Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

『イン・ビトゥイーン』ネタバレあらすじと結末の感想評価。マーク・クラインが手がけた青春ロマンス|Netflix映画おすすめ95

  • Writer :
  • からさわゆみこ

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第95回

映画『イン・ビトゥイーン』は、交通事故にあったティーンエイジャーの男女が、現実と死後の世界の“境”で、想いを確かめ合うラブストーリーです。

白雪姫と鏡の女王』(2012)のマーク・クラインが脚本を手掛け、『フェイス・オブ・ラブ』(2015)のアリー・ポーシンが監督を務めます。

主人公のテッサ は親の愛を知らずに育った10代の女の子です。幼い頃から里親を転々として育ちました。

そんな彼女の心のよりどころは、フィルムカメラを持って出かけ、気に入った風景の写真を撮ること。ある日、彼女は映画館で偶然スカイラーと出会い、自身の世界観が一変します。

ところが不慮の事故に遭い、スカイラーが死んでしまいます。一命をとりとめたテッサは、事故当日の記憶を失くし、悲しみと後悔だけが頭を巡って立ち直れません。

そんなテッサはあることをきっかけに、スカイラーが死後の世界から何かを伝えようとしていると感じ始めます。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

映画『イン・ビトゥイーン』の作品情報

(C)2022 Netflix

【公開】
2022年(アメリカ映画)

【原題】
The In Between

【監督】
アリー・ポーシン

【脚本】
マーク・クライン

【キャスト】
ジョーイ・キング、カイル・アレン、キム・ディケンズ、ジョン・オーティス、セレステ・オコナー、ドナ・ビスコー、エイプリル・パーカー・ジョーンズ

【作品概要】
幼少期からの経験で心にトラウマを抱えているテッサを演じたのは、「キスから始まるものがたり」シリーズの主演で人気を集め、伊坂幸太郎原作の『ブレット・トレイン』(2022年公開予定)にも出演するジョーイ・キングが務めます。

愛を信じるきっかけとなった青年、スカイラー役には『ウエストサイドストーリー』(2022)に出演し、映画『マスターズ・オブ・ザ・ユニバース(原題)』の主演が決まった、カイル・アレンが演じます。

共演は『ゴーン・ガール』(2014)のキム・ディケンズ、『世界にひとつのプレイブック』(2012)のジョン・オーティスです。

映画『イン・ビトゥイーン』のあらすじとネタバレ

(C)2022 Netflix

交通事故に遭った2人の若い男女が道路に横たわっています。その現場に幽体離脱した女性が近づき、動かない男性の姿と自分をみつめます。

心臓の損傷で重体のテッサは生死をさまよい、搬送先の病院で緊急手術を受け意識を取り戻します。

事故の182日前、海岸近くの街で養父母と暮し始めて1年になるテッサは、朝日の光で写真を撮るため、義母のヴィッキーが用意した朝食も食べずに出かけます。

森や海岸、街中で自分のお気に入りを探し、みつけては写真を撮りました。テッサは灯台に上り海岸にカメラを向けると、1人で歩いている人をみつけ、望遠レンズで撮りました。

まだ知らない場所もあるテッサは、街の映画館の前に迷い出ました。そこでは月ごとにテーマを持って古い映画を上映していました。

その時はフランス映画の『ベティ・ブルー』が上映されていて、テッサは映画館に入り鑑賞します。観客はテッサと後から入場した若い男性です。

映画が始まると字幕のないオリジナル映画でした。テッサが字幕がないと叫ぶと、後から入場した若者がテッサの隣りに来て、通訳してあげると申し出ます。

テッサは戸惑いますがこの映画はすばらしい作品で、見逃すと後悔すると言うと勝手に翻訳しはじめます。テッサは彼の通訳に耳を傾けながら、悲しいシーンで号泣してしまいます。

