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Entry 2022/01/29
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『超 西遊記』ネタバレあらすじ感想とラスト結末の評価解説。マーベル映画級の迫力を原作と比較して考察して見えた事とは⁈|未体験ゾーンの映画たち2022見破録5

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  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2022見破録」第5回

映画ファン毎年恒例のイベント、今回で11回目となる「未体験ゾーンの映画たち2022」が今年も開催されました。

傑作・珍作に怪作、東洋を代表する古典ファンタジーを映画化した作品など、様々な作品を上映する「未体験ゾーンの映画たち2022」、今年も全27作品を見破して紹介、古今東西から集結した映画を応援させていただきます。

第5回で紹介するのはお馴染み、孫悟空が大活躍する映画『超 西遊記』

世界中で人気のキャラクター、「西遊記」に登場する孫悟空。日本の映画やテレビでも描かれ、アニメやマンガに多大な影響を与えているのは周知の事実。

その原点である「西遊記」は、実にスケールの大きなファンタジー小説です。様々な映像が表現可能になった今、中国では「西遊記」映画が続々誕生しています。そんな1本を紹介します。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2022見破録』記事一覧はこちら

映画『超 西遊記』の作品情報


(C)WEEWANT PICTURES @2020

【日本公開】
2022年(中国映画)

【原題】
真假美猴王之大圣无双 / True and False Monkey King

【監督】
ルオ・ロー

【キャスト】
ドゥー・イーフン、フー・リンシー、グー・シャンウェイ、スン・ツォン、ホー・ガン、ジン・チャオチャオ、ロン・ヤンヤン、ジャオ・ジー

【作品概要】
天と地が分かれて以来、天界の神仏や下界の人間に対し、妖族を率いて争い続けた孔雀王。この争いに終わりをもたらす三蔵法師の錫杖を巡り、孔雀王は計略を実行します。そして三蔵法師一行の前に、もう1人の孫悟空が現れました…。

トレジャー・オブ・ムージン 天空城の秘宝 』(2018)と同じく、中国の作家・天下霸唱(テンカバシン)の小説「鬼吹灯」シリーズを映画化した作品、『鬼吹灯之湘西密藏(Mojin : Mysterious Treasure)』(2020)の監督ルオ・ロー。

彼は数多くの伝奇アクション・冒険映画を手掛ける人物で、ご紹介する『超 西遊記』も監督しています。

王朝の陰謀 謎の壁画と舞姫殺人事件 』(2020)のドゥー・イーフン、ドラマ『三国志〜趙雲伝〜』(2016~)のホー・ガン、『少林寺 十八の羅漢』(2020)のグー・シャンウェイら、歴史・伝奇・武侠作品などで活躍する俳優が多数出演しています。

