2015年第22回日本ホラー小説大賞を受賞した澤村伊智の「ぼぎわんが、来る」を、『告白』で日本アカデミー賞を受賞、『嫌われ松子の一生』『渇き』など、話題作を放ち続ける中島哲也監督によって映像化。
中島監督にとっては5年ぶりの新作となります。
主演は『永遠の0』や『散り椿』などで、日本映画界を代表する主演俳優となった岡田准一。
共演に妻夫木聡、黒木華、そして『告白』の松たかこ、『渇き』で鮮烈なデビューを飾った小松奈々や青木崇高など豪華な名前が並びます。
CONTENTS
映画『来る』の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【原作】
澤村伊智
【脚本・監督】
中島哲也
【企画・プロデュース】
川村元気
【キャスト】
岡田准一、黒木華、小松菜奈、松たか子、妻夫木聡、青木崇高、柴田理恵、太賀、志田愛珠、蜷川みほ、伊集院光、石田えり、西川晃啓、松本康太、小澤慎一朗
【作品概要】
代表作『嫌われ松子の一生』『告白』『渇き。』で知られる中島哲也監督が、「第22回日本ホラー大賞」の大賞となった澤村伊智の小説『ぼぎわんが、来る』を映画化。
岡田准一を主演に迎え、黒木華、小松菜奈、松たか子、妻夫木聡たち豪華キャストで魅せるエンターテイメントなホラー作品。
映画『来る』のキャラクターとキャスト
野崎和浩(岡田准一)
オカルトを中心に、ネタになるものであれば何でも書くフリーライター。
比嘉真琴(小松奈々)
霊能力のあるキャバ嬢で野崎と深い仲にある。
田原秀樹(妻夫木聡)
サラリーマン、香奈の夫で自称イクメン。世間体を気にして実が伴わないタイプ。
田原香奈(黒木華)
秀樹の妻、娘の知紗の育児やマイペース気質な秀樹にノイローゼ気味になる。
津田大吾(青木崇高)
秀樹の親友で民俗学学者。野崎とも知縁があり、秀樹に紹介する。
比嘉琴子(松たか子)
強力な力を持つ霊能力者で、日本の中枢にも影響力をもつ
映画『来る』のあらすじとネタバレ
田原秀樹は婚約者の加奈と結婚、やがて一人娘の知紗に恵まれます。
完璧な夫、イクメンを目指す秀樹は、自分のことを事細かにブログにアップしたりしていますが、実際には、妻であり母でもある加奈の思いとはどこかズレていて、やがて家庭は崩壊していきます。
それでも秀樹は、ある不安を抱えていて家族を守りたいという思いを持ち続けていました。
それは幼馴染だった少女から言われた“それ”という、恐ろしい存在が自分を連れ去り来るという話でした。
そして、やがて“それ”は秀樹も連れ去りにやってくると言うのでした。
少女の名前も覚えていない秀樹でしたが、“それ”の存在に夢でうなされるたりすることもありました。
そんなある日、家に帰ってきた秀樹は、荒れた部屋と、親から安産祈願や家内安全にと送られてきたお守りがすべて切り刻まれてるのを発見します。
怯える加奈と、泣き続ける知紗の姿を見て、いよいよ“それ”が襲い掛かってきたと感じた秀樹は、友人の民俗学者の津田に相談を持ち掛けます。
津田は心霊やオカルトを中心にライター業をしている野崎を経由して、霊能力のあるキャバ嬢の真琴を紹介されます。
胡散臭ささはあるもの知紗は、真琴になつき、野崎との会話で加奈も明るさを取り戻しました。
しかし、“それ”はより強硬に秀樹たちに迫ってきました。
そんな秀樹に真琴の姉で、強力な能力を持つ霊媒師の琴子から連絡が来ます。
琴子の能力は凄まじく、自身も強い能力を持っている真琴が尊敬と畏怖の念を抱く存在でした。
琴子に紹介された霊能力者と話をしていると、突然、“それ”が襲い掛かり霊能力者の片腕を食いちぎります。
野崎は、この場を自分にまかせて家に戻るように秀樹に言います。
その言葉を受けて秀樹は、加奈に知紗を連れて家から出るように告げます。
一方で琴子から家に“それ”を呼びつける手伝いをするように言われた秀樹は、刃物や鏡を封印して襲来に備えます。
