映画『スノー・ロワイヤル(原題:Cold Pursuit)』は、リーアム・ニーセン主演作品。
舞台はコロラド州のスキーリゾート地で、息子を麻薬組織に殺された父親の復讐を描いた物語です。息子・カイルを演じるのは、ニーセンの実子マイケル・リチャードソン。
ノルウェー映画『ファイティング・ダディ』を再映画化したコメディ・アクション作品で、製作を務めるのは『パルプ・フィクション』のマイケル・シャンバーグです。
映画『スノー・ロワイヤル』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Cold Pursuit
【監督】
ハンス・ペテル・モランド
【キャスト】
リーアム・ニーセン、トム・ベイトマン、トム・ジャクソン、ウィリアム・フォーサイス、ラウル・トゥルヒーヨ、ローラ・ダーン
【作品概要】
本作は、ノルウェー人監督ハンス・ペテル・モランドのハリウッド映画初監督作品。『愛と革命の日々』(日本劇場未公開)でモントリオール映画祭の最優秀監督賞を受賞しています。
プロデューサーのマイケル・シャンバーグが『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』を観て映画化を決定しました。
映画『スノー・ロワイヤル』のあらすじとネタバレ
コロラド州。除雪作業員のネルソン(ネルス)・コックスマンは、模範市民に選ばれ観衆を前に壇上でスピーチをしています。
その頃、空港に勤めるネルソンの息子・カイルが作業を終えて控室に戻った所、突然スピード率いる男達に襲われます。バンの中へ押し込まれたカイルは、無理矢理薬物を注射され走る車両から投げ出されました。
警察から一報を受けたネルスと妻・グレイスは、州都デンバーへ向かいます。遺体安置所で息絶えたカイルの身元確認に立ち会った夫妻に、刑事は麻薬の過剰摂取が死因だと告げます。
麻薬などに手を出す息子ではなかったと呟くネルス。1人息子を失ったグレイスの怒りと悲しみは深く、次第に夫を遠ざけるようになります。
落ち込んだネルスは、自分のショットガンを職場に持参し、自死を図ろうとします。そこへ息子の知人だったダンテが現れ、カイルは人違いで麻薬組織に殺されたと話します。
実行犯の名前がスピードだと知ったネルスは、復讐する為クラブへ向かいました。エレベーターでスピードと2人きりになったネルスは、息子の仇と信じて叩きのめしますが、スピードはカイル殺害の指示を受けていたことを知ります。
その男の名前を聞きだした後、ネルスはスピードを絞殺。翌日、その指示を出した男が勤めるブティックを訪れ、ショットガンで脅します。すると更にその上に命令を下した麻薬の運び屋がいることが分かります。
ネルスはこの情報を聞いた後男を射殺し、遺体を網に巻いて崖の上から川へ投げ込みました。
除雪車で追いかけ3人目の男も襲ったネルスは、殴り疲れて雪の上に寝転がります。運び屋に爺さんと呼ばれ一緒に笑った後、ネルスは懐からショットガンを取り出して殺害。残されたブリーフケースを開けると大量の麻薬が入っていました。
ネルスは、麻薬の袋を開けて散布した後、男の車を除雪車で吹き飛ばし、死体を同じ川に遺棄します。帰宅するとグレイスが分かれも告げず家を出ていました。
ネルスは兄のブロックを訪ね、カイルが殺害されたことを打ち明けます。ブロックは、以前町を支配する麻薬王の殺し屋を請け負っていました。
その頃のコネを使い調査した結果、現在“稼業”を受け継いだ息子のトレヴァー・通称ヴァイキングの手下との揉め事にカイルが巻き込まれたことを突き止めます。
ブロックは、ヴァイキングを殺すならプロの殺し屋を雇えと助言し、通称エスキモーを紹介。ネルスは、もう既に手下3人を殺害し、犯罪小説で知った方法で遺体を捨てたことを話します。
一方、ヴァイキングは、手下と大量の麻薬が消えたことで苛ついています。先住民の麻薬王・ホワイトブルの仕業だと思い込んだヴァイキングは、手下にホワイトブルの息子を誘拐するよう命じます。
父の代にホワイトブルと手を組んで居住区に麻薬を流しビジネスは拡大。しかし、後にホワイトブルが税金を掛けたことに対しヴァイキングはずっと根に持っていました。
手下がホワイトブルの息子を拉致して拷問した後、ヴァイキングが情け容赦なく射殺。友好関係の証にホワイトブルが父に渡したペンダントを殺害した息子の首に掛け、ヴァイキングは遺体を道路標識に縛り付け見せしめにしました。
映画『スノー・ロワイヤル』の感想と評価
アクションは通常プロット中心に展開されますが、本作はカイル・コックスマンに始まり各派閥の手下等死亡するキャラクターで物語が進み、原作『In Order Of Disappearance』に沿った構成です。
主人公ネルソンが復讐を始めたことがきっかけで町の麻薬王ヴァイキングと先住民の麻薬王ホワイトブルを巻き込む抗争が勃発しますが、とばっちりを受けるのはそれぞれの息子達。
3人とも息子を思う父親であり、全ては勘違いで始まる復讐劇であることがストーリーの鍵となっています。
ネルソンの兄・ブロックやヴァイキングを倒すために雇うエスキモーという2人の殺し屋を挟み、個々の忠誠と裏切りが更に話を面白くさせるアイデアも見所です。
主人公ネルソン・コックスマンを演じたリーアム・ニーセンも登場人物が丁寧に描かれていたことに魅力を感じて出演を決めたと話しており、実子マイケル・リチャードソンと初の父子共演を果たしています。
ニーセンは、監督を務めたハンス・ペテル・モランドにリチャードソンをカイル役に勧めました。一方リチャードソンは、息子だからという理由でキャストしないで欲しいという意向を伝え、オーディションで役を獲得しています。
また、アメリカ先住民を重要キャラクターに置くことが少ないハリウッド映画ですが、本作の舞台となるコロラド州も遥か昔から彼等が住んでいた土地です。
ホワイトブルというキャラクターが登場したことは自然で、演じたトム・ジャクソンの風格ある存在感は印象的です。
まとめ
黙々と除雪車を走らせる一市民ネルソンがコミュニティに奉仕した功労を称えられた夜に起きる1人息子の殺人事件。
怒れる父が、麻薬組織のヒエラルキーを下から片づけて行くうちに、町を牛耳る親の七光りと1万年前から土地に住むネイティブ・アメリカンが衝突。誤解が誤解を生んだ戦闘に乗じて模範市民は復讐を果たします。
ネルソンとホワイトブルの父親の誇りを終盤に描きつつ、最後の最後に一笑を用意した『スノー・ロワイヤル』は、古今東西、誰もが共感する仇討をテーマにブラックユーモアを利かせたアクション映画です。