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【ネタバレ】コンクリート・ユートピア|あらすじ感想と結末の評価解説。韓流パニック・スリラーに人気俳優パク・ソジュンとイ・ビョンホンが挑む”災害を生き抜く”

  • Writer :
  • 星野しげみ

イ・ビョンホン×パク・ソジュンで描いたパニックスリラー『コンクリート・ユートピア』!

ある日未曾有の大災害が街を襲います。街は消滅しますが、奇跡的に残った1棟のマンションにそこの住民たちが生き残っていました。本作『コンクリート・ユートピア』は、マンション住民の生きる戦いを描きます

マンションの住民たちは、自分たちの住居に住み続け生きようとします。外部で生き残った者たちは、略奪や抗争を繰り返し、マンションにも押し寄せてきました。

本作を手がけたのは、『隠された時間』(2017)で高評価を得た新鋭オム・テファ監督です。

廃墟と化した街に起る生き残りをかけた争いを描く映画『コンクリート・ユートピア』をネタバレ有でご紹介します

映画『コンクリート・ユートピア』の作品情報

(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

【公開】
2024年(韓国映画)

【監督】
オム・テファ

【脚本】
イ・シンジ、オム・テファ

【編集】
ハン・ミヨン

【音楽】
キム・ヘウォン

【キャスト】
イ・ビョンホン、パク・ソジュン、パク・ボヨン、キム・ソニョン、キム・ドユン、パク・ジフ

【作品概要】
本作『コンクリート・ユートピア』は、大災害に見舞われた韓国・ソウルで崩落を免れた1棟のマンションの住民と外部者たちとの生き残りをかけた争いを描いたパニックスリラー。

KCIA南山の部長たち』(2021)『非常宣言』(2023)のイ・ビョンホンがマンションの代表者となるヨンタク、『ディヴァイン・フューリー/使者』(2020)のパク・ソジュンがミンソン、『君の結婚式』(2019)のパク・ボヨンがミョンファを演じました。

監督・脚本は『隠された時間』(2017)のオム・テファ。

映画『コンクリート・ユートピア』のあらすじとネタバレ

(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

韓国でおこったマンションブーム。高層マンションが街を埋めつくように立ち並び、飛ぶように売れていきます。

そんな時、突然大災害が街を襲いました。大きな地震が発生し、地面がうねりました。たった1棟のマンションだけを残して、街はがれきの山と化しました。

倒壊を免れたマンションの602号室に住むミンソンとミョンファの夫婦は、外の様子を見て驚きました。運よく建物に押しつぶされなかった人々が、冬の寒風が吹き晒す中、凍死していました。

家を無くした親子が602号室に助けを求めてきたので、夫婦は仕方なく自宅に居候させます。情報もなく救助のあてもないなか、物々交換で手に入れた食料や缶詰をわけあって食べる夫婦ですが、居候親子に見つかり、一緒に分け与えることになりました。

別の部屋では住居者と外部者の争いから爆発騒ぎが起こります。ミンソンは急いで駆けつけ、消火用のホースで水を出し火を消し止める男の手伝いをしました。

その後、マンションの一室にマンション住居者たちが集まりました。このマンションには、ミンソン夫婦の部屋ばかりでなく、住民以外の外部者たちが居候として何人もが逃げ込んでいました。

生存者であふれかえったマンションでの生活に身の危険を感じ、今後のことについて話し合いが始まります。

「食料も少ないし、自分たちの家なんだから邪魔者の部外者を全員追い出したい」という意見や、「みんなが助かる方法はないのか」という意見も出ましたが、なかなかまとまりません。

その結果、システムを作ることになりました。このマンションの住民を助けるためには、自己犠牲の精神がある人がよいと言われ、爆発騒ぎの時に率先して火消しの作業をしていた、902号室のヨンタクという男が満場一致で代表に選ばれました。

