののくほど、かなり熾烈で冷酷な男。その印象は、人の命を奪うことを何とも思っていないようです。
ですが、実は彼の胸中はいつも真逆である正義心と闘って苦しんでいました。本職は警官である兼高は、潜入捜査というミッションのため、あくまで素性を隠して別人になりきっていたのです。
その秘密は地獄の底まで持っていかなければならないほど重大なもの。機密のなかでも最も重要な極秘に分類されるもので、本当の家族のようにかわいがっている弟分の室岡にも知れてはならないことでした。
ストーリーが展開するにつれ、暴力団組織を裏切り警察も裏切り、自分の生き様を見極めた兼高の複雑な心境は想像を絶します。まさに地獄へ落ちた境遇と言えます。
ここで、注目したいのは、兼高のターゲットである十朱も元潜入捜査官ということでしょう。
なぜ潜入捜査官がそのまま暴力団のボスになってしまうのか。
義理人情で繋がる縦社会の暴力団に対して、権力と命令で内部をしきる警察。似ているようで似ていませんが、下っ端からすれば同じような境遇と言えるのではないでしょうか。
どちらも上層部からの命令には逆らえません。しかし家庭的に不幸な者たちは、義理人情にアツい暴力団のヤクザに家族愛を見出す者も多く、そこに潜入捜査官であった十朱も魅かれたのかも知れません。
その‟心境の揺らぎ”は、十朱確保をミッションとする兼高にもいえます。
無事にミッションを終了した兼高ですが、ヤクザであったためにいくつかの罪を犯しているのは隠しようのない事実です。
お役目が終了しても果たして以前の「出月梧郎」に戻れるのかどうか、気になるところです。
問題となるミッションの幕引きは、本当の‟出月梧郎”として彼が自分で決めます。最後の最後に「人間」としての行動を問われるラストでした。
映画『ヘルドッグス』の見どころ
映画『ヘルドッグス』は、暴力団VS警察の果てしなき戦いを描いた、深町秋生の小説『ヘルドッグス 地獄の犬たち』を原作としています。
『クライマーズ・ハイ』(2008)『日本のいちばん長い日』(2015)『関ヶ原』(2017)『検察側の罪人』(2018)の原田眞人が映画化しました。
多くの話題作を手掛ける原田監督が、『関ヶ原』(2017)『燃えよ剣』(2021)に続きタッグ3度目となる岡田准一を呼び寄せ、血みどろの抗争劇と地獄絵図のような刑事の苦悩を描き出します。
『ザ・ファブル』(2019)『ザ・ファブル2』(2021)などでアクションに定評のある岡田准一は、殺人も躊躇なくこなすダークな役どころを哀憐の混ざった表情で演じ切ることでしょう。
一方、兼高の弟分となる室岡も、冷酷で腕っぷしの強いヤクザですが、人一倍岡田を慕っています。
岡田演じる兼高に憧れを抱く室岡には、坂口健太郎。今回の役どころは、これまでの『今夜、ロマンス劇場で』(2018)、『余命10年』(2022)などとはガラリと異なります。
ですが、強くて影のあるクレイジーな室岡を演じ切り、新たな坂口健太郎の魅力を見せてくれるに違いありません。
ヤクザの東鞘会最強コンビになりつつある兼高・室岡。演じる岡田准一と坂口健太郎の息の合ったコンビぶりに注目です。
映画『ヘルドッグス』の作品情報
【公開】
2022年(日本映画)
【原作】
深町秋生「ヘルドッグス 地獄の犬たち」(角川文庫/KADOKAWA刊)
【脚本・監督】
原田眞人
【キャスト】
岡田准一、坂口健太郎
まとめ
深町秋生小説映画化2作目となる『ヘルドッグス 地獄の犬たち』をネタバレ有りでご紹介しました。
歪にゆがんだ性犯罪の裏をグロテスクに描いた、深町秋生のデビュー作『果てしなき渇き』は、2014年に小松菜奈と役所広司で『渇き。』として映画化されています。
『ヘルドッグス』というタイトルで映画化される本作も、アクション描写などは半端なくグロテスクです。
けれども、そのなかでも、使命を全うし自分の進むべき道を極める主人公の心の葛藤は、人としてあるべき姿を問いかけています。
原田監督と岡田准一のバディで描かれる、ヤクザVS警察、社会の裏事情と葛藤する兼高の自分とのバトル。岡田准一扮する汚れ役が見ものです。
映画『ヘルドッグス』は、2022年9月16日(金)より全国公開!