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【ネタバレ】アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし|あらすじ感想と結末の評価考察。最後はどうなる?童話『シンデレラ』をモチーフにしたゴシック・ボディホラー

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

「シンデレラ」の義理の姉妹を主人公にしたグロテスクなゴシック・ボディホラー

誰もが知る童話「シンデレラ」をモチーフに、斜め上をいくストーリーに容赦ないグロテスク描写で彩るシンデレラの義理の姉妹の物語『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』。

美しくなるためなら痛みに耐え、整形も厭わない……ルッキズムの悍ましさを炙り出す肉体的にも精神的にも痛々しい誰もが知る「シンデレラ」の誰も知らない恐ろしさ。

スウェランディア王国のユリアン王子と結婚するため、淑女たちは己の美しさに磨きをかけています。母・レベッカの再婚により、妹アルマとスウェランディア王国にやってきたエルヴィラ。

再婚相手の娘・アグネスは家柄にも恵まれた美しい娘でしたが、一方エルヴィラは、口元は矯正器具に覆われ、ふくよかな体形、こじんまりとした鼻、つぶらな瞳。母・レベッカは舞踏会でエルヴィラが王子様に選ばれるため、手段を選ばず恐ろしい施術をさせ、エルヴィラは美しくなるためと痛みに耐え……。

監督を務めたのは、本作が初長編作となるノルウェー出身の女性監督エミリア・ブリックフェルト。主人公エルヴィラを演じたのは、ノルウェーでモデル兼女優として活躍するリア・マイレン。

ルッキズムに対する痛烈な風刺も込めた容赦ないグロテスク描写の数々!鮮烈な北欧発のボディホラーです。

映画『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』の作品情報


(C)Mer Film / Lava Films / Zentropa Sweden / MOTOR / Film i Väst / Mediefondet Zefyr / EC1 Łódź 2025

【日本公開】
2026年(ノルウェー・デンマーク・ポーランド・スウェーデン合作)

【原題】
Den stygge stesøsteren

【監督・脚本】
エミリア・ブリックフェルト

【製作】
マリア・エケルホフド

【キャスト】
リア・マイレン、アーネ・ダール・トルプ、テア・ソフィー・ロック・ネス、フロー・ファゲーリ、イサーク・カムロート、マルテ・ゴーディンゲル

【作品概要】
誰もが知る童話「シンデレラ」の誰も知らない闇……。

本作が初長編作となるノルウェーの新鋭監督エミリア・ブリックフェルトは、「美の痛み」という女性蔑視的な考え方から着想を得ているといいます。また、ボディホラーとしてインスピレーションを受けたのはデヴィッド・クローネンバーグ監督だと言います。

今もなお蔓延るルッキズムを「シンデレラ」の義理の姉妹をモチーフに鮮烈なボディホラーとして描き出しました。

製作には『イノセンツ』(2021)のマリア・エケルホフドが携わり、第75回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品、第43回ブリュッセルファンタスティック国際映画祭シルバーレイブン受賞、第29回富川ファンタスティック国際映画祭グランプリ&観客賞受賞など数々の映画祭に出品、受賞しました。

映画『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』のあらすじとネタバレ


(C)Mer Film / Lava Films / Zentropa Sweden / MOTOR / Film i Väst / Mediefondet Zefyr / EC1 Łódź 2025

エルヴィラは、母・レベッカの再婚のため、妹アルマと共にスウェランディア王国にやってきました。

スウェランディア王国のユリアン王子は貴族の淑女たちの憧れの存在であり、日々彼女たちは王子に選ばれるため、己の美を磨いていました。

エルヴィラもその一人で、王子の詩集を読んでは王子との素敵な恋を夢見ています。しかし、再婚して早々結婚した夫は病により亡くなってしまいます。そして再婚相手の娘であるアグネスから「父はお金のために結婚した」と告げられます。

レベッカもお金目当てで結婚したはずなのに、娘2人と義理の娘を抱えて未亡人となり、途方に暮れます。

そんななか、数ヶ月後の満月の夜にユリアン王子が舞踏会を開くという知らせが舞い込みます。アグネスとエルヴィラは招待状を受け取り、舞踏会で王子様に選べれるべくスクールで淑女としてのたしなみ、踊りを学びます。

家柄にも恵まれ淑女としてダンスや教養が身についており外見も美しいアグネスと違い、エルヴィラは口に矯正器具をつけ、ふくよかな体型をしていました。

母は美しくなるためには手段を選んでいられないと、エルヴィラの矯正器具をとり、鼻を削る施術を受けさせます。あまりの痛みにエルヴィラは悲鳴をあげ、その様子を見ていたアルマは怯えます。

