Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ドキュメンタリー映画

Entry 2016/12/13
Update

映画『ラスト・タンゴ』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

寒くなりましたね。外に出るのがツライ時には、自宅での映画鑑賞はいかがでしょう。

アルゼンチンのブエノスアイレスは、日本とは逆に真夏に向かっていく季節!

アルゼンチン・タンゴのドキュメンタリー映画『ラスト・タンゴ』をご紹介します。

観ているだけで身体の温まる?情熱のタンゴ!ダンスへの愛情‼︎微熱38度を超え間違いなし!

映画『ラスト・タンゴ』の作品情報

【公開】
2016年(アルゼンチン・ドイツ)

【監督】
ヘルマン・クラル

【キャスト】
マリア・ニエベス、フアン・カルロス・コペス、パブロ・ベロン、アレハンドラ・グティ、フアン・マリシア、アジェレン・アルバレス・ミニョ

【作品概要】
『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』などで知られるヴィム・ヴェンダースが製作総指揮を務め、愛弟子のヘルマン・クラル監督を果たしたドキュメンタリー。

単にインタビューだけを見せるのではなく、若い頃のマリアとフアンのタンゴ場面は、物語調に美しく再現しています。

その際には、映画『タンゴ・レッスン』で本人役を演じたパブロ・ベロンや、タンゴダンス世界選手権の優勝者ダンサーなどがタンゴを披露します。

映画『ラスト・タンゴ』のあらすじとネタバレ

ラストタンゴ1
(C) WDR / Lailaps Pictures / Schubert International Film / German Kral Filmproduktion

一見では80歳を過ぎたようにとても見えないマリア・ニエベスが、颯爽と登場します。

車に乗ると、かつては、アルゼンチン・タンゴを世界に普及させた伝説のタンゴペアの取材に、胸を踊らせているようです。

なぜなら彼女は、誰もが知るアルゼンチン・タンゴの母と呼ばれる存在だからです。

老年期となったマリアは、スタジオに再現された幼い頃に住んでいた家に佇みながら、過去を思い出していきます…。

2人が出会ったきっかけは、マリアが14歳の時でした。

姉たちが通うダンスホールへ行った際に、会場の中でも際立ったダンサーの17歳のフアン・カルロス・コペスがいました。

圧倒的な輝きで周囲を魅了して時のことを、今でも鮮明に語り、当時は壁の花であった自身の少女マリアを懐かしそうに思い起こします。

そのファンが、マリアの側に歩み寄って来ると、初めてのダンスへとマリアを誘います。やがて、運命的に2人は恋に落ちていきます…。

以下、『ラスト・タンゴ』ネタバレ・結末の記載がございます。『ラスト・タンゴ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
それから50年近く踊り続けたマリアとファンの若い頃の様子を、若手実力派のダンサーが芸術的に再現します。2人の恋するシーンは橋の上で再現。

また、マリアがダンスで胸高まる様子にはワイヤー・ワークで空中に釣り上げて表現をされています。

野外や工場などで踊るタンゴ・パフォーマンスや、当時話題を集めたテーブルに上がりタンゴを踊るなど、若いダンサーがその伝説への道を夢物語のように見せていきます。

しかし、アルゼンチン・タンゴの世界に名声を轟かせた、栄光の裏には、マリアがパートナーのファンから受けていたことは、タンゴと愛情のみではなかったようです。

光輝けば輝くほど、嫉妬、裏切りという陰りがあったのです。

愛憎を激しくタンゴにぶつけ合い、芸術的ダンスに昇華する時にしか、手すら取らなくなり、互いには触れ合わなくない関係になってしまいました。

それが隠れていた2人の真実なのです。しかし、1997年に日本での公演を最後にコンビを解消。

初老に差し掛かったファンは、あまりにも簡単に若い女性と結婚。家庭を持ち、幸せそうに父親として子ども得ます。

一方で、マリアは、結婚はせず、子どもいません。

その現実に、インタビューを掘り下げると、マリアは憤慨します。

それでもアルゼンチン・タンゴと、ファンを愛していると…。

映画『ラスト・タンゴ』の感想と評価

ラスト・タンゴ2
(C) WDR / Lailaps Pictures / Schubert International Film / German Kral Filmproduktion

