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Entry 2023/01/07
Update

【ネタバレ】コナン灰原哀物語|あらすじ結末感想と評価解説。2023年映画に続く“黒鉄のミステリートレイン”は人気回“漆黒の特急”を再び辿る

  • Writer :
  • 糸魚川悟

『名探偵コナン 黒鉄の魚影』へと続く灰原哀の物語!

コロナウィルスが世界的に流行した2020年を除き1997年から毎年新作が上映され、その年の興行収入ランキングで必ず上位に食い込む『名探偵コナン』の劇場版アニメシリーズ。

2022年に公開された25作目となる映画『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』は興行収入が92億円を突破し、大台となる100億円に迫るほどとなりました。

そして2023年、人気キャラクターたちの登場が決まり、さらなる注目が集まる26作目『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の公開を控える中、物語の主軸となる登場人物・灰原哀にが深く関わる重要エピソードを劇場用に編集した映画が公開されました。

今回は『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』(2023)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

映画『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』の作品情報


(C)青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 2023

【公開】
2023年(日本映画)

【構成・脚本】
宮下隼一

【キャスト】
高山みなみ、林原めぐみ、緒方賢一、堀之紀、池田秀一、古谷徹、立木文彦

【作品概要】
テレビアニメ版『名探偵コナン』から、2013年に地上波で放映されたエピソード「漆黒の特急」を劇場公開用に再編集した特別総集編。

劇場版シリーズお馴染みのオープニングなどの新規カットや、灰原哀のコナンとの出会いや少年探偵団との絆を描いた過去の放送エピソードのカットが本編内に挿入されました。

映画『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』のあらすじとネタバレ


(C)青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 2023

亡き両親の研究を継ぎ、「黒の組織」で薬の研究開発に携わっていたコードネーム「シェリー」こと宮野志保。

姉が殺害されたことで組織に反発した志保は、自身が開発した薬「APTX4869」を自殺目的で服用することで幼児化し、組織からの脱走を成功させました。

同じく「APTX4869」の服用者である工藤新一こと江戸川コナンの所在地を訪ね、阿笠博士に匿われた志保は、組織から身を隠すため「灰原哀」の偽名を名乗ってコナンに接触。

こうして灰原は、コナンとともに小学校の同級生である吉田歩美・円谷光彦・小嶋元太の所属する「少年探偵団」に属し、さまざまな事件を通し絆を深めていきました。

ある日、鈴木財閥が制作した列車「ベルツリー急行」で開催される推理イベント「ミステリートレイン」に、毛利蘭の友人であり財閥の令嬢・鈴木園子の計らいで乗車することになった少年探偵団の面々。

列車には少年探偵団の付き添いとして毛利蘭や毛利小五郎だけでなく、イベントに興味を持った女子高生探偵の世良真純も訪れていました。また園子は、列車内に展示された希少な宝石を目当てに「怪盗キッド」の予告状が届いたことを自慢げに話します。

列車内でも特に高額な一等客室「8号車」には、毎年イベントに参加する大きな荷物を持った鑑定士の安東、頬に傷を持つ能登、車椅子に乗る小蓑とメイド・住友、キツい性格の出波が乗り込みますが、同じく毎年参加する室橋だけが園子たちの急な参加により「7号車」へと移動となってしまいました。

列車に乗り込んだ少年探偵団の客室に、「7号車のB室」に向かうように記載された手紙が届きます。コナンは「推理イベント」の一環だと考え、その指示に従います。

すると、「7号車のB室」では室橋が何者かに撃たれる寸劇が始まり、少年探偵団は犯人役の人間を追いますがその姿を見失ってしまいます。

ところが、少年探偵団の姿を見て話しかけてきた車掌は「推理イベントはまだ始まっていない」と口にします。コナンはもう一度7号車のB室へと向かいますが、そこは園子たちのいる「8号車のB室」へと変わっていました。

コナンは7号車消失のトリックについて、室橋の射殺騒動後に園子たちが「7号車のB室」に移ることで「7号車」の存在を消したのだと推理すると、園子たちも何者かによる手紙で「共犯者役」に指名されたと白状しました。

