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Entry 2017/02/14
Update

映画『暗くなるまで待って』あらすじネタバレ感想と結末ラストの解説《オードリー・ヘプバーン代表作おすすめ名作》

  • Writer :
  • リョータ

オードリー・ヘプバーン代表作にして、サスペンススリラーの名作

オードリー・ヘプバーンが目の不自由な女性を熱演し、アカデミー主演女優賞にノミネートされた、コミカルの妙味が光るサスペンスの名作。

ローマの休日』や『ティファニーで朝食を』などで知られるオードリー・ヘプバーン…

その美しさだけでなく高い演技力をも知らしめた、サスペンススリラー『暗くなるまで待って』

ブロードウェイの同名舞台劇をもとに、「007」シリーズの名匠テレンス・ヤング監督が演出を務めました。

映画『暗くなるまで待って』の作品情報

【公開】
1967年(アメリカ映画)

【原題】
Wait Until Dark

【監督】
テレンス・ヤング

【キャスト】
オードリー・ヘプバーン、アラン・アーキン、リチャード・クレンナ、サマンサ・ジョーンズ、エフレム・ジンバリスト・Jr、ジュリー・ハロッド、ジャック・ウェストン

【作品概要】
007シリーズで知られるテレンス・ヤング監督がオードリー・ヘプバーンを主演に起用して挑んだ密室サスペンス。

第40回アカデミー賞(1968年)女優賞(オードリー・ヘプバーン)ノミネート、第25回ゴールデングローブ賞(1968年)ドラマ部門最優秀主演女優賞(オードリー・ヘプバーン)、最優秀助演男優賞(エフレム・ジンバリスト・Jr.)ノミネート作品。

映画『暗くなるまで待って』のあらすじとネタバレ

ナイフで引き裂かれる人形。押し込まれるヘロインの包み。組織を裏切り、全てを我が物にしようとしたリサという女。彼女は空港で危険な気配を感じていました。もう逃げ切れないと思ったのか、偶然出会った写真家のサムに人形を手渡して去っていきます。

そんな事情などつゆ知らず、人形を受け取った男性サムは妻の待つニューヨークの自宅へと帰宅しました。

一方のリサは、人形を取り戻そうとサムから聞いていた住所を訪れます。部屋へと侵入し家探していると、裏切者のリサを追っていた男ロート/マイク/カルリーノが現れ、彼女は殺されてしまいます。

その後彼らも人形を探しを始めますが、なかなか見つかりません。すると突然スージーが帰宅し、慌てる一同。しかし、スージーは彼らの存在に気付きませんでした。なぜなら彼女は交通事故が原因で盲目となってしまっていたのです。

壁に張り付きながら息をひそめていると、運よく再びスージーが外出していきました。リサの死体を運び出し、事なきを得た3人。一方のスージーは何となく妙な雰囲気だけは感じ取っていました。

翌日、サムは仕事のため家を空けることに。彼が出ていくと、煙の燻る匂いに驚き大声を上げるスージー。サムが煙草を消し忘れていたのですが、女性の死体が発見されたというニュースを耳にしていたこともあってか、妙に恐怖を感じていたのです。

すると突然の来訪者がありました。3人組の一人マイクが、サムの軍隊時代の友人だと偽って堂々と訪ねて来たのです。煙草の火を消しつつ、再び人形を探し始めるマイク。

何とか上手く立ち回っていたマイクでしたが、思わぬ邪魔が入ってしまいます。上階に住んでいる少女グロリアが訪ねて来たのです。いつもスージーが困っていないかと様子を見に来ていたグロリアの来訪に、マイクはそそくさと引き上げていきました。

その様子を外で観察していたロートとカルリーノ。グロリアがお使いに出たのを見計らい、別の作戦で挑むようです。今度はロートが老人に扮してスージーの下を訪れました。息子の妻が他の男と不倫を働いており、その相手の男がサムだという設定で乗り込んできたのです。

