「アベンジャーズ」シリーズへと連なる物語
MARVEL史上初の女性単体ヒーロー映画が、男女コンビ監督でついに誕生しました。
男女の枠も人間の枠も超えた最強のヒーロー、キャプテン・マーベルが満を持してスクリーンに登場です。
映画『キャプテン・マーベル』の詳細なあらすじと感想レビューを紹介いたします。
映画『キャプテン・マーベル』の作品情報
【日本公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Captain Marvel
【監督】
アンナ・ボーデン、ライアン・フレック
【キャスト】
ブリー・ラーソン、ジュード・ロウ、サミュエル・L・ジャクソン、クラーク・グレッグ、リー・ペイス、ジェンマ・チャン、アネット・ベニング、ベン・メンデルソーン、マッケンナ・グレイス、コリン・フォード
【作品概要】
1968年に誕生した女性ヒーロー、キャプテン・マーベルが初の実写化。
キャプテン・マーベルことキャロル・ダンバースを演じるのは『ルーム』(2016)でアカデミー最優秀主演女優賞を受賞したブリー・ラーソン。
また10年以上に渡ってアベンジャーズの生みの親、S.H.I.E.L.D.S長官のニック・フューリーを演じたサミュエル・L・ジャクソンが最新技術で若返った姿で登場します。
監督は『ハーフネルソン』(2006)や『なんだかおかしな物語/ボクの人生を変えた5日間』(2010)などの人間ドラマを撮ってきたライアン・フレックとアンナ・ボーデンの監督コンビ。
「アベンジャーズ」シリーズ本編のブリッジ要素もありますが、単体ヒーロー映画として十二分の完成度を誇る快作です。
映画『キャプテン・マーベル』のあらすじとネタバレ
高度な文明を持つ惑星クリーの軍人ヴァースは、上官のヨン・ログと毎日戦闘訓練をしていました。
彼女は手から特殊な光線フォトンブラストを出すことができましたが、その力を制限するための装置を体内に埋め込まれており、その力を使わずに強くなれとログから指導されていました。
夜ごとに悪夢を見るヴァース。少女だった時の自分、軍隊に入って訓練をしている自分。彼女はいつも男社会に揉まれながら高みを目指していました。
しかしそこは明らかにクリーではない別の場所。6年前にログに拾われたヴァースには、軍に入る前の記憶がありませんでした。
クリーを統治する人工知能スプリームインテリジェンスに呼ばれたヴァースとログ。
ヴァースはクリーの特殊部隊スターフォースに加わることを認められます。
最初の任務は、クリーと長く争っているスクラル星人が潜伏しているという星の調査。スクラル星人は他の生物に擬態できる能力を持ち、その力で様々な星を制圧しているよう。
星に到着すると、現地人に化けたスクラル星人がおり、戦闘になります。
戦いの末、ヴァースは囚われてスクラルの宇宙船に乗せられ、特殊な装置で記憶を探られてしまいます。
その結果、ヴァースは惑星c-53で生まれ、キャロル・ダンヴァースという名だったこと、空軍に所属していたことがわかりました。
スクラル星人の首領タロスは、彼女が所属していた空軍が秘密裏に進めていた計画の情報を求めており、宇宙船をc-53に向かわせます。
彼らはヴァースの上官だったローソンという女性を探す予定でした。
ヴァースは目を覚まし、フォトンブラストを駆使して宇宙船に穴を開けて脱出。しかし宇宙船はc-53の成層圏まで来ており、ヴァースは地上に落下していきます。
惑星c-53とは地球のことでした。当時の地球は1995年。
レンタルビデオ店に墜落したヴァースは、先程見た記憶に戸惑いながらも、通信でログに記憶で見たローソンという女性について調べると報告をいれ、地球のことを調べ始めます。
一方、地球に不時着したスクラル星人たちも地球人に擬態し、ヴァースを追いかけます。
レンタルビデオ店に、米国の特殊組織S.H.I.E.L.D.Sの捜査官ニック・フューリーがやってきてヴァースを取り調べます。
ヴァースがクリーやスクラルのことを話してもフューリーは信用しませんでしたが、そこで1人のスクラルが彼女を狙撃してきます。
ヴァースはスクラルを追いかけて電車に乗り込みました。
老婆になりすましていたスクラルと応戦しますが、取り逃がしてしまいます。
