ミュータントVS人類、X-MENは全面戦争を阻止できるか!
X-MENシリーズ第2弾となる映画『X-MEN2』。
好評を博した前作『X-MEN』(2000)に引き続きブライアン・シンガーが監督を務め、壮大なスケールで贈る本作は、一触即発となったミュータントと人類の全面戦争を止めるため、X-MENが活躍する姿を描いています。
また、本作では人気キャラクターであるナイトクローラー及び、ウルヴァリンの過去を知り、深い因縁を持つストライカーが登場しています。
マグニートーの目論見を阻止し、一旦は人類とミュータントの全面戦争を阻止したX-MENですが、世間では未だ、ミュータントへの偏見と差別、迫害はなくなりません。
そんな折、ミュータントによる米国大統領暗殺未遂事件が発生、これにより再び政府はミュータントを危険視し、ミュータント対策本部のストライカーへ対応を指示します。
しかし、その裏には大いなる陰謀が隠されていました。
全ミュータントの危機をX-MENはどう切り抜けるのか、そして、明かされるウルヴァリンの過去とストライカーの関係は?
さらにスケールアップし圧倒的な迫力で繰り広げられるバトルシーン数々もも逃せない映画『X-MEN2』をご紹介します。
映画『X-MEN2』の作品概要
【公開】
2003年(アメリカ映画)
【原題】
X2:X-Men United
【監督】
ブライアン・シンガー
【キャスト】
ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート、イアン・マッケラン、ハル・ベリー、ファムケ・ヤンセン、ジェームズ・マースデン、レベッカ・ローミン=ステイモス、アラン・カミング、アーロン・スタンフォード、アンナ・パキン、ブルース・デイビソン、ブライアン・コックス、ケリー・フー、ショーン・アシュモア、ケイティ・スチュアート
【作品概要】
前作、『X-MEN』(2000)に引き続き、ブライアン・シンガーが監督を務め、ウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンを中心にパトリック・スチュワート、イアン・マッケラン、ハル・ベリーらメインキャストもカムバック。
新たに登場するミュータント、ナイトクローラー役に「スパイキッズ」シリーズで知られるアラン・カミングを、ウルヴァリンと深いかかわりを持ち、本作の敵役となるストライカーを映画『刑事グラハム 凍りついた欲望』(1986)などで知られるブライアン・コックスがキャスティングされています。
映画『X-MEN2』のあらすじとネタバレ
特異な能力に目覚めた新たな人類、ミュータントと旧人類の緊張が高まる中、瞬間移動を得意とするミュータント、ナイトクローラー/カート・ワーグナー(アラン・カミング)は単身でホワイトハウスを襲撃、米国大統領の暗殺を企てます。
しかし、暗殺は未遂に終わり、“ミュータントに自由を”というメッセージを残して去っていきます。
一方、自分の過去を知るため旅をしていたローガン/ウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)は、カナダの山中で廃棄された極秘軍事施設を発見します。
しかし、そこはただの廃墟でローガンの過去につながる痕跡は見つかりませんでした。
その頃、ホワイトハウス襲撃を知ったプロフェッサーX/チャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)は“X-MEN”のメンバー、サイクロップス/スコット・サマーズ(ジェームズ・マースデン)、ストーム/オロロ・マンロー(ハル・ベリー)、ジーン・グレイ(ファムケ・ヤンセン)を呼び集めます。
チャールズはこの事件で政府がミュータントに対する弾圧を強くすると感じ、政府や警察に先んじ犯人を確保し、事件を収束させようとしていました。
そんな中、ジーンは自由の女神での戦い(映画『X-MEN』(2001)のエピソード)以降、自身の能力の制御が上手くいかないことに不安を感じていました。
米国大統領の元に対ミュータント対策本部顧問のウィリアム・ストライカー(ブライアン・コックス)が訪れます。
ストライカーは“恵まれし子らの学園”がミュータントらのテロリストの拠点となっていると説明、襲撃する許可を得ます。
