Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2022/11/02
Update

『はだかのゆめ』あらすじとキャスト。東京国際映画祭にてQ&Aを語る青木柚と甫木元空監督の心境とは|TIFF東京国際映画祭2022-5

  • Writer :
  • Cinemarche編集部

第35回東京国際映画祭『はだかのゆめ』

2022年にて35回目を迎える東京国際映画祭、2022年10月24日(月)に開会され、11月2日(水)まで開催されます。

10月31日(月)に<Nippon Cinema Now 部門>にて、『はだかのゆめ』のワールドプレミア上映がおこなわれ、上映後には主演の青木柚さんらキャストと甫木元空監督がQ&Aに登壇しました。


(C)2022 TIFF

『はだかのゆめ』は、高知県四万十川のほとりに暮らすノロ一家の親子3代にわたる時間と、時の流れを飛び越えた触れ合いとそれでも触れることのできない残酷な距離を描いた物語です。

『はだかのゆめ』は、2022年11月25日(金)より渋谷シネクイントを皮切りに全国順次公開されます。

東京国際映画祭での観客とのQ&Aの様子をご紹介します。

【連載コラム】『TIFF東京国際映画祭2022』記事一覧はこちら

映画『はだかのゆめ』について

『はだかのゆめ』予告動画

『はだかのゆめ』は、大学時代の恩師である青山真治監督による初プロデュース作品『はるねこ』(2016)で監督デビューした甫木元空の監督第2作目。

甫木元監督は大学生のときに故・青山真治監督に映画を教わり、『はだかのゆめ』も青山監督からのアドバイスがひとつのきっかけとなったと言います。

5年前に祖父が暮らしている高知県に移住した。“甫木元”という名字のルーツのある高知県を舞台にいつか映画を撮れたらと思っていて、脚本執筆の前のリサーチの段階で、青山監督に宮本常一さんの著作である「忘れられた日本人」という本を紹介してもらった。民俗学の本なんですが、それを読みながら、祖父が毎日話していた言葉だったり、余命宣告を受けた母親が動物に話しかけるときに使っていた他愛もない言葉遣いだったり、そうした日常の風景を切り取り、メモするようになった。そうしたインスピレーションを与えてくれる本の紹介というきっかけを青山監督にいただく形で、本格的に本作の企画が始まることになった。甫木元監督

『はだかのゆめ』(2021)の主演は、『うみべの女の子』の青木柚。監督としても活動する女優の唯野未歩子、シンガーソングライターの前野健太が共演しています。

映画『はだかのゆめ』イベントQ&A


(C)2022 TIFF

映画の舞台は高知県。死と生が曖昧になっていくような土地の印象があるようで、客席からもこんな声があがります。

──“お遍路さん”という文化があるなかで、死と生が曖昧になっていくような空気感があるような場所なのではと思いましたった

青木柚:脚本を読んだ段階で、登場人物の誰が生きていて、誰がそうでないのか、僕はとくに聞いていなかった。監督になにかを質問しても返ってくる答えもあれば、そうでない答えもあって、きっとそういう言葉にできないものがこの映画で伝えたいことなんだろうなということをすごく感じた。

個人的には、わからないものの良さじゃないですけど、手放しのわからなさというよりは、意志の入ったわからなさというか、難しいのですけれども、そういう0か100とかではなく揺らいでいるもののような感覚、そういうものを大事にしたいなと思っていました。

それは作品のテーマとしてもですし、演じた役の概念のようなものにも通じていて、曖昧さはすごく大事な要素だったのではと個人的には思っている。

唯野未歩子:死を描こうというときに、生きている人が生きてないみたいで、死んでいる人が死んでないみたいなところから死を発見していくというか、死を追いかけていくというシナリオを読みながら、気づいたらすっかりはまっていました。最後、肯定しているというか優しさを感じた。

