イツモココニイルヨ。
離れていても心はいつも一緒。
1982年公開、スティーブン・スピルバーグ監督の大ヒットSFファンタジー『E.T.』を紹介します。
1977年公開の映画『未知との遭遇』で、人類と宇宙人のコンタクトを描いたスティーブン・スピルバーグ監督。『E.T.』では、異星人=E.T.と人間の男の子の友情を描いています。
公開当時、世界興行収入ナンバーワンという記録を叩き出し、世界はE.T.ブームに沸きました。かなり特徴的な容姿のE.T.ですが、友好的で可愛らしい一面を持っています。
生きる場所も見た目も、話す言葉も違う2人はどのようにして心を通わせていくのか。大事なものは、宇宙共通でした。
映画『E.T.』の作品情報
【日本公開】
1982年(アメリカ映画)
【監督・製作】
スティーブン・スピルバーグ
【キャスト】
ディー・ウォーレス、ヘンリー・トーマス、ロバート・マクノートン、ドリュー・バリモア、ピーター・コヨーテ、K・C・マーテル、ショーン・フライ、C・トーマス・ハウエル
【作品概要】
スティーブン・スピルバーグ監督、1982年公開のSFファンタジー『E.T.』。地球に取り残された異星人=E.T.と子供たちの交流を描いています。
映画『E.T.』は、第55回アカデミー賞にて、作曲賞、視覚効果賞、音響賞、音響効果編集賞を受賞。その他、数々の賞に輝いています。
主人公エリオットの妹・ガーティ役を演じた、当時7歳だったドリュー・バリモアの可愛らしさにも注目です。
映画『E.T.』のあらすじとネタバレ
満点の星空が広がる夜でした。森の中には巨大な宇宙船・UFOが停泊中です。
そこには異星人(E.T.)たちが、何やら地球の生態系調査に取り組んでいるようです。森の巨木や植物の苗を採取しています。
そこへ何台か車が到着しました。降りて来た人間たちは、E.T.の存在を知っているかのように追い詰めていきます。
E.T.たちは急いでUFOへ戻り飛び立つ準備を始めます。でも、ひとりのE.T.がまだ戻っていません。UFOの扉は閉まり、飛び立ってしまいます。
地球にひとり取り残されたE.T.は、とぼとぼと町の明かりの方へ消えていきました。
エリオットは10歳。ママと兄と妹の4人で暮らしています。パパはメキシコへ行ったきり帰ってきません。
家には兄・マイケルの友達が遊びに来ていました。小さいエリオットは遊びにいれてもらえません。宅配ピザを受け取りに行くように命じられます。
しぶしぶ表に出てピザを受け取るエリオット。物置から聞こえてくる音に気付きます。飼い犬のハービィーの仕業でしょうか。
物置の奥に何者かの気配を感じたエリオットはボールを投げます。すぐさま返ってくるボール。エリオットは驚き、家の中に飛び込み、皆に知らせます。
しかし皆で調べてみるも誰もいませんでした。
やっぱり気になるエリオットは、その夜、トウモロコシ畑を探索します。そこには何者かの足跡がありました。生い茂る草をかきわけ進んでいくと、そこにはギョロっとした大きな目、三角頭のE.T.がいました。
驚きのあまり叫ぶエリオット。E.T.もその声に驚き、駆け出します。まさに地球のものとは思えない素早さです。
次の朝、お菓子をばら撒きながらE.T.を探すエリオットの姿がありました。E.T.はチョコレートを食べるのでしょうか。
しかしE.T.を探しているのはエリオットだけではありませんでした。E.T.の足跡を調査している人物がいます。エリオットは咄嗟に身を隠します。
その日の夜も諦めきれないエリオット。庭でE.T.がやってくるのを待つことにします。
そしていよいよエリオットの前に、E.T.が現れました。異様に長い指を器用に動かし、開いた手のひらからお菓子を出します。エリオットが撒いたお菓子です。「ボクヒロッタヨ。アリガトウ」彼の声が聞こえてきそうです。
エリオットはE.T.を自分の部屋に隠します。「シーだよ」。
エリオットが鼻をこするとE.T.も真似をします。口、耳を触るとやはりE.T.も触ってみせます。「ハイ!」「ハイ!」。人差し指をクイクイ動かします。
コミュニケーションなのか、バカにしているのか。どうやらE.T.は危険な生き物ではないようです。
次の朝、エリオットは学校をずる休み。E.T.に興味津々です。
「体重は16キロもあるよ。僕よりチビなのに」とエリオットに言われ、首を伸ばすE.T.。案外、負けず嫌いです。
E.T.もまた好奇心旺盛です。傘を開いて驚き、ぬいぐるみの中にダイブ。気になったものは触らずにはいられない性格です。
家族が次々と帰ってきました。E.T.を隠しきれないエリオットは兄のマイケルに打ち明けます。E.T.を前に固まるマイケル。そこに妹のガーティが乱入し、E.T.を見て叫び出します。
子供たちとE.T.は軽いパニック状態。ママが部屋に来ちゃう。クローゼットにE.T.を隠しどうにかやり過ごす子供たち。
「君はどこから来たの?」。空を指さすE.T.。玉が浮き上がり宇宙を形作ります。鉢植えの枯れた花が、みるみる元気になっていきます。彼は本当に宇宙人なのです。
「僕が守るよ。怖くないよ」。エリオットは、E.T.のことが大好きになりました。
いつまでも仮病で学校を休むわけにはいきません。エリオット達が学校へ行っている間、E.T.は犬のハービィーとお留守番です。