悲しい別れの映画で、感情移入したテッサは、終わってみれば彼の手を握っていました。彼は重い内容だから仕方ないと言います。

テッサは名作のラブストーリーは別れがつきものと考え、彼は幸せなラストで終わる名作もあると言いますが、テッサは独特な解釈で彼を驚かせました。

2人は映画館を出ても名残惜しそうにしていました。彼は「3時間も耳元でささやかせてくれてありがとう」と言って握手します。彼は去り際にスカイラーだと名乗ります。

テッサが座席に上着を忘れたことに気づき戻ると、彼もオレンジ色のキャップを忘れています。テッサはスカイラーの姿を探しますが、すでにどこかへ行ったあとでした。

テッサが病室のベッドで眠っていると、スカイラーが隣りで寝ています。彼は彼女に見せたいものがあると、病室を抜け出しテッサを背負い、まばゆい光の先へ走り出します。

テッサは「スカイラー」とつぶやきながら目を覚まします。主治医のジャスミンからうわごとで彼の名前を……と言い、故人が夢に出てくるのは癒しへの一歩と助言します。

それにしてはリアルな感じがしたというと、ジャスミンはドリスという「来世の本」を書いている、患者が聞きたがると言います。

ジャスミンはテッサに現場にあった、スカイラーの遺留品を手渡します。テッサは事故当時の記憶がなく、何かを伝えに彼に会いに行った感じだけが残っていました。

スカイラーの遺留品は破れたオレンジのキャップと、壊れたスマートフォンです。いたたまれない気持ちになったテッサは、映画のヒロインの真似をして長い自分の髪を切ります。

シャワー室の外で人の気配を感じて、病室に戻るとそこには誰もいませんでしたが、壊れているはずのスカイラーのスマホが起動し、非通知で画像が送られてきます。

その画像は彼と観た映画『ベティ・ブルー』のワンシーンでした。

退院の日、テッサはドリスに会って話すため、彼女を探して中庭へいきます。ドリスはジャスミンからテッサのことを聞いていました。

死者と交信ができるというドリスは、彼が“まだ、ここにいる”と伝えます。そして、テッサの悲しみが灯台のように、スカイラーをドリスへ導いたと話します。

そして、やり残したことや伝えたいことがある場合、死者は問いかけてくるとも言います。

ドリスは最後に彼は“境目の世界”にいて長くはいられず、そこから出ると会えなくなるとテッサに教えました。

立ち去ろうとするテッサにドリスは自分の著書を渡そうとし、「彼は話したがっている」と言いますが、テッサはもう遅いと退院していきました。

以下、『イン・ビトゥイーン』ネタバレ・結末の記載がございます。『イン・ビトゥイーン』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2022 Netflix

事故の102日前。テッサは学校で自分の写真をプレゼンします。担当の教師は彼女の才能を高く評価していて、RISD“リズディ”(美術専門学校)への推薦状も出せるといいます。

ところがテッサは自分の作品に対して自信がありません。教師はテッサに人との関わりが少なく、自分のメッセージを作品に落とし込めていないと指摘します。

教師はそれを解決するのには、“愛する対象”を見つけ出すことが大切だとアドバイスし、申し込み期限が迫っていると伝え、前向きに検討するよう言います。

ある日、ボート部の同級生が最後の大会を撮影してほしいと依頼しに来ます。テッサは人は撮ったことがないと断りますが、親友のシャノンが後押しして渋々引き受けます。

大会当日、テッサは同級生の姿をフィルターで追いかけますが、ふと彼女は一番奥の列で、トップを走る選手に目が止まります。

それは映画館で知り合ったスカイラーでした。優勝したのはスカイラーの組で、桟橋で寝転がっています。彼がテッサの探し人だと知ったシャノンは、声をかけるよう促します。

テッサは彼の忘れ物のキャップを投げます。帽子を見てビックリしたスカイラーは、テッサを見てさらに驚きます。

彼もまたテッサを探していたからです。スカイラーはニュージャージー州のエディソンから、試合のため遠征で来ていました。2人は終末を一緒に過ごすことを約束します。

スカイラーは母の赤いジープで迎えに来ます。車には両親が10代の頃の写真がありましたが、彼の父はオレゴン州にいると言います。

テッサは別居中なのか尋ねますが、彼は両親の修復を信じていました。スカイラーは音楽でも聴こうと、カセットボックスを彼女に渡します。

中には両親が若い頃に聴いた音楽と、父が母のために編集したカセットがありました。2人はそれを聴きながらドライブします。

テッサは写真の撮影場所を探して、偶然見つけたレストランを案内します。

スカイラーはそれがどこなのか聞くと、レストランから見える60年代に流行った、ハネムーンリゾートのホテル“エンピアン”を指さします。

彼はテッサの撮った写真が見たいといいますが、彼女が頑なに拒むとスカイラーは、一緒に“エンピアン”に行こうと誘います。

スカイラーはホール跡で彼女にワルツを教え、テッサはピンホールの仕組みを使って、海岸の風景を部屋の壁に映し出したりします。

ホテル内を散策するとハートの形をした浴槽をみつけます。テッサは新婚の亡霊がいると作り話をしながら、スカイラーにキスを誘導しました。

スカイラーはテッサを家まで送り、両親に挨拶するといいますが、彼女は“「本当の両親じゃない」と言って断ります。

彼は月末に戻ってきて、ブラウン大学の入学まで、祖父の家に滞在すると言いました。テッサはスカイラーがエリートであることに驚きます。

そんな幸せな1日をすごしたテッサでしたが、家に入ると喜びと不安が混ざった感情がこみ上げ、涙を流します。

再び学校に通うテッサをシャロンが迎えに来ます。テッサは壊れたスマホから画像が送られてきた理由を知るため、携帯会社に出してみましたが、理由ははっきりしませんでした。