映画『超 西遊記』のあらすじとネタバレ


(C)WEEWANT PICTURES @2020

天と地が分かれた時から、孔雀王は妖族を率い神や仏と争い、その結果人間が住む下界は荒れ果ててしまいました。

神仏は力を合わせ、孔雀王を捕らえ軟禁しました。そして争乱を静めようと、経典を求めて旅する唐の高僧・三蔵法師(スン・ツォン)に九環錫杖を授けます。

この錫杖を灵山(霊山)に奉ずれば、妖族は滅び争いは終結します。その企てを知り阻止しようと、三蔵一行に襲いかかる妖族たち。

しかし錫杖を奪おうとする妖族の前には、三蔵法師を守る妖猿、美猴王こと孫悟空(ドゥー・イーフン)が立ちふさがります。

黒風山の妖族たちは自らの存亡をかけ、孫悟空に挑みました。しかし圧倒的な力を持つ悟空の前に、ことごとく蹴散らされました…。

敗れた者の死体が並ぶ地に現れた妖族、六耳(ホー・ガン)は恋人の紫藤(フー・リンシー)の姿を探し求めます。そして瀕死の紫藤を見つけました。

紫藤は仲間の妖族と共に戦い、悟空に深手を負わされました。彼女を救うために軟禁中の妖族の盟主、孔雀王の元に向かおうと小舟で大海に漕ぎ出した六耳。

嵐に荒れ狂う海を渡り、紫藤を連れた六耳は大海の果てにある、宙に浮かぶ島に着きました。ここに孔雀王は幽閉されていたのです。

紫藤の命を救って欲しいと懇願する六耳に、孔雀王はある提案をします。今憎むべき孫悟空は、多くの妖族を殺戮した罪を三蔵法師に責められ、出奔している。

この隙に三蔵の持つ錫杖を手に入れ、妖族を救ってくれないか。その為にお前には孫悟空と瓜二つの姿になって欲しい。変化の術を使えばお前は悟空そのものになり、六耳としての記憶を失うと告げる孔雀王。

六耳が止めるのも聞かず、全ての妖族のために悟空に挑み、命を失いつつある紫藤。六耳は彼女に形見の小さな守り仏の像を握らせ、孔雀王の申し出を承知します。

この術で孫悟空になれば、神仏すら本物との見分けがつきません。そして孔雀王は六耳に術を使いました…。

眠っていた悟空が目覚めると、猪八戒(ロン・ヤンヤン)と沙悟浄(ジャオ・ジー)がいました。そして彼を気遣う三蔵法師が声をかけます。

師の命を守ろうと闘ったのに無益な殺生だと叱責され、出奔したものの師の元に戻った悟空を三蔵は気遣っていました。悟空の兄貴が勝手に怒って姿を消し、また勝手に戻るのはいつもの事だ、と指摘する八戒。

三蔵は弟子たちと共に、仏に与えられた使命である霊山に錫杖を届けようとしていました。今後は殺生を慎むよう言われても重く受け止めない悟空は、食料を求めて近くの楊家荘に向かおうと提案します。

人間たちが住む村、楊家荘で施しを求める三蔵法師。村長は彼が唐から来た高僧・玄奘三蔵と知ると、季節外れの祭りを開き一行を大歓迎しました。

村人総出で開かれた宴会に招かれた三蔵たち。しかし彼らを見つめる村人の様子が尋常ではありません。敵意を持っているのは間違いありませんが、彼らは妖族ではなく人間です。

襲撃の企てを見破られた村人たちですが、村長は自分たちを苦しめる妖族の命令で、錫杖を手に入れねばならぬと訴えます。しかし三蔵の弟子たちが従わぬと悟ると、武器を手に襲い掛かる村人たち。

しかし如意棒を操る悟空や猪八戒、沙悟浄に全くかないません。すると乱闘の最中に仲間の妖族と共に、復活した紫藤が現れました。

妖術で木のつるを自在に操り、三蔵の錫杖を奪い逃げた紫藤。しかし悟空の投げた如意棒に打たれて倒れます。師の教えに従い殺生は行わず、錫杖を取り戻すと紫藤に立ち去れと告げる悟空。

妖族は去り、村人たちも倒されましたが、突如怪しい風が吹き始めます。危険を察した悟空は、八戒と悟浄に三蔵を連れ逃れるよう指示します。

身構える悟空の前に現れたのは、もう1人の孫悟空でした。妖猿め、と呼び捨て振り下ろした相手の如意棒を、悟空は如意棒で受けます。姿形の似た敵は恐るべき力量の持ち主でした。

本来の姿に化身し、空に飛んだ孫悟空を追う悟空。互角の戦いが続き、自在に伸びる如意棒を駆使した凄まじい激闘となります。やがて悟空の如意棒に打たれ、地に落ちたもう1人の悟空。

悟空は紫藤を打ち倒したことや、紫藤を助けに六耳が現れたことを夢に見ます。そして悟空が目覚めました。

戦いで傷付き、杖を突いた悟空は妖魔たちが暮らす黒風山に現れます。紫藤たちここで暮らす妖魔は、仲間を殺した孫悟空が現れたと知ると彼を袋叩きにします。

しかし国風山の妖魔の長である獅駝王(グー・シャンウェイ)は、悟空の姿をした男は六耳だと見抜き呼びかけます。六耳の名を聞いて動揺する紫藤。

そう呼びかけられても悟空は住民たちを妖魔と蔑み、我こそは斉天大聖孫悟空と名乗ります。彼は自身を孫悟空だと信じていました。

獅駝王の説明に納得しない妖魔たちは、仲間の仇と悟空に詰め寄ります。すると悟空は1ヶ月ほど前に妖魔の六耳が、孔雀王の術で自分になりすましたらしいが、そいつと俺を間違えるなと獅駝王に言い放ちます。

