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Entry 2017/02/05
Update

映画『脱出』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も【ジョン・ブアマン監督×ジョン・ヴォイト代表作】

  • Writer :
  • リョータ

第45回米国アカデミー作品賞・監督賞・編集賞ノミネート作品!

都会の喧騒を逃れ、大自然の中で休暇を楽しむはずだった4人の男…。彼らを待ち受けていた恐怖の正体とは?!

自分の男らしさを試すためにすすんで危険に挑んだ4人の男たちが、その危険がもたらした予想外の事態に狼狽し、逆に人間の弱さや卑屈さを醜く露呈していく姿を描く。

製作と演出はジョン・ブアマン監督は、『殺しの分け前 ポイント・ブランク』(1968)や『未来惑星 ザルドス』(1974)で知られる名匠。また、原作者であり脚本を担当したのは詩人ジェームズ・ディッキーです。

撮影は『天国の門』(1973)『ディア・ハンター』(2018)など、自然光の光を上手く使ったカメラワークで知られるヴィルモス・ジグモンドが担当しています。

奇才ジョン・ブアマン監督の映画『脱出』をご紹介します。

映画『脱出』の作品情報

【公開】
1972年(アメリカ)

【原題】
Deliverance

【監督】
ジョン・ブアマン

【キャスト】
ジョン・ヴォイト、バート・レイノルズ、ネッド・ビーティ、ロニー・コックス、ビル・マッキニー、エド・ラミー、ビリー・リーディン、ジェイムズ・ディッキー

【作品概要】
1972年公開のサスペンス・アドベンチャー映画を、『エクソシスト2』(1977)『エクスカリバー』(1981)などでカルト的な存在感を見せるに至ったジョン・ブアマン監督が演出を担当。

原作者ジェームズ・ディッキーが自らの原作をもとに脚色を行いました。

映画『脱出』のあらすじとネタバレ

エド、ルイス、ボビー、ドリューの4人は、連れ立って山奥へとやってきました。この辺りでは着々とダム建設が進められているようで、数か月後には沈んでしまうんだそう。そうなる前に、カヌーで川下りをしてみようじゃないかという運びになったわけです。

山奥の村にあったガソリンスタンドへと入っていく4人。川下りの目的地であるエントリーの町まで車を運んでくれないかと店主と思しき男に頼みます。そういうことはグライナー兄弟に頼めとぶっきらぼうに答える店主。

仕方なくガソリンだけ入れてもらっていると、ドリューが盲目のバンジョー弾きの少年の存在に気付きます。ギターが得意な彼が試しに演奏すると、即座に同じメロディーを繰り返してくる盲目のバンジョー弾き。楽しくなったドリューとで繰り広げられる即興によるセッション。その場は大盛り上がりでした。

その後、道順を教わってグライナー兄弟の下へと向かう一行。辿り着いたおんぼろ小屋にいた2人の男。どうやら彼らがグライナー兄弟のようです。車の件を頼むと、大金を吹っ掛けてはきたものの、渋々引き受けてくれました。しかし、彼らの蔑むような目つきは都会から来た4人を全く快く思っていない様子でした。

そうして、エドとドリュー、ルイスとボビーの2艘に別れて川下りの始まりです。途中何度か難所を迎えながらも、順調に進んでいく一行。ルイスが得意のアーチェリーで魚を狙ったりと、楽しい時間を過ごしていました。

日没を迎え、川岸でキャンプを張る4人。火を囲みながらの楽しい食事の時間もあっという間に過ぎていきました。

翌朝、いち早く目覚めたエドは、ルイスと同じく得意としているアーチェリーを片手に森へと分け入っていきます。鹿を見つけて狙いを定めるエド。いざ射ようとすると突然手の震えがおき、大きく外してしまいます。そのままキャンプへと戻るエド。

全員の準備が整い、2日目の出発となりました。今日の組み合わせは、ルイスとドリュー、エドとボビー。ルイス・ドリュー組が遅れていたので、エド・ボビー組は川岸で一休みして彼らを待ちます。

するとそこへ2人組の汚らしい男たちが姿を現します。ショットガンを持っていて、見たところハンターのように見えました。最初からケンカ腰の男たち。些細なことから言い争いとなり、ついにはショットガンを向けてくる始末。森に入れと脅されるエドとボビー。

すると突然、彼らに身動きを封じられ、エドが木に縛り付けられてしまいます。一方、服を脱がされ、四つん這いにされるボビー。お前は豚だとなじられ、鳴き真似をしてみやがれと脅されます。そして強姦されてしまうボビー。それを見せつけられながら、身動きが取れないエド。

