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『FEMMEフェム』あらすじ感想と評価レビュー。ドラァグクイーンと暴行した男の“支配と服従”の駆け引きに翻弄されるラブ・サスペンス

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『FEMME フェム』は2025年3月28日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほかにて公開

ネイサン・スチュワート=ジャレットと、『1917命をかけた伝令』(2019)のジョージ・マッケイのダブル主演で贈る、心揺さぶるラブ・サスペンス『FEMME フェム』が2025年3月28日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほかにて公開されます。

ヘイトクライムの標的にされたドラァグクイーンが、自分を襲撃した男を相手に危うい駆け引きにのみ込まれていく姿を描いたイギリス製ラブサスペンスです。

2021年に英国アカデミー賞にノミネートされたサム・H・フリーマン&ン・チュンピン監督による同名短編を、同監督が長編映画化した。

支配と服従が交錯する先に待つのは、復讐か、それとも赦なのでしょうか。心をかき乱すラストが、観る者の奥底に眠る感情を呼び覚ます本作の魅力をご紹介します。

映画『FEMME フェム』の作品情報


(C)British Broadcasting Corporation and Agile Femme Limited 2022

【日本公開】
2025年(イギリス映画)

【監督・脚本】
サム・H・フリーマン、ン・チュンピン

【編集】
セリーナ・マッカーサー

【キャスト】
ネイサン・スチュワート=ジャレット、ジョージ・マッケイ、アーロン・ヘファーナン、ジョン・マクリー、アシャ・リード

【作品概要】
2021年に英国アカデミー賞にノミネートされた同名の短編を基に、サム・H・フリーマンとン・チュンピンが長編映画として大胆に昇華させたラブ・サスペンス。ベルリン国際映画祭で初披露され、観客に衝撃を与えるとともに同時に大きな称賛を集めました。

差別的な動機による暴力で心身に深い傷を負ったドラァグパフォーマーが、自らを襲撃した男と危うい駆け引きの渦に引き込まれていく様を描きます。

ネイサン・スチュワート=ジャレット、『1917命をかけた伝令』(2019)のジョージ・マッケイがダブル主演を務めます。

映画『FEMME フェム』のあらすじ


(C)British Broadcasting Corporation and Agile Femme Limited 2022

ジュールズはナイトクラブのステージで観客を魅了するドラァグクイーンでした。ある夜、ステージを終えた彼は、タトゥーだらけの男プレストンと出会います。

しかし、その出会いは突然、憎悪に満ちた暴力へと変わり、ジュールズの心と体には深い傷が刻まれます。舞台を降り、孤独な日々を送りながら、彼は痛みと向き合い続けていました。

数ヶ月後、偶然立ち寄ったゲイサウナでジュールズはプレストンと再会します。ドラァグ姿ではない彼を、プレストンは気づかぬまま誘いました。

かつて憎悪に駆られジュールズを襲った男が、実は自身のセクシュアリティを隠していたことを知ったジュールズはその矛盾を暴き、復讐を果たすため、密会の様子を記録しようと計画します。

ところが、密会を重ねるたび、プレストンの暴力的な仮面の奥にある脆さと葛藤が浮かび上がります。プレストンの本質に触れるたび、ジュールズの心にもまた説明のつかない感情が芽生え始めました。待ち受けるのは復讐か、それとも…。

映画『FEMME フェム』の感想と評価

二人の主人公が駆け引きの大きな渦に飲まれていく様を描く極上の心理サスペンスです。

ドラァグクイーンの顔を持つジュールズは、ある夜出会ったプレストンからひどい暴力を受け心身に大きなダメージを受けます。しかし、その後プレストンがゲイであることが判明。

自分が暴行したドラァグクイーンと気づかずに、プレストンはジュールズを誘います。ジュールズは復讐を果たすために彼の誘いを受け入れ、関係を持ちました。

ネイサン・スチュワート=ジャレット演じるジュールズの醸し出す、恐ろしいほどの色気に当てられてしまうことでしょう。

怯えた瞳、復讐に燃える表情、立場が強くなり始めた時のオーラなどを、自在に演じ分けるジャレットの演技に魅了されます

狂人に見えるほど超短気で暴力的な男でありながら、おどおど怯える子犬のような瞳も見せるプレストンに扮する、ジョージ・マッケイの繊細な芝居にも注目です。

ふたりの関係性がもつれ合いながら様々な形に変化していくさまが、緊迫感を途切らせることなく描かれていきます。どうぞ彼らの行き着く先を最後まで見届けてください。

まとめ


(C)British Broadcasting Corporation and Agile Femme Limited 2022

支配する側と服従する側がくるくると入れ替わる珠玉の心理サスペンス『FEMME フェム』暴力的な描写でハラハラさせながらも、奥深くに存在する心の柔らかな部分と、その深いつながりを描き出します

激しさと脆さ、粗暴さと繊細さが混在する魅力的なふたりの主人公の姿を通して、人間の哀しさと愛おしさが浮かび上がり、最後まで目が離せません。

ラブ・サスペンス映画『FEMME フェム』は2025年3月28日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほかにて公開です。



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