フューリーは、助手席にいた後輩捜査官コールソンがスクラルのなりすましだと気づき、揉み合って事故を起こしてしまいました。
そのスクラルは死亡、解剖の結果明らかに地球の生物ではないと証明されたので、フューリーはヴァースが言っていたことを信じざるを得なくなります。
しかしタロスは既にフューリーの上官ケリーになりすましていました。
その頃、ヴァースは蘇った記憶を元に、ローソンとよく来ていたバーに訪れました。後を追ってきたフューリーが現れ、ヴァースを空軍の記録を保管している施設に連れていきます。
そこにはグースという猫がおり、フューリーに懐きますが、ヴァースは猫のことも記憶で見ていました。
調べていると彼女が所属していた空軍では、科学者だったローソン主導のもとペガサス計画が進行していたことが判明。ペガサス計画とは、光束エンジンを開発する計画のこと。
さらに、ローソンの手記で彼女がクリー星人であること、6年前にパイロットと実験に行き死亡したこと、そのパイロットがヴァースだったことがわかりました。
キャロル・ダンバースという名で写真に写っている自分を見た彼女は戸惑います。
ログに連絡をすると、マー・ヴェルというクリー人が地球で戦争に勝つためのエネルギーコアを開発していたとわかったと言われます。
ログも地球に向かおうとしていました。
そこにケリーになりすましたタロスがエージェントたちとやってきますが、フューリーは彼が偽物と見抜き、ヴァースはフォトンブラストで彼をはじき飛ばします。
グースも連れて逃走する2人の前にコールソンが現れますが、彼は2人を見逃しました。
小型機に乗り込んだヴァースたちは、最後にローソンの事故を目撃したマリア・ランボーという元同僚の家に向かいます。
その頃、クリーのエリート軍隊アキューザーズの長官ロナンは、スクラルたちを確実に始末すべく地球に船を進めていました。
マリアは死んだと思っていたキャロル(ヴァース)が現れ驚きますが、彼女の娘モニカは久しぶりに会えたと大喜び。
そこにタロスたちが現れ、敵意はないと説明してきます。
タロスはなぜかグースを見て怖がっていました。
タロスは6年前の事故当時のローソン達の記録音声を持っていると言います。
聞いてみると、ローソンとキャロルが乗っていた機体は攻撃を受けて墜落したようで、ローソンはハラという惑星からやってきたとキャロルに説明していました。
そこでキャロルはついに思い出します。
攻撃してきた相手に奪われる前にエンジンを破壊しようとした時に、狙撃を受けたこと。その相手はログでした。
彼にエネルギーコアを渡さないようにエンジンを撃ち抜いた途端、キャロルは青い衝撃波に包まれ、特殊な能力を身につけたのです。
その後ログは事故で記憶を失ってしまった彼女をクリーに連れ帰り、嘘を吹き込んで戦士に仕立てあげました。
タロスは、「スクラルたちはアキューザー軍によって母星を追われ、クリーの悪事に気づいたローソンことマー・ヴェルが自分達を救おうとしていた」と語ります。
マー・ヴェルは宇宙空間の座標データを残しており、キャロルは宇宙船の副操縦士として付いてきてほしいとマリアに依頼します。
映画『キャプテン・マーベル』の感想と評価
2018年に公開された『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』はサノスの全宇宙の生物を半分に減らすという計画が成功し、大勢のヒーローたちが灰になって消えてしまうという衝撃の結末を迎えました。
ラストでニック・フューリーが消える直前にポケベルを操作しますが、そこに映ったのはキャプテン・マーベルのマーク。
アメコミファンはついにキャプテン・マーベルがついに実写化されると歓喜しました。
キャプテン・マーベルは長らく実写化が待望されていた1968年に誕生したヒーローで、アベンジャーズ崩壊の危機にとうとうマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に合流。
しかし、本作が『インフィニティウォー』と『アベンジャーズ エンドゲーム』(2019)の橋渡し的作品になるのは明らかで、その分単体で楽しめる作品になっていないのではないかという危惧もあったのですが、いざ本編を見ればそれは杞憂でした。
