ロシア軍が恐れた史上最高の狙撃兵の姿を描いた戦争アクション!
マリアン・ブーシャンが脚本・監督を務めた、2022年製作のウクライナの戦争アクション映画『スナイパー コードネーム:レイブン』。
2014年、ウクライナ。ロシア・ウクライナ戦争がはじまり、妊娠中の妻を殺された物理学者のニコラは、平和主義を翻しウクライナ軍に入隊。過酷な訓練に耐え、エリート狙撃手へと成長していきました。
しかし戦争が激化し、育ててくれた先輩狙撃手もロシア軍に殺されてしまいました。2022年2月、復讐心に燃える二コラは、ウクライナの首都キエフを襲うロシア兵狙撃作戦に参加します。
実話をもとに描いた映画『スナイパー コードネーム:レイブン』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
映画『スナイパー コードネーム:レイブン』の作品情報
【日本公開】
2023年(ウクライナ映画)
【脚本】
マリアン・ブーシャン、マイコラ・ボローニン
【監督】
マリアン・ブーシャン
【キャスト】
パーヴェル・アルドシン、マリナ・コシキナ、アンドレイ・モンストレンコ、オレグ・ドラック
【作品概要】
本作が長編映画デビューとなるマリアン・ブーシャンが脚本・監督を務めた、ウクライナの戦争アクション作品。
ヒューマントラストシネマ渋谷&シネ・リーブル梅田にて開催された「未体験ゾーンの映画たち2023」で、2023年1月6日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷で上映された作品です。
『レッドアーミー・パルチザン 戦場の英雄』(2021)のパーヴェル・アルドシンが主演を務めています。
映画『スナイパー コードネーム:レイブン』のあらすじとネタバレ
2014年2月。今より3ヶ月前、ウクライナのヤヌコビッチ大統領は、欧州連合(EU)との協定締結を拒否。ロシアとの関係改善の方向を打ち出し、ウクライナの首都キエフでは特殊部隊がデモ隊を攻撃していました。
それからヤヌコヴィッチ大統領は、最高司令官の地位を放棄してロシアに亡命したため、黒海の北岸にある半島「クリミア半島」は完全に占領され、ロシアの支配下に置かれました。
そうニュースで報道される中、環境保護者のボロネンコ夫妻はウクライナ・ドンバス地方に移住。1年前、ドネツク州ホルリフカ郊外にある土地を取得しました。
物理学者である夫のミコラは高校で数学と物理を教えながら、環境に配慮して作ったエコな一軒家で、妊娠中の妻ナスティアと幸せに暮らしていました。
しかしある日の朝、ドネツク州ホルリフカにある警察署の近くに、正体不明のバスが停車。さらに目出し帽をかぶった武装勢力や新ロシア派の活動家が、ドネツク州の地方行政機関の建物を占有しました。
そして2月27日、ロシア軍の軍事情報機関「ロシア連邦参謀本部情報総局(GRU)」の特殊部隊が、クリミアの最高議会を占拠しました。
つまり、ボロネンコ夫妻が暮らすドンパス地方で、ロシア・ウクライナ戦争が始まってしまったのです。
このニュースを職場で見たミコラは、通勤途中で2人のロシア兵の姿を見かけたのを思い出し、急いで妻の元へ向かいました。
しかしミコラが戻った時には、既にナスティアはそのロシア兵たちに襲われていたのです。ミコラはなんとか彼女を助けようとするも、自身も暴行され、家を焼き払われてしまいます。
挙句の果てに、ミコラの目の前で、ナスティアがそのロシア兵に撃ち殺されてしまったのです。
その後、ミコラは近くをパトロールしていたウクライナ兵のクリムとドナエフスキーに保護され、彼らと共に妻の遺体を埋葬しました。
非暴力・平和主義者だったミコラは、妻を殺したロシア兵への怒りに燃え、自らの主義を翻してウクライナ軍に入隊。