怒る演技にまかせ再び人形を探し回るロート。だがやはり見つかりません。するとそこへ打ち合わせ通りマイクがやってきます。忘れ物をしたという設定でした。

ロートの登場におろおろとしていたスージーは、マイクの登場にホッとした気持ちを抱いていました。マイクは警察を呼んだ方がいいとスージーに持ち掛けます。

マイクが呼んだのはもちろん本物の警察ではありません。今度は刑事に扮したカルリーノが部屋を訪れます。一通りの寸劇の後、ロートは出ていくことに。その後、打ち合わせ通り指紋を拭き取りながら、ロートからの連絡を待つマイクとカルリーノ。

そうこうしている内に電話がかかってきます。今度は警官に扮したロートがカルリーノと何やら話しています。電話を終えた刑事役のカルリーノは、スージーにサムのことについて根掘り葉掘り聞き出そうとする演技を見せると、これもまた打ち合わせ通りマイクがカルリーノを非難し、彼を出て行かせます。

以下、『暗くなるまで待って』ネタバレ・結末の記載がございます。『暗くなるまで待って』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

すると今度はロートがまた別の人物に扮して登場します。さきほどロートが演じていた老人の息子だと名乗り、父親の人違いだったと謝罪しに来たというのです。彼の架空の妻は人形を持って家を出ていったしまったのだそう。

その言葉にドキッとしたスージー。サムが人形を持ち帰ってきていたことを思い出します。

すると再びの電話。応じたマイクが老人の息子役のロートに代わると、相手はどうやら警察のよう。架空の妻が殺されてしまったと嘆く演技をしながら、ロートは立ち去っていきます。

その殺人との接点である人形を持っているサム。スージーは彼の立場がとんでもない状況にあることに気付き、すでに信頼しきっていたマイクにそのことを相談します。

しかしスージーは内心焦りを感じていたものの、少し冷静に考えるとどうにも腑に落ちない点が多々あることに気付いていました。

盲目になったことで音に対して敏感になっていた彼女は、ロートが扮した老人とその息子の靴音が同じであることに気付いていたのです。その他にも思っていた奇妙な点をマイクにぶつけるスージー。まずいと思った彼は、その場を離れます。

その後お使いへと出ていたグロリアが戻ります。人形は彼女が黙って持ち出していたようでした。一連の出来事に不審な思いを募らせていたスージーはグロリアに外の様子を確かめさせ、どうやら自分が騙されていたことを確信します。彼らはどうやらあの人形を狙っているよう。

人形が戻ってきていることに気付いたスージーはそれを隠し、グロリアにはサムを連れてくるよう頼みます。

再び電話を使おうとしたスージーでしたが、つながりません。電話線が切られていたのです。そこへ現れたマイクが彼女に取り入ろうとしますが、ロートが現れ彼を殺してしまいます。すでにカリーノをも殺していたロートは強引に人形を奪おうと試みます。

一方、明かりを消して、真っ暗闇の中で侵入者に対抗しようとするスージー。一気に形勢逆転となり怯むロート。

彼の目が慣れる前にいざ脱出しようと試みた瞬間、冷蔵庫の扉を開けたロート。庫内の煌々とした明かりに照らされたスージーの姿。再び立場が逆転します。

ロートに捕らえられたスージーは、隠し持っていたナイフで何とか一撃をくらわせることに成功します。そして彼が倒れている隙に再び脱出を試みようとすると、重傷を負いながらも再び襲い掛かってきたロート。

その時でした!グロリアがサムと共に警察を引き連れて戻ってきたのです!ようやく窮地を脱したスージーがサムと熱い抱擁を交わし、彼女の孤独で壮絶な戦いは幕を閉じました。

映画『暗くなるまで待って』の感想と評価

『暗くなるまで待って』は、元々『ダイヤルMを廻せ!』も手掛けたフレデリック・ノットによる舞台劇を映画化したということもあり、場面はサム&スージー家に限定(冒頭とカルリーノが殺害されるシーンを除いて)されています。

こうした密室劇はともすれば変化がなく、退屈にもつながりかねない危険性を孕んでいますが、監督のテレンス・ヤングにそんな抜かりはありません。ヒッチコック顔負けの展開に観客は一時たりとも気が抜けないのです。