メタルの鼻の矯正器具をつけスクールで学ぶエルヴィラに対し、ダンスの講師は冷たい態度で後ろにいきなさいと言います。

それでも、エルヴィラは王子の前で踊るメンバーに選ばれ喜びますが、選ばれたのは母が金を渡したからだと講師に告げられ、「努力しなさい」と言われてしまいます。

悔しさを感じながらも、エルヴィラは王子と結婚することを夢見て努力し、痛みにも耐えます。そんなエルヴィラの頑張りを見たもう一人の講師がエルヴィラにあるものを渡します。

それは虫の卵でした。その卵を飲み込めば、いくら食べても虫が代わりに食べるから太らないというのです。王子に選ばれたら虫下しを飲むと話すエルヴィラに、アルマは驚きを隠せません。

「虫を飲むなんて死んでも嫌」というアルマにエルヴィラは「子供ね」と言い、自分は正気で、全ては美しくなるためだと思い込んでいます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』ネタバレ・結末の記載がございます。『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)Mer Film / Lava Films / Zentropa Sweden / MOTOR / Film i Väst / Mediefondet Zefyr / EC1 Łódź 2025

ある日、エルヴィラは森の中で狩りをしている王子とその友人らと遭遇します。友人らはエルヴィラの鼻の器具をからかい、下品なことを言います。

「やったらどうだ」と友人らが王子にけしかけると王子はエルヴィラの外見を見て拒否します。傷つきながら家に帰ったエルヴィラは、アグネスが馬の従者と馬舎で性行為をしているところを目撃します。

そして母に報告し、「アバズレが!」と母は怒り、アグネスを召使にします。

次第に虫の効果が出始め痩せたエルヴィラは、鼻の器具もとれ外見に変化が表れ始めます。母はさらにまつ毛と豊胸の施術を受けさせ、エルヴィラは痛みに絶叫しながらも、自信を持ち始めます。

召使にされたアグネスは舞踏会に行くことも禁じられ、スクールにも通えなくなりました。ダンスの主役に選ばれたアグネスがいなくなり、代役に抜擢されたのは何とエルヴィラでした。

王子に選ばれるためには手段を選ばず、何でもやってきたエルヴィラの体は次第に、美だけではない変化が表れ始めます。

お腹の虫は常にお腹を空かせ、腹がぎゅるぎゅる鳴るエルヴィラは、深夜に台所から様々なものを食べるようになり、髪も抜け始めます。そんななか母は美しいドレスを用意し、抜けた髪の毛が目立たぬようカツラも用意し、とうとう明日は舞踏会。

一方でアグネスも今の状況を抜け出すため、舞踏会に行こうとしますが、それに気づいたエルヴィラがアグネスのドレスを引きちぎります。

お金がないと葬儀をしてくれず、腐っていく父親の下で泣いていたアグネス。そこに亡くなった母が現れ、虫たちがドレスを縫い直し、「12時には帰るのよ、馬車がカボチャに戻ってしまうから」とアグネスに忠告します。

舞踏会で貴族も娘たちがそれぞれ王子の前で紹介され、王子が舞踏会で踊る相手を決めます。王子は美しくなったエルヴィラに目を止め「踊ってくれませんか」と手を差し伸べます。

嬉しさに満ちながらエルヴィラは、王子と踊り始めましたが、そこに遅れて正体不明の美女がやってきます。

王子はその美女に釘付けになり、エルヴィラは王子を奪われてしまいます。ショックで会場を抜け出したエルヴィラは、気分が悪くなり吐きます。

エルヴィラが吐き出したのは虫の卵でした。自分の体がどうなっているのかわからず「私死んじゃう」と泣くエルヴィラを母は平手打ちをして、「王子以外にも貴族の殿方がいっぱいいる。しっかりしなさい」と言います。

エルヴィラはうわの空になりながら、母に紹介されるまま殿方と踊り続けます。そしてある瞬間に美女の顔が見え、その正体がアグネスだと気づきます。

アグネスはそのまま足早に会場をさり、残されたのは片方の靴だけでした。「この靴のサイズとぴったり合う女性と結婚する」と王子は宣言します。

エルヴィラは家に帰るなり包丁を手に、アグネスに「靴を渡して」と迫ります。アグネスは抵抗します。騒動に気づいた母でしたが、舞踏会で捕まえた男性との行為に夢中で、エルヴィラの話に取り合おうとしません。

アグネスから靴を奪ったエルヴィラでしたが、エルヴィラの足には靴が小さく、入りそうにありません。呆然としたエルヴィラは、とうとう自分の足の指を切るという暴挙に出ます。

勢いよく指を切り落とそうとしましたが、うまくいかず、あまりの痛みに絶叫するエルヴィラ。アルマはそんなエルヴィラに駆け寄り止血しようとします。

母も駆けつけ、エルヴィラに痛みが和らぐ薬を飲ませます。そして「反対の足を切ったのね」とエルヴィラが王子が持っていた靴とは逆の指を切り落としてしまったことに気づきます。

