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スーパー戦隊はマンネリなのかを考える④【改革期】ジェットマンからギンガマン|邦画特撮大全9

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第9章

1980年代後半、スーパー戦隊シリーズは成熟期を迎えたと言えます。

しかし『地球戦隊ファイブマン』の頃、シリーズ自体の存続が危ぶまれました。

視聴率低下、玩具売り上げの不振などの問題が浮上したのです。

それまでのスーパー戦隊シリーズもさまざまな試行錯誤を繰り返していましたが、1990年代以降はより大胆な改革が行われているように思えます。

今回はスーパー戦隊の“改革期”にあたる、『鳥獣戦隊ジェットマン』(1991)から『星獣戦隊ギンガマン』(1998)までを分析していきます。

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戦うトレンディドラマ『鳥人戦隊ジェットマン』

参考映像:『鳥人戦隊ジェットマン』第50話予告

ファンの間では“戦うトレンディドラマ”と形容される『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)。

本作は戦隊メンバー間に恋愛要素を持ち込んだ初めての作品なのです。

失った恋人・リエを忘れられない天堂竜/レッドホーク、鹿鳴館香/ホワイトスワンを思う結城凱/ブラックコンドル、大石雷太/イエローオウルの2人。

一方の鹿鳴館香は竜に思いを寄せています。

そして竜の恋人・リエに瓜二つの敵幹部・マリアも登場。当時流行していた“トレンディドラマ”さながらの恋愛模様が描かれるのが本作最大の特徴です。

『ジェットマン』は上記のような恋愛ドラマの要素以外にも、毎回ジェットマン5人が全員揃って変身する訳ではない点や、シリーズ初の女性司令官の登場。

ジェットマンに取って代わろうとするネオジェットマンの存在。敵組織・次元戦団バイラムの壮絶な内部抗争など、数々の野心的な要素が導入されました。

またスタッフ面も大きく刷新され、若手スタッフを中心的に起用されました。

メイン監督は後に『牙狼 GARO 』シリーズの原作・総監督を務める雨宮慶太(当時31歳)、メイン脚本には井上敏樹(当時31歳)。特撮監督は前作『ファイブマン』で特撮監督デビューした佛田洋(当時30歳)が続投しています。

TVゲームの影響『恐竜戦隊ジュウレンジャー』~『超力戦隊オーレンジャー』

参考映像:『恐竜戦隊ジュウレンジャー』予告

ベストセラーとなった小説『ジュラシック・パーク』、スティーブン・スピルバーグ監督による同作の映画版の製作が発表されたことから、“恐竜”がモチーフとなった『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992)。

この作品から“追加戦士”といわれる6人目の戦士の登場が描かれるようになりました。

また余談ですが『ジュウレンジャー』のシリーズ終盤に、子役時代の高橋一生が重要な役で登場しています。

『ジュウレンジャー』はRPG『ドラゴンクエスト』などの影響もあり、西洋ファンタジーを意識した作風です。

敵怪人もグリフォンやトロールなど、RPGに登場する伝説上の生き物がモチーフになっています。

次作『五星戦隊ダイレンジャー』(1993)では格闘ゲーム『ストリートファイター』シリーズが意識され、本格的な中国拳法が取り入れられました。

2作のメイン脚本家である杉村升はゲームファンでもあり、その後『バイオハザード』シリーズや『鬼武者』シリーズなどゲームのシナリオを数多く手掛けています。

『ジュウレンジャー』以降のスーパー戦隊シリーズで興味深い点は、各作品の世界観やモチーフが毎回ガラリと変わる事です。

西洋風の『ジュウレンジャー』、中華風の『ダイレンジャー』と続き、『忍者戦隊カクレンジャー』(1994)はモチーフが忍者、敵が妖怪である点から和を基調とした作風であることがわかります。

そして『超力戦隊オーレンジャー(1995)』ではモチーフが古代文明。マンネリを打開するため各作品で大きな差別化が図られているのです。

実は原点回帰?シュールなコメディ『激走戦隊カーレンジャー』

参考映像:『激走戦隊カーレンジャー』

それまでプロデューサーを務めてきた鈴木武幸、『ジュウレンジャー』から『オーレンジャー』までの4年間メイン脚本を務めた杉村升が降板。

次作『激走戦隊カーレンジャー』(1996)ではプロデューサーを高寺成紀、メイン脚本を浦沢義雄が代わりに務めます。

またそれまで参加していた監督陣も前作『オーレンジャー』や本作序盤をもって現場から去っています。

浦沢義雄はシュールなギャグで知られる脚本家。元々浦沢は『ゲバゲバ90分』や『欽ドン!』、『カリキュラマシーン』といったコント番組などの構成作家をしていました。

その後、映画監督・脚本家の大和屋竺に弟子入りし脚本家に転身という異例の経歴の持ち主です。

『カーレンジャー』は浦沢独特のギャグテイストが爆発。

安月給を理由にカーレンジャーになるのを断る第1話のカーレンジャー5人や、芋ようかんで巨大化する敵の宇宙暴走族ボーゾックなどシュールなギャグが展開します。

こうしたギャグ描写はファンの間で賛否両論となりました。しかしシリーズ第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』では、敵怪人を視力検査や鶏がらスープで倒すなどのシュールなギャグが見られます。

ある意味『カーレンジャー』は原点回帰を行った作品とも言えるのです。

高寺成紀は『電磁戦隊メガレンジャー』(1997)、『星獣戦隊ギンガマン』(1998)のプロデューサーを歴任しています。

『メガレンジャー』はそれまでのミニチュア撮影、ビデオ合成の他に、CGとデジタル合成が本格的に導入されました。

物語面では終盤、守るべき対象である一般人から迫害、非難されるという衝撃的な展開も見られます。

“SF”であった『メガレンジャー』と打って変わって、『ギンガマン』は“ファンタジー”を基調とした作品です。

そのためギンガマンの移動手段がそれまでのバイクや車ではなく、なんと馬。動物相手ということで撮影も大変だったようです。

企画当初は巨大ロボを一切出さず、ギンガマンと彼らのパートナーである神秘の動物“星獣”のみで敵と戦い続けるという案がありました。

シリーズ序盤のみこのアイディが採用され、第7話からこれまで通りに巨大ロボ・ギンガイオーが登場しています。

また敵・宇宙海賊バルバンは幹部ごとに軍団が形成されています。

各軍団が1クールごとに交代してギンガマンと戦うというシリーズ構成もユニークです。

次回の邦画特撮大全は…

次回の邦画特撮大全は、『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(1999)以降、2000年代に放映されたスーパー戦隊を分析する予定です。

お楽しみに。

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