今度は自分の番だと、必死で縛めを解こうとするエド。男がニヤついた表情を浮かべながら近づいてきたその時、アーチェリーの矢が一閃!ルイスが助けに来てくれたのです。ちょうど縛めを解くことに成功したエドは、もう一人の男からショットガンを奪い取り、その男は森の奥へと足早に消えていきました。

以下、『脱出』ネタバレ・結末の記載がございます。『脱出』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
何とか危機を脱した4人でしたが、そこには大きな問題が残されていました。ルイスが射た矢は、男の背中を貫いており、すでに死んでいたのです。

何事もなかったのように始末しようと主張するルイス。逃げたもう一人の男がきっと戻って来たら、途端にバレてしまうと反対するドリュー。数か月もすればここは湖の底になるのだから問題ないと再度主張するルイス。しかし、ドリューは納得がいきません。

埒が明かないため、多数決で結論を出すことに。当然ルイスは賛成。一番の被害者ボビーも賛成に票を投じます。ドリューは変わらず反対。賛成2、反対1です。さて、残るはエド。

人を殺してしまったんだぞと、エドを説得しようとするドリュー。しかし、エドの出した結論は賛成でした。

死体を森深くへと運ぶ4人。穴を掘り、奪った銃と共に死体を埋めます。素手での作業だったために多くの時間を費やしてしまった4人は、急いで川へと戻り、下っていきます。

必死でカヌーを漕ぐ4人でしたが、ドリューの様子がどこかおかしい。そんな中、急流に差し掛かると突然投げ出されてしまったドリュー。なぜか救命胴衣を付けていなかった彼は川へと飲み込まれていきます。同乗していたエドが助けようとするも、逆に転覆してしてしまうカヌー。一方のルイスたちも急流によって同じ運命を辿っていました。

流されていく3人。ドリューの姿はどこにも見えません。彼らは何とか川岸の岩場へと辿り着きましたが、カヌーの内1艘は失われてしまいました。しかも、岩にぶつけたのか、ルイスが足に重傷を負っているのです。

ドリューは撃たれたに違いないと告げるルイス。川の両側を見上げると、そびえ立つのは高い崖。もう一人の男が戻ってきたに違いないと恐怖におののく3人。

ルイスの足はどうやら骨折しているようで、身動きが取れません。おまけに崖の上からだと、この場所は格好の標的です。何とかしなければ全滅すると怯えるボビー。

まもなく日暮れを迎えようとしている中、エドはアーチェリーを肩に担ぎ、崖を登っていきます。踏み外せば一貫の終わり。それほどの高さの崖を、力を振り絞って登っていくエド。崖の上の狙撃者を何とかしようというのです。

登りきったところで精根尽き果てたのか、眠ってしまうエド。すると気配を感じ、目を覚ますと、ライフルを持った男の姿が見えました。向こうからはこちらが見えない位置に隠れているエド。

鹿を狙った時のことが思い出されます。手の震えを必死で抑えるエド。そうして、ようやく彼が矢を放ちました。その拍子に、予備で所持していた矢が自分の足に刺さるも、彼の放った矢もどうやら命中したようです。

倒れた男に近づいていくエド。その正体は、やはり彼らを襲った男の片割れでした。死体をボビーの下に降ろし、自らも降りていきます。重しをつけて川へと沈んめられる男の死体。

エドの足のケガはそこまでの重症ではなかったようですが、ルイスの方はよほど状態が悪いのか意識を失ったままでした。そんな彼をカヌーに寝そべらせる形で、再び川を下っていく3人。

途中、一行を待ち受けていたのは、ここまで流されていたドリューの亡骸でした。彼を川に沈め、急ぎ葬儀を執り行う3人。もし銃で撃たれたドリューの遺体が発見されたら、彼らが困った立場に立たされてしまうために、やむにやまれず行ったことでした。

その後、何度も急流に差し掛かりながらも何とか乗り越えていった一行は、ようやく文明の匂いのするところまでやってきました。上陸する前に口裏合わせをする3人。ドリューは溺死した、ルイスの負傷はこの辺りで起こった、そういうことで意思統一を図ったのです。

上流地点であるエントリーの町には、すでにグライナー兄弟に頼んだ車が到着していました。近くの民家で電話を借り、救急車を手配します。病院へと搬送されるエドとルイス。一方、残って警察から事情聴取を受けるボビー。

病院で処置を終えたエドの下にボビーも合流します。どうやら状況が芳しくないようです。ボビーの説明とは辻褄の合わない地点で壊れたカヌーが発見されたとのこと。しかも地元の人間2人の行方が分かっていないこともあり、当地の保安官にあからさまに疑いの眼差しを向けられます。

