連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第71回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第71回は、『クライム・ゲーム』(2021)のご紹介です。
「オーシャンズ」シリーズのスティーブン・ソダーバーグ監督と「グランド・イリュージョン」シリーズの脚本家エド・ソロモンがタッグを組んで生み出した、大金に翻弄される男たちが騙し騙されるクライムアクション。
ドン・チードル、ベニチオ・デル・トロ、マット・デイモンらソダーバーグ作品の常連俳優に加え、ジョン・ハム、レイ・リオッタ、ブレンダン・フレイザーら豪華キャストが集結しています。
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映画『クライム・ゲーム』の作品情報
【公開】
2021年(アメリカ映画)
【原題】
No Sudden Move
【脚本】
エド・ソロモン
【監督】
スティーブン・ソダーバーグ
【編集】
メアリー・アン・バーナード
【出演】
ドン・チードル、ベニチオ・デル・トロ、デビッド・ハーバー、ジョン・ハム、レイ・リオッタ、マット・デイモン
【作品概要】
「オーシャンズ」シリーズのスティーブン・ソダーバーグ監督と「グランド・イリュージョン」シリーズの脚本家エド・ソロモンによるクライム・アクション。大金をめぐって男たちが騙し騙されながら奔走する様をスリリングに描きます。
キャストには『ホテル・ルワンダ』(2006)のドン・チードル、『トラフィック』(2001)のベニチオ・デル・トロ、『オーシャンズ11』(2001)のマット・デイモンらソダーバーグ作品の常連俳優に加え、『ベイビー・ドライバー』(2017)のジョン・ハム、『グッドフェローズ』(1990)のレイ・リオッタ、『ハムナプトラ』(1999)シリーズのブレンダン・フレイザーら豪華俳優らが顔を揃えます。
映画『クライム・ゲーム』のあらすじとネタバレ
1954年デトロイト。裏社会に生きる黒人のカートは、雇い主がわからないままジョーンズという男に会い、ある男を会社に行かせある物を家へ持ち帰らせるためにその家族を人質にして見張るように依頼されます。報酬は5000ドルでした。
フランクの妻といたロナルドは「あと少しだ」と言って彼女を帰します。そこに彼とは顔見知りのジョーンズが現れ、7500の報酬でカートと同じ依頼。一行は、もう一人の男チャーリーを迎えに行きます。
ピリピリした空気の中、誰が雇い主なのかという疑問について話し合う3人は。カートが眠ったのを見計らい、チャーリーはカートがワトキンズの賭けの貸金や賄賂が記録されたコードブックを盗んだという噂をロナルドに話します。
ターゲットはGM勤務のマット・ワーツでした。3人はマスクをつけて彼の家に押し入って家族を人質にし、上司・フォーバートの金庫にある極秘書類をとってくるように脅迫します。
マットにはチャーリーが同行。マットは不倫関係にある秘書のポーラから金庫の番号を強引に奪って金庫に向かいますが、書類は上司が持ち帰っていました。「何があろうとそのままにしろとネイスミスが言っていたのに」と言ってうろたえるマット。追い詰められた彼は、別の書類をジョーンズに渡します。
家に着いたマットとチャーリー。するとチャーリーは興奮気味にマスクを外し、全員をリビングに集めようとします。そこに鳴り響く電話のベル。反抗するマットを撃とうとするチャーリーでしたが、カートはすかさずチャーリーを撃ち殺します。
自分たちがハメられたことに気づくマット。電話の相手はジョーンズで、マットに対して怒り狂っていました。ジョーンズは電話を代わったカートに、ロナルドと家族を殺してフレームショー・バーに来るように言います。
マットはカートたちに、金庫が空だったために別の書類を渡したことを白状します。カートはチャーリーの銃をマットに握らせ、正当防衛でチャーリーを撃ったと警察に話すように言います。そして「いつか力が必要になった時に手を貸せ」と言って、ロナルドと立ち去ります。