怯える秀樹に携帯電話越しに琴子の声が「ここからは自分の仕事です」と言い切ります。
しかし、次の瞬間、家電に琴子から電話がかかってきます。
驚愕する秀樹、携帯電話の向こうの琴子は、“それ”によるなりすましでした。
刃物や鏡を封印させたのも“それ”が苦手としているためのことでした。
“それ”に襲い掛かれるその時、秀樹は幼馴染の少女の名前が知紗であったことを想いだしました。
映画『来る』の感想と評価
小説『ぼぎわんが、来る』から映画『来る』へ
記事冒頭の紹介文で書いた通り、この映画は小説『ぼぎわんが、来る』を映画化したものです。
この映画化によって『来る』というタイトルに変わりました。
単にシンプルな響きにのものにしたという意味合いもありますが、実際に映画を見ると小説と映画には大きな違いがあることが分かります。
そもそも“ぼぎわん”とは何なのか?映画ではそこには触れられていませんが、小説ではしっかりと語られています。
“ぼぎわん”というのははるか昔から、日本に存在した人を連れ去る“何か”であり、それを戦国時代に日本にやってきた宣教師が“ブギーマン”という名前を与え、それが訛ったものとなっています。
“ブギーマン”というと、映画『ハロウィン』に登場する白いマスクに、大ぶりのナイフで人間を襲う殺人鬼をイメージする方が多いかと思います。
ジョン・カーペンター監督の『ハロウィン』(1987)
しかし、実際には得体のしれない存在・怪物の名前です。
映画『ハロウィン』の影響力もあって今や主客転倒している感もありますが、そもそも映画『ハロウィン』でもサイコキラーのマイケル・マイヤーズが死をも超越した存在=“ブギーマン”になっているのでは?というところからネーミングされたものです。
このように“それ”の存在を明確にした(よくわからないものをよくわからないと定義付けたので明確になっていないかもしれませんが…)小説に対して、映画はそれの正体についてはあまり深堀りしません。
原作以上に映画の見どころとは
その一方で田原夫妻の一人娘知紗の存在がより際立って描かれ、各登場人物の中心にこの少女の存在します。
“ぼぎわん”でも“ブギーマン”でもない映画オリジナルの“それ”が少女とリンクする形で登場します。
幼い子供が介在したことで“それ”はかえって、無邪気な禍々しさを持つ存在になると同時に、いつまでも襲い続けることにより明確な理由付けがされました。
また、小説にはなかった大規模なお祓いシーンも見どころです。
祓える者であればだれでも総動員する琴子は、沖縄のユタ、神道の神官・巫女、仏教の僧侶、科学者、韓国の祈祷師など限られた時間内で呼べるだけの祓い手を招集します。
国家権力まで利用するクライマックスのお祓いシーンは見ごたえたっぷりです。
まとめ
岡田准一エンタメに帰還
近年ずらりとあげるだけでも、2013年公開の『永遠の0』、2016年公開の『海賊と呼ばれた男』と『エヴェレスト神々の山嶺』。
また、2014年公開の『蜩ノ記』、2017年公開の『関ヶ原』と『追憶』。そして2018『散り椿』とシリアスなドラマが続いていた岡田准一。
この期間でエンタメ色の強い作品といえば「図書館戦争」シリーズくらいです。
その間にはNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』もあって、すっかり重厚なドラマの担い手となりましたが、本作『来る』では、無精ひげで所かまわずタバコを吸いボロボロな車に乗る胡散臭いフリーライター役を演じています。
久しぶりに俗っぽいキャラクターの顔を見せてくれました。
この後、2019年公開予定の江口カン監督の映画『ザ・ファブル』では、裏社会で寓話=ファブルと呼ばれる殺し屋の佐藤アキラ役を演じるなど、久しぶりにエンタメ色の強い作品が続きます。
重厚なドラマの担い手として積んできた経験を、どのようにエンタメに活かしてくれるの楽しみですね。