Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

映画『神と共に 第一章:罪と罰』感想と評価解説。韓国らしい泣ける感動にアツい家族節が炸裂!|コリアンムービーおすすめ指南11

  • Writer :
  • 西川ちょり

死後に待つ7つの地獄と3人の使者!

韓国の人気ウェブ漫画を映画化。韓国で大ヒットを記録したファンタジー・アクション『神と共に 第一章:罪と罰』が、5月24日(金)より新宿ピカデリー他にて全国上映されます。

準備と撮影に6年の歳月を費やし、監督のキム・ヨンファは2部作を同時に演出するという韓国史上初の試みにチャレンジしました。

その結果、2017年冬に公開された『神と共に 第一章:罪と罰』は韓国歴代2位(2019年1月現在)の観客動員1440万人、続編の『神と共に 第二章:因と縁』は同歴代10位(2019年1月現在)の1230万人を達成するという大ヒット!韓国映画のパワーを存分に見せつけてくれる極上のエンターティメントです。

【連載コラム】『コリアンムービーおすすめ指南』記事一覧はこちら

映画『神と共に 第一章:罪と罰』のあらすじ


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.

高層ビル火災が発生し、かけつけた消防士キム・ジャホンは、猛火の中、住人の少女を救出します。しかし、命綱に火がうつり、切れて落下、ジャホンは命を落としてしまいます。

自分がまだ死んだことを理解していないジャホンの前に現れたのは、カンニム、ヘウォンメク、ドクチュンという冥界の使者たちでした。

人間は死ぬと49日間のうちに7つの地獄で裁判を受けなくてはならない、それら全てを無罪でクリアしたものだけが、現世に生まれ変わるのだと彼らは説明します。

彼ら3人も合計49人の亡者を転生させることができれば、人間に生まれ変われると、約束されていました。

キム・ジャホンの生前の善行は明らかで、19年ぶりの貴人として48人目の転生が確実視され、3人の足取りも軽やかです。

しかし、地獄めぐり裁判が始まると、地獄鬼や怨霊が出現し、冥界が揺らぎ始めます。原因を探るため、カンニムは下界へと降り立ちますが…。

映画『神と共に 第一章:罪と罰』の解説と感想

独創性溢れる地獄のビジュアル


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.

死んだキム・ジャホンは3人の使者に連れられ、早速旅を始めなくてはなりません。それにしても7つの地獄のビジュアルのなんと独創的なことか。

最初に登場するのは殺人地獄です。迎えるのは変成(へんじょう)大王といういかにも強面の大王です。次いで三途の川を渡り、たどり着いたのは怠惰地獄。人生を無駄に生きた者を裁く地獄ですが、グルグル回る羽のようなものに弾き飛ばされ続ける姿はいかにも苦しそう。

さらにウソ地獄、不義地獄、裏切り地獄、暴力地獄、天倫地獄へと続きます。

キム・ヨンファ監督は、鈴木由美子の人気コミックの映画化作品『カンナさん大成功です』(2007)、韓国初のスキージャンプチームの実話を映画化した『国家代表!?』(2009)、サーカスのゴリラが弱小プロ野球チームに加わる『ミスターGO!』(2013)などで、特殊メイクや様々なCG、デジタルキャラクターを扱ってきました。

今回、本格的なファンタジー映画を作りたい!と『新感染ファイナルエクスプレス』の美術監督、イ・モグォンや、VFXチームと強力なタッグを組み、これまでに見たことのない独創的なビジュアルを作り上げることに成功しています。VFXの完成度にも注目してみてください。

法廷劇的な面白さ


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.

“生きているときは罪を隠せても、地獄ではごまかすことができない”という地獄の裁判は、これでは転生できる人なんてごくわずか、皆、地獄に落ちてしまうという厳しいものです。何しろ1000年で転生したのはわずか47人だけ。さて、そこで3人の使者が必要となってきます。

彼らは地獄の法廷における”弁護士“の役割を担っているのです。彼ら自身、人間に生まれ変われるという希望を持っており、死者に付き添い、懸命に弁護します。検事側の失言も決して聞き逃さない頼もしさです。

ただし、正当な手続きをすっとばし、判決を下そうとする大王もいますので要注意です。阻止するための咄嗟の判断が必要で、ハ・ジョンウ扮するべテラン使者の腕の見せ所となります。法廷劇としての面白さが味わえることもこの作品の魅力のひとつでしょう

また、貴人として転生が確実視されていたキム・ジャホンですが、地獄裁判が続く中、生前の思いがけない行動が次々と明らかになり、波乱を含んだ様相には、ミステリー的な面白さも詰まっています。

とにかく泣ける感動作!