お前たちの仲間、六耳は三蔵法師の元に現れ、錫杖を奪おうとしているが決して許さないと叫ぶ悟空に、現在三蔵の元にいる孫悟空こそ、本物の悟空ではないのかと問う獅駝王。

三蔵と共にいる悟空が六耳なら、すでに我々の為に錫杖を奪っているはずだ。錫杖が霊山に運ばれれば妖魔は滅びてしまう。お前は六耳だとを自覚し、妖魔の為に働けと獅駝王は説得しました。

しかし悟空は、自分は間違いなく孫悟空と叫び去って行きました。六耳から渡された守り仏を持つ紫藤は困惑します。

傷付いた体で1人旅する悟空を、獅駝王の言葉を信じず本物の孫悟空と確信した妖魔が襲います。その襲撃を阻止し、悟空を助けたのは紫藤でした。

六耳はもうこの世に存在しない、と叫ぶ妖魔の声に耳を貸さず、目の前の悟空を六耳と信じて共に旅することを選ぶ紫藤。

縛り上げた上で世話をしてくれる紫藤に、我こそは孫悟空と尊大な態度を見せる悟空。しかし彼女に刃を突き付けられ、話を合わせた方が得だと気付きます。

今思い出した、自分は六耳だと言い出す悟空。それを聞いて喜んだ紫藤は、以前から2人で行きたかった賑やかな城壁都市、百花城へ行こうと言いました。

熱烈に迫る紫藤に手を焼いた悟空は、正直に自分には六耳の記憶は無い、と打ち明けます。己が信じるままに師を守り、使命を果たすだけだと告げる悟空。

自分を傷付けた偽の悟空を倒すには、神火を浴び己を鍛錬するしかない、と悟空は告げました。妖魔が滅びる結果になろうが、かつて六耳であろうがなかろうが、使命を正しさを疑わぬ悟空の言動に戸惑う紫藤。

あくまでも自分は斉天大聖孫悟空だと主張する悟空に、それでも今は手助けが必要だろうと、紫藤は同行を承知させました。

黒風山では三蔵の錫杖を奪い損ねた楊家荘の村長が、自分たちを支配する妖族の長・獅駝王に詫びに訪ねていました。その村長を手下に殺害させる獅駝王。

一方天界でも、孔雀王の術で六耳が悟空と同じ能力と記憶を持った結果、下界に2人の孫悟空が存在する事態に憂慮していました。そこで神仏はかつて罪を犯し謹慎させていた天界の将・楊戩(楊セン)に、偽の悟空を捕らえるよう命じます。

黒風山に戻った獅駝王は、ここに暮らす妖魔たちがことごとく倒されている事に気付きます。その獅駝王の前に現れた楊セン。

以前ここに妖猿が現れたはずだ。偽の孫悟空は天界・人間界・妖魔界の三界を乱す存在で、必ず捕らえると語る楊センは、丁重に接する獅駝王に迫り強引に行方を聞き出そうとします。

それを助けようとした妖魔も、逃げようとした妖魔も圧倒的な力で殲滅する楊セン。500年も謹慎させられていた楊センは、偽の悟空を捕らえ汚名を挽回するためなら何でもする覚悟でした。

