菅田将暉、土屋太鳳主演の映画『となりの怪物くん』がTOHOシネマズ日比谷他で、全国ロードショーされています。
ろびこ原作の人気少女コミックを、『君の膵臓が食べたい』の月川翔監督が実写映画化!
誰もが共感する青春恋愛映画の決定版!!
映画『となりの怪物くん』の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【監督】
月川翔
【キャスト】
菅田将暉、土屋太鳳、古川雄輝、山田裕貴、池田エライザ、浜辺美波、佐野岳、佐野史郎速水もこみち
【作品概要】
「月刊デザート」で連載された、ろびこの人気少女コミックを菅田将暉と土屋太鳳主演で実写映画化。『君の膵臓をたべたい』でヒットをとばした月川翔がメガホンをとり、多感な高校生の愛と友情を描いた青春ラブストーリー。
映画『となりの怪物くん』のあらすじ
水谷雫はラジオから流れてくる西野カナの歌を耳にし、高校時代のことを思い出していました。「あの頃の私は勉強が全てだった」
高校の入学式の日、同じクラスの吉田春は暴力事件を起こし、それ以来投稿していませんでした。
ある日、担任が雫に春のところに届けてくれとプリントを押し付けてきました。無視しましたが、担任はプリントを置いて逃げるようにその場を去りました。
春の住所を訪ねると、そこはバッティングセンターで、春はいませんでした。雫はバッティングセンターのオーナーにプリントを渡して帰っていきます。
しかしその途中、春が現れ、「学校のまわし者か?」と問うてきます。「プリントを届けただけ」と無愛想に応えた雫に「プリントを届ける? 学校を休んだ時に友だちが持ってきてくれるやつか!?」と、春はなにやら嬉しそうに叫びました。
春は雫の名前を聞くと「俺を春と呼べよ」と言います。その時、三人組の男子高校生がやってきて春に挨拶をしました。「お金貸して」という彼らに春は喜んでお金を貸しました。
雫はなぜか春と一緒にカフェに座っていました。「あの人たちのこと友だちと思っているの? ただお金がほしいだけよ。本当に友だちがほしければ学校へ行けば?」と雫が言うと、「みんな俺のことを怖がるんだ。家まで来てくれたのは雫だけ」と春は応えました。
「あんな友だちならいない方がまし」と雫が言うと、春は立ち上がって雫の頭にジュースをかけました。周りの客が「かわいそー」とささやいています。
しかし雫はやられっぱなしになるようなタイプではありませんでした。すくっと立ち上がると春にジュースをかけてやりかえしてやるのでした。
翌日、隣の席の男子が、雫に春のことで話しかけてきました。「あいつに俺、借りがあってさ。中学で野球部に入ってたんだけど、いつもいじめられているやつがいたんだ。春は助けなくていいのか?って言ってたんだけど、俺にはできなかった。でも春は助けたんだ。助けるために暴力を奮って学校に来なくなった・・・。」
数日後、担任教師はまた雫にプリントを届けさせました。
その日も春はいませんでした。春は親元を離れバッティングセンターを経営している従兄弟の三沢満善に世話になっていました。
帰ろうとする雫を三沢はひきとめ、「一発やってく?」と尋ねました。
来たボールに向かってバットを降りますが、まったく当たりません。その時、雫は気がついてハッとします。「あのときも春は助けようとしていたんだ」
入学式の日、一人の男子高校生がいじめられていたのです。私は見て見ぬふりをした・・・。でも春は助けに行ったのだ・・・。
その時、雫の後ろをあの三人組が通りました。雫は駆け寄り、「春はあなたたちのこと友だちと思ってるから、彼ともっと誠実につきあってください」と言います。三人は何言ってんだと憮然とした顔をしていました。
実は春はその光景を見ており、帰宅途中の雫を捕まえると、「なんだか嬉しくて」と嬉し涙を流し始めました。気づけば雫はそんな彼をハグし、「今に春の周りにはたくさんの人で溢れるから」と励ましていました。
