日本での公開は、2019年5月17日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかロードショー!
映画『ガルヴェストン』は、癌を告知されたマフィアの殺し屋・ロイと偶然出会った19才女性・ロッキーの逃避行を描いたフィルム・ノワール作品。
キャリアの長い『X-MEN:ファイナルディシジョン』のベン・フォスターがロイを演じ、先日21才になったばかりの『マレフィセント』で知られるエル・ファニングがロッキーに扮します。
オーロラ姫役から一転、娼婦役を体当たりで演じており、ベテラン俳優のフォスターと見事なコンビを見せています。
映画『ガルヴェストン』の作品情報
【公開】
2018年10月19日(アメリカ映画)
2019年5月17日(日本公開)
【原題】
Galveston
【監督】
メラニー・ロラン
【キャスト】
エル・ファニング、ベン・フォスター、リリ・ラインハート、アデペロ・オデュイエ、マリア・バルベルデ、C・K・マクファーランド、ボー・ブリッジス
【作品概要】
『イングロリアス・バスターズ』で美貌の復讐者を演じ注目されたメラニー・ロランが監督を務めます。脚本を手がけたのは、原作『逃亡のガルヴェストン』の著者ニック・ピゾラット。
ピゾラットは製作者の支持を受けたロランが独自の解釈で様々な変更を加えたことから、ジム・ハメットと言うペンネームで脚本担当としてクレジットされています。
映画『ガルヴェストン』のあらすじとネタバレ
病院を訪れたロイは、肺癌と診断される。動揺を隠しマフィアのボス・スタンが営むドライクリーニング工場へ行きました。
スタンが次の仕事をロイに命じ、今回は弁護士を脅すだけで良いので拳銃を持参しないよう忠告。
その晩、指示通り相棒と忍び込んだ弁護士宅で返り討ちに遭ったロイは、目の前で相棒が射殺される中、反撃して辛くも生き延びます。その場に拘束された若い女性を発見し、一緒に連れて町から逃走します。
ロイは、スタンの情婦と自分が前に関係を持っていたことを、スタンが疎ましく思っていたのを知っていました。
その絡みで自分の命が狙われた事に気づいたロイは、暫く身を潜めようと考えます。
助けた女性・ロッキーは、電話帳に載ったエスコートサービスを真面なビジネスと思い込み、娼婦をしていたことを明かします。
ロイが向かう先も聞かず一緒に行くと言い出します。途中で置いて行くわけにもいかず、ロイはそのまま車を走らせました。
故郷のガルヴェストンを目指すロイだが、途中ロッキーの頼みで彼女の実家が在るテキサス州オレンジ郡へ寄ります。
ロイが家の外で待っていると、突然、銃声が聞こえます。幼女・ティファニーを抱えて車に戻って来たロッキーは、義父を脅すために壁を撃ったと言います。
スタンに後を追われているロイは、これ以上状況を複雑にすることに難色を示しますが、ロッキーは妹を絶対に離さないと強い決意を見せ、ロイは仕方なく2人を同乗させます。
3人はガルヴェストンに近い海辺の簡易宿泊所にチェックイン。
ティファニーは一度も海を見たことが無いと聞き、ロイは2人連れて浜辺で一緒に1日を過ごします。
映画『ガルヴェストン』の感想と評価
登場人物の心情を台詞に頼らず、場面の雰囲気を説明せず、絵画の様に表現することに長けているのがフランス人監督ですが、メラニー・ロランの創り出す映像も詩的で色や光の使い方が巧みです。
ロッキーがロイとのデートで着た赤いドレスを差し色で使い非常に印象的。
退廃的な人生を送り出会うべくして出会う2人がその場の成り行きで情事を重ねる、と言うありきたりな物語ではない『ガルヴェストン』。
友だち以上恋人未満のプラトニックな関係だからこそ成立する心の近さを丁寧に描いています。
本気でロッキーを思うようになる気持ちの変遷をベン・フォスターが細やかに演じ、エル・ファニングが危うい19才のそれでも必死な若き母親を瑞々しく表現。
また、悲観さが終始漂う2人の逃避行を、観客は応援せずにはいられないロランの巧みな構成が見どころです。
ニック・ピゾラットが当初書いた脚本に魅了されたロランは、もっと登場人物に寄り添って描きたいと考え、演じる俳優陣と話し合いを重ねて脚色を進めました。
自身が俳優でもあるロランは、登場人物の心情を演者だけが汲み取れる瞬間がある事を熟知していると言えます。
暴力に頼ることに何の躊躇も無いロイが性的不能だというアイデアを盛り込むなど、より人物に深みを加えています。
また、ロランのファンだったファニングは出演決定に喜び、ファニングの清純な評判を聞いていたフォスターは、共演を希望。
本作で脇を固めるのは、トレイ役を務めた『ゲーム・オブ・スローンズ』のロバート・アラマヨ、そしてキャリアの長いボー・ブリッジスが冷徹なマフィアのボス・スタンを演じています。
まとめ
それぞれ孤独で静かな地獄を生きて来たロイとロッキー。
社会の底辺を彷徨う2人が出会い、もう一度未来に目を向けてやり直そうと考えます。
お互い何も求めず、ただ3人一緒に歩もうとしたロイとロッキーですが、脆く細い糸で結ばれ恋にも似た短い旅は残酷に終焉します。
しかし、2人が言葉を交わさずとも守り通した幼い命は繋がれ、ティファニーが愛する人と将来を築くことでロイとロッキーの思いは継承されます。
『ガルヴェストン』は、キスシーンやベッドシーン抜きで男女の心の揺れ動きを美しく描いた余韻の残る作品です。