復讐心を糧に基本教練・銃の分解と組み立て・ほふく訓練・射撃訓練、前線の狙撃手不足によって行われた狙撃手になるための特殊訓練などの過酷な訓練に耐え、みるみるうちにエリート狙撃手へと成長していきます。
試験をクリアし晴れて一等兵となったミコラは、クリムとドナエフスキー、共に特殊訓練を受けていたウクライナ兵のバドケビッチと共に前線へと送られました。
ミコラは、自分たちを育ててくれた先輩狙撃手のケプ率いるチームと、彼らとペアを組む機関銃手チームがいてくれたおかげで、無事最初の任務を成し遂げることができました。
機関銃手とは、分隊支援火器や汎用機関銃で武装して、火力支援や制圧射撃を行う歩兵のことです。
しかしその一方で、ドナエフスキーと共に別任務に出ていたクリムは、敵の狙撃手に撃たれ死んでしまいました。
ミコラたちに支給された狙撃用ライフル「SVD(1963年製のドラグノフ狙撃銃)」には、7.62×54ミリの旧式の弾丸が使用されており、その射程距離は約600mです。
対してクリムに被弾した弾丸は、12.7×99ミリのNATO弾。旧式の弾丸よりも強烈な破壊力を持ち、射程距離もそれ以上に長く、2000mに及びます。
映画『スナイパー コードネーム:レイブン』の感想と評価
本作の見どころの1つである、主人公・ミコラの光と影。
その光とは、ミコラが愛する妻ナスティアと暮らしていた幸せな夫婦生活と、クリムたち戦友と恩師ケプとの出会いです。
物語の冒頭では愛する妻と戯れ、彼女のお腹の中に宿った新しい家族との生活に期待に胸を膨らませるミコラの姿はとても幸せそうで、観ているこちらまで和やかな気持ちになります。
物語の中盤からは、ミコラは復讐心をたぎらせつつも、苦楽を共にした戦友と恩師を得て、家族と共に失った笑顔を取り戻しました。
最初にあった光と、再び得た光。ミコラにとってとても大事で、どちらもかけがえのないものだったことでしょう。
一方ミコラの影とは、愛する家族と愛する同志、自分を育ててくれた恩師を殺したロシア兵への怒りと憎しみです。
ですがケプを失った時、ミコラはロシア兵への復讐心の他に、自責の念を感じていたのではないでしょうか。
その証拠にケプ亡き後、ミコラは茫然自失でいましたし、彼以外にペアは組まず単独行動していました。
ミコラ視点で見るロシア・ウクライナ戦争は、いとも簡単に人の幸せを壊し、価値観を変えてしまうほど残酷なものだということを痛いほど感じます。
ちなみに本作のタイトルにある「レイブン」とは、ミコラが狙撃手となるにあたって、自分をレイブン(ワタリガラス)に例えたコードネームです。
まとめ
ロシア軍が恐れた史上最高の狙撃兵の光と影をリアルに描いた、ウクライナの戦争アクション作品でした。
本作の見どころは、元物理学者の狙撃手ミコラの光と影、ロシア・ウクライナ戦争における狙撃手同士の戦いです。
またミコラを通して、兵士となるにはこれほどまでに過酷な訓練をしているのか、その中でも狙撃手とはこうやって鍛え上げられていくのかと改めて知ることができ、軍隊もの好きな人もそうでない人も新人兵士になった気分を味わえます。
ミコラも敵対するロシア軍の狙撃手のシーリーも狙撃手としてとても優秀なので、彼らの息詰まる狙撃合戦は臨場感があってハラハラドキドキします。
そしてなんといっても、ウクライナでは「伝説の狙撃手」として英雄視され、敵対するロシア軍からは恐れられた実在の狙撃手マイコラ・ボローニンが本作の脚本に参加。復讐と戦争の狂気に取り憑かれたミコラの光と影を映し出します。
ロシア・ウクライナ戦争の真実と残酷さ、実在する伝説の狙撃手の半生を描いた戦争アクション超大作が観たい人に、とてもオススメな作品です。