同室の蘭と世良を連れ、室橋のいるはずの8号車のB室に向かうコナンでしたが、チェーンロックがかけられた8号車のB室で彼らは室橋の“本物”の射殺体を発見。室内の状況から即座に他殺と見抜いたコナンは、灰原を含む少年探偵団に個室へと戻り、部屋から出ないよう強く命じました。

個室内に戻った灰原は少年探偵団の会話から、数日前に解毒薬を飲み「宮野志保」の姿に戻った状態で少年探偵団と接触した時に撮影した映像が他者に渡った可能性を知り、列車内で目撃した「黒の組織」の構成員の姿に怯え始めます。

やがて「黒の組織」の構成員ベルモットからの脅迫メールを受け取った灰原は、少年探偵団を巻き込まないために、ひとり個室を出ていきました。

動画の情報から宮野志保が「ベルツリー急行」に乗ることを確信していたベルモット。そのことを組織の構成員ジンに報告した後、同じく構成員のバーボンを連れて宮野志保の殺害のためにこの列車に乗り込んでいました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』のネタバレ・結末の記載がございます。『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 2023

8号車の各個室へとつながる廊下を監視し続けていた車掌の存在によって、室橋の射殺事件は“二重の密室”と化していました。

コナンと世良は、小五郎による8号車の乗客への聞き取り調査に同行。室橋を含む8号車の乗客が全員、「ベルツリー急行」制作のきっかけとなった資産家が死亡した火事の現場に居合わせた過去を持つことを知ります。

逃走した犯人の姿を目撃している少年探偵団に確認させるため、それぞれの走る姿を撮影した世良は少年探偵団の個室のある6号車を目指しますが、死んだはずの兄・赤井秀一の姿に変装した何者かに襲われ意識を失ってしまいます。

一方、長いトンネルの存在とチェーンロックのかけられた他の部屋を見たことで“二重の密室”のトリックを解いたコナン。小五郎を眠らせると、列車に乗り合わせていた「小五郎の弟子」を自称する安室透と8号車の乗客の前で推理の披露を始めます。

車掌に変装した犯人によって、室橋の部屋のチェーンロックは他の部屋のチェーンロックよりもリンク数が1つだけ長いものにすり替えられており、外からでも開錠が可能となっていました。

さらに犯人がトンネルに差し掛かったタイミングで、内側に鏡を貼ったドアを開くことで車掌の目を欺き、室橋の部屋から脱出する時間を稼いだことを暴き、トリックの実行が唯一可能な部屋の乗客・安東が犯人だと指摘しました。

安室に「トリックに利用した鏡」という物証を押さえられた安東は、室橋が過去に美術品目的で資産家の家に放火したせいで自身の妻を失ったことや、室橋に反省の意がなかったことで殺害を決意したと自白しました。

一方、赤井の変装をしたベルモットは、コナンこと工藤新一がが灰原を守るために呼び寄せた自身の母親・工藤有希子の部屋に押し入り、彼女と対峙。

2人は過去に友人関係にあったものの立場上対立せざるを得ず、有希子はベルモットが失神させた世良を列車に乗った「味方(実際は「沖矢昴」こと赤井秀一)」が保護したと言い、ベルモットに灰原から手を引くように忠告します。

しかし、ベルモットはもう一人の同行者バーボンへ携帯で連絡。「バーボン」こと安室透は、コナンにバレないように仕掛けた煙の発生装置を起動させ、火事騒動を起こすことで乗客全員を前方車両へと誘導します。

少年探偵団を巻き込まないため、火事騒動が組織の構成員の仕業だと確信した灰原は解毒薬を飲み、「宮野志保」の姿で安室の待ち構える8号車へひとりで向かいますが、安室によって最後部車両の貨物室に閉じ込められてしまいます。

安室は志保を生かした状態で確保すべく、連結部分にだけ爆弾を仕掛け貨物室のみを列車から切り離す気でいましたが、志保の殺害を企むベルモットにより貨物室には大量の爆弾が仕掛けられていました。

