ホラー小説『近畿地方のある場所について』が映画化に!
作家・背筋がWeb小説サイト「カクヨム」に投稿したホラー小説『近畿地方のある場所について』。
本作は、モキュメンタリー手法を用いて、事実であるかのように表現する形式で描かれたホラーミステリーです。
主人公・背筋の友人であるオカルト雑誌の編集者が、行方不明になりました。背筋は友人の消息を知るために、雑誌に彼の情報を求める文章を載せます。
そして、彼が追っていた近畿地方のある場所についての過去の編集記事から、関係者へのインタビューを実施し、ネットの書き込みを調べていきます。数多いエピソードがやがてひとつの謎に紐づいていくのですが……。
小説『近畿地方のある場所について』が映画化決定! 2025年に全国ロードショーされます。
映画公開に先駆けて、小説『近畿地方のある場所について』をネタバレありでご紹介します。
CONTENTS
小説『近畿地方のある場所について』の主な登場人物
【背筋】
主人公。オカルト雑誌のライター。
【小沢】
背筋の友人。オカルト専門誌のライター。
小説『近畿地方のある場所について』のあらすじとネタバレ
オカルト雑誌のライター・背筋の友人小沢が消息をたちました。背筋は雑誌に彼のことを書き、読者に彼を探してくださいとお願いします。
小沢は、「1984年に奈良県で起こった少女行方不明事件」、「2002年関西の中学校の林間学校ヒステリー事件」、「2017年のおかしな書き込み」という、年代の違う3つの記事に興味を持ち、背筋にその話をしていました。
それは、3つの記事の話の中に出て来る場所が、近畿地方の「●●●●●」という一帯の場所だったからです。背筋はある事情があり、正確な場所を伝えたくないので、ある場所の範囲内に該当する場所は全て「●●●●●」としていました。
3つの話は心霊スポットを主題にしているわけでなく、話の舞台が「●●●●●」であり、「山」というキーワードも出て来たので強く印象に残ったと言います。
奈良県の行方不明になった少女を「●●●●●」のダムの近くで見かけたという人がいました。林間学校は「●●●●●」の山の近くの施設で行われていました。おかしな書き込みをした人物の住所は「●●●●●」の山の中の神社でした。
これらを心霊スポットと考えると、「山」を中心にして全て山の西側に当たるようです。
小沢はそこまで話し、また山の東側には「まっしろさん」という学校の怪談話があることや飛び降り自殺者が頻繁にでるマンションがあることも分かったと言います。
小沢はそれらの繋がりを見つけようと、あの一帯の山に纏わる話や山の神社の話に関して注意して調べてみると言い、ここまで来たら「●●●●●」へ行ってみようと思うと、背筋に話しました。
もちろん、背筋は止めますが、小沢は行ってしまい、そのまま行方不明となったのです。
小説『近畿地方のある場所について』の感想と評価
リアルなモキュメンタリー
Web小説サイト「カクヨム」に第1話が投稿されると瞬く間に大注目作として話題になった『近畿地方のある場所について』。連載が続くにつれて若年層を中心にファン層を拡大し、累計2000万PVを超えるヒットを記録しました。
オカルト雑誌の編集者・小沢が行方不明になりました。彼が消息を絶つ直前まで調べていたのは、近畿地方のある場所にまつわる過去の編集記事でした。
小沢はなぜ消息を絶ったのか? いまどこにいるのか? 小沢の友人である主人公・背筋は、彼を探そうとします。そして、すべての謎がある場所へとつながっていたのがわかりました。
この作品は普通の小説と異なり、モキュメンタリー形式で書かれています。モキュメンタリー(mockumentary)とは、ドキュメンタリーの手法を用いて事実であるかのように表現されたフィクション作品のことです。
章ごとにインタビュー、書き込み、SNS情報などから選出された怪談話がいくつも登場し、背筋はそれら一つずつを検証しながら、小沢の消息を探していました。