ヨンタクが外部者の扱いについて多数決をとったところ、外部者追放案が過半数をこえましたので、住民たちは「外部者追い出し作戦」を実行します。

マンションの空部屋を与えますという情報を流し、外部者たちを一度マンションの外へ全員出したあと、「このマンションの住居者以外の方は出ていってください」と通告し、マンションの扉を閉めて彼らを締め出しました。

すぐに外部者たちとの間に争いが起こりますが、一致団結した住民たちは無事にマンションを守ることができました。

「マンションは住民のもの」というコールが沸き起こり、住民全員がお祭りムードになりました。

その後マンションでは、防犯チーム、医療チーム、福利厚生チームなどのチーム編成が出来上がり、住民たちは自らのルールで1つの街のようになったマンション暮らしを堪能します。

兵役経験者のミンソンはヨンタクに目をつけられ、防犯隊長に抜擢されました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『コンクリート・ユートピア』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『コンクリート・ユートピア』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

何回目かの食料探しにマンションの外へ出る防犯チーム。ですが、食糧がなかなか手に入らなくなり、マンションの備蓄食料も窮乏してきました。

マンション住民の中でも、配給食糧が少ないと不満を漏らす者が出てきます。また、マンション住民の一人の男は、内緒で何人かの外部者を部屋に住まわせていました。

その頃、外の荒廃した地域では、このマンションが唯一人間らしい生活が出来る所だと、話題になっていました。マンションの住民たちは、人を殺して食べているというとんでもない噂もたちます。

噂が広まり、マンション内に火種がくすぶり始めた頃、防犯チームは大量の食糧を持ち帰ることに成功します。久しぶりの大量食糧にマンションはお祭り騒ぎになりました。

ちょうどそこへ、以前ここに住んでいたという一人の女性が戻ってきました。みなは彼女を歓迎し、祭りの輪のなかへ引き入れます。代表のヨンタクははしゃいで歌いながら、自分の過去を振り返っていました。

何の取り柄もなかった男がマンションの代表という権力を得たのです。ヨンタクは、マンションを守ることに言いようのない喜びを感じ、それを実行できる自分に自信を持ち始めていました。

防犯隊長となったミンソンは、生きるための厳しい取捨選択を余儀なくされ、ヨンタクのやり方と自分の考える道徳とで葛藤しますが、次第にヨンタクの偏った支配力に陶酔するようになっていきました。

(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

一時は蓄えられた食糧ですが、また配給が乏しくなってきました。住民たちの間ではまた不満が募ります。

マンションに戻ってきた女性はヨンタクの隣の部屋にいたと言います。ミョンファは彼女に外の様子を聞きます。「外は地獄。凍死した人の山ばかり。ここは天国よ」と女は言いました。

その頃、ヨンタクは通報者によって匿われていた外部者を発見。すぐに防犯隊長のミンソンを引き連れて外部者を捕まえ、裁きをはじめます。裁きの途中で外部者をかくまっていた住民がマンションのベランダから飛び降りました。

ミョンファはヨンタクの隣の部屋の女性が、「あの人はヨンタクではない。偽者だ」と言っていたことを思い出します。女性はここにいた頃、一度だけ隣の部屋の男性の顔を見たと言うのです。

ミョンファは、もう一度その話を聞こうとします。ヨンタクはその様子をじっと見ていました。

防犯チームがまた食糧探しに出かけました。その機会を捉え、ミョンファと女性はヨンタクの部屋に忍び込みます。そこで男性の死体を発見しました。

一方防犯チームは大量の食糧を探し当てましたが、その帰りに別のグループに襲われました。仲間が何人か死亡しましたが、なんとかマンションに辿り着きました。

マンションの玄関でミョンファは、ヨンタクに男の死体を見せます。他の住民たちも「このヨンタクは偽物で、外部者だから出ていけ」と叫びました。

ヨンタクは、過去に妻子のために大金をはたいてマンションを購入しようしました。このマンションの902号室を購入したつもりだったのですが、実は詐欺にかかっていたのです。

