全米2週連続ナンバー1ヒットの痛快怪盗アニメ
怪盗集団「バッドガイズ」は、権力者や富豪から華麗なる手法を駆使して財宝を奪うお尋ね者。そんな活躍を描くドリームワークスによるアニメーション。
アーロン・ブレイビーの同名児童文学シリーズを原作に、短編アニメ『ビルビー』のピエール・ペリフェル監督が演出を担当しました。
全米2週連続1位を記録した、怪盗集団“バッドガイズ”の活躍を描く痛快長編アニメーションを、ネタバレ有りでレビューします。
映画『バッドガイズ』の作品情報
【日本公開】
2022年(アメリカ映画)
【原題】
The Bad Guys
【監督】
ピエール・ペリフェル
【脚本】
イータン・コーエン
【原作】
アーロン・ブレイビー
【製作】
デイモン・ロス、レベッカ・ハンフリー
【製作総指揮】
アーロン・ブレイビー、イータン・コーエン、パトリック・ヒューズ
【声のキャスト】
サム・ロックウェル、オークワフィナ、アンソニー・ラモス、マーク・マロン、クレイグ・ロビンソン、リチャード・アイオアディ、ザジー・ビーツ、リリー・シン、アレックス・ボースタイン
【作品概要】
権力者や富豪から華麗なテクニックで財宝を奪う怪盗集団「バッドガイズ」の活躍を描いたアーロン・ブレイビーの同名児童文学シリーズを、ドリームワークス・アニメーションが長編アニメ化。
2007年にドリームワークス入りし、『カンフー・パンダ』(2007)、『モンスターVSエイリアン』(2009)、『シュレック フォーエバー』(2010)などでアニメーターを務めてきたピエール・ペリフェルの、長編アニメ監督デビュー作となります。
脚本は、『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(2008)、『メン・イン・ブラック3』(2012)のイータン・コーエン。
声のキャストは原語版をサム・ロックウェル、オークワフィナ、アンソニー・ラモス、ザジー・ビーツ、日本語吹替版を尾上松也、安田顕、河合郁人(A.B.C-Z)、ファーストサマーウイカらが担当します。
映画『バッドガイズ』のあらすじとネタバレ
「ワルをやるなら思いきり」を合言葉に、次々と盗みを成功させてきた怪盗集団「バッドガイズ」。メンバーは、“天才的スリ”にしてリーダーのウルフ、“金庫破り”のスネーク、“変装の達人”シャーク、“肉体派”ピラニア、そして“天才ハッカー”タランチュラ。
お尋ね者として世間に恐れられる彼らはいつも一緒。今日もスネークの誕生日を、本人が気乗りしていないにも関わらず祝っていました。
そんな中、テレビニュースで、知事に就任したばかりのダイアン・フォクシントン(女ギツネ)が、町で最も善い行いをした人を選ぶ今年の“良き隣人賞”に、マーマレード教授(モルモット)を選出。記念として黄金のイルカ像を贈呈すると発表します。
さらにダイアンは、名立たる強盗たちも奪えなかったというイルカ像を盗める者はいないとバッドガイズを挑発。発奮したウルフは、次のターゲットに定めます。
授賞式当日、招待客になりすまして着実に強盗計画を進めるバッドガイズでしたが、その最中、老婆の財布をスろうとしたウルフは、階段から転げ落ちそうになった思わず彼女を救助。老婆に感謝の言葉を言われて体が身震いし、衝動的にしっぽをフリフリさせます。
幾多のピンチをくぐり抜けてイルカ像強奪に成功し、会場を出ようとした5人。ところが、少し前に落下したハート型の巨大隕石が町に甚大な被害をもたらしたものの、人々の善意が復興させたというマーマレードの授賞スピーチに感動したウルフは、再びしっぽを振ってしまいます。
その結果変装がバレてしまい、バッドガイズ逮捕に執念を燃やしてきたラギンズ署長に囚われることに。
ところが、バッドガイズが刑務所に送られる直前でマーマレードが、自分が推進する更生プロジェクトを彼らに受けさせるよう提案。ダイアンもその案に乗り、イルカ像は後日開かれるチャリティイベント「善の祝祭」にて、5人が更生できた証として改めて贈呈されることになります。
ウルフは、マーマレードのプロジェクトで更生したように見せかけて、祝祭の場で改めてイルカ像を盗んでダイアンの鼻を明かそうと画策。
5人が住むことになったマーマレードの邸宅には、町に落下したハート型の隕石が。隕石は強烈な電磁場を発しており、調査のため彼が管理していたのです。
ことごとく失敗する更生プロジェクトに業を煮やしたマーマレードは、動物実験を行う製薬会社にいる大量のモルモットを“善行”として盗ませるも、スネークがモルモットたちを飲み込んでしまったことで大騒動に発展。