シャロンは理由を深読みしたい気持ちはわかるが、死に関する兆しの一種だと慰めます。

しかし、彼女の車に乗るとカーナビから、かかるはずのないスカイラーと聴いた、思い出の音楽が流れ始めます。

テッサは彼の一部始終が記憶に残っていて、夏の最終週にケンカをし、事故の日に会話した記憶だけが抜け落ちているため、彼の死を受け入れられませんでした。

担任の教師はテッサのできごとを、今後の作品に活かせたらと慰めます。痛みや虚無感から生まれた傑作があると、RISD入試申請の締め切りが近いことを示唆します。

テッサはスカイラーとひと夏を過ごし、2人で巡ったアバロンの町を歩きます。そして、最後に湖にたどり着くと、フィルムカメラを投げ捨てました。

さらに家に帰ると写真に関する道具一式も、処分しようとゴミ箱に捨てますが、それを見ていた養父のメルが話しかけます。

彼は実の母親の最後の恋人でした。彼はテッサを母親と同じで、何事も中途半端で諦めるから、充実した人生を送れなかったと言ってしまいます。

その晩、テッサはスカイラーが自分を背負って、光の中の先へ行き、大きな月の浮かぶ海町の景色を見せてくれます。彼はテッサの耳元で「まだ近くにいるよ」とささやきます。

目が覚めたテッサはまた、不思議な体験をします。現像に使っていた暗室から気配を感じ、行ってみると引伸機が勝手に作動し、印画紙に何かを転写しました。

テッサは半信半疑で捨ててきた用具を持ってきて、印画紙を現像液に漬けてみると、カラーで“エンピリアン”の看板が映し出されます。

ところが定着液に漬けても写真は瞬く間に消えてしまいました。テッサは再び印画紙を引伸機にセットします。

謝って自分の手を転写してしまいますが、そこにはスカイラーの手が重なっています。驚きながら定着液に移しますが、やはりすぐに写真は消えました。

次は自分の横顔を紙の半分に写すと、隣りにはスカイラーの横顔が映し出されました。

テッサはドリスの話を思い出し、話を聞くため病院へ行きますが、彼女はささみ自宅で最期を迎えるために退院していました。

それでもドリスはテッサが訪ねてくると予想し、ジャスミンに自分の本を託していました。テッサは本を受け取りドリスの動画を観ます。

その中でデジタルカメラの赤外線機能を使うと、死者の姿を捉えることも可能と説明していました。

事故の65日前、独立記念日の花火があがる日、スカイラーの母が離婚申請を出した、という連絡が入りました。

母が諦めてしまったことにスカイラーはがっかりします。ボート競技で勝つには最後の苦しい時に、諦めず力を出しきることと例えました。

その晩、テッサは初めてスカイラーに自分の写真作品を見せました。その中のスマホの電波塔になった木の写真をプレゼントします。

スカイラーは売れるくらいにいい写真だと褒めますが、担任が言った指摘と同じことを言います。才能はあるのにそこには彼女の存在を感じないと……。

テッサは自分の内側よりも外に目を向け、世界を知るべきだと主張しました。彼女は生い立ちに原因があると、スカイラーに話しはじめます。

テッサの父は彼女が生まれてすぐに蒸発し、母はその後、何人もの男性と結婚離婚を繰り返し、今の養父メルが最後の恋人だったと教えます。

そしてメルにテッサを託して母も蒸発しました。メルは裁判所から幼いテッサの親権が認められず、彼女は里親を転々とし、メルが結婚をしたのを機に引き取られたと話します。

(C)2022 Netflix

スカイラーと付き合うようになったテッサは、義母のヴィッキーとも自然にふるまえるようになっていました。

そして、森へピクニックへ出かけた日、スカイラーは両親がハネムーンに行ったパリへ、結婚25周年の記念に旅行をプレゼントすると話します。

テッサの意見はネガティブなものでしたが、彼は「愛は不滅だ」と諦めていませんでした。

スカイラーは湖でボートに乗ろうと誘います。そこで彼はテッサに「愛している」と告白します。臆病なテッサは戸惑って、何も言えませんでした。

それでもテッサは帰り際、彼の気持ちに応えようと決心し、彼に身をゆだね2人は結ばれます。

“大学進学適性試験”の日、テッサはシャロンに不思議な体験の話、ドリスの“境目の世界”の話をしますが、あまり信じてもらえません。