自分を鍛えてくれる神匠が住む地だ言って、小さな村を訪れた悟空。同行する紫藤はみすぼらしい村に呆れますが、構わず鍛冶職人に合言葉を告げる悟空。

鍛冶職人は三界を産み生命を誕生させた聖火の番人でした。天地創造以来多くの神仙や妖魔が、聖火を我が物にして、三界を支配しようと企み争っていました。

そのため聖火は隠されていました。廟の扉を開けるとはるか彼方の極寒の地に通じています。ここに聖火を守る仙翁がいたのです。

六耳が化けた偽の孫悟空を倒し、三蔵法師と錫杖を守り、仏の使命を果たしたい。その為に己の体を鍛錬して欲しい、と悟空は仙翁に頼みました。

仙翁は天地を切り開く斧を鋳造した神炉を出現させ、聖火で熱します。この灼熱にさらされては命は無いと、正体は六耳と信じる悟空を必死に止める紫藤。

しかし悟空は自分の信じるままに、炉の中に入ります。激しい炎に晒された悟空を見て、紫藤は中断するよう願いますが、もう止められないと答える仙翁。

やがて炉は砕け散りました。灼熱に晒されても耐え抜き、新たな力と強靭な肉体を得た孫悟空は、筋斗雲に乗り空を飛びました。

またたく間に三蔵法師と共にいる悟空の前に現れ、妖猿めと叫び如意棒で打ちかかる孫悟空。激しい闘いが始まります。

駆け付けた三蔵・八戒・悟浄は驚きます。現れた孫悟空は、今まで三蔵に同行していた悟空は、孔雀王の術で六耳が化身し、錫杖を狙う偽物だと叫びました。

三蔵法師が念仏を唱えると頭に巻いた輪、緊箍児(きんこじ)に締め付けられ、2人の悟空は共に苦しみます。これでは見分けがつかない、と困惑する猪八戒と沙悟浄。

そこに紫藤が現れます。今まで彼女と行動を共にしていた悟空は、三蔵と共にいた悟空を指差すと、こいつこそ六耳だと叫びます。

しかし紫藤は神炉で己を聖火に晒した悟空を気遣い、その体を抱きしめます。ところが彼は紫藤の首を締め上げ放り投げました。その体を受け止めて庇うもう1人の悟空。

互いにお前こそ偽物だ、正体は六耳だと叫ぶ孫悟空。すると三蔵法師が以前金山寺の高僧に教えられた、森羅万象全てを知るという、地蔵山に住む神獣に尋ねてみようと提案します。

そこで争いを止め、三蔵一行と紫藤と共に地蔵山のふもとに現れた2人の孫悟空。

三蔵法師は悟空たちに、山頂で神獣から答えを聞いて来るよう告げました。そしてその場には、紫藤が立ち会って欲しいと依頼します…。

以下、『超 西遊記』のネタバレ・結末の記載がございます。『超 西遊記』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)WEEWANT PICTURES @2020

