連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile003
映画好きでなくとも知っている映画シリーズ、「スター・ウォーズ」。
シリーズ7作目である『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)では世界歴代興行収入ランキング3位を記録するなど、1977年に公開された1作目から未だ衰えることのない大人気のシリーズです。
そして、そんな「スター・ウォーズ」シリーズでの大人気キャラクター「ハン・ソロ」を主役にした『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018)が今週末、ついに日本に上陸。
前回に引き続き「SF(サイエンス・フィクション)」の歴史を紐解きながら、宇宙へのロマンを忘れさせない近年の「スペースオペラ」について、語らせていただこうと思います。
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「スペースオペラ」を救ったのは日本の映画?
私自身は「スペースオペラ」について「宇宙全体を跨いだ壮大な冒険活劇」と解釈していますが、「スペースオペラ」の定義については、正式は概念が決まっていないため、とても複雑です。
「スペースオペラ」は元々「西部劇の舞台を宇宙に変えただけの安直な作品」と言う意味を持つ蔑称だった歴史がありました。
しかも、それだけでなく「SF」そのものが、世間のイメージからすれば「キワモノ」や「オタク趣味」と言ったイメージが先行し、まともに評価を受けることすらありませんでした。
参考映像『宇宙大作戦』日本版オープニング
1966年、アメリカでSFドラマ『宇宙大作戦』が放映されます。
このドラマは人種差別が残る時代に、「未来には人種どころか種族の差別も無い」と言う設定のもと、様々な人種の俳優を起用したり、様々な人生観の違う人種との出会いと別れを描いた宇宙ドラマで、一部のファンから熱狂的な支持を得ました。
しかし、時代は「SF」に厳しく、一部のファンから支持は受けるものの視聴率は奮わず、何度も打ち切りの憂き目にあいます。
そんななか「スペースオペラ」、ひいては「SF」の救世主として登場したのが「あの」作品でした。
『スター・ウォーズ/新たなる希望』(1977)
1977年、ジョージ・ルーカスによって製作された『スター・ウォーズ/新たなる希望』は、それまでの「SF」のイメージを覆し、全世界で大ヒットを記録します。
アンドロイド、多様な種族、宇宙兵器など、1つ1つの要素はそれまでの作品にも登場したものですが、演出や見せ方、特撮の技術など、その時代では驚くほどの高クオリティと革命的センスで、それまでの絵に描いた「宇宙冒険」に「現実味」を持たせることに成功しました。
その後、人気を広げつつあった『宇宙大作戦』がこの波に乗り、劇場版として『スタートレック』(1979)を製作、「スター・ウォーズ」も3部作として展開を始めるなど、「スペースオペラ」は世界的なブームになり始めるのです。
そんな「スペースオペラ」及び「SF」映画の火付け役でもある『スター・ウォーズ/新たなる希望』は、巨匠黒澤明の作品から大きな影響を受けており、悪役であるダース・ベイダー役に黒澤明監督作の代表的な俳優である三船敏郎をオファーした逸話は有名です。
言い過ぎかもしれませんが、ライトセイバーでの剣戟、侍の甲冑や兜をモチーフにしたダース・ベイダーのデザイン、R2-D2やC-3POのキャラクター像など、「スペースオペラ」を救ったとさえ言われる「スター・ウォーズ」の基盤を形成したと言うことは、今もなお愛される「スペースオペラ」の歴史には日本映画が大きく貢献しているとも言えるのではないでしょうか。
参考映像:世界的な映画監督黒澤明のDVDガイド
近年の「スペースオペラ」の総決算作品
近年ではCG技術が大きく進歩し、映像化不可能とされていたコミックや小説など様々な作品が映画化され、「スペースオペラ」も一般的なジャンルとなりました。
今回は最後に、「スター・ウォーズ」しか「スペースオペラ」を知らないと言う人のために、ぜひ見ていただきたいシリーズを紹介したいと思います。
『スター・トレック』シリーズ
「スペースオペラ」の歴史の中でも重要な役目を握ったドラマ、『宇宙大作戦』。
SF映画ブームと同時にブレイクしたこのドラマは「スタートレック」シリーズとして長く長く続き、「スター・ウォーズ」の双璧としてこのジャンルを培っていきました。
そして、月日が経ち2009年、すっかり「ファン向け」となってしまったこのシリーズを再燃させるべく製作されたのがクリス・パイン主演の『スター・トレック』(2009)です。
今作は『クローバー・フィールド/HAKAISHA』(2008)などで話題となったJ・J・エイブラムス監督のもと、「シリーズを知らない人でも楽しめる」ことを目標に『宇宙大作戦』のリブート作品として手掛けられました。
その結果、興行的にも批評的にも成功を収め、リブートシリーズとして長期的な製作が進められることとなります。
参考映像:『スター・トレック イントゥ・ダークネス』予告編
中でもベネディクト・カンバーバッチを謎の男ハリソンに起用した『スター・トレック/イントゥ・ダークネス』(2013)は、単体でもド迫力の「スペースオペラ」を楽しめるだけでなく、旧シリーズの『スタートレックⅡ カーンの逆襲』(1982)を知っているとより面白い作品として誰にでもおススメ出来る、近代と旧作の「スペースオペラ」の総決算のようなシリーズと言えます。
他にも名作はたくさん
いかがでしたか。
現在では「アベンジャーズ」で有名な「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」の中でも『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)のように、ガチガチの「スペースオペラ」とそれに相反するような「レトロ感」を混ぜた良作が登場。
他にも、巨匠リュック・ベッソンが手掛けた『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』(2017)のように異次元の映像美を感じさせる作品など、「スペースオペラ」はまだまだ失速を感じさせないジャンルです。
次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…
次回のprofile004は、ホラー映画を検証。
今夏公開の『ウィンチェスター・ハウス』と、また『死霊館』といった実話の恐怖に隠された謎を推論いたします。
7月4日(水)の掲載をお楽しみに!