連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第90回
『SEOBOK/ソボク』(2021)のチョ・ウジンが単独初主演を務めた韓国製アクションスリラー『ハード・ヒット 発信制限』。
キム・チャンジュ監督が手がけた本作が、2022年2月25日(金)シネマート新宿ほか、全国ロードショーされます。
銀行支店長ソンジュが、子供たちを乗せて学校へ送ってから出勤しようと車で出発。すると、「車から降りた瞬間、爆弾が爆発する」という謎の発信番号表示制限の電話がかかって来ました。
果たしてソンジュと子供たちの運命は? そして犯人の目的は何?
疑問が次々と出てきて、警察とソンジュのカーチェイスもスリル満点。どんでん返しもありうるラストまで目が離せません。
ノンストップ・アクション・スリラーの韓国映画『ハード・ヒット 発信制限』をご紹介します。
CONTENTS
映画『ハード・ヒット 発信制限』の作品情報
【日本公開】
2022年(韓国映画)
【原題】
『발신제한』(原題訳:発信制限)
【脚本・監督】
キム・チャンジュ
【音楽】
キム・テソン
【撮影】
キム・テス
【キャスト】
チョ・ウジン、イ・ジェイン、チ・チャンウク
【作品概要】
映画『ハード・ヒット 発信制限』は、『SEOBOK/ソボク』(2021)のチョ・ウジンが単独初主演を務めた韓国製アクションスリラー。
2015年製作のスペイン映画『暴走車 ランナウェイ・カー』の韓国リメイク版で、『国際捜査!』(2020)や『食われる家族』(2020)のキム・チャンジュ監督が手がけました。
主人公ソンギュの娘を『サバハ』(2019)のイ・ジェイン、彼らを翻弄する犯人を『操作された都市』(2017)のチ・チャンウクが演じています。
映画『ハード・ヒット 発信制限』のあらすじ
銀行支店長として働くソンギュは、毎朝車で子どもたちを学校へ送り届け、そのまま職場へと向かっていました。
その日の朝もそれはいつもと変わらない、当たり前の日常のはずだったのですが……。
しかし一本の電話がソンギュの運転中にかかって来て、彼の運命を一変させます。
高校生の娘と小学生の息子は、発進した車の後部座席にいたのですが「何か臭い」と騒ぎ始めました。
ふざけているのだろうと、ソンギュが気にも留めずに運転を続けていると、「発信番号表示制限電話(非通知電話)」の電話がかかってきました。
「車の中に時限爆弾を仕掛けてある。車から降りれば、仕掛けた爆弾が爆発するだろう」と、声の主がソンギュに告げます。
さらに、「爆発を阻止したければ、身代金を用意しろ」とまでも……。タチの悪いイタズラだと思うソンギュ。
しかし目の前で、同じように爆弾を仕掛けられた同僚の車から彼の妻が降りて、車が大爆発を起こしました。
至近距離での爆発に伴い、とんできた部品で、ソンギュの車に乗っていた息子が足に怪我をします。
爆弾を仕掛けた犯人からかかってきた電話で、ソンギュは息子を病院へ連れて行きたいことを告げますが、身代金が先だと言われます。
病院へ行くことも警察に助けを求めることも、そして車を降りることも許されない絶体絶命の状況……。ソンギュの日常は制御不能の悪夢へと塗り替えられてゆきます。
映画『ハード・ヒット 発信制限』の感想と評価
発信制限電話から始まる恐怖
本作『ハード・ヒット 発信制限』は、車の中でいきなりかかってきた非通知電話から恐怖のドラマが幕をあけます。
主人公は、子供たちを学校へ送っていく途中で事件に巻き込まれる銀行の支店長・ソンギュ。車から降りることも出来ず、支店長という立場を利用しての莫大な身代金を要求されます。
不幸にして後部座席には彼の子供たちも乗っていました。車から誰かが降りようとすると爆発する爆弾を仕掛けられたため、走行するか車内にいることしか出来ません。
怪我をして出血多量になった息子とパニック寸前の娘の様子も気になるソンギュ。
犯人の要求のままに車を走らせることしか出来ない彼の絶望的な苛立ちと子供たちへの想いが、爆弾を仕掛けられた車内いっぱいに広がり、ピリピリした緊張感が生み出されます。
この緊張感が終始作品全体を包み込み、一瞬たりとも目を離せないサスペンスにしています。
キャストの演技力が魅せる
同僚の車爆破事件の重要参考人として警察に追われても、車をおいて逃げることも出来ないソンギュ。
警察車両に取り囲まれ、何が起こっているのかと説明しても、信用してもらえるかどうかわかりません。
犯人の共犯者のように思われますが、ソンギュは間違いなく被害者であり、人質の一人。しかも、犯人のターゲットはあきらかにソンギュなのです。
それがわかるソンギュは、何をおいても今は車を爆破させないよう、犯人の要求通りにするしかないのです。
ソンギュを演じるのは、『インサイダーズ 内部者たち』(2015)『国家が破産する日』(2018)などで注目を集め、『SEOBOK/ソボク』(2021)で鮮烈なインパクトを残した実力派俳優のチョ・ウジンです。
本作は初の単独主演となり、恐怖のままに突っ走る主人公を圧巻の演技力で魅せています。
犯人役は『ヒーラー 最高の恋人』(2014)『あやしいパートナー Destiny Lovers』(2017)などのドラマで活躍し、日本でも人気のチ・チャンウク。
自身初の悪役に挑戦していますが、犯行を企てる動機が明かされるラストで初めて彼のキャスティングが光ると言えます。
韓国市内を駆け巡る警察車両とソンギュの車のカーチェイスは迫力満点!
まとめ
ウジン扮するソンギュが車の中で非通知電話を受け、子供たちとともに恐怖のドライブが始まる『ハード・ヒット 発信制限』。
チャンウク演じる犯人の真の目的は何なのでしょうか。なぜソンギュがターゲットになったのでしょうか。
謎は徐々に明かされますが、常に爆発への恐怖が漂うアクションスリラー! 緊張感とスリル満載の韓国映画です。
映画『ハード・ヒット 発信制限』は、2022年2月25日(金)シネマート新宿ほか、全国ロードショー!
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。