「靴は履けるわ」という母にアルマは「ありえない」と母の決断に呆れ部屋に戻ってしまいます。母は一人でエルヴィラの両足の指を切断します。

翌朝、痛みに悶え、うまく歩くこともできないなか、それでも諦められないエルヴィラは、はって外に出ようとして階段で転がり落ちます。

そんなエルヴィラの様子を見てもアグネスは助けることもせず、王子の元に行き、王子は靴がぴったり合う女性が見つかったと喜びます。

アルマは男性と性行為に耽る母の寝室から金目のアクセサリーを盗むと、エルヴィラとともにスウェランディア王国を出国する決意をします。

うまく歩けないエルヴィラの足を持って支え、馬に乗せると2人は母を置いて屋敷を後にするのでした。

映画『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』感想と評価


(C)Mer Film / Lava Films / Zentropa Sweden / MOTOR / Film i Väst / Mediefondet Zefyr / EC1 Łódź 2025

誰もが知っている童話『シンデレラ』をモチーフに、美に執着する狂気、ルッキズムに対する風刺を込めたボディーホラー『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』。

本作における主人公は、シンデレラではなく、その義理の姉妹となるエルヴィラです。

しかし、本作においてシンデレラとなるアグネスは、童話のようなただ不幸で可哀想な娘としては、描かれていません

貴族の良い家柄の娘として育ったアグネスは、エルヴィラがそうではないのを理解し、父親が金のために再婚したことも知っています。

アグネスのエルヴィラに対する態度には恵まれた者としての余裕があり、立場が逆転して酷い目に合わされたこともありますが、壊れていくエルヴィラに手を差し伸べはしません

自分が今の状況から救われるための選択をし、王子と結ばれるアグネス。

アグネスの薄情とも思える行動は、貴族の娘として自身の結婚が経済的な余裕、立場の安定をもたらすことを理解している、現実社会を知っているからこそなのでしょう。

エルヴィラが、そのような現実を見ていたら、そこまでの施術せず、ほどほどにして、王子ではなく貴族の殿方をしたたかに捕まえて、身の安泰を選ぶこともできたはずです。

一方で対象的なのは、エルヴィラの妹アルマです。

再婚相手が亡くなった時に、母・レベッカはアルマはまだ初潮も迎えていないと言っています。

本作は明確な時代設定はされておらず、昔のおとぎ話というファンタジーさがありますが、その時代において、初潮を迎えたということは、結婚が可能な年齢になったことを意味するのでしょう。

母の言いなりになってグロテスクで想像を絶するような痛みに耐え、虫まで飲み込んだ姉を身近で見てきたアルマには、姉のようにはならないという決意を感じさせます。

初潮を迎えたアルマがそのことを母に伝えたかどうかは描かれませんが、アルマは追い出された馬番に変わって馬の世話をし、ドレスではなく男性のような格好をしています。

それは、商品として女らしさを身につけさせられることへの拒否と言えるのではないでしょうか。

母の言いなりになって王子に選ばれるために何でもしたエルヴィラでしたが、アグネスに負けてしまいます。そんなエルヴィラを母から解放し、ここではないどこかに連れ出すのがアルマなのです。

そこにシスターフッドと解放という現代的なテーマが現れていると言えます。美のために何でもするエルヴィラの姿は異常で、滑稽に思えるかもしれません。

誇張し、グロテスクに描いていても、商品のように消費させられる、美と若さにしか価値を見出されない……そんな息苦しさと悍ましさは現代社会とかけ離れたものではないことにハッとさせられます

まとめ


(C)Mer Film / Lava Films / Zentropa Sweden / MOTOR / Film i Väst / Mediefondet Zefyr / EC1 Łódź 2025

北欧の新鋭監督が美へのグロテスクなほどの執着を炙り出した『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』。

思わず目を背けたくなるような見ていても痛い施術の数々。鼻を削るところから始まり、瞼を直接縫ってまつげをつけ、最後は自らの足を切り落とそうとする……。

冒頭、エルヴィラは素直で世間を知らず、王子の詩を読んで理想の王子との恋を夢想していました。

本作の痛烈さは美への執着だけでなく、実際の王子が詩に象徴されるような繊細で完璧な王子ではない、俗物的な姿を描いているところにも現れています。

エルヴィラはお金持ちと結婚すれば幸せになれると信じて疑っていません。しかし、男性を取っ替え引っ替え、性を武器にしてきた母は幸せなのでしょうか。その姿は、母から言われるままのことをしてきたエルヴィラの未来と言えるかもしれません。




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