本作はマーベル初の女性単体ヒーロー映画にして、超王道の英雄誕生譚になっています。
オスカー女優ブリ―・ラーソンはただ強いだけの女性ではない葛藤する主人公キャロルを見事に演じています。
また90年代半ばからスターダムにのし上がったサミュエル・L・ジャクソンが、最新の技術で40代のニック・フューリーとして若返った姿で出てくるのも見どころ。
CGで若返らせる技術は数年前から発展してきていますが、準主役級で長時間若返った状態の役者が出てくるのは革新的です。
ニック・フューリーの過去やアベンジャーズ計画発案の理由、『アベンジャーズ』(2012)にも登場したフィル・コールソン捜査官の若き日の姿まで描かれ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)の悪役ロナンも登場するのでMCUファンにはたまりません。
もちろん戦闘シーンはマーベル印の安定の迫力ですし、DCコミックスで言えばスーパーマン級の強さを誇るキャプテン・マーベルの無双ぶりは、ハラハラはしませんがとても爽快で気持ちいいです。
クリーの兵士ヴァースが徐々に自分の過去を探っていくミステリー仕立てのストーリーも物語の大きな推進力になっています。
そして何より本作が素晴らしいのは、元々圧倒的なスーパーパワーを持っているキャロルがヒーローとしての心に目覚めるさまを丁寧に描いているところです。
『ハーフネルソン』などの繊細な人間ドラマを作ってきたアンナ・ボーデン、ライアン・フレックのコンビを監督に起用したのが功を奏しました。
最初は自分が何者かもわからず、クリー帝国のためと人工知能の言いなりになっていたヴァースが、地球人キャロル・ダンバースとしてのアイデンティティを取り戻し、自分の意志で最強の力を解放するからこそ、終盤の爽快感が生まれています。
「ヒーローに必要なのはスーパーパワーではなく気高い精神だ」というのは昨年亡くなったマーベルコミックスの立役者スタン・リーが長年描いてきたテーマです。
また「自分で判断することの大切さ」も描いており、コールソンが自身の判断でキャロルとフューリーを見逃すシーンもそれを表しています。
そしてアメコミ映画でありながら、迫害され流浪する民スクラルへの差別の問題をしっかりと描いているのも特徴です。
母星を追われ、他の星に溶け込みながら生きているスクラルは、スタン・リーの出自でもあるユダヤ系民族を連想させます。
最初はそのスクラルを疑問も持たず迫害する側に回っていたキャロルが真実に気付いて全力で彼らを救う姿は、まさに弱きを助け強きをくじくヒーローそのもの。
またキャロル自身も地球の軍隊などで女性として差別されてきた経験があり、そのしがらみを吹っ切って飛び立つさまは感動的です。
監督たちやスタッフはインタビューで「キャプテン・マーベルは“飛翔”の象徴です」と語っています。
個人の可能性、人類の可能性、相互理解の可能性、未知の世界への可能性を信じて飛び立つことが本作のテーマ。
キャロルが最初にビデオショップに飛来した際に手に取るのが、宇宙開発の可能性に人生をかけて高く飛ぶことを目指した人々を描いた名作『ライトスタッフ』(1983)のビデオであることもそれを表しています。
MARVELという言葉には「素晴らしい」や「奇跡」という意味がありますが、その名を背負うにふさわしい最高のヒーロー映画です。
まとめ
単体の映画として高い完成度を誇る本作ですが、もちろん『アベンジャーズ エンド・ゲーム』への橋渡し要素も重要な部分。
宇宙空間ですら庭のように飛び回る最強のキャプテン・マーベルはどう活躍するのか、テッサラクトとグースはどうストーリーに絡んでくるのか、スクラルたちは助けに来てくれるのか、スプリームインテリジェンスも関係してくるのか、そしてニック・フューリーや消えたヒーローたちは無事帰ってくるのか。
本作のおかげでより『アベンジャーズ エンド・ゲーム』が楽しみになってきました。
そして『キャプテン・マーベル』は序盤からスタン・リーへの最高の献辞を捧げています。
どのような形でかはぜひ劇場で確認してほしいため、本作は一秒たりとも遅刻してはいけません。