テッサは自分も彼も純粋に最後のお別れを言いたい・・・、その思いが境目の世界と繋げようとしていると考えていました。

試験が始まるとテッサの筆記具に異変がおき、マークシートに自動筆記で不可解な線を描き、会場にいる生徒のスマホが一気に、2人の思い出の曲を流し始めたりします。

事故の11日前、テッサはスカイラーの知人の写真家の展覧会に行きましたが、そこにはスカイラーにプレゼントした写真が販売されていました。

テッサの才能を信じたスカイラーが、写真家にお願いして出展したからです。プロの写真家からもお墨付きをもらったテッサでした。

しかし、贈った作品を無許可で雑多に扱われたことで、テッサは不愉快に思ってしまい、彼とけんかになってしまいます。

それからの2人はギクシャクして会う時間が減り、すれ違いがおきてしまいます。テッサはそのことをヴィッキーに相談し、2人の距離は縮まっていきました。

一方、シャロンはテッサの説を信じて、スカイラーと交信できるよう協力しますが、全てうまくいきませんでした。

諦めて家に帰るテッサでしたが、自動車のナビゲーションが勝手にルートを調べ始め、それに従って行った先はドリスの家でした。

ドリスは故人の魂が戻る場所は、最高の愛を感じた場所と諭され、テッサはその導きで一層、スカイラーと会うことを願います。

事故の5日前、シャロンのホームパーティーに行ったテッサは、スカイラーに自分の気持ちを伝えることを決心していました。

ところがブラウン大学と同じ州のRISDに行くよう、テッサに勧めたスカイラーは、父の勧めでオレゴン州立大学に進路を変更していました。

2人の関係はいよいよ最悪な方向へ向かって行きました。

テッサはスカイラーに会うため、フルスペックのデジカメを買い、彼との思い出の場所を一つ一つ検証し、エンピリアンの鏡越しでスカイラーと出会うことができます。

しかし、その境目は砕け2人は言葉をかわすことはできませんでした。そして、なぜか警察がやってきて、テッサは補導されていきました。

テッサが無断でヴィッキーのカードを使ったことで、盗難と一緒だとメルが通報したからでした。3人は口論となりテッサは心労からか、その場で倒れてしまいます。

再入院をしたテッサは手術が必要なほど、心臓の状態が悪化していました。そこにシャロンから電話が入ります。

テッサはシャロンに「愛している」と言われた湖に行けば会えるというと、彼女は車で連れ出してくれました。

スカイラーがオレゴンへと立つ日、映画館でアルバイトをするテッサのところに、シャロンが来て後悔しないように、気持ちを伝えるべきだと言いました。

テッサはその言葉に背中を押され、スカイラーの祖父の家へ向かいました。彼が赤いジープを出して、交差点にさしかかったときに、テッサの姿に気づいて車を降りました。

そこに急カーブしてきた大型の4WD車に衝突されたのです。

病院を抜け出したテッサとシャロンは湖へ向かうため、車を発進させましたが、ハンドルが利かなくなり、別の方向へ向かっていきます。

たどりついたのは事故のあった現場でした。そこでテッサの容体が急変してしまいます。彼女は救急車に乗せられます。

テッサの魂は事故に会う前の自分が、スカイラーに「愛している」と伝えたところを見ます。その瞬間に事故に遭っていました。

テッサとスカイラーは境目の世界で、お互いの気持ちを確かめ合います。そして、テッサは彼女を呼ぶ声を聞き、スカイラーにお別れの言葉を言います。

再び一命を取り留めたテッサは、RISDのプレゼン試験に挑みます。

彼女はそこで幼い頃にうけたトラウマと向き合う大切さを写真を通じて学び、最愛の人を失う悲しみを乗り越えた強さを語ります。

映画『イン・ビトゥイーン』の感想と評価

(C)2022 Netflix

初めて知った「愛」を失うこと

無償の愛を与えてくれるはずの両親に捨てられ、幼いころから愛に関して期待をせず、愛を抱くことで失う怖さを覚えてしまう。テッサはそんな女の子でした。

今度こそ失いたくないと思える人が、突然死んでしまい、そばにいたはずの自分にその時の記憶がないという、何重もの苦悩と悲しみがテッサにはありました。

ドリスとの出会いでかろうじて、喪失感に押しつぶされ、生きる気力すら失ってもおかしくないテッサに、スカイラーに伝えたいことを言えるチャンスがあると知り、生きる糧になりました。