ですが、それが実は「●●●●●」についての怪談を広める役割だったことがラストで判明します。
本作が与える恐怖とは
山へ誘う呼び声、赤いコートの女、集団ヒステリー事件、自殺が頻発に起こるマンション、呪いのシールetc。
作品の章が進むにつれ、一見全く関係のなさそうな事象が、パズルのピースがハマって行くように「●●●●●」の呪いにピタリとマッチしていきます。
全て計算ずくで行われているようなピタリ感にゾッとするとともに、誰がこんな現象を起こすのかと不思議に思います。
作中で、除霊ができるという1人の僧は、「このモノは除霊などは出来ない。霊ではなく神のような存在だ」と言っていました。
また霊感がある人たちは、「見えるはずのない者が見えた時は知らないふりをしておくように」と言っています。
近畿地方のある場所は、小説内では架空の場所なのですが、古代から神話や伝説が数多く残される山深い神聖な場所と思えます。
本作では「●●●●●」についての真相は明かされていません。ですが、人が触れてはいけないモノ、見ないふりをするのがいいモノがこの世にあるということがわかります。
大昔からいるあるモノが、人間を求めて呼び寄せているとしたら……。人の力では逆らえません。
本作では、残酷なシーンは描かれていませんが、エピソードの内容だけでも‟背筋も凍る思い”を与えています。
映画『近畿地方のある場所について』の見どころ
話題沸騰中の小説『近畿地方のある場所について』の実写映画化が決定しました。
監督を務めるのは、『ノロイ』(2005)『サユリ』(2024)や『地獄少女』(2019)『オカルトの森へようこそ』(2022)で知られる鬼才・白石晃士監督です。
白石監督は、映画化にあたり「原作の得体の知れない黒い魅力を、世界中の人々に感染させるべく、映像化という呪術を仕掛けていきます」と語っています。
また、この小説に感銘を受けた櫛山慶プロデューサーも、「奇妙で底知れない断片のような話を、監督がどう映像化するのか、私自身震える思いで製作中です」と胸の内を明かしました。
小説では、あちこちからかき集めたような不気味な話の一つ一つが、やがて近畿地方の「●●●●●」地域に関わるものとわかってきます。
この事実に気が付き、そこに仕組まれた巧妙な罠は読み手に新たな恐怖を与えます。一方、そんな話はそれを怪談として話す人間の好奇心やSNSによって、さらに広く世に広がってしまいました。
加えて、近畿地方の「●●●●●」地域にあるモノは、人間を誘い込んで取り込んでしまいます。これは、一種の呪いなのに違いありません。
インタビューなどの語り口調だけで文章化された一連の話から、映画では呪いに纏わる恐怖をどのように表現するのかが、大きな見どころでしょう。
映画『近畿地方のある場所について』の作品情報
【日本公開】
2025年(日本映画)
【原作】
『近畿地方のある場所について』(著者・背筋/KADOKAWA刊)
【監督】
白石晃士
【プロデューサー】
櫛山慶
まとめ
Web小説サイトから大評判となったホラー小説『近畿地方のある場所について』をご紹介しました。
本作は、普通の起承転結のある小説スタイルではなく、インタビューやネットの書き込みなどから成るモキュメンタリーのミステリーホラーです。
消息をたった友人を探すために、近畿地方の「●●●●●」地域でおこるオカルト的な不思議話の真相を探る主人公。ですが、そこには人間を自分の世界へ引き込もうとするモノの存在がありました。
本作には、残酷な描写や突然襲われるような出来事は一切ありません。でもなぜこれほど後味悪く、薄気味悪いのか。
少しでも話を知った者に「山」への誘いが来るように、この事実を知ったら呪いが降りかかるのかも知れないと言う恐怖心に取りつかれるからなのでしょう。
人の好奇心を上手く利用して書かれたホラー小説『近畿地方のある場所について』は、このたび映画として、2025年に全国ロードショーされます。
果たして映画では「●●●●●」の恐怖をどのように表現するのか。期待は高まります。