ケリをつけてやる。──小沢仁志、最後の無茶。
2022年12月9日(金)より福岡での先行上映後、2023年1月20日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国公開される映画『BAD CITY』。
「Vシネマの帝王」の異名を持つ俳優・小沢仁志が《還暦記念作品》として製作総指揮・脚本・主演を務め、自身の生き様のすべてをぶつけた渾身のアクション映画です。
小沢仁志が「俳優人生で最後の無茶」という覚悟で挑んだ本作。
本記事では、本作最大の魅力といえる「還暦」とは思えぬ大迫力のアクションシーン、そして映画作中のセリフに込められた俳優・小沢仁志からのメッセージなどを紹介いたします。
CONTENTS
映画『BAD CITY』の作品情報
【公開】
2023年(日本映画)
【脚本・製作総指揮】
OZAWA
【監督・アクション監督】
園村健介
【キャスト】
小沢仁志、坂ノ上茜、勝矢、三元雅芸、諏訪太朗、島津健太郎、友和、桐生コウジ、浜田晃、松永有紗、許秀哲、圭叶、桑田昭彦、福田健次、中野英雄、小沢和義、永倉大輔、山口祥行、本宮泰風、波岡一喜、TAK∴、壇蜜、加藤雅也、かたせ梨乃、リリー・フランキー
【作品概要】
「顔面凶器」「Vシネマの帝王」などの異名を持ち、映画・ドラマ・バラエティなど数々のフィールドで活躍する俳優・小沢仁志が、《還暦記念作品》として「俳優人生で最後の無茶」を繰り広げるアクション映画。自身が手がけたオリジナル脚本(製作総指揮・脚本は「OZAWA」名義)のもと、CGなし・スタントなしのアクションに挑んだ。
共演には坂ノ上茜、勝矢、三元雅芸のほか、壇蜜、加藤雅也、かたせ梨乃、リリー・フランキー、山口祥行、本宮泰風、波岡一喜、TAK∴、小沢和義、中野英雄という実力派キャスト陣が集った。
監督・アクション監督は、海外映画祭でも評価されたデビュー作『HYDRA』(2019)、アクション監督を務めたロングランヒット作『ベイビーわるきゅーれ』(2021)で知られる園村健介。
映画『BAD CITY』のあらすじ
ある夜、「犯罪都市」の異名を持つ開港市に縄張りをもつ桜田組の組長が死体となって発見された。それは、韓国マフィアの仕業であった。
その韓国マフィアの幹部・金数義が密談していたのは、巨大財閥である五条財閥の会長・五条亘。
五条が無罪となった判決には必ず裏があると踏んでいる検察庁検事長の平山健司は、公安0課の小泉香を使い、秘密裏に特捜班を結成。
メンバーは熊本、西崎、野原、そしてもう一人……ある事件を起こした罪で刑務所に服役中の元強行犯警部・虎田誠(小沢仁志)である。
果たして虎田たち特捜班は、五条を検挙することができるのか?
「真の悪の存在」や「裏切り者」は誰なのか?
欲望が渦を巻くこの街で繰り広げられる、欲望の果てに見える景色とは──。
映画『BAD CITY』の感想と評価
俳優・小沢仁志、“全身全霊”のアクション
本作最大の魅力は、やはり小沢仁志による渾身のアクションシーンです。
「スタントマンをほとんど使わないアクション俳優」としても知られている小沢。本作の撮影にあたっても自身の肉体を鍛え上げ、「還暦」という言葉が嘘に聞こえてくるほどの身体能力を作中で披露しています。
映画後半部での総勢100人以上の敵を相手にした迫力の乱闘戦はもちろんのこと、特筆すべきはクライマックスでのアクションシーン。
同場面で小沢と相対するのは、自身が主要キャストとして出演する「日本統一」シリーズでは本宮泰風とW主演を務め、《ネオVシネ四天王》の一人と称される山口祥行。「《還暦記念作品》を飾るクライマックスでの“死闘”を、自身とともに繰り広げてくれる者」という役目を託すにはこれ以上ない相手といえるでしょう。
なお本作には、山口と同じく《ネオVシネ四天王》の本宮泰風、中野英雄も出演。記念作品に華を添えています。
肉と肉、意地と意地、世代と世代がぶつかり合う肉弾戦は、観る者に俳優・小沢仁志の“全身全霊”……猛き“魂”の姿を魅せてくれるはずです。
闘い続けてきた“背中”そのもの
映画前半、特捜班に選ばれた新人刑事・野原(坂ノ上茜)は、虎田が刑務所に入れられていた理由と事件の真相を先輩刑事たちに尋ねます。
その質問に対して、「班長」こと虎田を信じ続ける刑事・熊本(勝矢)は「班長の背中だけ見てろ」「それが真実だ」とだけ答えます。
「背中だけ見てろ」「それが真実だ」……それは、決して野原だけに向けられた言葉ではありません。
元強行犯警部・虎田誠という男の背中を、そして虎田を演じる俳優・小沢仁志という男の背中を見つめ続けるのは誰か……それは他でもない、映画『BAD CITY』を観る人々です。
ドラマ『スクール☆ウォーズ』(1984)の水原亮役で本格的に俳優デビューを果たしたのち、多くの「伝説」を残しながら数々の作品で闘い続けてきた俳優・小沢仁志。
「己を語るのに言葉は要らない」「ただ作品を観てくれたらいい」……小沢が自ら脚本・製作総指揮を手がけた映画『BAD CITY』は、まさに闘い続けてきた彼の「背中」そのものと呼べる作品なのです。
まとめ/強さも弱さも“真実”の一部
《還暦記念作品》という名の通り、俳優・小沢仁志の集大成的作品といっても過言ではないであろう映画『BAD CITY』。
「背中だけ見てろ」「それが真実だ」……その言葉の通り、俳優・小沢仁志の「背中」そのものといえる本作を観た人々は、彼が映画に込めた「真実」を目の当たりにするはずです。
映画作中では、自身の命を賭してでも真実を明らかにすべく闘い続ける虎田が、闘い続けるがゆえに痛感してしまう人間の「弱さ」を語る場面も描かれます。
もしそれもまた、虎田を演じる小沢の「背中」の一部なのだとしたら、還暦に至ったからこそ知れる俳優・小沢仁志の姿はそこにあるのかもしれません。
映画『BAD CITY』は2022年12月9日(金)より福岡での先行上映後、2023年1月20日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国公開!
ライター:河合のびプロフィール
1995年生まれ、静岡県出身の詩人。
2019年に日本映画大学・理論コースを卒業後、映画情報サイト「Cinemarche」編集部へ加入。主にレビュー記事を執筆する一方で、草彅剛など多数の映画人へのインタビューも手がける(@youzo_kawai)。