韓国に逃げ延びた連続殺人鬼が巻き起こす「最後の事件」
あらゆる分野でデジタル化が進む昨今では、常に持ち歩く「スマートフォン」は生活の要であると同時に持ち主の人生の大部分が詰まったものとなっています。
そんなスマートフォンを落としたことから自分のあらゆる情報が流出し、やがて自身の命も脅かされていく恐怖を描いた志駕晃の小説「スマホを落としただけなのに」はシリーズ累計発行部数100万部を突破するヒットを記録しました。
今回は映像化でも大人気シリーズとなった「スマホを落としただけなのに」シリーズの最終章となる映画『スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム』(2024)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
CONTENTS
映画『スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム』の作品情報
【公開】
2024年(日本映画)
【監督】
中田秀夫
【脚本】
大石哲也
【キャスト】
成田凌、クォン・ウンビ、千葉雄大、井浦新、田中圭、白石麻衣、原田泰造、大谷亮平、佐野史郎、真飛聖、猪塚健太、髙石あかり
【作品概要】
志駕晃による小説を『リング』(1998)で知られる中田秀夫が映像化した「スマホを落としただけなのに」シリーズの3作目に当たる作品。
『カツベン!』(2019)や『くれなずめ』(2021)で主演を務めた成田凌がシリーズの顔でもある連続殺人鬼・浦野善治をを引き続き演じるなど、シリーズに出演してきた多くのキャストが本シリーズに再出演を果たしました。
映画『スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム』のあらすじとネタバレ
内閣サイバーセキュリティ室に出向となった刑事の加賀谷は神奈川県警を訪れていました。
先輩刑事の毒島が捜査していたのは、清掃の仕事をする男性が一方的に好意を寄せていた女性に恋人がいると知ったことで激高し殺害に及んだ事件であり、加賀谷は犯人の男が使った「Wi-Fiを内臓した充電ケーブルと既存の充電ケーブルをすり替え」ストーカー行為に及んでいたと言う手口に興味を寄せていました。
犯人の男は連続殺人鬼・浦野善治がダークウェブ上でサイバー犯罪の手口を広めていると話し、浦野を目の前で逃がしてしまった日から彼の逮捕に信念を燃やしている加賀谷は浦野が再び動き出していると感じます。
一方、韓国に身を潜める浦野は韓国の反政府組織「ムグンファ」に身柄を捕らわれ、幹部のキムから日韓首脳会談の阻止と韓国大統領の殺害を依頼されていました。
韓国をアジアの中心にすると言う心情を持つ「ムグンファ」にとって他国との協力姿勢を見せる大統領は邪魔な存在であるとキムは語り、浦野は「ある人物」の紹介を対価としてキムの依頼を引き受けることに決めます。
浦野を信用していないキムは部下のスミンを浦野の目付け役とすることで浦野の行動をコントロールしようと考えます。
キムの考えは既に浦野に読まれており、浦野はスミンの言動を無視する一方で過去の事件で一目惚れした富田麻美に未だに強く執着しており、浦野がキムに求めた「ある人物」とは人間を剝製にする技術を持った「剝製師」のチョンでした。
日韓首脳会談の会場の下見が行われる日、突然「Jアラート」が首都圏に鳴り響き、発射場所不明の弾道ミサイルが東京に向かって発射されたと発表されます。
着弾予想場所は日韓首脳会談の会場であり、各庁のエリートが集められたサイバーセキュリティ室の室長・窪田は即座に情報収集を命じますが、ミサイルが会場に着弾したと言う報道と映像が報道されてしまいます。
映像を見た加賀谷は、旗が風で流れる方向と会場から出る煙の流れる方向の違いから、即座に「フェイク動画」であること見抜き、会場の警備を行う公安警察の兵藤と連絡を取り会場の無事を確認。
韓国で自身の起こした騒ぎの報道を見た浦野は、自身が想ったより早く騒動が収まったことから、サイバーセキュリティ室に加賀谷がいることを知ります。
スミンを使いキムのスマホを乗っ取った浦野はキムのスマホのやり取りから、「バタフライ」と名乗る人物がキムに日韓首脳会談の情報を流していることを知り、国際メール便を使い加賀谷に「裏切り者がいる」と警告しました。
加賀谷は「裏切り者」が自分の身近にいると感じながらも、日韓首脳会談を巡るサイバーテロの中心に浦野がいることを確信し、兵藤と共に韓国に行き浦野を捕まえることを決めます。
兵藤に作戦の立案を任せた加賀谷でしたが、兵藤は浦野がまだ麻美に強い執着を持っていることから、彼女の夫である誠を利用し浦野をおびき寄せる作戦を立案。
麻美を囮とする方法に誠は強く反発しますが、彼自身のスマホが再度何者かに乗っ取られていることが分かると、誠は嫌々ながら作戦に協力することを決めました。
乗っ取られていることを逆手に取り、嘘の海外旅行の話をスマホですることで浦野を韓国のホテルにおびき出した兵藤と加賀谷は、兵藤が集めたはぐれ者の公安刑事と共に浦野を待ち構えます。
しかし、万が一のことを考え自身と同じ服装をした人間をSNSを使った闇バイトの募集で集めていた浦野の策によって逃走を許しただけでなく、刑事のひとりが浦野に刺されて死亡してしまいます。
夜、加賀谷に追跡不可能な電話で連絡を取った浦野は、加賀谷に「自分の違和感を信じろ」と伝え電話を切りました。
映画『スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム』の感想と評価
殺人鬼・浦野善治を描いた大人気シリーズ最終章
SNSや現代のデジタル技術に精通し、技術が普遍化したからこそ生まれる個人のセキュリティの穴をつくことに長けた殺人鬼の浦野善治。
誰もがやってしまいそうな些細なことから、その人のすべてに侵入していく浦野の恐怖は舞台が現代だからこそ描けるものとなっており、浦野の演じる成田凌の怪演も含め1作目の登場でシリーズの顔と呼べる登場人物となりました。
本作はそんな浦野を描いたシリーズの最終章と銘打たれており、彼の物語は本作を持ってしっかりと完結します。
許されてはいけない連続殺人鬼でありながら、幼少時の虐待の過去や、同様の痛みを持つ人間への強い感情を併せ持つことで「人間味」も感じる浦野は、最後の事件で何を思うのか。
浦野の心の奥にあるのは善の感情か悪の感情か、に注目して欲しい作品です。
現実とリンクする恐怖
本作は原作の3作目に当たる「スマホを落としただけなのに 戦慄するメガロポリス」を下敷きとした作品ではありますが、原作と映像化で物語が大きく異なりました。
原作では「オリンピック」を題材とした物語が映像化では「日韓首脳会談」に変更されており、物語の舞台となる国も「北朝鮮」から「韓国」へと移っています。
映画内ではより現代的となる要素が多く描かれており、浦野が日本に対し行うサイバーテロの標的となった「Jアラート」による弾道ミサイルの発射の緊急速報も、必ず目にしたものであるはずです。
さらに劇中では「闇バイト」についても触れられており、現実でも身近となってしまった恐怖を作中に入れることで現実とリンクさせる手法が効果的に活きていました。
まとめ
映画「スマホを落としただけなのに」シリーズの最終章にふさわしく、田中圭や井浦新、白石麻衣や原田泰造と言った作品を彩ってきたキャストが再び集結した本作。
『スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム』はあまりにも衝撃的なラストシーンを含め、一度でもこのシリーズに触れたことのある人に観てほしい完結編作品となっていました。