3人は地蔵山の山頂に着きました。そこには2千年ぶりに人が来たと笑う、地蔵だと名乗る老人がいました。

どちらが本物か知りたいという2人の孫悟空を、神獣に会わせると告げ頂上から突き落とす地蔵。驚く紫藤に老人は語りかけます。

真実を知るのはたやすいが、それを受け入れるのは辛いものだ、と彼女に諭す地蔵。

悟空たちは降り立った場所で、巨大で狂暴な怪獣に襲われます。そこで2人は協力して怪獣に立ち向かい倒しました。

山頂に戻った悟空たちは、小さく大人しくなった獣を連れていました。これこそが全ての真実を知る神獣だったのです。

地蔵は2人の悟空に、先に山を下りるよう告げました。真実を知る役目は、紫藤ただ1人に委ねた地蔵。

三蔵法師の持つ九環錫杖は、壮大な大河・凌雲川を渡った先にある霊山に奉じられれば、全ての妖魔の魂は消滅する。孔雀王は自分の元に現れた獅駝王に告げていました。

六耳は錫杖を奪おうとしているが、自分を見失っているようだ。孔雀王は獅駝王に正体を暴く武器、二面鏡を与えます。

天界の将・楊センに仲間を殺された獅駝王は、妖魔を滅ぼそうとする神仏との闘いを決意していました。

三蔵たちと待つ2人の悟空の前に、神獣の言葉を聞いた紫藤が現れます。彼女が六耳だと指し示したのは、三蔵と共にいた悟空でした。

自分は本物だ、これは妖魔である紫藤の企みだ、と叫んだ悟空は彼女に襲いかかろうとしますが、彼の体は術で縛られます。

術をかけたのは現れた楊センでした。最後まで自分は斉天大聖孫悟空だと訴え続ける悟空を、六耳が化けた妖猿として天界に連行する楊セン。

その頃、獅駝王は配下の妖魔と共に錫杖を奪おうと動きます。そして紫藤は六耳と交わした会話を思い出していました。

小さな守り仏を彫っていた六耳に、妖族のために三蔵の錫杖を奪うと話していた紫藤。無邪気に孫悟空に挑もうとする彼女を、六耳は優しくたしなめます。

彼女を妖族を救おうとする大英雄だ、とからかう六耳に、大英雄なら目の前にいると答える紫藤。

思い出にふける紫藤の前に悟空が現れます。君のあかげで助かった、と語る悟空に、彼女はこの世にもう六耳はいない、とつぶやきます。

悟空は仏の意志に従い、三界を救おうとする大英雄だと告げる紫藤。照れて笑う悟空に、彼女はいざという時は世界と人々のために、英雄として振る舞って欲しいと告げました。

英雄として振る舞うには、犠牲を払わねばならないかもしれない。重い話になったので、話題を変えようと六耳の話を持ち出した悟空。

今六耳は、天界に捕らえられている。私のことを思い出してもくれない。さらに気まずくなった悟空は、彼女に皆の所に戻ろうと言いました。

すっかり一行になじんだ紫藤。三蔵法師は彼女に、仏の教えに帰依することをすすめます。

新たなる出発を祝い、皆で酒を飲もうと提案する紫藤。三蔵は自分は茶を飲む、弟子たちは酒で乾杯して良いと許しました。

その頃、偽の悟空は天界で石柱に鎖で縛られいました。自分を見張る楊センに、未だに自分が本物の孫悟空だと叫び続ける悟空。

翌朝、目を覚ました下界の悟空に、三蔵は錫杖が無くなったと訴えます。紫藤も姿を消していました。錫杖が奪われたら仏の使命は果たせず、妖族は絶大な力をえるでしょう。

紫藤はかつて六耳と訪れようと望んだ都市、百花城にいました。その荒れ果てた光景に愕然とする紫藤の前に、この地の名を彼女から聞いていた悟空が、先回りしていました。

錫杖を返せば見逃してやる、と悟空は告げますが、紫藤は私も妖魔だと抵抗します。仏の使命は果たしたいが、彼女を傷付けたくない悟空は、必死に闘う紫藤に手こずります。

そして背後から襲い掛かる紫藤に思わず如意棒を振るった悟空は、彼女を強く打ちすえました。

強く打たれた紫藤は最後の力で悟空を封じ、錫杖を持ち去ろうとしますが力尽き倒れます。彼女は悟空に六耳から託された守り仏を渡すと、かつて憧れていた地、百花城で命を落とします。