生まれて初めて愛し愛された人との別れ、テッサはスカイラーと出会う前は、別れがあってこそ愛は昇華するという考えでした。

ある意味、スカイラーとの死別はテッサにとって理想の「愛」であったのかもしれません。

しかしそれは、あまりに衝撃的で自分の考えを改め、生きることの意義や愛することへのトラウマを払拭する大きな代償となりました。

死者が控える「境目の世界」

仏教でいえば地獄へ行くか仏様の元にいけるか、キリスト教も地獄へ行くか天国へ行くか、現世でどの程度の罪があるかで、死後の世界で行き先が決まるという話があります。

仏教なら閻魔大王のいる「冥界」、キリスト教では「煉獄」が、死者の一時的にいる世界といえます。

天界にいけるのか? 地獄行きなのか・・・と気にする以前に、予想だにしない不慮の事故や事件で、命を奪われた人にとっては、この世に未練が多く残るはずです。

また、残された家族も「なぜ?」という疑問にさいなまれ、故人の死を受け入れるのに、相当な時間がかかることでしょう。

テッサのようにもう一度、故人と会うチャンスがあって、伝えたかった気持ちやお別れができれば、遺族はもっと穏やかに立ち直れるのでしょうか。

現実の感情はなかなかそうもいかないものです。ましてや「愛」を知らずに育った女の子が、初めて愛され愛した男性を失う喪失感は、それを上回る諦めない強い心がいるでしょう。

テッサにとってそれは写真を撮ることでした。愛する人が気づかせてくれた、自分を信じる気持ちと、裏切られる恐怖に勝つことでした。

もし、心残りのある人ともう一度会うことで、何か得るものがあり成長できれば、そういうワンチャンスがあってもいいのかもしれません。

まとめ

(C)2022 Netflix

Netflix映画『イン・ビトゥイーン』は、最愛の人との死別から、自分の未来へ繋ぐ、儚く悲しいラブストーリーでした。

最愛の人の死を受け入れ、前向きに生きることは困難極まりありません。

しかし、その愛が「不滅」のものであるならば、逆に生きる力にもなりうることをこの映画では伝えています。

そして、最も大切なのは相手のことを思うのであれば、独断で判断しないこと相談したり、話し合うことが最善の道であることも教えてくれました。

勝手な憶測や考えはすれ違いと、後悔を生んでしまうものです。もし、本心ではない誤解を与えたり受けたまま、最悪な別れになってしまったら、これ以上悲しいことはありません。

現実には故人と誤解を解く機会はなく、生前に関わる人たちとは、意固地にならず率直に付き合うことが大切になり、それが後悔のない人生になるのでしょう。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら





関連記事

連載コラム

【映画比較】スターウォーズと八犬伝は似てる?『宇宙からのメッセージ』『里見八犬伝』|おすすめ新作・名作見比べてみた3

連載コラム『おすすめ新作・名作見比べてみた』第3回 公開中の新作映画から過去の名作まで、様々な映画を2本取り上げ見比べて行く連載コラム“おすすめ新作・名作を見比べてみた”。 第3回のテーマは前回に引き …

連載コラム

映画『細い目』あらすじと感想レビュー。ヤスミン・アフマド監督が描く偏見や差別を超えたラブストーリー|銀幕の月光遊戯 42

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第42回 映画『細い目』(2004)が、2019年10月11日(金)より、アップリンク渋谷、アップリング吉祥寺他にて全国順次公開されます。 2009年に51歳で他界したマレ …

連載コラム

映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』原作者・押見修造さんからのメッセージ|映画道シカミミ見聞録2

連載コラム「映画道シカミミ見聞録」第2回 森田です。第2回目は新作映画をご紹介します!映画の大学で働いていると、卒業生がかかわる作品が公開されるといううれしいニュースが、毎日のように入ってきます。 7 …

連載コラム

『私はいったい、何と闘っているのか』映画原作ネタバレとあらすじ結末の感想評価。キャストに安田顕を迎えて中年男の脳内妄想を描く|永遠の未完成これ完成である28

連載コラム「永遠の未完成これ完成である」第28回 映画と原作の違いを徹底解説していく、連載コラム「永遠の未完成これ完成である」。 今回紹介するのは、お笑い芸人・つぶやきシローの小説『私はいったい、何と …

連載コラム

水木しげるの妖怪漫画を実写化した『ゲゲゲの鬼太郎』。歴代の解説と評価|邦画特撮大全29

連載コラム「邦画特撮大全」第29章 漫画家・水木しげるの代表作と言えば『ゲゲゲの鬼太郎』です。 1968年にモノクロ版の第1作、1971年に第1作の直接的続篇の第2作が製作されました。 以降およそ10 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学