ハリウッド屈指の美男俳優の引退作
半世紀以上映画界で愛され続けるロバート・レッドフォードが俳優としての引退作と公言した『さらば愛しきアウトロー』。
実在した強盗犯フォレスト・タッカーを演じます。
『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』で注目を集めたデヴィッド・ロウリーが監督と脚本を兼務し、ケイシー・アフレック、『歌え!ロレッタ 愛のために』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したシシー・スペイセク、『リーサル・ウェポン』シリーズのダニー・グローヴァー等豪華キャストが出演。
映画『さらば愛しきアウトロー』の作品情報
【公開】
2018年9月10日 (TIFF)(アメリカ映画)
【原題】
The Old Man & the Gun
【監督】
デヴィッド・ロウリー
【キャスト】
ロバート・レッドフォード、シシー・スペイセク、ダニー・グローヴァー、トム・ウェイツ、チカ・サンプター
【作品概要】
ニューヨーカーに掲載されたタッカーの記事を読んだロバート・レッドフォードが映画化を思い立ち、デヴィッド・ロウリーに監督業を打診。その後2人は『ピートと秘密の友達』でタッグを組み、ロウリーは脚本執筆作業に入りました。本作の演技で、レッドフォードは、2019年度ゴールデン・グローブ賞主演男優賞にノミネートされています。
映画『さらば愛しきアウトロー』のあらすじとネタバレ
1981年7月26日午前10時2分、テキサス州。銀行から出て来たスーツ姿のフォレスト・タッカーは車に乗りイヤホンで警察無線を聞きながらその場を去ります。
「武装した容疑者は白いセダンで逃走中」。高速道路を走るタッカーは、路肩に駐車しボンネットを開けて中を覗き込むジュエルを見かけ、手を貸すと声を掛けます。
その脇を複数の警察車両がサイレンを鳴らして通り過ぎて行きます。タッカーの車に乗せてもらったジュエルは、ダイナーでタッカーにコーヒーをご馳走します。
仕事は何をしているのかと訊かれたタッカーは、最初は営業だと嘘をつきますが、実は銀行強盗だと話します。吹き出したジュエルはやって見せてと頼みます。
ダイナーは自分のスタイルじゃないが、銀行なら観察しつつタイミングが合うまで時間を掛けて待ち、拳銃を窓口係に見せ、貴女をとても気に入り傷つけたくないので鞄にお金をいれるよう頼むとタッカーは説明します。
終始笑みを絶やさず聞いていたジュエルに、タッカーは冗談だと笑顔を向けました。
1981年8月4日、ダラス。刑事のジョン・ハントが銀行に入るとスーツを着たタッカーが仲間のウォラーと一緒に入って来ます。
タッカーはにこやかにビジネスの相談があると支店長に話し掛けます。どの様なビジネスでしょうか?と尋ねる支店長ですが、「こんなビジネス」とタッカーが上着を開いた途端、顔が強張ります。
タッカーの指示通りアタッシュケースにお金を入れて行き、支店長は隙をついて通報ボタンを押しました。鞄を受け取ったタッカーは、お礼を言ってウォラーと共に銀行を出て行きます。
支店長は正面出口の鍵を閉め、銀行内に居た人達に向かい、支店長の責務として、たった今銀号強盗が起きたと大声で伝えます。それを聞いたハントの表情が凍り付きました。
現場に駆け付けた刑事に対し、支店長は拳銃を所持していると言われたので信じたと話します。犯人の言葉をそのまま信じたのかという問いに、「紳士的な人だったので」と証言。
その後も次々銀行を強盗するタッカー三人組。たまたま勤務初日だった窓口係は、お金を鞄に入れながら泣き出します。タッカーは、何事も最初は経験だと言いにっこり微笑みます。
警察の事情聴取に対し、支店長はタッカーが礼儀正しかったと答え、余罪を調べ犯人の似顔絵スケッチを持参したハントに、窓口係は「もっと幸せそう顔」と証言しました。
タッカーは、ウォラー、テディと一緒に警備員に成り済まして大きな銀行の金庫から金のインゴットやコインを盗み出します。事件は報道され、テレビで担当刑事のハントが状況説明する姿をタッカーが見つめます。
警察は目撃情報を集め、犯人が60代から70代の白人男性、補聴器使用と犯人像を描きます。
Photo by Eric Zachanowich. (C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved
映画『さらば愛しきアウトロー』の感想と評価
Photo by Eric Zachanowich. (C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved
下積みが長かったことで知られるロバート・レッドフォードですが、最初に出演したのは1959年放映の『プレイ・ユア・ハンチ』というクイズ番組だったと話します。
その後、『明日に向かって撃て』(1969)『スティング』(1973)等数々の名作に出演し、一躍スターとなりました。1980年には、初監督作品『普通の人々』で監督賞と作品賞を含む4部門でアカデミー賞を受賞。
1992年に監督した『リバー・ランズ・スルー・イット』では、出演したブラッド・ピットが若い頃のレッドフォードにそっくりだと言われて注目を浴び、ピットのブレイクとなりました。
本作でフォレスト・タッカーを演じたレッドフォードは80才を過ぎていますが、年齢差のある世代から見ても、カッコイイ!
知的で紳士、朗らかでチャーミングなレッドフォードの魅力全てを映像化したのが『さらば愛しきアウトロー』と言えます。
Photo by Eric Zachanowich. (C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved
ジュエルを好演したシシー・スペイセクは、レッドフォードとは本作が初共演でした。
思わずうっとりしたと笑うスペイセクは、ダイナーのシーンを撮影中、監督を務めたデヴィッド・ロウリーがスペイセクに近づき、「相手はロバート・レッドフォードではなく、フォレスト・タッカーですから、簡単に落ちない女性を演じてください」と忠告されたエピソードを明かしています。
一度も銃を発砲したことがなく、暴力も振るわない銀行強盗犯だったフォレスト・タッカーが楽しんでいたことにレッドフォードは着目しました。
そしてタッカー逮捕に貢献した刑事のハントが彼のお蔭で良い刑事に成れたとコメントしているのを知り、追われる者と追う者でありながら、いつしか敬意を持ち合う間柄であったことがとても気に入った部分だとインタビューで答えています。
また、ロウリーは、映画界のアイコン的存在であるレッドフォードが馬に乗る場面を敢えて撮影。伝説の俳優が乗馬するシーンは、誰にとっても馴染みがあるためでした。
まとめ
Photo by Eric Zachanowich. (C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved
映画は物語を重視するべきだと訴え、無名の監督が作品を発表する場としてサンダンス映画祭を設立したロバート・レッドフォードは、引退に伴い主催者も退くと発表。
大スターが最後に演じようと決めたのは、銀行強盗と脱獄を繰り返す非暴力主義のフォレスト・タッカーでした。
充実した60年間の俳優人生を謳歌したレッドフォードだからこそ、アルカトラズも脱獄し警察との攻防をゲームと捉え79才まで楽しんだタッカーを理解できたのかもしれません。
『さらば愛しきアウトロー』は、ロバート・レッドフォードの魅力を観客が存分に楽しめるよう製作された作品です。