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Entry 2025/11/08
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映画『春の木』あらすじ感想評価。最優秀監督賞&男優賞の2冠に輝く“忘却”がつなぐ人間模様のドラマ|TIFF東京国際映画祭2025-11

  • Writer :
  • 松平光冬

映画『春の木』は第38回東京国際映画祭にて最優秀監督賞&男優賞の2冠を達成!

映画『春の木』が、第38回東京国際映画祭コンペティション部門で上映されました。

大成することができなかった女優が故郷に戻り、その挫折から立ち直ろうとする姿を描きます。

【連載コラム】『TIFF東京国際映画祭2025』記事一覧はこちら

映画『春の木』の作品情報


(C)2025 TIFF

【日本上映】
2025年(中国映画)

【原題】
春樹(英題:Mothertongue)

【監督・脚本】
チャン・リュル

【製作】
ポン・ジン

【共同脚本】
リウ・シューイー

【撮影】
ピャオ・ソンリー

【編集】
リウ・シンジュー

【キャスト】
バイ・バイホー、ワン・チュアンジュン、リウ・ダン、ポン・ジン、ホアン・ジェンシン

【作品概要】
『キムチを売る女』(2005)『柳川』(2021)などで知られるチャン・リュル監督によるヒューマンドラマ。中国を舞台に、夢破れた女性の挫折と再起を描きます。

出演は「モンスター・ハント」シリーズ(2016~2020)のバイ・バイホー、『サタデー・フィクション』(2019)のワン・チュアンジュン。中国第5世代を代表する監督でありプロデューサーとしても活躍するホアン・ジェンシンが共演。

第38回東京国際映画祭コンペティション部門として上映され、最優秀監督賞(チャン・リュル)と最優秀男優賞(ワン・チュアンジュン)の2冠を達成しました。

映画『春の木』のあらすじ


(C)2025 TIFF

上海で女優をしていた春樹は、故郷四川省の成都の方言を話せなくなったことが分かり、失意のうちに故郷に戻ることに。

地元の古びた撮影所の近くに住むことにした春樹は、かつて演技指導を受けた先生とその息子に会い……。

映画『春の木』の感想と評価


(C)2025 TIFF

上海で女優活動をしているも鳴かず飛ばず状態だった春樹は、ある新作映画で地元四川省の成都の方言を話す主役に抜擢。ところが、地元の方言が話せず聞き取ることしかできないことが分かり、役を降ろされてしまいます。

役者としての自信を無くした彼女は恋人に結婚を迫るも断られ、失意の中、故郷の成都に帰ることに。実母がいるアパートではなく、閉鎖された峨眉(がび)映画撮影所の近くでひとり暮らしを始めます。

挫折した女優の帰郷から始まる本作『春の木』のテーマは、“忘却”です。

子役時代に演技指導を受けた先生の張から、「上海では標準語(北京語)の演技ができないと通用しない」と教えられていた春樹。上海では方言を要しなかったため、そのまま“忘却”してしまっていたのです。

そんな春樹が帰郷して久々に張と再会するも、彼女はアルツハイマー病により記憶を“忘却”するようになっていました。ある日は春樹を思い出すも、ある日は忘れてしまう…。

そして、もう一つの“忘却”は、成都で撮影した映画。

メイク用品や映写機、戦車のセットといった、かつて映画の撮影で使用された備品がそのまま残されていた峨眉撮影所は、再開発により取り壊しが決まっていました。

撮影所がなくなるということは、そこで映画を撮っていた人々の思いや情熱までもが“忘却”してしまうことを意味します。

実は監督のチャン・リュルが本作の製作に動いたのは、自身が何度も利用してきたこの撮影所を使った作品を、最後にもう一本撮りたいと考えたから。脚本も何も出来ていない状態にもかかわらず、関係者に頼んで撮影許可を得た後、物語のアイデアを固めていったそう。

“忘却”からリュル監督が作品を生み出したように、春樹と張も“忘却”をきっかけに、張の息子・冬冬を交えた心の交流を生んでいきます。


(C)2025 TIFF

まとめ


(C)2025 TIFF

登場人物たちのセリフも少ないばかりか、劇的に盛り上がる展開も乏しく、どちらかといえば淡々と物語が進んでいく本作。かと思えば、突如ドローンによる大胆な空撮ショットを盛り込んだりと、掴みどころのない要素も持っています。

なおセリフに関しては、喋っている言語が北京語なのか成都方言なのかを字幕で明記されています。

これは、言語の違いによって表現のニュアンスも異なるという狙いがあると思われますが、中国語に詳しくない人(喋れない人)には伝わりにくいかもしれません(上映劇場では、中国人らしき観客から笑い声が多数起こっていた)。

「あらゆる芸術、映画に限らずすべての芸術は、失われ、忘れられていくものとどう結びつき、どう抗っていくかという行為だと思う」と語ったリュル監督。本作は、まさに監督の抗いによって生まれた執念の一作と言っても過言ではないでしょう。

【連載コラム】『TIFF東京国際映画祭2025』記事一覧はこちら

松平光冬プロフィール

テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。

ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)



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