命を棄ててまで妖族に尽くした紫藤、悟空はその姿を哀れみますが、師に迫る危機を悟ります。

三蔵たちは獅駝王一味に襲われていました。そこに悟空が現れます。立ち去れと叫ぶ悟空に、今だ自分の正体に気付かぬのか、と告げる獅駝王。

孔雀王の術で悟空となった六耳とは、今ここにいる悟空だと告げる獅駝王。世界で唯一お前を六耳だと、疑わずに信じた紫藤を、自分の手にかけたと獅駝王は言いました。

三蔵たちもその言葉に動揺しますが、怒って自分は孫悟空だと叫び打ちかかる悟空。しかし獅駝王は二面鏡が放つ光線を悟空に浴びせます。

その力で正体を現した悟空。その姿はまぎれもなく六耳です。それでも自分は悟空だと叫び、獅駝王にむかってゆく六耳。

孔雀王の術で悟空そのものに変えられた六耳は、妖魔である自覚を失っていました。邪魔な六耳を殺そうとする獅駝王に、三蔵法師は錫杖を差し出します。

錫杖を渡すので六耳を助けて欲しい。その言葉を承知した獅駝王は、手下たちと共に去っていきました。

命を救ってくれた三蔵に私は一体何者ですか、と六耳は問います。その問いには私は答えられない、そう告げると猪八戒と沙悟浄と共に去る三蔵法師。

錫杖を手に凌雲川に現れた獅駝王。そこはかつて神仙と妖族が死闘を繰り広げた荒れ果てた地です。彼は仲間を天界の将軍・楊センに虐殺された恨みを思い出し、錫杖の宝玉を手に絶大な力を手に入れます。