カートは、チャーリーがロナルドの金を奪おうとしていたことを本人に話します。そして、ジョーンズが電話でロナルドと家族を殺せと言ったことも。
ふたりは自分たちの状況を打開するために行動を開始します。
映画『クライム・ゲーム』の感想と評価
二転三転する男たちの騙し合い
『セックスと嘘とビデオテープ』(1989)でデビューし、『トラフィック』(2001)「オーシャンズ」シリーズなど数々の名作で知られる巨匠スティーブン・ソダーバーグによる骨太なクライム・アクション『クライム・ゲーム』。
とにかく面白い一作です!細かな伏線が随所にちりばめられ、最後まで目が離せません。
ドン・チードル演じるいつも冷静で頭の回転の速いシャープな黒人・カートと、ベニチオ・デル・トロ演じる恰幅が良い色気たっぷりのモテ男のロナルドの対称的なバディが魅力的に描かれます。
彼らに加えてマット・デイモン、レイ・リオッタ、ブレンダン・フレイザーが参戦。ソダーバーグ監督作にこれだけの最高の布陣とくれば面白くないはずがないことがおわかり頂けるかと思います。
当初、家族を人質にして見張るだけと言われたカートとロナルドでしたが、思いがけない大規模な騒動に巻き込まれていきます。大金を手にするために騙し騙されるタフな男たち。ストーリーが二転三転してくさまは圧巻です。
スピーディーな展開が魅力的な本作ですが話が混み入っていて理解が難しいため、時代背景について少しご説明します。
時代は1950年代のアメリカ。自動車業界が盛んで好景気の頃です。当時はまだ今ほど排ガス規制が厳しくなく、ビッグフォーと呼ばれる4大企業は熾烈な競争をする一方で、価格を釣り上げてしまう排ガス対策をしないことで結託していました。経済を大きくしたい国や警察も彼らとつながっていたのです。
排気システムがすでに完成されていることは、決して外部に知られてはならない秘密でした。しかしその事実が漏れたために、裏社会の人間までが参戦し大騒動となったというのが本作の大まかな流れです。
そこに、黒人であるカートが、黒人を差別する男たちの鼻を明かそうとするという別のピースが加わっています。
映画冒頭あたりからすでに数々の伏線が敷かれているので、かなり後になってから「あそこで出てきたのはもしかして」とか、「あの時言っていたのはあのシーンでのことだったのか」など気づかされるかと思います。
作品を見返すことができるのは動画配信ならではの魅力です。ぜひ何度かご覧いただいて、細かなつながりを読み解いて楽しんでほしい一作です。
魅力あふれるしたたかな女たち
濃いキャラクターの男性陣に負けない個性を放つ女性陣の存在も大きなみどころです。
エイミー・サイメッツ演じるカートたちに押し入られたマット・ワーツの妻のメアリーは、初めは恐怖に震えるものの、相手がマスクをしていたことから自分たちにひどいことはしないことを見抜きます。タバコを吸う姿も板についており、只者ではない空気を醸し出す女性です。
ジュリア・フォックスが扮するロナルドと関係を持つフランク・カペリの妻ヴァネッサも見事なキャラクターです。マフィアの妻になっただけあって、金に貪欲で肝の据わった女です。彼女は本作の展開においてとても重要なパーツとなっていきます。
マットと愛人関係にあった秘書のポーラもなかなかの強者です。舌足らずで甘え上手かと思わせておいて、実は頭の回転の速い野心家。マットを完全に操縦しています。
ドタバタと苦労して駆け回る男たちを横目で見ながら冷静に自身の道を選んでいく女性たち。その姿は逞しく、爽快感さえ感じさせます。
まとめ
名匠スティーブン・ソダーバーグのもとに、ドン・チードル、ベニチオ・デル・トロ、マット・デイモン、レイ・リオッタら豪華俳優らが集結した圧巻のクライム・アクション『クライム・ゲーム』。
個性的なキャラクターたちが自身の安全と大金を賭けてスリリングな駆け引きを繰り広げるさまから目が離せない極上の一作です。
裏社会も表社会も巻き込む大スケールのストーリー展開を楽しみ、巧妙に張り巡らされた伏線を読み解きながら、彼らのたどり着く場所をしっかり見届けてください。
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