2019年4月5日より公開中の映画『麻雀放浪記2020』
超人気俳優・斎藤工の主演をはじめ、豪華キャスト陣の出演で大変話題になった白石和彌監督の映画『麻雀放浪記2020』。
賭博としての麻雀を描いた阿佐田哲也の代表作である小説『麻雀放浪記』を大胆にアレンジした、強烈な風刺と笑いに満ちたエンターテインメント・コメディ映画です。
2019年4月6日、渋谷TOEIにて行われた公開舞台挨拶では、キャストであるもも、ベッキー、竹中直人、そして本作の脚本を担当し、今回急遽登壇することとなった佐藤佐吉がゲストとして壇上に上がりました。
撮影や脚本執筆の裏話に観客たちは耳を傾ける一方で、竹中直人とベッキーによる漫才のような軽快なトークに、場内は終始笑いに包まれていました。
そんなゲストたちの尽力によって形作られた、これから訪れる2020年を舞台とする『麻雀放浪記』の物語とは、一体どんな内容なのでしょうか。
映画『麻雀放浪記2020』をご紹介します。
映画『麻雀放浪記2020』の作品情報
【日本公開】
2019年(日本映画)
【原案】
阿佐田哲也
【監督】
白石和彌
【脚本】
佐藤佐吉、渡部亮平、白石和彌
【キャスト】
斎藤工、もも、ベッキー、的場浩司、岡崎体育、ピエール瀧、音尾琢真、杉村蝉之介、伊武雅刀、矢島健一、吉澤健、堀内正美、小松政夫、竹中直人
【作品概要】
『麻雀放浪記』の主人公である坊や哲が、戦後の1945年から第三次世界大戦が勃発し新たな戦後と化した2020年へとタイムスリップしてしまい、元の時代へと戻るべく麻雀によって奮闘するコメディ作品です。
監督には、『ロストパラダイス・イン・トーキョー』『凶悪』『孤狼の血』で知られ、日本のエンターテインメント映画を牽引する映画監督の一人である白石和彌。
脚本は、『殺し屋1』『東京ゾンビ』の佐藤佐吉、『3月のライオン』『ビブリア古書堂の事件手帖』の渡部亮平と第一線で活躍する脚本家が担当。
キャストには主演の斎藤工、人気の音楽姉妹ユニット「チャラン・ポ・ランタン」ボーカルのもも、ベテラン俳優にして自身も映画監督である竹中直人、タレント・女優・歌手と多岐に渡って活動しているベッキーのみならず、『就職戦線異常なし』『新GONIN』の的場浩司、『岸辺の旅』『オケ老人!』の小松政夫、人気シンガーソングライターで本作が映画初出演の岡崎体育など豪華キャストが勢揃いしました。
映画『麻雀放浪記2020』のあらすじとネタバレ
戦後、1945年。若き博打打ちである坊や哲は、その日麻雀クラブ「オックス」で麻雀を打っていました。
同じく博打打ちであるドサ健と出目徳、そして同棲しているクラブのママ・ユキとの金を賭けた勝負。その最中、哲は「それをアガった(和了った)者は死ぬ」という迷信がある麻雀の役満役「チューレンポートン(九蓮宝燈)」をテンパイ(聴牌)し、ついにアガリ牌を引いてきます。
しかしアガリを宣言しようとした瞬間、建物に落雷が落ち、気付いた時には、哲は75年後の未来である2020年の日本に来ていました。
第三次世界大戦の勃発によって再び敗戦国となり、開催されるはずだった東京五輪も中止され、マイナンバー制度の強化による超監視・管理社会と化した2020年の日本の姿に困惑する哲。
その中で、博打ではなくゲームとしての麻雀が打てるコスプレ喫茶で働く売れないアイドル・ドテ子、彼女が所属する芸能プロダクションの社長兼マネージャーであるクソ丸と知り合い、哲はスラム街にあるドテ子の家に身を寄せることになりました。
ママとの関係、タイムスリップする前に打っていた麻雀の内容などを話す哲に、最初は「コスプレイヤーとしてのキャラ作り」と信じていなかったドテ子も次第に彼が本当にタイムスリップしてきたのではないかと思い始めます。