一方重症だったルイスは、何も覚えていないの一点張りを通しているようで、彼の方は何とか乗り越えられそうでした。エドとボビーは、疑いの根が深くなっていく前に早々に自分の町に帰ろうと支度をしていると、保安官が現れます。

大きな疑いはあるものの決定的な証拠のない保安官は、二度とこの町に来るなと警告し、彼らの脱出を見逃してくれた形となりました。

こうして無事に自宅へと戻ったエドでしたが、彼の頭の中にはここ数日の出来事が頭を離れません。再び川へと舞い戻っていくエドの意識。ぶくぶくと泡を立てる水面から人間の手が飛び出して来た時、ハッとして目覚めたエドでしたが、かつての平穏な生活を謳歌することは、彼にはもう出来ないのかもしれません。

映画『脱出』の感想と評価

この作品の冒頭から結末まで、徹頭徹尾漂い続けている不思議な感覚は何とも表現し難いものです。何かがおかしいのだけれども、具体的に何がおかしいのかが分からないといった感覚でしょうか。

もちろんファンタジーやホラーといった非現実的要素は一切ないのですが、それでもこの作品が描く世界観の底にはどこかしら異質のものを感じさせるのです。あたかもその異世界への案内人が、盲目のバンジョー弾きであるかのように。そう、あの場所から全てが始まったのです。では、その異世界とは一体何なのでしょうか?

それを解く鍵、それは4人が訪れたこの場所が近い将来ダム建設のために沈んでしまうということにあるのかもしれません。

この山奥の住民たちが、都会から来た4人に向ける眼差しに込められた感情は、蔑みであり、嫌悪でした。しかし、同様に4人もまた彼らに同様の眼差しを向けるのです。

この都会人と地元民の関係は、そのまま都市と自然にそっくり置き換えられるのではないでしょうか。都会の人間の利己的な都合(ダム建設)で破壊されていく自然という関係性に。そう、4人が迷い込んだ異世界とは、まさに擬人化された自然の世界に他なりません。

ボビーを強姦した2人組の男は、見るからに不潔そうな格好をした男たちでした。つまりそれが意味するのは、都会人から見た自然の存在意義というものが、その程度の存在でしかなかったということを表しているのです。

そういった考えに基づいているからこそ、ダムという都市のための施設を造ることを優先し、これほどの雄大な自然であるにも関わらず、簡単にそれを破壊してしまえるのです。

そんな都会人たちに、もはや死を待つだけの自然がとうとう牙をむきました。2人組の男こそまさに自然を象徴する存在であり、都会人をレイプするという行為によって彼らに一生残る傷をつけたのです。

その影響を最も顕著に受けたのは、ジョン・ヴォイト演じるエドなのかもしれません。彼は当初寡黙で心優しい男でした。鹿すらも殺せない男でした。しかし、やがて彼の中にあった闘争本能が呼び覚まされたことによって、自ら崖を登り、殺人まで犯してしまうに至るのです。

あの行為が皆の危機を救ったということは確かですが、あの時点で彼は自分に負けてしまったのです。その意味するところは、「お前が深淵を覗くとき、深淵もまたお前を覗いているのだ」と言った哲学者ニーチェの言葉が全てを物語っています。

生き延びたものたちが、かつてと全く同じ生活を取り戻すことは不可能なのかもしれません。悪夢に苛まれることになったエドが過去を振り返った時、きっと鹿を射ることが出来なかった自分を羨ましく思うことでしょう。

まとめ

『脱出』は、オーソドックスなアドベンチャー映画という体裁を保ちながらも、痛烈な文明/社会批判を含ませるという芸当をやってのけたジョン・ブアマンという監督の手腕が際立つ作品となっています。

ダムに沈みゆく自然という前提条件のみを提示しただけで、劇中特に説明をすることをしないにも関わらず、ブアマンが創り出した奇妙な違和感によって、この物語の本質が別のところにあるのだとすぐさま観客に気付かせてくれるのです。

そうして得た評価の高さは、1973年の第45回アカデミー作品賞にノミネートされたことでも裏付けられています。惜しくも受賞は逃しますが、何しろ対抗馬が『ゴッドファーザー』と『キャバレー』というのでは文句のつけようもないといった所でしょうか。(結果的には『ゴッドファーザー』が作品賞を受賞)

そんなジョン・ブアマン監督の醸し出す独特の雰囲気は、2作目にあたる『殺しの分け前/ポイント・ブランク』(1967)や次作『未来惑星ザルドル』(1974)などでも存分に味わうことが出来ますので、興味をお持ちの方はぜひご覧頂ければと思います。

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