あなたはペットを飼うなら、ねこ派ですか、いぬ派ですか?
今回ご紹介する映画は、総数250匹の犬たちが演技を見せてくれる映画。そのワンちゃんたちの演技が認められ、見事!カンヌ国際映画祭ではパルムドック賞受賞。
でも、単純な人間と犬の交流を描いた作品ではなく、大きな社会テーマを持つ作品です。
ハンガリー映画でカンヌ国際映画祭を沸かせた『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』をご紹介します!
『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』の作品情報
【公開】
2015年(ハンガリー・ドイツ・スウェーデン合作)
【脚本・監督】
コーネル・ムンドルッツォ
【キャスト】
ジョーフィア・プショッタ、シャーンドル・ジョーテール、ラースロー・ガールフィ、リリ・ホルバート、サボルチ・トゥーロチー、リリ・モノリ
【作品概要】
ハンガリーのブタペストを舞台に、雑種の犬だけに重税を課した悪法によって、1人の少女から引き離された愛犬ハーゲンと、人間に虐げられた犬が保護施設から反乱を起こす様を描いた異色動物パニック映画。
第67回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門のグランプリとパルムドッグ賞をダブル受賞。
映画『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』のあらすじとネタバレ
少女リリは多感な年頃の13歳。自分を取り巻く状況に抱いていました。両親の離婚や、学校のオーケストラに所属するもトランペットが上手く吹けず、自身の状況に少し悩みを抱えていました。
どこにも居場所がない、リリの心のよりどころは賢い愛犬のハーゲンだけでした。ある日、リリは数日間、折り合いの悪い父親のもとに預けられるになりました。
久々に対面した父親は、リリがアパートに連れ込んだハーゲンのことが煩わしくてしょうがありません。最近、この国では雑種犬に重い税を課して飼い主にはその責任を課す新たな法律が施行されました。
当局からの税金催促と、リリの反抗期な態度に怒った父親は、高架下にハーゲンを置き去りにして捨ててしまいます。
リリは「必ず迎えに来るから」と涙を流してその場を去りますが、喪失した孤立感に一層打ちひしがれますが、彼女は必死になって愛犬ハーゲンを捜し続けるのです。
なかなか見つからないリリは、途方に暮れて犬の保護施設を訪れますが、ここでも見つけられませんでした。
一方で彷徨っていたハーゲンは、執拗な野犬狩りを行う当局に追われ迷い込んだ路地でホームレスに拾われ、野犬ブローカーに売り飛ばされていたのです。
リリとの幸せな環境で育ってきたハーゲンにとって、飼い主との別れは恐ろしく無秩序な世界でした。
流浪に流された果てに裏社会の闘犬場へと出場するように、強引に残忍な飼育を受けさせられると獰猛な野生犬に目覚めます。
やがて。ハーゲンは虐げられ養護施設に入れられた、犬たちの群れを率いて人類への反乱へと決起するのです…。
映画『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』の感想と評価
この作品のコーネル・ムンドルッツォ監督は、主人公リリ役で初主演をしたジョーフィア・プショッタについて、犬とのコミュニケーション能力が高い性格であった事にとても満足をしたようです。
また、ジョーフィアの新人離れをした演技を繊細で力強く、驚くべき才能と説得力で表現していたと賛辞を送っています。
さらに、名演技を見せてくれた犬たちについても、「犬の視点では人間は神のようなもの。犬は神という主人に仕える、常に社会的に見捨てられている存在の象徴である、(中略) 私は以前から神の特徴に興味がありました。神は本当に白人なのか? それとも人にはそれぞれの神がいるのか?」と述べています。
この事については作品タイトルから、ある秘密読み取ることができます。「ドッグ=DOG」は、逆さに並び替えると「ゴッド=GOD(神)」。
「ホワイト・ゴッド」というタイトルに込められたテーマは、人間の利己的な部分をあぶり出そうとしたものなでしょう。
ここまで聞いた時に、すでにピンときた映画ファンの方もいらっしゃるとは思います。
実は『ホワイト・ゴッド』は、過去に犬を主人公に制作された、名匠サミュエル・フラー監督の『ホワイト・ドッグ 魔犬』(1982)を特別意識した作品関連性のあるのです。
また、映画の為に犬の調教をおこなったスタッフも、父親が『ホワイト・ドッグ 魔犬』を担当。その娘は『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』を担当したという経緯もあります。
参考作品1.『ホワイト・ドッグ 魔犬』(1982)
『ショック集団』『裸のキッス』『最前線物語』などの監督や、『気狂いピエロ』の出演で知られる名匠サミュエル・フラーの作品で、人種差別をテーマに描いたサスペンス映画。
この物語は、実際に黒人だけを襲う犬が実在した出来事をリアルな恐怖として描いた作品。原作はロマン・ガリーの『白い犬』、音楽は巨匠エンニオ・モリコーネが手掛けています。
ムンドルッツォ監督の作品『ホワイト・ゴッド』では、犬たちが反撃に出る場面は、”大衆が蜂起する瞬間”をイメージして描いています。
監督は、”マイノリティの視点”を示したそうで、アート(映画)は批評的なスタンスを決して手放してはならない事を強く意識しています。
この2つ作品は、どちらも人種差別の問題やマイノリティという弱者をテーマに扱っている点もあるので、ぜひ、併せて観ることをお薦めしたいですね。
まとめ
この作品のように、動物が集団で人間を襲うというシーンを見れば、何と言ってもすぐに思い出す映画は、 アルフレッド・ヒッチコックの動物パニック映画の最高峰の『鳥』でしょう。
または、犬猿の仲とばかりに、SF映画史に名を残す傑作『猿の惑星』を引き合いに出す事も出来ますね。
この2本作品と『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』を見比べて鑑賞するのも、なかなか面白いのではないでしょうか。
あなただけの新たな共通点や、発見をがあるかもしれません。ぜひ、そんな楽しみ方をしてはいかがでしょうか。
参考映画2.『鳥』
参考映画3.『猿の惑星』
ぜひ、ハンガリー映画界から第67回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門のグランプリと、パルムドッグ賞をダブル受賞で話題を集めた、『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』の鑑賞して見てください!
虐げられた犬たちの姿、そこからの復讐劇にはマイノリティながら立ち上がる姿に、あなたも何かの深読みが出来る秀作です!
さて、主役犬バーゲンをはじめとする、雑種250匹の犬は、実際の保護施設の中で殺処分されるはずだった犬たちを調教した後に、映画出演をさせてから全ての犬たちを里親の元へ引き取られていったそうです。
単に映画制作だけを優先した犬への思いだけではなく、実際に社会への復帰を教育後にさせた点にも注目を作品ですね。