902号室の住民は出ていこうとせず、文句を言いに来たヨンタクと争いになり、男は殺されてしまいました。そこへ大災害がおこり、あの爆発騒ぎが起こったというわけです。

ヨンタクは怒り「おれが902号室のキム・ヨンタクだ」と叫びますが、押し寄せる人々に押されて、外へ出されそうになりました。住民の後ろには、隠れるようにして見ていた隣の部屋の女性が見えます。

ヨンタクは脱兎のごとく走り出し、女性を捕まえると地面を引きずって、「おまえのせいだ」と言って女性を地下の割れ目に投げ込みました。

その時、外にいる人々が団結してマンションになだれ込んできました。ミンソンとミョンファは、いち早くマンション内の部屋に隠れますが、彼らが窓越しに見たものは、群集ともみあう住民たちの姿でした。

暴徒と化した外部者たちと住民の争いの中、傷だらけになったヨンタクは902号室に戻りますが、そこで倒れてしまいます。

襲われて傷ついたミンソンとミョンファは、そのままマンションを出て歩き出しました。ミンソンは食糧探しの途中で見つけた髪飾りをミョンファにプレゼントしました。

翌朝、ミンソンは冷たくなっていました。泣き叫ぶミョンファは通りかかった人に助けられ、新しい住まいに案内されます。

「ここに住んでいいの?」と聞くミョンファ。「生きていれば住んでいい」と言われ、安堵します。

「あのマンションの人たちは人を食べるの?」と聞かれたミョンファは、「みな普通の人たちでした」と言いました。

映画『コンクリート・ユートピア』の感想と評価

(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

突然の大災害で、街が崩壊。奇跡的に残った1棟のマンションに住む人々は、自分たちで組織を作り、自分たちの日常を築きます。

マンションの住民のみが、住まいと少ない食料をわけあって住むことを許されます。主人公のミンソンの妻・ミョンファは、外部者も一緒に争わずに助かる方法はないのかと提案しますが、他の住民たちは‟マンションの住民のみの特権”に徹します。

運命のいたずらのように、住民の代表になった職業不明のさえない男・ヨンタクは、住民の為にとリーダーシップを取り、外部者全員をマンションの外へ追いやることに成功。

その後、マンション住民で防犯チームや医療チームなどを構成し、食糧探しに街へ出ていくようになりました。

生き残るためにチームを組んで活動する彼ら。組織の代表となったヨンタクは権力を持つようになると、次第にその胸中に‟何が何でも生き残る”という狂気が芽生えてきます。

それは、防犯隊長に命じられたミンソンにもいえることで、マンション住民だけが生き残ればいいという、自分本位な考えに占領され始めます。

みなで助け合いをするのか。食料を争って勝ち取るのか。極限まで追い詰められると、人間の本性が現れるようです

ミンソンをはじめ、マンション住民の多くが自分たちが生き残るための選択をしますが、その先端をいくのがヨンタクでした。

自然災害が導く生き地獄は、否が応でも人の本性を暴き出す怖ろしいものだと言えます。ハリウッドでも活躍するイ・ビョンホンが演じるヨンタクの狂気にゾッとすることでしょう。

まとめ

(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

自然災害がおこり、一棟のマンションだけを残して街が消滅。本作『コンクリート・ユートピア』は、その街で生き残った人々の凄まじい生き残り戦争を描いた作品です。

がれきの山と化した荒廃した街の中、食料を求めてさまよう人々。残された食料と住まいをめぐって、略奪や殺し合いが始まりました。

住居と食料を確保して住民同士が団結したマンションは、まさにユートピアだったのです。ユートピアを奪おうと押し寄せる人々との壮絶な戦いの末、勝者は何を勝ち取ったというのでしょう。

生きていく上での知恵と勇気、人としての道徳や強い精神

オム・テファ監督は大災害の中で想定される‟狂気”までも、見事に描き出しました




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