その頃、学園にローガンが戻り、その足でチャールズに会うため、チャールズのテレパシー能力を増幅する装置“セレブロ”へ向かいます。
ローガンはチャールズに今一度、自身の心の中を読んでもらい、過去につながるヒントを得ようとしていましたが、チャールズは自身が心に蓋をしているものはそれ以上除くことはできないと諭します。
チャールズは学園の生徒たちの世話をローガンに任せ、自身はスコットと共に旧友であり宿敵でもある金属を操るミュータント、マグニートー/エリック・レーンシャー(イアン・マッケラン)へ会いに、エリックが収監されている監獄へ向かいます。
また、オロロとジーンはカート確保のため、ロンドンへ向かいます。
映画『X-MEN2』の感想と評価
前作『X-MEN』(2000)より壮大なスケールと圧巻のアクションシーンの数々で高い評価を受けた本作『X-MEN2』ですが、作品に込められたメッセージは健在でした。
本作は、前作よりもストレートにミュータントと人類の戦争に言及しよりストレートに“反戦”のメッセージが込められていたように感じます。
本作の冒頭でナイトクローラーによる米国大統領襲撃により、一気に緊張が高まり、まさに一触即発の中、物語が進んでいきます。
ミュータントを憎み根絶やしにしようとするストライカーの陰謀と反対に人類を憎み、ストライカーの計画を逆手に取り、人類を抹殺しようとしたエリック、それぞれの思想は過去に現実の人類が歩んできた争いの中で何度も何度も繰り返されてきた愚かな思想そのものであり、互いに拒絶し、相手を屈服させる、あるいは全滅させるまで争うことをやめようとしない、これまでの人類の様子を暗示しているように感じます。
そんな中、印象的だったのが、米国大統領の前に現れたチャールズが語り掛けた「過去の過ちを繰り返すか、力を合わせてよき未来を築くか。あなたが決断すべき時です。」という言葉です。
まさに現在の私たちに語り掛けているのではないかと感じずにはいられません。
そして、本作ではジーンが自らの命を犠牲にし、X-MENを救う場面があります。
このジーンの死は、争いの中、否応なく失われていく命を表現し、裏腹に、戦いに身を投じた者たちがその尊い命を賭し、自身の大切な何かを守る高貴な精神を表現しているように感じ、誰かを“憎み”争うのではなく、誰かを“想い”守るために“力”は使われるべきだと説いているのではないでしょうか。
そんな深いメッセージと共に戦いに激しさが増していく本作はアクションシーンがグレードアップ、より迫力を増した圧巻の“能力バトル”が展開されています。
中でも印象的だったのが、冒頭のナイトクローラーが単独で米国大統領を襲撃するシーンです。
ナイトクローラーはテレポート能力を使い警護官を躱し、大統領に近づいていきますが、次々に消えては現れるナイトクローラーが仕掛ける攻撃は予測できません。
次にどのような展開が繰り広げられるのか全く想像がつかない中、主観に近いカメラワークで描かれ、まるで自分がその場に居て、襲われているかのように感じ高い臨場感と共にスリリングな演出は見事でした。
また、ミュータント同士のバトルシーンにもかなり力が入っており、終盤のローガンとデスストライクの戦いは、作品の設定上、驚異的な身体能力と不死身の肉体を持った者同士の戦いということもあり、デスストライクのアクロバティックなアクションと、ローガンの豪快なアクションが入り交じり、飛び散るコンクリート片や切断される鉄パイプなど、超人の戦いが大迫力で描かれ見ごたえのある映像となっています。
まとめ
本作『X-MEN2』の冒頭ではリンカーンの「我々は友達で敵であってはならない。感情の摩擦があっても愛情の絆は保たねばならない」と言う言葉が引用されています。
しかし、劇中ではリンカーンの言葉とは裏腹に、ミュータントと人類のそれぞれの想いが交錯し、互いを決して認めず、争いが起ころうとしていました。
これは現実世界でも同じで、今なお、人種や民族、政治や宗教などの様々な理由で、互いに認め合うことが出来きず起こってしまった些細なすれ違いが、いずれは、互いを傷つけあう争いに発展しています。
本作はそんな、反戦のメッセージを作品の中に内包しているのではないでしょうか。
そして、ジーンがそうであったように、皆誰かを“想い”行動できたのならば、無益な争いは決して起こらないのかもしれません。
本作を通し、私たち人類にX-MENはそう語り掛け、私たちが誤った決断を下さないよう見ているのかもしれません。