前野健太:最初に脚本を送っていただいて読んだときに、まるでセリフが歌の歌詞のようだった。この歌、言葉、これは只者ではないと感じた。

演じる際には歌うように表現をすればいいのかな、と思っていたが、実際に高知に行ったら現地の景色に翻弄されてしまい、なかなかイメージしていたように歌うように自然に演じるというわけにはいかなかった。

甫木元監督:とても小さな家族の話ではあるのですが、やっぱり映画はお客さんに観てもらって完成するのだなと今日改めて実感した。これから劇場公開して映画の旅が続いていきますが、少しでも些細なことでもいいので話題にしていただければと思います。

最後に、甫木監督は「また何度でも劇場で出会っていただけたら嬉しいです。本日はありがとうございました」と述べ、トークを締めくくりました。

映画『はだかのゆめ』作品情報


(C)PONY CANYON

【公開】
2022年公開(日本映画)

【監督・脚本・編集】
甫木元空

【プロデューサー】
仙頭武則、飯塚香織

【キャスト】
青木柚、唯野未歩子、前野健太

映画『はだかのゆめ』あらすじ


(C)PONY CANYON

四国山脈に囲まれた高知県、四万十川のほとりに暮らす一家の人々。

祖父の住む家で余命を送る決意をした母、それに寄り添う息子ノロ。

嘘が真で闊歩する現世を憂うノロマなノロは、近づく母の死を受け入れられず徘徊している。

まとめ


(C)PONY CANYON

映画2作目で東京国際映画祭Nippon Cinema部門に参加した『はだかのゆめ』の概要とQ&Aイベントをご紹介しました。

「青山真治監督といつか映画祭で一緒に作品を上映できたらと語っていた夢が実現した」と語る甫木元空監督。

その想いが籠った『はだかのゆめ』は2022年11月25日(金)より渋谷シネクイントほか全国順次ロードショーされます。

また、甫木元空監督は二人組バンドBialystocks (ビアリストックス)でミュージシャンとしても活動し、11月30日(水)にはポニーキャニオンIRORI Recordsより、本作主題歌「はだかのゆめ」を含む10曲が収録されているメジャー1stアルバム『Quicksand』をリリースします。

こちらも楽しみですね。

【連載コラム】『TIFF東京国際映画祭2022』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

『a-ha THE MOVIE』感想解説と考察。“栄光・葛藤・離散”を経て進化を続けるポップバンドの跡【だからドキュメンタリー映画は面白い69】

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第69回 今回取り上げるのは、2022年5月20日(金)から新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開の『a-ha THE MOVIE』。 1985年発表のデビュ …

連載コラム

シンエヴァンゲリオン考察|ループ説解説=“否定”という庵野秀明の贖罪ד決別”という再会の願い【終わりとシンの狭間で8】

連載コラム『終わりとシンの狭間で』第8回 1995~96年に放送され社会現象を巻き起こしたテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』をリビルド(再構築)し、全4部作に渡って新たな物語と結末を描こうとした新 …

連載コラム

【池田美郷インタビュー動画】シアターモーメンツ新作『#マクベス』身体の表現方法と劇団への想いを語る| THEATRE MOMENTS2019⑥

連載コラム『THEATRE MOMENTS2019』第6回 ©︎Cinemarche 「日本発のワールドスタンダード演劇」をモットーに、これまで精力的な取り組みを展開してきた劇団シアターモーメンツ。 …

連載コラム

ホラー映画『血を吸う粘土~派生』感想と評価。前作ラストから新たな恐怖を作り出す|SF恐怖映画という名の観覧車69

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile069 今回の記事ではNETFLIXが独占配信した中国産SF映画『上海要塞』(2019)をご紹介する予定でした。 しかし、profile067で …

連載コラム

【ネタバレ】パラレル 多次元世界|あらすじ結末感想と評価考察。SFスリラーでパラレルワールドを前に善性が試される【SF恐怖映画という名の観覧車168】

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile168 誰かを傷つける可能性があるが使えば必ず自分の利益になる装置が目の前にあった時、あなたはその装置を使わずにいられるでしょうか。 人の欲は「 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学