プロジェクトの中止を命ずるダイアンでしたが、ウルフに「人は変われる」と諭し、密かにバッドガイズに一目置いていると告げるのでした。
ダイアンの言葉を受けたウルフは、ヤシの木から降りられなくなっていたネコを救出。その姿を動画に収めて称賛する一方で、「より良い人生を送りたければ、仲間の4人とは縁を切った方がいい」と囁くマーマレード。
そのやり取りを聞いたスネークに遠回しに確認されたウルフは、善行はあくまでフリで、俺たちの友情は永遠と答えるものの、どこかモヤモヤした気持ちになるでした。
マーマレードがアップした動画が「バッドガイズがグッドガイズになった」とバズる中、5人はイルカ像を盗むべく再び計画を練ります。
その計画は、イルカ像の贈呈直前でウルフが会場を停電させ、その隙にニセモノの像とすり替えてズラかるという段取りでした。
迎えた善の祝祭当日。バッドガイズは参加者の熱烈な歓迎を受けながらも、計画通りに事を進めて、いざ最終段階まで進みます。
ところが、周りに褒められて良心の呵責を覚えたウルフは停電させるスイッチが押せず、あろうことかイルカ像を自らマーマレードに渡してしまいます。
そこで停電が発生し、電気が付いた時にはハートの隕石がなくなっていました。隕石を盗んだ濡れ衣を着せられたバッドガイズは、警察に追われることに。
会場内を逃げながらも、ウルフは自分たちのアジトの場所を記した紙をダイアンに渡し、「全部返す」と告げ、その後5人は逮捕されてしまうのでした。
映画『バッドガイズ』の感想と評価
原作は『泣いた赤鬼』テイストの児童文学
本作『バッドガイズ』は、アメリカの児童文学の第一人者と称されるアーロン・ブレイビーのベストセラー『バッドガイズ』が原作です。
嫌われ者、やっかい者扱いされるウルフ、スネーク、ピアニア、シャークたち(後にタランチュラも加入)が、周囲の誤解を解くためにヒーロー活動をするという、浜田廣介の『泣いた赤鬼』に近いお話です。
和訳版も出版されており、最新5、6巻も本作の日本公開に併せて9月に発売されたばかり。
敵キャラクターも突飛な物が多く、マッドサイエンティストやゾンビ、新刊ではなんと宇宙に行ってエイリアンと対峙するなど、活動の域がどんどん広がっています。
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イメージとレッテルへの反発
本記事のあらすじ&ネタバレを読めば分かるように、アニメ化された本作は原作とは設定を少々変えています。
アニメ版では、バッドガイズは最初から強盗を働くお尋ね者として描かれ、その行動原理もオオカミ、ヘビ、ピラニア、サメ、クモという見た目が獰猛なイメージで(全員が捕食生物という点でも共通する)「ワル」というレッテルを崩さないため、という点にあります。
しかし、5人とも性根は気弱だったり寂しがり屋だったり、何よりも優しい良心がある――見た目のイメージやレッテルだけで判断する世間の風潮にNoを突き付けるというテーマが込められているのです。
それは、本当の悪役を、見た目が愛くるしいイメージのモルモット=マーマレード教授にしていることでも明らか。バッドガイズを始めとする主要キャラクターが動物で、その他モブを人間にしているのも、子どもの観客に分かりやすくするためでしょう。
イメージやレッテルが及ぼす差別や偏見を動物に置き換えて描いたアニメではほかに、ディズニー/ピクサーの『ズートピア』(2016)がありますが、本作は主役が怪盗一味ということもあって、アクション面の派手さが光ります。
スタッフが影響を受けたと公言している『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)をはじめに、『ヒート』(1995)、『オーシャンズ11』(2001)、『パルプ・フィクション』(1994)といった実写のケイパー作品、さらには『ルパン三世』、『名探偵ホームズ』、『BEASTARS』といった日本作品のオマージュも感じられます。
『ズートピア』よりは現実社会のメタファー要素は薄いですが、その分痛快に楽しめるエンターテインメントな内容となっています。
まとめ
最後に、日本語吹替版にも触れておきましょう。
とかく非難されがちな芸能人・タレント吹替ですが、本作に関してはウルフ役の尾上松也を筆頭に、違和感は少なめだったかと。なかでも安田顕によるスネークのひねくれ演技や、ピラニア役の河合郁人による中盤での熱唱シーンなどは上手くハマっていたと思われます。
現時点では続編製作の予定は報じられていないものの、バッドガイズのさらなるグッドな活躍も観てみたいところです。
映画『バッドガイズ』は、2022年10月7日(金)より全国ロードショー中。