テレンス・ヤングの素晴らしい演出は、まず構図の面白さにあります。オープニングの赤い画面をナイフで切り裂くシーンや(人形のお腹の中からの視点となっている)、序盤でマイク/カルリーノ/ロートが家探しをしていると突然入って来るスージーのシーンにも良く表れています。

息をひそめている3人のそばを絶妙な感覚ですり抜けていくスージー。観客としてはスージーに気付いてほしくもあり、しかし気付いたら危ないんじゃないかというどっちつかずの感情を抱えながら、手に汗を握ることとなるのです。

この動けない男たちと動き回るスージーという何とも不思議な構図は、リチャード・フライシャーの『見えない恐怖』(1971)にもしかしたら影響を与えているのかもしれません。

次に、この映画の醍醐味となるのが様々に張り巡らされた伏線であることは言うまでもないでしょう。序盤でほとんどの伏線が提示されるのですが、その張り方は誰でも気が付くようなかなりあからさまのもの。そう聞くとどこが巧い演出なんだと思うかもしれません。

しかし、彼が巧みなのはその伏線を回収するタイミングなのです。手を変え品を変え様々な策略を張り巡らせる3人の様子に見入っている内に、伏線は一つまた一つと観客の頭の中から抜け落ちていきます。

その瞬間をあらかじめ分かっていたかのように一気に回収にかかるその絶妙なタイミングに、思わず「あっ!」と声が出てしまうほどです。これはあくまで推測ですが、わざとあからさまな伏線を用意することで、さらに観客の驚きを増幅させているのではないでしょうか。

最後のロートが冷蔵庫を開けるシーンが最も顕著なものでしょう。冷蔵庫の明かりについては序盤にしっかりと言及されているにもかかわらず、あの緊迫感と臨場感あふれるスージーとロートの対決に思わず見入ってしまった観客の頭からはそんなことなどとうに消し飛んでいるのです。

それによってあの瞬間、観客とスージーの感情が完全にリンクし、彼女と全く同じ恐怖を味わうことに成功しているのです。テレンス・ヤングという監督がいかに人間の心理を理解し、巧み操っているかが良く表れています。

最後に、この作品を語る上でやはり主演のオードリー・ヘプバーンの存在は欠かせません。タイトルの『暗くなるまで待って』という言葉が示す通り、暗闇前と後では作品自体が全く違った顔を見せると共に、スージー/オードリーが見せる顔も全く違ったものへと変貌します。

ただただオロオロとしていたスージーが自分の得意なフィールドに相手を誘い込んだ瞬間に見せた彼女の表情は、最初に見せていた優しげなものとは打って変わったもの。その途端に観客の視点はロートへと移り変わり、向かってくるスージーに翻弄されることになるのです。

彼女の美し過ぎる顔故か狂気すら内包したようにも見えるその表情は、改めてオードリー・ヘプバーンという女優の素晴らしさを再認識させるものとなるでしょう。

まとめ

なぜスージーはもう少し早くロートたちの行動に気付かないのか?という疑問は、おそらく誰もが思うところかもしれません。目が見えないことを良いことに、気にしながらもかなり大胆に行動している3人を端から見ていたら確かにそう思ってしまうのも致し方ないことです。

しかし、スージーの盲目が先天的なものではないということを忘れてはなりません。彼女が交通事故に遭ったのはそう遠い過去でもなく、少しはこの生活に慣れたもののまだまだ一人では出来ないことも多いのです。

そして、そういった背景をプロットに盛り込みつつ、伏線にも利用する(例えばグロリアの存在など)テレンス・ヤングの隅々まで行き届いた配慮こそ、この作品が名高い傑作として現在まで語り継がれる所以なのでしょう。

テレンス・ヤングはこの作品の後、『夜の訪問者』(1970)、『レッド・サン』(1971)、『バラキ』(1972)とチャールズ・ブロンソンを立て続けに起用し、傑作を連発しました。どれも違ったテイストを持った作品で、彼の作風の幅の広さを感じさせるものとなっています。

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