TVを見ながら言葉を発し、冷蔵庫を漁り、ビールを飲んで酔っ払います。好き放題のE.T.は、TVに写ったUFOに驚き、マンガから助けを呼ぶ方法を探し出しました。
学校では、エリオットに不思議な現象が起こっていました。まるで酔っ払ったように顔を真っ赤にし、実験用のカエルを逃がしていくエリオット。
家ではE.T.がTVでラブシーンを見ています。エリオットは好きな女の子にキスをしてしまいます。どうやら、E.T.とエリオットは離れていてもシンクロしているようです。
ママとガーティが家に帰ってきました。気にせずくつろぐE.T.。上手いことママとすれ違うも、ガーティに向かって言葉を発するE.T.。
「E.T.E.T.イイコ、イイコ。フォン、テレフォン。ウチ、デンワ」ラップ口調。
帰ってきたエリオットとマイケルも、しゃべるE.T.に驚きます。家に帰りたいE.T.の気持ちに気付いた子供たちは、協力します。
ガレージから使えそうなものを探し、E.T.に渡すエリオット。のこぎりの歯で指をケガしてしまいます。
E.T.は「イタイ」とつぶやき、人差し指をピカッと光らせます。その指がケガに触れると、みるみる傷が消えていきます。
エリオットとE.T.の間には、お互いを思いやる友情が芽生えていました。
そんなエリオットの家を盗聴している人間たちがいました。彼らは、パパとの思い出を話す兄弟の会話や、ママがガーティに読んで聞かせる絵本の内容まで聞いています。
E.T.がこの家にいることは、もうすでに知られていました。
映画『E.T.』の感想と評価
スティーブン・スピルバーグ監督と言えば、誰もが知っている映画界の巨匠です。
そのジャンルは『ジョーズ』『ジュラシック・パーク』などのパニック映画、『インディ・ジョーンズ』のアドベンチャー、『A.I.』『レディ・プレーヤー』など多くのSF映画と幅広く、壮大なストーリーで見るものを常に驚かせてくれます。
その中でも『E.T.』は、スティーブン・スピルバーグ監督の代表作のひとつと言える作品です。
宇宙人とはどんな姿なのか?公開当時、誰もが興味を持ってみたことでしょう。そこで登場したE.T.。
しわしわの体に三角形の顔。ギョロっとした目で、上向きの鼻は穴が丸見えです。光る長い指先、そしてにょろっと伸びる首。どう見てもキモイ。当時は、キモイという言葉はなかったとしてもE.T.の姿にショックを受けた子供たちは多かったはずです。
しかし、物語が進むにつれ、E.T.が可愛らしく見えてくるから不思議です。
ママに見つかりそうになり、ぬいぐるみの中に紛れ込み、息を止め固まっている姿。ビールで酔っぱらい、ふらふらになる姿。
エリオットとの背比べでは、首を伸ばし負けず嫌いを発揮。お風呂の水に沈みこみ、上がってこないE.T.を心配するエリオットに、鼻から泡を吹き出しからかいます。
E.T.のお茶目な性格が垣間見えるシーンに心がほっこりとします。
そんなE.T.と友情を育む人間の男の子、エリオット。彼もまた好奇心旺盛な心の優しい少年です。
エリオットの両親は離婚しています。E.T.の存在を信じてくれないママに、エリオットは思わず言ってしまいます。「パパなら信じてくれるのに」。
その言葉に傷つくママ。そんなママを見てエリオットも傷つきます。自分もパパがいなくて寂しいのに、ママを思って我慢をしています。
そして、エリオットは、E.T.が宇宙に帰る時、一緒に行こうと誘われます。
大好きなE.T.と一緒にいたいにも関わらずエリオットは、地球に、家族の元に残ることを選択します。
同じスティーブン・スピルバーグ監督の、1997年公開映画『未知との遭遇』では、主人公ロイは、最後UFOに乗り地球を離れます。家族を置いて行ってしまうのです。
エリオットは、なんと家族思いで、しっかりとした大人の選択をしたことでしょう。芯の強い男の子です。
「イタイ」と心を指し、「イツモココニイルヨ」と頭を指す、E.T.とのお別れのシーンは何度見ても切ないです。
離れていても心が通じ合っていれば寂しくない。それは、E.T.も人間でも同じです。
家族や友達、恋人と離れ離れになってしまっても、心が通じていれば大丈夫。いつでもあなたの側にいるよ。またいつか会える時までさようなら。
まとめ
1982年公開、スティーブン・スピルバーグ監督の大ヒットSFファンタジー『E.T.』を紹介しました。
地球に取り残された異星人E.T.と、10歳の少年エリオットの心温まる友情の物語。
そして、この作品にはスティーブン・スピルバーグ監督の遊び心がいっぱい詰まっています。
『スター・ウォーズ』シリーズでお馴染みのジョージ・ルーカス監督とは、長年の友でありライバル同士。『E.T.』のハロウィンのシーンで、スターウォーズのヨーダが歩いてくるのも話題となりました。
また、E.T.を作り上げた特殊効果マン、カルロ・ランバルディは、リメイク版『キングコング』でアカデミー特別業績賞を受賞し、のちにスティーブン・スピルバーグ監督の『未知との遭遇』でも異星人のデザインを担当。
映画『エイリアン』でアカデミー視覚効果賞を受賞した後、『E.T.』で2回目の同賞を受賞しています。
SF映画と言えば、現代はCGによる作品がほとんどですが、1980年代のパペット製作技術にも注目してご覧下さい。
ぜひ大人になって見返してほしい作品『E.T.』。忘れていた好奇心に火が着きます。