2026年8月14日(金)より映画『左利きの少女』は全国公開!
台北の夜市を舞台に、借金を抱えたシングルマザーと娘たちの再起を描く人間ドラマ『左利きの少女』。
5歳の少女イージンが左利きを咎められた記憶を軸に、家族が抱える「罪」と伝統的価値観との葛藤が浮き彫りにしていきます。
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2018)のショーン・ベイカーが製作・共同脚本・編集を務め、新鋭ツォウ・シーチンが監督したこの作品は、カンヌ国際映画祭の出品やアカデミー賞台湾代表選出でも話題を集めました。
全編iPhone撮影による、観光地化されていないリアルでカラフルな台北の日常も見どころの作品です。
映画『左利きの少女』の作品情報

(C)2025 LEFT-HANDED GIRL FILM PRODUCTION COMPANY LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
【日本公開】
2026年(台湾、フランス・アメリカ・イギリス合作合作映画)
【原題】
左撇子女孩
【英題】
Left-Handed Girl
【監督・共同脚本】
ツォウ・シーチン
【キャスト】
ニーナ・イエ、マー・シーユエン、ジャネル・ツァイほか
【作品概要】
台北の夜市を舞台に、借金を抱えた母と二人の娘が奮闘する人間ドラマ。左利きの少女イージンの視点から、家族に隠された秘密と絆を描きます。
作品を手掛けたのは、本作が初の単独作となる新鋭ツォウ・シーチン監督。
キャストには子役として人気を博している台湾の子役ニーナ・イエ、映画『台北に舞う雪』『星空』やドラマ『暴走外科医がやってきた』などのジャネル・ツァイ、本作が映画初出演ながら金馬奨で新人俳優賞を受賞したマー・シーユエンらが名を連ねています。
映画『左利きの少女』のあらすじ

(C)2025 LEFT-HANDED GIRL FILM PRODUCTION COMPANY LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
5歳のイージンは、借金を背負ったシングル・マザーのシューフェン、ハイティーンの姉イーアンと共に生活を立て直すべく田舎町から都会・台北に舞い戻ることに。
うとまれえながらも家族そろって実家を訪れたある日、イージンは昔気質が治らない祖父から利き手である左手を「悪魔の手」とののしられ、罪悪感を抱きはじめながら思わぬ行動に走ります。
そんな「悪魔の手」が巻き起こす行動は、図らずも家族それぞれが心の奥底に持つ闇の部分を、徐々にあぶり出していくのでした……。
映画『左利きの少女』の感想と評価
少女が知っていく、大人の世界
台北へ引っ越してきたシングルマザーと二人の娘。三人で暮らしてはいるものの、母と長女はそれぞれに事情を抱え、お互いの思いを真正面から見つめ合う余裕を失っています。そんな中、幼い末娘イーシンだけは好奇心旺盛で無邪気な存在として描かれます。
しかし彼女は「大人の話に入ってはいけない」とたびたび制され、家族の輪の外へ押しやられてしまいます。その結果、自ら大人の世界をのぞき込み、家族の秘密や社会の現実を少しずつ知っていくことになるのです。
本作は、子どもが成長とともに人生の複雑さや大人たちの矛盾を知っていく過程を、決して美化することなく丁寧に映し出します。
明るく純粋だった少女が現実を知っていく姿は、生きていくとは何かを静かに問いかけているようにも感じられます。
舞台となる通化街夜市(臨江街夜市)の鮮やかなネオンや雑踏は非常に印象的で、3人のすさんだ生活との対比がより際立ちます。
さらに撮影の多くがiPhoneで行われたこともあり、台湾の街並みを飾り立てることなく、そのまま切り取ったような映像のリアリティも、本作の大きな魅力となっています。
「当たり前」を疑う視点
イーシンは母の実家で、「左利きは悪いものだから右利きに直しなさい」と祖父から厳しく言われます。
その言葉を受け止めきれない彼女は、「悪いことをしてしまうのは左手のせい」と考えるようになり、幼いながらも歪んだ理屈を身につけてしまいます。
かつて日本でも左利きを矯正する風習が広く見られたように、多数派に合わせることが「当たり前」とされてきた時代は少なくありません。
しかし、生まれ持ったものを本人の意思とは無関係に否定されることは、当事者にとって大きな生きづらさにつながります。
長女イーアンの屈折した生き方からも、その影響が垣間見えます。一方で母の実家は、過去の出来事を理由に母を責め続けますが、決してその家族だけが正しいわけではありません。
それぞれが弱さや矛盾を抱えていることが、物語を通して少しずつ明らかになっていきます。
反対に、一見すると胡散臭く見える隣人の男性が、さりげなく家族を支える場面には人情味が感じられます。血縁よりも近くで支えてくれる他人の温かさが印象的で、「遠くの親戚より近くの他人」という言葉を思い起こさせます。
母と娘二人という家族構成からフェミニズム的な視点で語ることもできる作品ですが、本作がより強く描いているのは、「昔からそういうもの」と受け継がれてきた価値観への問いかけではないでしょうか。
正解を提示するのではなく、時代が変わってもなお残り続ける生きづらさを映し出し、その中で人はどう生きるべきかを静かに考えさせる作品となっています。
まとめ
本作には、人々が抱える生きづらさを象徴する存在がいくつか登場します。その一つが「檳榔(びんろう)」です。
ヤシ科植物の実である檳榔は、台湾では古くから嗜好品として親しまれており、劇中ではイーアンが台北で檳榔を売る店に勤めることになります。
健康面では議論のある嗜好品でありながら、地域によっては婚礼など祝いの場でも用いられるなど、今なお文化や風習の一部として受け継がれています。
その存在は、良し悪しだけでは語れない「古くから残り続ける価値観」の象徴のようにも映ります。
もう一つ印象的なのが、台湾では法律上、生涯で3回まで改名が認められているという制度です。劇中では、イーアンが偶然再会した旧友が改名していたことを知り、複雑な表情を浮かべる場面があります。
名前を変えることは過去を完全に消すものではありませんが、「今の自分を変えたい」と願う人々の思いを映し出す象徴的な描写となっています。
政治的にも歴史的にも複雑な背景を持つ台湾。本作はそんな社会を舞台に古い価値観やしがらみの中で迷いながらも、自分らしく生きようとする人々の姿を静かな力強さで描いた一本です。
派手な展開ではなく、一人ひとりの日常を積み重ねながら、「当たり前」とは何かを観る者に問いかける、余韻深い作品となっています。
2026年8月14日(金)より映画『左利きの少女』は全国公開!



