六耳は妖族の主・監禁中の孔雀王を訪れ、自分はどうすべきか尋ねます。今はお前に与えるものは何もない、答えはお前の中にある、と告げた孔雀王。

今や紫藤の、そしてお前の魂も霊山にある。そこは三界を揺るがす戦場になろうとしている。争いに終止符を打つには、妄念を捨てるしかないと孔雀王は言葉を続けます。

仏の手で捕えられ、長年監禁され自らを見つめ直した孔雀王は、何かを悟っているようでした。

そして在りし日に、紫藤からあなたは大英雄だ、と言われた言葉を思い出す六耳。

獅駝王の野望を阻止しようと、三蔵は弟子と共に凌雲川に現れますが、すでに獅駝王は霊山に向かっていました。

その野望を悟った天界の将・楊センが立ちふさがります。しかし力を得た獅駝王に圧倒される楊セン。

そこに巨大な如意棒が飛んできます。現れたのは六耳が化身した孫悟空です。二面鏡の放つ光線で悟空を元の六耳に戻そうとする獅駝王。

しかし楊センは最後の力で二面鏡を破壊します。怒った獅駝王に突き落とされた楊センは、大声で孫悟空の名を叫びました。

その声を聞き天界の石柱に縛られ、朽ち果てようとしていた孫悟空は目覚め、鎖を解かれ飛び出します。

飛び掛かってきた六耳の悟空を、天空から墜落させた獅駝王。落ち行く悟空を筋斗雲で飛んできた、本物の孫悟空が救いました。

ついに天空に浮かぶ霊山の頂上に達した獅駝王。そこには何もありません。そして現れる2人の孫悟空。

2人がかりの攻撃に獅駝王は打ち負かされ、霊山から転落します。しかし彼は4本の腕を持つ巨大な鬼神に変化して襲いかかってきました。

砕いた岩を飛ばす攻撃をかいくぐり、巨大な鬼神の体の上を駆け抜け宙に舞うと、とてつもない大きさになった如意棒を振り下ろした悟空。

しかし鬼神と化した獅駝王はその一撃を受け止めます。するともう1人の悟空が、巨大化した如意棒と共に急降下してきます。

避けられず如意棒の直撃をくらう鬼神。その巨体は姿を消し、周囲の妖気は去りました。仏の持つ力に感謝し、合掌する三蔵法師と弟子たち。

周囲の景色は姿を変え、霊山は本来の姿になりました。そして元の姿に戻った六耳と獅駝王。錫杖は聖なる祭壇に立っていました。

六耳にお前は仏の意図を実現した大英雄だ。だが、お前は何を犠牲にしたか判るか、と問いかける獅駝王。

その言葉に六耳は自分は英雄ではない、英雄は紫藤だと答えます。

何かを悟った獅駝王は我々は間違っていた、完全に間違っていたと言い残し、姿を消しました。

孔雀王の身近に仕える妖魔も姿を消します。孔雀王は仏の意図は妖族の絶滅ではなく、妖族の命も輪廻転生の循環に取り込むことだ、と気付いていたのです。

絶大な力と妖力と引き換えに、業の深い長い命を生きた妖族たち。生の呪縛を逃れ、輪廻し生まれ変わりたいと望む妖魔は姿を消していきます。

姿が消えようとする六耳に孫悟空が駆け寄ります。六耳は来世で会おうと言い残し、紫藤とすごした日々を思い浮かべつつ姿を消しました。

六耳との再会を約束し、仏の大いなる慈悲を悟り、妖族のために合掌する孫悟空…。

500年後。行き交う人々でにぎわう百花城を旅の男が訪れます。その男は六耳によく似ていました。

占い師に声をかけられた男は、なぜ自分を選んだのか、何か伝える事があるのか尋ねます。答えはお前の心の中にある、と告げる占い師。

何か感じることがあったのか、六耳に似た男は占い師に謝礼を払い去ろうとして、1人の女性とぶつかります。

それは紫藤によく似た女でした。声をかけようとしてためらった男は、女が小さな守り仏を落したと気付きます。

守り仏は六耳が彫り、孫悟空になる前に紫藤に持たせた像に似ています。これを届けることを口実に女に声をかけようとする男。

紫藤に似た女の家まで追いかけた男。しかし彼は、彼女が既に子供を持つ身だと気付きます。

女が顔を上げた時、六耳に似た男の姿はありません。ただその家の門には、あの守り仏がかけてありました…。

映画『超 西遊記』の感想と評価


(C)WEEWANT PICTURES @2020

私の知ってる「西遊記」と違う!などと、最近の中国伝奇・武侠映画ファンであれば思わないでしょう。

多額の製作費を投じ、CGなど新しい技術を使い、多くの人口を抱える国内および中華圏をマーケットにした中国映画が、現在続々と誕生しています。

しかも中国国内は配信で映画を見ることが広く普及、劇場公開・テレビ放送にこだわらぬ映画・ドラマの製作が盛んになりました。

日本でもそういった作品が多数鑑賞可能です。おかげで西遊記を題材にした映画があふれ、どの作品が「どんな内容やら、判らないという方も多いのでは。

多数の作品が存在するという事は、原作の一場面や特定の登場人物をピックアップしたもの、新たなストーりーで描いたもの…いわゆる2次創作が盛んに行われている事実を示します。

今回紹介する『超 西遊記』もそんな作品の1つ。天竺にありがたいお経を取りに行く話ではありませんが、原作からどのようにインスパイアされ誕生したのか、紹介していきます。

マーベル映画を意識した迫力ある映像世界


(C)WEEWANT PICTURES @2020

宋の時代には原型が誕生し明・清の時代に完成したとされる、全100回で著された「西遊記」。日本で出版されている岩波文庫版は全10巻になります。

読むとスケールが余りに大きく、呆れてしまう描写や、映像化したらトンデモないスプラッター場面も登場する、まさに中国四大奇書の1つに相応しい小説「西遊記」。

子供の読む「西遊記」の絵本は、現在は穏やかな内容にアレンジされています。しかし戦前「文学の鬼」と呼ばれた作家・宇野浩二が著した西遊記は、原作を忠実に紹介し童話化した作品でした。

文・宇野浩二作、絵・本田庄太郎の絵本「孫悟空」は味わい深い作品ですが、この絵本には三蔵法師にお供する前に、天界を騒がした不死身の体の悟空を処刑するために、太上老君が持つ八卦炉に入れ、焼き殺そうとして失敗する描写があります。

実に原作に忠実ですが、子供に読ませていいのやら…。この八経炉で焼く描写が、本作の灼熱の炉で焼かれる悟空のシーンの元でしょう。

原作では太上老君が八経炉で焼いた秘薬・金丹をボリボリ食べて、悟空は無敵の体を手にいれます。ともかくこの炉で焼かれるシーン、『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー 』(2018)の惑星ニダベリアのシーンを強く意識しています。

本作で描かれたトンデモ如意棒バトルなども、原作に比べれば可愛いスケールですが、強くマーベル映画を意識した壮大なスケール感で描かれました。

神仙と妖魔が争う世界を、ハリウッド映画のスケールで描こうと挑むチャレンジ精神が強く感じられます。そもそも「アベンジャーズ」も、神様に宇宙人、超能力者にただの人が手を組み闘う無茶な話、「西遊記」の三界バトルと何ら違いはありません。