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.

この作品の魅力を2つの点から見てきましたが、実はこの映画、大変エモーショナルな作品で、実に泣けるのです。 

キム・ジャホン役には『猟奇的な彼女』以来、純粋な好青年のイメージが定着したチャ・テヒョンが扮しており、非常に説得力のあるキャスティングとなっています。

また、母親を演じているイェ・スジョンが素晴らしいのです。人気ドラマ『秘密の森』で、息子を殺された孤独な母親を演じていたベテラン女優です。

『新感染ファイナルエクスプレス』ではゾンビから逃げる中、姉妹で別々の車両になってしまった老年の女性を演じ、彼女が選んだ最後の選択が胸を打ちました。

本作では聴覚障碍であるという設定なので、セリフはないのですが、彼女がたたずんでいるだけで、胸にぐっとくるものがあるのです。

母と息子が離れ離れになりながら互いを強く想う様に、韓国映画ならではの熱い家族映画節が炸裂して、涙をこらえることができません。

人間の生と死、愛と憎しみ、ウソと真実という壮大なテーマが内包されており、一つの映画で何粒もおいしい映画の構造が、多くの観客の心を捕らえたのではないでしょうか。

果たしてこの家族の秘密とは!?

まとめ


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.

衣装デザイナーのチョ・サンギョンによって考案された様々な衣装にも注目です。

とりわけ、黒い長い丈の衣装で闘う使者役のハ・ジョンウ、チュ・ジフンのかっこいいこと!2人ともすらっとした長身なので、とても見栄えがいいのです。彼らが振り回す長い剣がライトセーバーっぽいのもいい感じです。

閻魔大王に名優イ・ジョンジェが扮しているのも見どころのひとつ。威厳のあるかっこいい閻魔さんです。

ジャホンの弟役は、キム・ヨンファ監督の『国家代表!?』でハ・ジョンウと共演しているキム・ドンウク。また、K-POPボーイズグループ「EXO」のD.O.や、男前なのに一癖も二癖もある役が似合うイ・ジュニョクが重要な役どころで出演しているのも見逃せません。

そして最後の最後にチラッとマ・ドンソクが登場。マ・ドンソクが弱者を守るため人間界に降臨した屋敷神に扮する二部へと期待が高まります。

次回のコリアンムービーおすすめ指南は…


(C)2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.

次回は、6月28日(金)に公開される『神と共に 第二章:因と縁』をお届けします。

お楽しみに。

【連載コラム】「コリアンムービーおすすめ指南」記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

【東京国際映画祭2019】『猿楽町で会いましょう』児山隆監督ほかレッドカーペットに登場!|TIFF2019リポート1

第32回東京国際映画祭は2019年10月28日(月)から11月5日(火)にかけて10日間開催! 2019年にて32回目を迎える東京国際映画祭。令和初となる本映画祭がついに2019年10月28日(月)に …

連載コラム

【イカゲーム8話ネタバレ】結末あらすじ感想と考察評価。67番脱北のセビョクついに⁈最終回で456番ギフンはどうなるか⁈| イカゲーム攻略読本8

【連載コラム】全世界視聴No.1デスゲームを目撃せよ 8 2021年9月17日(金)よりファーストシーズン全9話が一挙配信されたNetflixドラマシリーズ『イカゲーム』。 生活に困窮した人々が賞金4 …

連載コラム

映画『アルピニスト』あらすじ感想解説と内容評価。命綱なしの無名クライマーが断崖絶壁に挑む姿を鮮明に描く|映画という星空を知るひとよ103

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第103回 断崖絶壁に命綱なしで挑む若き天才アルピニスト、マーク・アンドレ・ルクレールに密着したドキュメンタリー『アルピニスト』。 2018年のドキュメンタリー …

連載コラム

Netflix映画『マッドタウン』ネタバレあらすじと感想。近未来サバイバルスリラーをアナ・リリー・アミールポアー監督が描く|SF恐怖映画という名の観覧車128

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile128 技術の進化と文明の発展により「価値観」は大きく変化してきました。 同じ国であっても数十年違えば大きく価値観は変わり、現代ではまさにその価 …

連載コラム

『朝がくるとむなしくなる』あらすじ感想と評価解説。唐田えりか×芋生悠で描く“存在感のない毎日”から這い上がる女性たち|大阪アジアン映画祭2023見聞録9

第18回大阪アジアン映画祭「JAPAN CUTS Award」受賞作! 2023年3月10日(金)より10日間に渡って開催された「第18回大阪アジアン映画祭」。16の国・地域の合計51作品が上映されま …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学