Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

『ボールド アズ、君。』感想評価レビュー。ギターにかける少女の情熱と本格ライブシーンに圧巻!

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『ボールド アズ、君。』は2025年3月29日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開

2022年に『ディスコーズハイ』で長編映画初監督を務めた岡本崇の第2作『ボールド アズ、君。』が2025年3月29日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開となります。

音楽や映画の作者の意図とは関係なく救われたという監督自身の経験を基に、カリスマ歌手とミニシアター支配人に救われた主人公の熱い思いを描いた作品です。

主演を務める、バンド・みるきーうぇいのボーカルギター担当の伊集院香織をはじめ、後藤まりこらミュージシャンが集結。圧巻のライブシーンが感動を呼び起こす本作の魅力をご紹介します。

映画『ボールド アズ、君。』の作品情報


(C)コココロ制作/Cinemago

【公開】
2025年(日本映画)

【監督・脚本・編集】
岡本崇

【キャスト】
伊集院香織、後藤まりこ、おかき、ぽてさらちゃん。、鈴木智久、下京慶子、岡本崇、daisuke、津田寛治

【作品概要】
2008年頃からインディーズバンド界のMV制作黎明期を支え、2022年に長編映画監督デビュー作『ディスコーズハイ』(DVDは3月1日リリース)の唯一無二のセンスで全国のミニシアターファンに衝撃を与えた岡本崇監督。

長編映画第2弾のタイトルは、敬愛するギタリスト、ジミ・ヘンドリックスの2ndアルバムの最後の曲「ボールド・アズ・ラヴ(愛のように大胆)」へのオマージュで、“君”への憧れの気持ちを込めて、『ボールド アズ、君。』と命名。

音楽や映画の作者の意図には関係なく救われた自分の経験を元に、“勝手に救われよう”をテーマに、カリスマ的なボーカリストとミニシアターの支配人に救われた主人公の熱い想いを描き、第18回田辺・弁慶映画祭のコンペティション部門、第34回ゆうばり国際ファンタスティック映画のゆうばりセレクション部門に正式出品され、大須インディペンデント・フィルム・フェスティバル2024にて長編部門最優秀賞、山形国際ムービーフェスティバル2024にて審査委員特別賞、第1回アートファインディング映画祭で俳優賞(伊集院香織/みるきーうぇい)と優秀賞、神戸インディペンデント映画祭2024にて企画賞を受賞しました。

映画『ボールド アズ、君。』のあらすじ


(C)コココロ制作/Cinemago

人付き合いが苦手な南條珠(なんじょう・たま)は、小学生の頃からシネコンとは一線を画すこだわりのラインアップのミニシアターを自分の居場所としていました。支配人の井澤雄一郎(いさわ・ゆういちろう)を神様と呼んで慕っています。

そんな珠にとって、ロックバンド“翳(かげ)ラズ”のボーカル・瓶子結衣子(へいし・ゆいこ)はもう一人の自分を救ってくれた神様でした。

中古ギターを入手して、スーパーギターバトルで優勝するほどの実力になった珠は、さらに上を目指して練習する日々を重ねます。翳ラズの記事を読み、次の翳ラズのライブチケットは必ず入手すると決意を新たにしました。

そんなある日、珠がバイトをする居酒屋に、たまたま瓶子結衣子がやってきて、珠がアップした“弾いてみた動画”を見ていたことが発覚します。

珠は「翳ラズと同じステージに立って直接お礼を言うこと」を目標に、ますます動画制作に励みますが、行きつけのミニシアターが翳ラズのライブのタイミングで閉館するということを知り…。

映画『ボールド アズ、君。』の感想と評価


(C)コココロ制作/Cinemago

ポスター画像に書かれた「ぼくらは勝手に救われる」のテーマが胸をズシンと打つ、珠玉の青春映画です。

人は何かに救われることが多々あります。そして、思いがけず自分の存在が誰かを救っていることも。みんな知らず知らず互いに”救い合っている”といえるのかもしれない、そんな風に思わせてくれる作品です。

