連載コラム「最強アメコミ番付評」第22回戦
こんにちは、野洲川亮です。
『アベンジャーズ エンドゲーム』に続いて『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の予告がアップされましたね。
2019年公開のアメコミ映画情報が続々と解禁されはじめ、各作品の公開までのワクワクが高まってきています。
今回は、DCEUシリーズ第4作となる『ワンダーウーマン』を考察していきます。
女性ヒーロー映画の新たな境地を切り開いた本作の魅力を探っていきます。
『ワンダーウーマン』のあらすじとネタバレ
フランスの美術館で働く女性ダイアナ(ガル・ガドット)の元に、ブルース・ウェインからある写真が届けられます。
その写真に映っていたのは、100年前の第一次世界大戦当時、兵士たちと共にいるダイアナの今と変わらぬ姿でした。
ダイアナは女戦士アマゾン族だけが住むセミスキラ島に生まれ、育ちました。
ヒッポリタ女王(コニー・ニールセン)の娘に生まれ、戦士に憧れるダイアナでしたが、ヒッポリタはダイアナに戦いを教えることに反対し、ある伝説を聞かせます。
かつて神ゼウスは自分たちの姿に似せて人間を作りますが、ゼウスの息子、戦争の神アレスはその人間たちに嫉妬し、人間同士が争うように仕向けました。
ゼウスにより追放されたアレスですが、いつか復活した時に備え、アレスを倒すための聖剣ゴッドキラーを保管し、立ち向かう役目をアマゾン族は担っていました。
伝説を聞かされたダイアナは戦士への思いを深め、ヒッポリタの妹、最強の女戦士であるアンティオぺ将軍(ロビン・ライト)から直接教えを請うようになります。
強く成長したダイアナはある日、海に墜落する飛行機を目撃し、乗っていた男を救出します。
すると男の後を追うように、武装した兵士たちが島に上陸し、駆けつけたアマゾン族の戦士たちと戦闘になります。
弓、槍、剣で次々と兵士たちを倒していくアマゾン族でしたが、島にはない銃で数人が撃たれ、ダイアナをかばったアンティオぺも撃たれ、息絶えてしまいます。
戦闘を終え、ヒッポリタは初めに救出された男、スティーブ・トレバー(クリス・パイン)を、縛られた者に真実をしゃべらせる力を持つヘスティアの縄で尋問します。
スティーブはスパイとしてドイツに潜入していたアメリカ軍兵士で、ドイツ軍が開発した殺人ガスの情報が書かれたノートを奪って逃走しているところでした。
外の世界で世界規模の戦争が起こっていることを知ったダイアナは、この戦争はアレスの仕業でそれを止めるために島を出ることを主張しますが、ヒッポリタは聞き入れません。
それでもスティーブと話し決意を固めたダイアナは、ゴッドキラーと盾、ヘスティアの縄を手にし、彼女の決意をみたヒッポリタも、二度と島に戻れないことを告げ、彼女を送り出します。
島を出た二人はロンドンに到着し、スティーブはドイツと停戦交渉を行っている、モーガン卿(デヴィッド・シューリス)を始めとするイギリス軍首脳部に毒ガスのノートを見せ脅威を伝えますが、首脳部は前線の兵士たちを使い捨てにするような発言をします。
これを聞いたダイアナは激怒し、スティーブにも不信感を抱きますが、彼はヘスティアの縄を使い、毒ガス攻撃を止めようとしていることを証明します。
ドイツ軍のルーデンドルフ大佐こそがアレスだと疑うダイアナは、スティーブが集めた仲間たちと共に、前線へと向かいます。
最前線に到着したダイアナたちが目にしたのは、延々と続く塹壕と、断続的な戦闘を長期間繰り広げ、敵味方共に疲弊し、膠着しきった様子でした。
敵陣の先に自分たちの村がある民間人も塹壕に取り残されており、見かねたダイアナはスティーブの制止も振り切って、単身で戦場の中へと進んでいきます。
敵の一斉放射を、手甲と盾だけで防ぎ前進していくダイアナの姿に感化され、共に突撃したスティーブとイギリス兵たちはドイツ軍を壊滅させます。
さらにドイツ軍に占拠された村もダイアナの活躍で解放し、村の喝さいを浴びた一同はそこで記念の写真を撮ります。