ベルモットの目論見に気づいた安室は即座に志保の保護に動こうとしますが、何者か(実際は「沖矢昴」)によって阻止され、切り離された貨物室は大爆発を起こしました。

志保の死を確信したベルモットは有希子の前を去ると、終着駅・名古屋駅にいる民間人と「ベルツリー急行」の乗客ごと志保を爆殺しようと考えていたジンに任務完了の報告をしました。

列車は最寄り駅に停車。乗客たちが避難を始める中、ベルモットはコナンたちの会話の中から「怪盗キッド」が列車に乗っていたことを知り驚愕します。

実は怪盗キッドは、宝石を盗むために小蓑のメイド・住友に変装して列車に乗り込んでおり、小蓑もまた怪盗キッドの仲間でした。

小蓑の見せる不自然さから、即座に住友の正体を見抜いていたコナン。彼は殺人事件の事情聴取を回避させる代わりに、怪盗キッドに「宮野志保」の姿へと変装させ、火事騒動の最中に安室の元に向かうよう事前に依頼していました。

そして、本物の「宮野志保」である灰原の代わりに貨物室へ閉じ込められた怪盗キッドは、脱出用に用意していたハンググライダーで爆発前に列車から脱出したのです。

列車から無事に出ていく灰原の姿を目撃したベルモットは全てを悟り、今回の負けを認めます。

対してコナンは、灰原が仲間を信じてくれたからこそ、彼女を救えたと感じていました。

映画『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』の感想と評価


(C)青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 2023

灰原哀を主軸とした大人気キャラ集結回!

「名探偵コナン」シリーズでの最大の敵となる「黒の組織」にかつて属し、工藤新一の身体を幼児化させた薬「APTX4869」を開発した張本人である宮野志保こと灰原哀。

姉の死をきっかけに組織を脱走した彼女はコナンたちと出会ったことで、仲間を想う気持ちと自分の生を望み、「黒の組織」との対峙を覚悟していくこととなります。

そんな灰原哀にまつわる登場人物が総登場するエピソード「漆黒の特急」では、今やシリーズに欠かせない登場人物となった安室透が、「黒の組織」の構成員「バーボン」であることが発覚。

さらに組織の構成員ジンを始め、怪盗キッドや『名探偵コナン 緋色の弾丸』(2021)の赤井秀一とその妹・世良真純が登場するなど、オールスターといえるキャラクターの勢ぞろいぶりからも、原作ファン人気が特に高いエピソードでもありました。

灰原哀とコナンたちの「絆」を中心に再編集したことで、各登場人物の動きも分かりやすくなった『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』。『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の関連作としてだけでなく、シリーズの重要エピソードの復習映画としても必見の作品でした。

『オリエント急行』オマージュの密室ミステリー


(C)青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 2023

行き先を乗客には知らせない「ミステリートレイン」の中で起こる殺人事件を描いた本作は、作中でも明言されている通りアガサ・クリスティの名作推理小説『オリエント急行の殺人』を意識した作りとなっています。

このエピソードにのみ登場する人物の名前はすべて『オリエント急行の殺人』の登場人物が基となっており、人物のそれぞれの役割も名前の基となったキャラクターに準じているほどの徹底ぶり。

チェーンロックで施錠された個室と、各個室の入り口を常に監視していた車掌の存在によって生まれた“二重の密室”の殺人。「黒の組織」の暗躍だけでなく、車内で起きる殺人事件とその解明にも、強いクリスティ色を感じるミステリファン必見のエピソードでもあります。

まとめ


(C)青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 2023

灰原哀の過去と決意、そしてコナンによる彼女を守るための奮闘のすべてが詰まったエピソード「漆黒の特急」。

映画『名探偵コナン 灰原哀物語〜黒鉄のミステリートレイン〜』は、登場人物たちによる騙し合いと、殺人事件の謎を巡る推理劇の魅力をすべて味わえる同エピソードを再編集した作品でした。

それぞれの思惑が張り巡らされた運命の列車と灰原哀を巡る物語は、各登場人物のファンは特に必見です。



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