主人公の珠は人とコミュニケーションをとるのが下手で、学校でもひとりぼっちで居場所がなく、いつも孤独を抱えています。そんな彼女を救ってくれたのは、幼い頃から通い続ける寂れたミニシアターとそのオーナー、そして、ロックバンド「翳(かげ)ラズ」のボーカル・瓶子結衣子の歌声でした。

結衣子への憧れから、自分もギターを手にとり、練習に熱心に励む珠。素直にまっすぐ夢へと突き進む彼女の姿に、周囲の人達は憧れと励ましを感じるようになっていきます

岡本監督が以前からよく知る、バンド・みるきーうぇいのボーカルギターを担当する伊集院香織が珠をキュートに演じますギターの演奏シーンは圧巻です。

そのほかにも、結衣子役の後藤まりこをはじめ監督旧知のミュージシャンが多数出演しています。見応えあるライブシーンは本作の大きな見どころです。

ミニシアターオーナー役の津田寛治にも注目です。岡本監督は、津田がオファーを快諾してくれて嬉し泣きしたと語っています。その気持ちがよく伝わってくるほど、もう一人の主人公ともいえる胸を打つ彼の芝居から目が離せません

まとめ


(C)コココロ制作/Cinemago

人の心を救う何かの存在や、それらが持つ強い力を、音楽の調べに乗せて実感させてくれる作品『ボールド アズ、君。』

観ている内に、自分にとってもそんな支えとなってくれる何かがあったことに改めて気づかされることでしょう。そして、自分もまた、誰かを救える存在になりたいと思わずにはいられません。

映画『ボールド アズ、君。』は2025年3月29日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開です。





関連記事

ヒューマンドラマ映画

大映男優祭を特集上映!『座頭市』『炎上』など代表作のあらすじ紹介

4月14日(土)~5月11日(金)まで角川シネマ新宿にて「大映男優祭」を開催。 “その男たちは、清らかで、美しい――”と、あのしっとりと艶やか湿度をもった大映作品の中から、2017年の「大映女優祭」に …

ヒューマンドラマ映画

映画『ルージュの手紙』あらすじと感想【評価:カトリーヌ共演の考察】

2017年12月9日(土)より、シネスイッチ銀座ほか全国公開される『ルージュの手紙』。 大女優カトリーヌ・ドヌーヴは自身の生き方そのもののように、人生を謳歌する義母役を粋でチャーミングに演じています。 …

ヒューマンドラマ映画

映画『8 1/2(はっかにぶんのいち)』ネタバレあらすじ解説とラスト結末の感想評価。巨匠フェリーニの名作おすすめは幻想世界に酔う最高傑作

巨匠フェデリコ・フェリーニが幻想的に自伝を映し出した傑作 映画『8 1/2』は、イタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニ監督の最高傑作と呼び声高い自伝的作品。 スランプに陥った映画監督が現実と夢想を行き来 …

ヒューマンドラマ映画

『ダウントン・アビー』あらすじ感想と評価レビュー。新旧キャストも揃えたクローリー家が国王夫妻の訪問に総出で奮闘するさまを描く

人々を魅了してやまない味わいある人間ドラマ 大邸宅に暮らす貴族・クローリー家と使用人たちの生活を描き、ゴールデングローブ賞やエミー賞に輝いたイギリスの人気ドラマを映画化。ドラマ版に引き続き、オスカー受 …

ヒューマンドラマ映画

『アイアンクロー』ネタバレあらすじ感想と評価考察。プロレス界に刻まれた悲しき呪いの連鎖を克明に映画化

頂点を追い求めたプロレスラー一家を覆う悲劇の連鎖 気鋭の映画会社A24が贈る2023年製作のアメリカ映画『アイアンクロー』。 アメリカの伝説的プロレスラー、フリッツ・フォン・エリックとその息子たちを取 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学