「雫がいるなら学校に行くのもいいかも」と春は言います。
翌朝、春は学校へやってきますが、ずっと雫の後ろにへばりついたままです。そんなこんなで最初は大騒ぎでしたが、次第に春も落ち着き始めました。
雫は相変わらず友だちよりも勉強が大事と、日々勉強に励んでいました。ところが、最初の試験で、彼女は2位。張り出された成績表に記載された1位はなんと春でした。
学校帰り、春のもとに優山という名の人物からメールが届きました。その名前を見ただけで、春は今日は家に帰らない、どこかに泊まると言い出しました。結局、雫の家にとまることに。
雫の父親は何度も事業に失敗し、代わりに母親が働いていました。ほぼ家にいない母に変わって、家事のほとんどを雫がしています。春は雫の父親と弟と一緒に、雫の作った夕食を嬉しそうに食べました。
その夜、「雫はなんで勉強ばっかりしているんだ?」と問われ、「期待して裏切られるのが怖くなった」と応えます。母と一緒に出かけようと楽しみにしていたお祭りは母の都合でいけなくなってしまった・・・。
そんなことが度重なって、雫は他人に期待することをやめたのです。「勉強は自分が頑張った分だけ帰ってくるでしょ」。
夏休み、春と雫の周りにはたくさんの仲間が集まっていました。そんな折、「吉田優山です」と名乗る男性が雫の前に現れました。彼は春の兄でした。
「親父は厳しい人で、難しいところのあった春は中学に上る前に家から追い出されたんだ」と彼は言うのでした。
春は、子供のころ、一人の女の人がかけてくれた言葉を思い出していました。
「いいのよ、春くん。ここにいて。いつか誰かと触れ合ってあったかいと思った時、君はとても幸せになる」
季節は流れ、文化祭での催しも成功し、雫も笑顔をみせることが増えました。春はすっかり落ち着いて、喧嘩をすることもなく、普通の高校生活を送っていました。
しかし、雫は自分がまた期待をし始めたのではないかと思い、表情を堅くするのでした。
雫たちといつもつるんでいる夏目という女子高生は、春の従兄弟の三沢満善に恋をしています。「みっちゃんさん(三沢)が言ってたんです。恋愛は人を丸くするって」
しかし、雫は素直になれませんでした。「ずっと怖かった。努力してもかなわないもの、どうにもならない他人の痛み」彼女はいつも心の中で震えていたのです。
やがて冬になり、バレンタインデーが近づいてきました。その日は雫の誕生日でもあります。雫は黙々と自分の誕生日のお祝いの準備をしていました。
雫や春たちのクラスの学級委員である大島千づるは、春のことが好きで、バレンタインチョコを渡そうと彼を呼び出します。
やってきた春は、その日がバレンタインデーだなんて思ってもいないようでした。雫の誕生日のことで頭がいっぱいで、プレゼントに何をあげたらいいか相談に乗ってくれと言います。
彼女は持ってきたチョコを後ろに隠すと「雫が貰って嬉しいと喜んでくれるものをあげたらいいんじゃないかな」と笑顔を作って答えるのでした。
雫が父と弟とで自分の誕生祝いをしているところへ春がやってきます。
春がくれたプレゼントは万年筆で、「まさか春がこんな実用的なものをくれるなんて」と驚きながら、雫は歓びを隠せません。
そんな彼女を嬉しそうに見ながら春は言いました。「雫が一番来てほしかったのは俺じゃないだろ? かあちゃんだろ?電話しなよ」
春から差し出された携帯電話で、雫は母親に恐る恐る電話をかけました。電話に出た母に「今日は誕生日だったから話がしたくて」というと、「一時間後にかけ直すからゆっくり話そう」と返事が帰ってきました。
そのことを伝えると春は「良かったな!」と叫び、心のそこから喜んでくれました。
「春が好き!」
雫はようやく本当の自分の気持ちに気付くのでした。一時間後の電話で「お母さん、好きな人が出来たよ」と報告し、楽しそうに微笑みました。
