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Entry 2019/06/22
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実写『時をかける少女』ネタバレあり感想解説と内容評価。大林宣彦のノスタルジックなSF映画の魅力と特撮技術を読み解く|邦画特撮大全51

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第51章

目黒シネマにて2019年6月22日から6月28日までの7日間、“大林宣彦デラックス~キネマの玉手箱~”が行われます。

この特集上映は『フィルムメーカーズ 大林宣彦』(宮帯出版社)の刊行を記念したもので、『HOUSE ハウス』(1977)、『時をかける少女』(1983)、『異人たちとの夏』(1988)、『ふたり』(1991)の4作品が上映されます

今回の邦画特撮大全は『時をかける少女』を特集します。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

映画『時をかける少女』の作品情報

【公開】
1983年(日本映画)

【原作】
筒井康隆

【脚本】
剣持亘

【監督】
大林宣彦

【音楽】
松任谷正隆

【キャスト】
原田知世、高柳良一、尾美としのり、岸部一徳、根岸季衣、入江若葉、内藤誠、高林陽一、上原謙、入江たか子

映画『時をかける少女』の作品概要

本作は『転校生』(1982)『さびしんぼう』(1985)と共に「尾道三部作」と呼ばれる大林宣彦監督の代表作。

大林監督が角川映画を手掛けるのは『金田一耕助の冒険』(1979)、『ねらわれた学園』(1981)に続いて3本目となり、本作以降もアニメ映画『少年ケニヤ』(1984)、『天国にいちばん近い島』(1984)、『彼のオートバイ、彼女の島』(1986)などを監督していく事になります。

原作は筒井康隆のジュブナイルSF小説。脚本は大林監督と共に「尾道三部作」すべてに参加した剣持亘。公開当時の同時上映は薬師丸ひろ子と松田優作の共演がした『探偵物語』でした。

主人公・芳山和子を演じたのは原田知世で、本作がスクリーンデビュー作です。また原田が歌う主題歌「時をかける少女」は松任谷由実の作詞・作曲によるものです。

原田の相手役である深町一夫に高柳良一、堀川吾朗には尾美としのり。2人とも本作以前にそれぞれ『ねらわれた学園』と『転校生』で大林宣彦作品に出演経験のある俳優たちが起用されています。

本作は1983年のキネマ旬報ベストテンでは評論家で15位、読者投票で3位と同時上映の『探偵物語』よりも高い評価を得ています。

ノスタルジックなSF映画

本作は筒井康隆のジュブナイル小説を映画化したものです。しかし本作が初の映像化ではなく、すでにNHKが『タイム・トラベラー』(1972)という題名でテレビドラマ化していました。

テレビドラマ版は現在最終回しか視聴することが出来ませんが、そちらを見る限りVTR撮影によるスタジオドラマでクールな作風となっているようです。

こちらの脚本を手掛けたのは人形劇『新・八犬伝』や『プリンプリン物語』を手掛けた石山透です。

出版された『タイム・トラベラー』の脚本を読むと、原作を自由な発想で大きく脚色したものだったことわかります。

『タイム・トラベラー』と比較すると本作『時をかける少女』は原作に忠実で、さらに叙情的な香りのする作品になっています。

本作が持つこの叙情的な空気は、原田知世の存在感とロケ地である尾道の風景によって作られたものでしょう。

本作にはオープニングで映し出される瓦屋根の民家や、尾美としのり演じる堀川吾朗の実家である醤油屋、坂道や石段といった都会的ではく懐かしさを帯びた風景が随所に盛り込まれています。

舞台を広島県尾道市に決定したのは角川春樹プロデューサーであり、原作には舞台についての具体的な言及はありません。

大林監督は尾道市の海が随所に映し出される『転校生』との差別化から、本作では山側を撮影場所に選んでいます。

このような風景と原田知世の透明感が見事にマッチしたのでしょう。

また大林監督はタイムトラベルを題材としたSF小説の原作を「純文学」と捉えて演出しました。

原田知世演じる芳山和子のイメージを“中原淳一の画”だとヘアメイクのスタッフに伝え、原田知世には正面からカメラを見て演技するように指導したそうです。

手作り感のある大林宣彦作品の特撮

参考映像:『ねらわれた学園』(1981)

作品全体が叙情的な空気に包まれていることもあり、本作の特撮や視覚効果は手作り感の強いものになっています。

『HOUSE ハウス』(1977)『ねらわれた学園』(1981)に続き、本作の特撮も島村達雄ひきいる白組が担当しています。

また作画合成を担当したのが『ねらわれた学園』に続きチャンネル16です。チャンネル16は16ミリフィルムの合成を行っていた会社で、日本映像クリエイティブの前身となった会社です。

日本映像クリエイティブはチャンネル16時代から現在まで“スーパー戦隊シリーズ”や“仮面ライダーシリーズ”などの視覚効果を担当しています。

では具体的に本作の特撮場面を見て行きましょう。

本作のクライマックスで、和子と深町の2人がいる断崖のシーン。ここでは実際の崖で撮影した素材に波の映像を合成しています。

ただし和子と深町が「土曜日の実験室」と叫んで飛び込むカットの崖はマット画を合成したものが使用されています。

この場面で挿入される実験室が歪むカットは、AppleⅡとデジタルデータをペンで描画出力するXYプロッタという機器を使用して表現しているそうです。

また和子が時をかける=過去をさまよう映像は一眼レフのスチルカメラによって撮影されています。そのため連続写真をスチルアニメ風に処理するという独特のものとなっています。

まとめ

原田知世の透明感、尾道市の風景、そして手作り感のある特撮映像。

これらの要素が三位一体となって叙情的な空気を生み出し、『時をかける少女』という作品そのものを包んでいるのです。

次回の邦画特撮大全は…

次回の邦画特撮大全は、引き続き大林宣彦監督の映画から、1988年の映画『異人たちとの夏』を特集します。

お楽しみに。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

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