そして、近くの城でドイツ軍の舞踏会が開かれ、そこにルーデンドルフ大佐が現れるという情報を手にした一同は、城へと潜入します。
ダイアナはそこで出会ったルーデンドルフ大佐がアレスであると確信し、ゴッドキラーで殺そうとしますがスティーブに止められてしまいます。
すると、轟音が鳴り響き、ドイツ軍が村に向けて毒ガスを発射してしまいます。
原作コミックを踏襲した作風とガル・ガドットの魅力
『ワンダーウーマン』のコミックが創刊されたのは1941年、ウィリアム・マーストンの手によって生み出されました。
劇中の舞台となる1910年代当時、学生時代のマーストンは女性の講演が禁止されていたハーバードで、学生たちが招いた女性参政権運動家の講演をキャンパスの外で聞き入りました。
女性の社会進出という背景を持ったコミックの要素は、本作にも色濃く反映されています。
その背景を、まずはダイアナが外界に初めて触れる無垢なリアクションと、その周囲の人々のオタオタという、異文化ギャップコメディ演出で表現してみせます。
さらに、軍事会議にダイアナが紛れ込んで揉め事となる場面では、現代的な視点から女性たちが強いられる不当な扱いに、文字通り異議を申し立てて、観客の溜飲を下げてくれます。
一つの時代背景の要素で、複数のエピソードを紡ぎ出す脚本、演出の妙は、目を見張るものがあります。
そして、なんといっても本作最大の魅力と言えば、ワンダーウーマンを演じたガル・ガドットのビジュアルと肉体、キャラクターが放つカッコ良さでしょう。
『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』でスクリーンデビューを飾ったワンダーウーマン、DCヒーローの2大巨頭であるバットマン、スーパーマンを上回る存在感を見せ、大きな話題を呼びました。
男女問わず、観客がガル・ガドット=ワンダーウーマンを支持したのは、その美しさ、逞しさという外的要因に加えて、不当な現実を強いられる女性、それ以外の全ての弱者に手を差し伸べ、身を挺して苦難、困難に立ち向かっていきます。
本作では、身体一つで機関銃の群れに突っ込んでいく塹壕戦のシーンが、そのキャラクターを象徴するもので、テーマ曲がかかる演出にテンションは最高潮に上がります。
外界から閉ざされた女性だけの島で育った最強の女戦士、いかにもコミック的な設定を持つキャラクターを成立できたのは、ガル・ガドット本人が軍隊経験を持ち、ネイティブではなく独特な英語の発音をしていることで、どこか浮世離れした印象を与えたことも要因でしょう。
新たな女性ヒーローのアイコンとなったワンダーウーマン、今後のDCEUシリーズでも主役として活躍していくことは間違いありません。
『ワンダーウーマン』を観た人へのオススメ作品
参考映像:『モンスター』(2003)
ガル・ガドットは「ワイルド・スピード」シリーズで映画デビューし、その後も同シリーズ数作に出演したことでブレイクします。
彼女の美貌とスタイルの良さは、「ワイルド・スピード」シリーズでも随所に見ることができ、加えてドライビングを始めとするアクションも披露しています。
監督を務めたパディ・ジェンキンスは本作が監督2作目、デビュー作はシャーリーズ・セロン主演の『モンスター』(2003)で、実在した元娼婦の連続殺人犯の生涯を描きました。
現代的な女性の目線を的確に映画に取り入れているジェンキンスは、2020年公開予定の『ワンダーウーマン』続編も監督することが決定しています。
また共演のクリス・パインは、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のJ・J・エイブラムスや「ワイルド・スピード」シリーズのジャスティン・リンが監督を務める、2009年「スター・トレック」シリーズの第11作目から第13作まで、3作の主演を務めています。
次回の「最強アメコミ番付評」は…
いかがでしたか。
次回の第23回戦は、DCヒーローが勢ぞろいしたシリーズ第5作、『ジャスティス・リーグ』を考察していきます。
お楽しみに!