強盗たちが金細工師の老夫婦に翻弄されるシチュエーションスリラー!
ヴィンセント・リッキウトが脚本・監督を務めた、2022年製作のイタリアのPG12指定のシチュエーションスリラー映画『ドント・スティール 強盗の果て』。
ある人物からの情報をもとに、金細工で生計を立てる老夫婦宅に押し入った強盗たち。老夫婦を縛り上げ、鉄の扉で仕切られた工房から金細工を盗もうとするも、老夫婦の反撃に遭い工房へ閉じ込められてしまいます。
実はその老夫婦には、隠された顔がありました。彼らの素性を知った強盗たちは、仕掛けられた罠に翻弄されていきます。
映画『ドント・スティール 強盗の果て』のネタバレあらすじと作品の魅力をご紹介いたします。
映画『ドント・スティール 強盗の果て』の作品情報
【日本公開】
2023年(イタリア映画)
【監督】
ヴィンセント・リッキウト
【脚本】
ヴィンセント・リッキウト、ジェルマーノ・タッリコーネ
【キャスト】
ステファニア・カッシーニ、ジュゼッペ・パンビエリ、タニア・バンバチ、ジャンルカ・バンヌッチ、ステファノ・フレーニ
【作品概要】
ヴィンセント・リッキウトが脚本・監督を務めた、イタリアのシチュエーションスリラー。新宿シネマカリテの特集企画「カリコレ2023/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2023」で上映されました。
本作はスクリーム・ホラー映画祭をはじめ、グリム映画祭にニューヨーク映画祭、カルカッタ国際映画祭などで受賞。『エロチカ・ポリス』(1976)のジュゼッペ・パンビエリ、『わたしはダフネ』(2021)のステファニア・カッシーニのほか、タニア・バンバチやジャンルカ・バンヌッチらが出演しています。
映画『ドント・スティール 強盗の果て』のあらすじとネタバレ
夜9時過ぎ。ある人物からの情報で、金細工を生業としている老夫婦の家に強盗に押し入った3人の男女。
子どもの頃から素行が悪く、生きるために盗みを働いていた彼らは、首尾よく老夫婦を椅子に縛りつけ、ダイニングキッチンの奥に隠された工房から金細工を盗んでいきます。
しかし、工房とダイニングキッチンを仕切っていた鉄の扉は自動で閉まる仕組みだったため、3人は中に閉じ込められてしまいました。そのことを知っている老夫婦は、協力して縄を解きました。
そこへ、彼らと顔見知りの森林警備隊員のマッテオ巡査がやってきます。近辺を巡回していたマッテオは、老夫婦の家の近くで不審な車を発見し、2人に何かあったのではないかと心配して立ち寄ってくれたのです。
老夫婦は工房に閉じ込めた強盗たちのことは言わず、何もないから心配いらないと言って彼を帰しました。
家主である金細工師アントニオは、絵画の裏に隠した工房を映すモニター越しに、強盗たちが仲間割れするように挑発します。実はアントニオは、強盗たちの素性を知っていました。
リーダーのステファノの父親は亡くなっており、母親は詐欺罪で捕まっていること。ステファノの友人であるロベルトは両親から嫌われており、ドラッグの売人であること。
しかもロベルトはドラッグを売る以上に、コカインを吸っておりいつも金欠状態。そのため、娼婦のように男性の性処理をし、コカインを買う金を稼いでいたこと。
紅一点のアリアンナはステファノと恋人関係にあり、ジェリーという子猫を飼っていることを。
この3人は子どもの頃、ある男から金細工を盗んだ後の逃走中に男と揉み合いになり、アリアンナが男の腹をナイフで刺したという出来事をきっかけに、運命共同体だと誓いを立てていました。
しかし3人にはそれぞれ、仲間に隠していることがありました。もちろん、アントニオはそのことも知っていました。
3人は以前ボウリング場での強盗を計画したのですが、ステファノが計画前日までに見かけなかった武装した連中がいたことにより計画は中止されました。しかしギャンブル関係でトラブルがあったステファノは、2人に黙って単独で強盗を実行していました。