一方、とある研究施設では、最高水準のAIを搭載したアンドロイド・YUKIが開発され、それを世界に向けて宣伝するためのイベントとして人間対AIの麻雀勝負を行う「麻雀五輪」を開催すること、そしてAIに対抗しうる程の実力を持つ雀士を探すことが秘密裏に計画されていました。
やがて哲は、チューレンポートンでもう一度アガれば元の時代に戻れるのではないかと気付きます。ドテ子・クソ丸と共に三麻(三人麻雀)を打つ中、哲は再びチューレンポートンをアガりますが、何も起きませんでした。
落ち込む哲を余所目に、クソ丸は彼の実力とイケメンぶりに目をつけ、麻雀番組にタレントとしてデビューさせることを思いつきます。
学ランにフンドシという奇抜な衣装に最初は笑われるものの、「現代にはない打ち筋」がもたらす規格外の実力に哲はたちまち人気者になります。
しかし、哲は圧勝し続ける現状に「もっと強い奴と麻雀が打ちたい」と嘆き、その後ドテ子が教えてくれたネット麻雀の世界へと足を踏み入れます。
圧倒的実力によりネット麻雀界の頂点に立つ「ミスターK」と対決すべく、寝食も忘れネット麻雀に没頭する哲。
哲は上位ランキング2位へと到達し、ついにミスターKと対決する中で、再びチューレンポートンをテンパイします。
1945年のオックスでの勝負の時と同じく、空には雷雲が立ち込め始め、いよいよ戻れるという期待が高まったものの、結局ミスターKが逃げてしまったことでアガることは叶いませんでした。
映画『麻雀放浪記2020』の感想と評価
麻雀を知る人間であれば誰もが読んだことがある、或いは見聞きしたことがある、阿佐田哲也の往年の傑作小説『麻雀放浪記』。
1969年から1972年にかけて描かれたこの作品は、1984に和田誠監督の手によって映画化されたこともあります。
しかしながら、原作小説のことを知っていれば知っている程、本作の「坊や哲が戦後の1945年から2020年へとタイムスリップする」というハチャメチャな設定に驚かされることは間違いないでしょう。
本作の劇中には、小説『麻雀放浪記』に登場するキャラクターやイカサマ技、名台詞に至るまで、様々なネタが散りばめられており、思わずクスリとしてしまうシーンがたくさんあります。
大胆なアレンジによって作られた本作ですが、そこには確かに、小説『麻雀放浪記』という作品への愛が見受けられます。
本作は映画のジャンルとしてはコメディにあたりますが、より細かく分類すれば「ブラック・コメディ」にあたる作品です。
物語の時代設定である2020年。現実においては東京五輪が開催される希望と未来に溢れた年として、多くのメディアで扱われています。
ところが本作での2020年は、第三次世界大戦で敗戦して新たな戦後を迎え、東京五輪は中止されてしまった年として描かれています。
そして2020年の日本では、もはやディストピアと化した社会が築かれていることも明らかになります。
コメディとしての笑いと共に、現代の日本社会、そして未来の日本社会に対する風刺と皮肉を臆面なく描く。
それはまさにブラック・コメディであり、そんな2020年を描いた作品をその前年にあたる2019年に公開する意味は計り知れないでしょう。
そして、それほどまでの過激さを持ちながらも、観客たちが楽しむことができるエンターテインメント作品へと昇華されているのが、映画『麻雀放浪記2020』なのです。
まとめ
マスコミを賑わせ、様々な話題で取り上げられた映画『麻雀放浪記2020』。
麻雀を愛する人も、全く知らない人も共に楽しめる、風刺と皮肉に満ちたエンターテインメント作品です。
映画『麻雀放浪記2020』、ぜひご鑑賞ください。