映画『鋼色の空の彼方へ』は2022年5月20日(金)に名古屋にて先行公開、6月3日(金)より全国ロードショー!
ヘヴィ・メタルを愛する人々の胸の内、生き様を変化球で描きその魅力を湛えた映画『鋼音色の空の彼方へ』。
日本を代表するヘヴィ・メタルバンドOUTRAGEの活動35周年を記念して作られたドラマ。彼らの生き様をドラマとして製作するという物語から、役に向き合う人々の表情を通して人々の心のふれあいと、胸の内のピュアな思いを描きます。
アウトレイジの映像作品を手掛けてきた山田貴教が監督を担当、SKE48の末永桜花らをはじめオール名古屋キャスト、スタッフで作品を作り上げました。
映画『鋼色の空の彼方へ』の作品情報
【日本公開】
2022年(日本映画)
【原案】
伊藤政則
【監督】
山田貴教
【出演】
秋田卓郎、岡陽介、兼平勝成、安藤悟、近藤久美子、山中裕史、末永桜花(SKE48)、三根孝彦、酒井直斗、梨伽、高井泉帆、憲俊、野々田奏、上田定行
NAOKI(OUTRAGE)、 阿部洋介(OUTRAGE)、安井義博(OUTRAGE)、丹下眞也(OUTRAGE)
【作品概要】
愛知県名古屋市を拠点として活動するヘヴィ・メタルバンド「OUTRAGE」のデビュー35周年を記念して製作された物語。35周年を記念して「OUTRAGEの映画」を作ることが決定、そのメンバーを演じることとなった4人の若者が抱える葛藤、苦悩から、音楽を通して見える人々の心の交流と成長を描きます。
ヘヴィメタルの音楽評論で有名な伊藤政則が原案を担当、OUTRAGEのドキュメント作品『シャイン・オン トラベローグ・オブ・アウトレイジ』の山田貴教監督が作品を手がけました。オール名古屋のキャストやスタッフで作品に取り組み。OUTRAGEのメンバーもカメオ出演を果たしています。
映画『鋼色の空の彼方へ』のあらすじ
メタルバンド「OUTRAGE」の軌跡を振り返る劇映画を製作することが決定し、ヘビーメタルを愛する朝倉みどりは、プロデューサーとして製作に向けて意気揚々とした気分でいました。
ところがメンバー4人を演じるキャストには、サブカル俳優の山内聡、ネット配信歌手の前田徹、若手芸人の佐久間駿、新人俳優の加藤優馬という、メタルとは無縁な者たちが起用されてしまいます。
それでもバンド好きの共演者・可那子に導かれてヘビーメタルと役作りに没頭する朝倉を筆頭に、4人はOUTRAGEがこれまでに直面した過酷な日々を理解し演じる中で、役柄と自身が抱える過去の闇や苦悩、生きざまを自身と重ねあわせ、自分の人生と体当たりで向き合っていくのでした。
映画『鋼色の空の彼方へ』の感想と評価
ヘビー・メタルの何かを取り上げたテーマとしては、例えば海外の『ロック・スター』『メタル・ヘッド』など、これまでも様々な作品が発表されてきました。
一方、本作はかつて『名古屋の秘密兵器』と言われ日本のヘビー・メタルシーンのトップにも君臨したバンドOUTRAGEの、活動35周年を記念して作られた作品でありますが、ここには二つの大きな特徴があります。
一つは、敢えてヘビー・メタルの核心的な部分を物語に書き込んでいないところ、そしてもう一つは、ショート・コメディーをいくつも積み上げて作り上げた作品であることにあります。
前者においては、非常にユニークといえるでしょう。物語には記念作品としてOUTRAGEを取り上げ、時に流れる音楽は彼らが発表した音楽を使用しているという点はあります。しかしここで描いている物語の多くは、実はヘビー・メタルという音楽に傾倒した人ではなく、あくまで自分の人生に苦悩している人ばかり。
そんな人たちが「OUTRAGE結成35周年記念ドラマ」の撮影に挑むというものですが、その物語すら直接彼らの心境の変化にかかわってくる部分は、実はほとんどといっていいほどありません。
しかし、それでもところどころにサブリミナル的に表れるOUTRAGEという印象は、どこかそんな彼らの印象と重なっていきます。
伊藤政則が原案、OUTRAGEをテーマとした物語となれば、「ヘビー・メタルの核心に迫る物語だろう!?」と予測しがちではありますが、どちらかといえばOUTRAGEという印象と苦悩しながらも奮闘する人間の生き様を重ねて、ヘビー・メタルという音楽の魅力の普遍性をうたっている物語であるといえるでしょう。
また二つ目のポイントとして見えてくるショート・コメディーの積載的印象は、筋金入りヘビー・メタルファンであれば納得するポイントがあるかと推測します。
80~90年代のヘビー・メタルシーンで最も注目されたメディアとして、日本には『BURRN!』という雑誌があります。ヘビー・メタルに特化した専門紙ですが、インタビュー、ライブレポートのほかにも、時にはヘビー・メタルとからめて社会問題を取り上げてみたりと、全体的に硬派な内容の雑誌でありました。
しかしその中でもホッとするような息抜きのページである読者投稿ページのコーナーの中で、漫画家・喜国雅彦が執筆する『ROCKMANNGA』という四コママンガがありました。
これはロック、ヘヴィー・メタルというテーマをベースに、世間が保持するヘビー・メタルに対するステレオタイプをギャグタッチで風刺するようなもので、時には自虐的な内容すら描かれつつも、的を射た展開は多くの支持を得ました。
本作はこの『ROCKMANNGA』に描かれそうな、ヘビー・メタルにまつわるふっと笑える物語をいくつもつないで、一つの物語として帰着させたイメージが感じられます。そこにはヘビー・メタルという存在を絶対的なものであると主観的に示さず、身近なもの、普遍的なもとして認識してもらうことを意識したような意図も垣間見られます。
まとめ
本作の主人公が演じることとなるOUTRAGEのボーカリストNAOKIは、劇中の撮影現場と同じようにデビュー後、今でこそそんな傾向は絶対ではないものの、当時はみな長髪が普通だった時代に敢えてさっぱりしたショートヘアーでステージに立ちながらも、衝撃的ともいえるその魅力をステージで存分に発揮しファンを魅了していました。
OUTRAGEは日本のシーンが大きく変わる時代に登場しセンセーションを巻き起こしましたが、それもまたこのジャンルの音楽がアンダーグラウンドのものであるという定説を覆すようなタイミングであったともみられます。
その意味では彼らが現在のポジションにいることは、彼ら自身の意思とは別にミュージシャンがトップを目指すのは、単にセールスを上げるなどといったことではなく、多くの人に親しまれ普遍化する存在を目指す姿勢の象徴と見ることもできるでしょう。
本作に登場するキャスト陣の表情にもどこかぎこちなさが見られる一方で、そんな彼ら自身がOUTRAGEに魅了されながら人同士の中で生きる意味を暗に投げかけているようでもあります。
映画『鋼色の空の彼方へ』は2022年5月20日(金)に名古屋にて先行公開、6月3日(金)より全国ロードショー!