原作小説「西遊記」を大胆にアレンジした作品


(C)WEEWANT PICTURES @2020

本作の悟空のライバル、そして実質上の主役”六耳”ですが、原作に登場する六耳獼猴(ろくじびこう)という、何にでも変身可能な六個の耳を持つ妖猿から頂いたキャラクターでしょう。

日本ではあまり馴染みがない上に、原作ではあっさり正体を見破られ悟空に殺されるキャラですが、中国では京劇にも登場しますから、それなりの知名度はあるはずです。

そして敵役、獅駝王ですが、原作には獅駝嶺と言う場所に3人(匹?)の妖魔の大王が登場し、それぞれ悟空たちと闘いを繰り広げます。この獅駝嶺という地名から創作されたキャラクターと思われます。

なお原作に登場する獅駝嶺の3人の大王ですが、正体は菩薩様が乗る聖獣や神獣。獅駝王が絶対悪ではなく、最期は聞き分け良く退場するのも、こういった背景からでしょうか。

本作に登場する黒風山という地名は、悟空と三蔵が猪八戒と出会う前に、熊の妖魔・黒風大王に襲われますが、この妖魔が住んでいた場所が黒風山黒風洞です。

このように原作「西遊記」から、様々な部分を引用し2次創作して映画化した作品が『超 西遊記』です。2次創作された様々な漫画・アニメ等が大好きな我々なら、納得できる作品ではないでしょうか。

まとめ


(C)WEEWANT PICTURES @2020

「西遊記」を大胆に2次創作して、マーベル映画を意識しつつ映画化した『超 西遊記』。

たしかにCGや合成が少々豪快な面もあります。ここは一つお釈迦様の有難いお慈悲と、切ないラストに免じて大目に見てはいかがでしょうか。

同人誌やアニメなどを愛して止まない人が大好きな2次創作。それは江戸時代、いやそれ以前から日本の文芸・演劇の世界で盛んでした。

この2次創作の楽しみも、古来より日本人は中国の様々な文芸作品に触れて学んだと言われています。

中国で誕生した「西遊記」は、唐の時代の玄奘三蔵の成し遂げた偉業と、彼が見聞きした異国を口述した「大唐西域記」が、伝説化し民間で語り継がれて誕生した物語です。

そそて2次創作を繰り返した結果、我々が絵本やアニメなど様々な作品で知る、伝奇小説や童話に進化を遂げました。

特に明・清の時代、中国の官僚登用試験である科挙の合格を目指し勉強に明け暮れた人々が、退屈しのぎと気分転換に楽しみながら書き写し、内容を書き加えた結果、小説「西遊記」が誕生したと言われています。

何のことはない、勉学や仕事に追われた人が漫画やアニメ・ゲームの世界を2次創作して楽しむように、昔の中国の人も同じ様に「西遊記」で楽しみました。

現在同じ事が世界中で繰り返され、多くの作品を生んでいます。マーベル、「アベンジャーズ」の世界も将に同じ。古今東西、人間は作品を2次創作して楽しんでいるのです。

そういった趣味をお持ちの方は、オタクなどと恥じず胸を張って下さい。きっと、慈悲深いお釈迦様が許してくれるでしょう。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2022見破録」は…


(C)2016 Profile Pictures ApS

次回の第6回は代理母の胎内に宿った生命の正体は何なのか?戦慄のマタニティ・ホラー映画『マザーズ』を紹介いたします。お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2022見破録』記事一覧はこちら





増田健(映画屋のジョン)プロフィール

1968年生まれ、高校時代は8mmフィルムで映画を制作。大阪芸術大学を卒業後、映画興行会社に就職。多様な劇場に勤務し、念願のマイナー映画の上映にも関わる。

今は映画ライターとして活躍中。タルコフスキーと石井輝男を人生の師と仰ぎ、「B級・ジャンル映画なんでも来い!」「珍作・迷作大歓迎!」がモットーに様々な視点で愛情をもって映画を紹介。(@eigayajohn

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星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
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