また「自分だけのもの=赤ん坊」が欲しかったアリアンナは、無精子症の恋人ステファノではそれが手に入らないと分かると、3人で質屋を襲った打ち上げでクラブに行った日、酒に酔った勢いでロベルトと浮気をしていました。
しかしその後、アリアンナはステファノに浮気がバレることを恐れ、彼に親戚のところへ行くと嘘を言って、妊娠したロベルトとの間の子どもの中絶手術をしに行ったのです。
それらの隠し事をアントニオによってバラされ、3人の仲は険悪に。ステファノとアリアンナは真実を言わず、それどころかアリアンナが自身にとって都合のいい嘘をステファノに吹き込んだため、激怒した彼はロベルトを殺そうとします。
しかし、なぜかステファノの銃に弾はなく、反撃しようと放ったロベルトの銃弾は彼の胸に打ち込まれ死んでしまいました。
映画『ドント・スティール 強盗の果て』の感想と評価
強盗であるステファノ・ロベルト・アリアンナの、老夫婦の家の工房への強盗。首尾よく隠されていた工房を見つけ出し、金細工を盗んでいった時は、上手くいきすぎやしないかと疑問でした。
しかし3人は何の疑いもせず、目の前にある金細工を鞄に詰め込むことに夢中。気づいた時にはすでに遅し、自動で閉まる仕組みとなっていた鉄の扉は閉まり、彼らは閉じ込められてしまいました。
この時までは「この老夫婦、策士だな」と感心させられます。ですが雲行きが怪しくなってきたのは、彼らが強盗に入られたことをマッテオに隠し、ステファノたちの情報も秘密も全て知っていたところからです。
老夫婦は笑いながら、まるで世間話に花を咲かせるかのように、3人の処遇を話し合っている場面から、視聴者も思わずゾッとする恐怖の時間がはじまります。
しかも一見穏やかな老夫婦であるアントニオたちが、死んでも誰も悲しまない犯罪者を、生きた金細工の人形にしようとする恐ろしい顔があったなんて、誰が想像できたことでしょう。しかもやり方も、そうされたロベルトたちの顔もとてもグロくて怖いです。
一方でジュリオの登場によって、アントニオが3人を長年恨んでいたことが明らかとなります。
子どもの頃の3人は、ある男から金細工を盗んで逃走。その途中でアリアンナが金細工を落としてしまい、その後ステファノとロベルトが男と揉み合いに。するとアリアンナは、ナイフで男を刺したのです。
金細工を盗まれた挙句、腹を刺された男がアントニオだという明確な描写はありません。もしそうだとしたら、ジュリオの言う「お前らのせいで父さんは20年間地獄を味わった」の台詞と、親子が3人を罠にはめた理由にも合点がいきます。
ただそうだったとしたら、被害者であるはずのアントニオはなぜ20年間も精神科病院にいたのか。彼が狂ってしまったのは元々なのか、3人への復讐心からか、それとも元々狂っていたジョヴァンナに影響されてなのか。
物語が終わっても、親子の謎は深まるばかりです。いろいろと考察して楽しめるところも物語の見どころとなっています。
まとめ
生きるために人々に危害を加え、強盗を働いてきた3人の男女が、なめてかかった老夫婦の壮絶な仕掛けにまんまとはめられ、壮絶な結末を迎えるイタリアのシチュエーションスリラーでした。
物語が始まる前「口では真実を隠せても、目は必ず真実を語る」というテロップが流れています。確かにステファノたちの口から出るのは、真実を隠した嘘ばかりでした。
その描写からもアントニオたちは、その人の内面を知るために真実を語る目をえぐって試したのではないかと考察できます。ロベルトも女性も、そしてアリアンナも、両目以外は何も危害を加えられた様子はありませんでした。
生き残った親子は、これからも常軌を逸した行為を続けていくのか。それともアリアンナで成功したため、もうしないのか。真相は闇の中です………。
両目を抉られ、その空いた穴に金細工を入れられた3人の姿はもちろん、終始笑顔で残酷なことばかりするジョヴァンナと、彼女の役を演じたステファニア・カッシーニの怪演っぷりが凄く不気味で怖いです。