季節は巡り、新学年を迎えた雫たち。春は大島千づると同じクラスになり、雫は夏目と同じクラスになりました。
「吉田君、進学しないって」。ある日、担任にそうきかされて雫は驚きます。あんなによく勉強ができるのに。
春に問いただすと「マグロ漁船に乗って働く」と応えます。どうやら、いつまでも従兄弟の満善に世話になるわけにもいかないから自活しようと考えているようでした。
そんな折、優山がふたりの前に現れ、自分の誕生会をやるから是非ふたりに来てほしいと誘います。頭を下げる優山を見て、「これが最後だ。これ以上俺の世界を壊すな」と春は言うのでした。
映画『となりの怪物くん』の感想
ここ数年、人気少女コミックやラノベ小説などを原作とし、高校生同士の恋愛を描いた作品が次々と作られています。今の邦画界には欠かせないジャンルになっているといえるでしょう。
女子高生を中心にした若い世代層に一定の指示があり、興行的にも失敗がないこと、若手人気俳優が多く登場し、そのファンを映画館に呼ぶことができるなど、こうした作品が量産される理由はいくつか考えられますが、最も大きいのは、先行作品に良作が多いということではないでしょうか。
『アオハライド』(2014年)や『青空エール』(2016年)などの三木孝浩監督や、『溺れるナイフ』(2016)の 山戸結希監督の功績が大きいと思われます。
これらの作品が興行的にも作品的にも成功したことで学園恋愛物が企画として通りやすくなっているのでしょう。
現実としては全ての作品が成功しているわけではなく玉石混淆なのは否めません。ただ、このジャンルは見なくてもいいだろうと高を括っていたら、うっかり傑作を見逃してしまうこともありますので、要注意です。
この『となりの怪物くん』も観ておくべき作品に仕上がっています。
住野よるのベストセラー小説の映画化作品『君の膵臓を食べたい』(2017)で、主演の若い二人を魅力的に描き、涙腺崩壊の感動作に仕上げた月川翔監督が、コミック原作らしい軽妙な可笑しみを全編に散りばめながら、主人公たちの喜怒哀楽を活き活きと描いています。
菅田将暉や土屋太鳳は今や日本映画を代表するといってもいいくらい、人気と実力を兼ね備えた役者ですので、安心して観ることが出来ました。
土屋の仏頂面が面白く、あまり喜怒哀楽をみせない中での細かい心の推移の見せ方はさすがです。
一方、菅田将暉というと、筆者は『溺れるナイフ』が非常に好きなのですが、あの作品に観られたように、エキセントリックで鋭い表情を見せるケースが多いように思います。
しかし、本作では、優しげで、柔らかい表情が多く観られ、それが映像的にも大変心地よく、映画全体に満ちる空気にもなっていました。
この柔らかさ、穏やかさこそがこの作品の魅力であり、だからこそ観るものは、彼ら、彼女たちを好きになり、見守り、ラストに拍手を送りたくなるのです。
そんな、何か暖かで大切なものを得た気分に導いてくれる、多くの人々にとって大切な映画として、本作は記憶されることでしょう。
まとめ
コミック作品の映画化の場合、コミカルな動きや、独特な台詞の言い回しが映画の魅力の一つになってきますが、映画としては、その中から、役者の演技を超えた生身の瞬間が見えた時が成功と言えるのではないでしょうか。
月川翔監督はそういう意味でも、役者の演技をうまく引き出すのに長けています。
ただ、大勢の出演者がいい味を出している中で、唯一つ、惜しまれるのは、浜辺美波の見せ場があまりないことです。
『君の膵臓を食べたい』ではその美少女ぶりと、天才か!?と叫びたくなる演技ですっかり感心させられましたが、今回は少々その活躍を期待しすぎた感があります。
まぁ、あれだけの出番でもしっかり存在感を出しているのは素晴らしいのですが(メガネ姿がかわいい!)。
さて、月川監督の次作は、欅坂46の平手友梨奈の初主演作だそうです。『君の膵臓が食べたい』や本作での月川監督の充実ぶりを観ていると、もう期待しかありません。