2016年11月20日に東京フィルメックスでワールドプレミアとして上映された内田伸輝監督作品。
『ぼくらの亡命』が2017年6月24日(土)よりユーロスペースにて公開。
俳優の須森隆文と櫻井亜衣を主演に迎えた『ぼくらの亡命』をご紹介します。
CONTENTS
1.映画『ぼくらの亡命』の作品情報
【公開】
2017年(日本映画)
【脚本・監督】
内田伸輝
【キャスト】
須森隆文、櫻井亜衣、松永大輔、入江庸仁、志戸晴一、松本高士、鈴木ひかり、椎名香織、森谷勇太、高木公佑
【作品概要】
孤独な男女の他者への依存をモチーフに描いた自主制作による長編劇映画。
脚本・演出を務めた内田伸輝監督は『ふゆの獣』にて、第11回東京フィルメックス最優秀作品賞を受賞。
2.映画『ぼくらの亡命』のあらすじ
東京近郊の森の中でテント暮らしをしている昇(ノボル)…。
彼は気に入らない他人への恨みを手にした筆で書き、その書道をした半紙をテントに貼り付けて飾るという、奇妙な日々を送っています。
ある日、樹冬(キフユ)と重久(シゲヒサ)と佳代(カヨ)の修羅場を偶然目撃した昇は、樹冬に興味を持つと彼女の後をつけて行きました。
すると、重久と佳代は樹冬を利用して美人局をしていたのです。
樹冬は騙されている感じ取った昇は、彼女を助けるつもりで誘拐を計画します。
昇は重久に身代金を要求しましたが、「バーカ、勝手に殺せ」と相手にもされず昇の計画は失敗に終ります。
一方で捨てられる恐怖に怯えた樹冬は、重久の元へ擦り寄りましたが、すでに別の女である真理子に美人局をさせた重久。
もう、彼に取っては樹冬は用済みに女になってしまいました。それに逆上した樹冬は重久をナイフで刺して逃走。
その現場を目撃した昇は樹冬の後を追いかけ、“重久は死んだ”とウソをつき、彼女とともに日本からの脱出を企てますが…。
3.『ぼくらの亡命』の内田伸輝監督の思いとは?
内田伸輝監督は今作に挑む前に、次に制作する映画は時間をかけて撮影を行いたいと考えていたそうです。
2010年『ふゆの獣』以来、7年ぶりとなる今作は完全自主制作の作品で、構想に3年が掛かり、スタッフはプロデューサーとカメラマン、そして内田監督の3人で、1年間の週末を中心に撮影を行ったそうです。
また、その後の仕上作業にも1年を要して、自主制作ではあるが、メジャー映画には決して真似の出来ない時間をかけた作品となっています。
内田伸輝監督は作品への思いを次のように述べています。
『14歳の少女と20歳の男が美人局(つつもたせ)で逮捕——。』この作品の発想は、ネットニュースで見たこんな記事からだった。やりくちは変われど、昔からある古典的な手口。カモとなった男と騙した女が手を組んだらどうなるのだろう?そこから恋愛が生まれる のだろうか?そんな所を探りつつ、物語を作り始めた。と同時に撮影に入る2015年は、太平洋戦争終戦から70年目にあたり、聞こえないくら いの足音で確実に近づいてくる気がする新たな戦争の空気を、描いてみたいと思った。戦争とは何かを考えた時、それに至る理由の一つに、領土、領海、領空の奪い合いが戦いの引き金になっていて、まるでそれは、「この島は我が国のものだ!」と主張する国が、「この女は俺のものだ!」と一人の女性をめぐり奪い合う男達の姿にも僕は思えた。恋愛、戦争、奪い合い…。『ぼくらの亡命』は恋愛映画の皮を被った戦争映画にしようと思い、撮影が始まった。
内田伸輝監督は自主映画を撮るなら恋愛映画と決めていたそうです。
しかし、それは単に究極的な愛だけを描いたものではないようです。
今の時代と空気感、また、他者を排他的するような状態や感情、さらには国と国の関係などを含んだことを恋愛映画として描きたかったようです。
4.『ぼくらの亡命』の主演俳優は?
内田伸輝監督は撮影の中心となる2人の俳優はオーディションで選ぶことにしました。
恋愛映画に起用した主演2人は、引きこもりのホームレスの昇役に独特な風貌の須森隆文。
美人局の片棒となっていた女の樹冬は、瞳の奥で心境を滲ませる櫻井亜衣が決まりました。
内田伸輝監督は須森隆文を決めた理由にヒゲが早く伸びることと、自分の指示をよく聞いてくれたことをあげています。
また、女優の櫻井亜衣ことは以前から演劇ワークショップなどで知っていたようで、櫻井亜衣の演技の伸びしろのことをずっと気にかけていたようです。
特に驚かされたことは、1年間に及んぶ撮影中に昇役を演じた須森隆文。
なんと!1年間!髪の毛を1度も洗わなかったことです。
2016年のワールドプレミアとなった東京フィルメックスの上映の際の舞台挨拶で、須森隆文は会場の映画ファンにお見苦しいとは思いますがと挨拶を述べる愛嬌を見せました。
そこまで昇役にかけた役者魂の須森隆文に注目ですね!
5.須森隆文のプロフィールは?
次回参加作品の為にメイクテストと衣装合わせ。チラ見せ。完成お楽しみに。#汚し #かつら #髪の毛多いのも悪くない #メイクテスト #衣装合わせ #映画 #全貌はそのうち https://t.co/aFu1bGZmMR pic.twitter.com/rAIP4p2cqU
— 須森隆文/初主演作『ぼくらの亡命』 (@oguuy) 2017年5月11日
須森隆文は1988年5月27日に静岡県生まれます。明治学院大学心理学部卒業。
高校時代に周防正行監督の『それでもボクはやってない』を観て俳優に興味を抱き、大学入学とともに学内外を問わず演劇に関わりを持つようになりました。
卒業直前の2011年『山犬』でスクリーンデビュー以来、多数の映画に出演しています。
主な出演作は、2011年に佐藤考太郎監督『山犬』。
2014年に山本政志監督『水の声を聞く』(ベルリン国際映画祭)、また、同年に塚本晋也監督『野火』(ベネチア国際映画祭)。
2016年に内田伸輝監督『ぼくらの亡命』にて主演を務め、さらに同年にルーカス・ガシオロウスキ監督の短編映画『NO SONG TO SING』(カンヌ国際映画祭マーケット2017)
2017年に切通理作監督『青春夜話 Amazing Place』に主演しています。
他にもあげれば数多くの監督たちの作品に出演!
坂井田俊、平波亘、大森立嗣、瀬々敬久、加藤秀則、嶺豪一、二ノ宮隆太郎、熊切和嘉、岡田まり、大木萠、清水俊平、伊之沙紀、金允洙、甫木元空、長谷川億名、奥田庸介、甫木元空、友松直之らの作品に俳優として登場しています。
6.まとめ
内田伸輝監督は昇と樹冬の心情の変化について、森に守られてテントに引きこもっていた昇は、やがて、海辺へと出て行く展開に2人の心境を表現したと述べています。
そんなところにもポイントを置きながら究極の恋愛映画を見てみるも良いかもしれませんよ。
『ぼくらの亡命』は、2017年6月24日(土)よりユーロスペースにて公開です。
ぜひ、お見逃しなく!