伝説のアルゼンチン・タンゴの母と呼ばれたマリア・ニエベスと、現在の一流ダンサーたちを交えて映像化するという構成が、まず面白い作品。

マリアは、次世代の若者に、自然な形でタンゴを継承する様は、まるでワークショップのようにも見えてきます

これはインタビューだけでは見られませんし、当時の映像だけでは観客にも伝わらないのではないでしょうか。

マリアがもっとこうしなさいと、“当時のマリアとファンの情熱的タンゴ”を教え込むショットは素敵な点のひとつです。

また、ストーリーに合わせた現役ダンサーたちの、若い当時のマリアとファンの軽やかで魅惑的なステップと、熱狂的な踊りは、タンゴファンならずとも一見の価値はあります。

例えば、マリアとファンが映画デートに行った帰りに、思わずステップを踏みたくなってしまった、夜の橋のでタンゴを踊るシーンがあります。

その2人の愛とダンスの高まりに魅了された、あなたには、

1952年に製作されたハリウッド映画『雨に唄えば』をオススメします。

マリアとファンが一緒にデートで観た作品『雨に唄えば』(1952年)

ミュージカル映画の名作中の名作。

この作品は、サイレント時代からトーキー映画に移行するハリウッドを舞台に描いた作品で、主演で監督も務めたジーン・ケリーが、雨の中で歌い踊るシーンはあまりにも有名。

他にもミュージカルの醍醐味がたくさん詰まった作品です。

ぜひ、マリアとファンの感動を味わって見るのも一興です。

また、感想の冒頭に述べたドキュメンタリー構成の面白さに魅了された、あなたには。

ヴィム・ヴェンダースが監督した作品『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』をオススメします。

ヴェンダースが20年来の友へ敬意、伝説の天才舞踊家ピナ・バウシュのドキュメンタリー


2009年に、この世を去った天才舞踊家ピナ・バウシュ。ピナが率いたドイツのヴッパタール舞踊団のメンバーと共に、友人でもあったヴィム・ヴェンダースが映像作品。

『ラスト・タンゴ』では製作総指揮を務めたヴィム自身が、友人ピナのために捧げた思い、ぜひ観たいですよね。

現代的なダンスでこちらもダンスシーンがとても斬新です。

関連のある映画を一緒にご覧いただくことで、1本観た時よりもさらに興味も、味わいも深くなっていくのが映画の特徴です。

ぜひ、合わせてご覧ください‼︎

まとめ

ラスト・タンゴ3
(C) WDR / Lailaps Pictures / Schubert International Film / German Kral Filmproduktion

アルゼンチン・タンゴを世界的に広め、今なお現役として活躍するマリア・ニエベス。

その生涯を追ったこの作品から見えてきたものは、女性が老いてもなお持ち続けている女性のプライドではなかったでしょうか。

女性はいくつになっても“美しく恋する女”なのだとシビレてしまいます

そこがあの姿勢であり、凛とした佇まいなのだと強い印象を持ちました。

マリアのタバコを蒸かす姿は、格好良いと言わざる得ません。

ぜひ、タンゴやダンスファンのみならず、女性には観ていただきたい作品です。

関連記事

ドキュメンタリー映画

『アントラム/史上最も呪われた映画』ネタバレあらすじと感想。結末はフェイクか実話か観たら死ぬ!?

映画『アントラム/史上最も呪われた映画』は2020年2月7日より公開。 1979年に製作され、関わる者が次々と命を落とす呪われた映画『アントラム』。 1993年に行方不明になったこの作品を入手した、2 …

ドキュメンタリー映画

映画『74歳のペリカンはパンを売る。』東京・浅草老舗の味は美味しい!

ーすべてのパン好きに贈る、今までにない“えいが”焼きあがりましたー 内田俊太郎監督のドキュメンタリー映画『74歳のペリカンはパンを売る。』の予告編がYouTubeにて解禁されました。  創業74年の老 …

ドキュメンタリー映画

映画『フィールズ・グッド・マン』感想評価レビュー。マットフューリーの漫画が映すネット社会と創作の現在

映画『フィールズ・グッド・マン』は2021年3月12日(金)より全国順次ロードショー! 何の悪意もないユーモラスなキャラクターが、突然「諸悪」の象徴に? ある漫画のキャラクターに起きた奇妙な顛末の経緯 …

ドキュメンタリー映画

映画『人生ドライブ』あらすじ感想と評価解説レビュー。熊本県民テレビ発のドキュメンタリーから見える“大家族の絆”

何が起こっても大事なものはここにある。 人生の悲しみも喜びも、思い出も10倍! 熊本県で暮らす岸家は、7男3女の大家族。泣いて笑って全力投球の岸家の21年間を追い続けたドキュメンタリー番組が、劇場上映 …

ドキュメンタリー映画

映画『デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり』あらすじと感想レビュー

3月3日(土)よりシアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開となる映画『デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり』をご紹介します。 アカデミー賞受賞作『シャイン』のモデルとなったピアニスト、デイヴィ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学