映画『世界一不幸せなボクの初恋』をご紹介
『世界一不幸せなボクの初恋』は幸せを感じると倒れてしまう症状を持つ男性を描いたラブコメディ映画。
主演は人気ドラマシリーズ「シャーロック」のマーティン・フリーマン。『グリーンランド‐地球最後の2日間』のモリ―ナ・バッカリンがヒロインを演じています。
喜びを感じると気を失ってしまうので、幸せな恋愛を避けてきたチャーリー。
そんなチャーリーはある日、魅力的な女性から好意を寄せられて喜びを感じながらも葛藤するという、ハートフルコメディ作品です。
CONTENTS
映画『世界一不幸せなボクの初恋』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【監督】
ジェイソン・ウィナー
【脚本】
マックス・ワーナー
【キャスト】
マーティン・フリーマン、モリ―ナ・バッカリン、ジェイク・レイシー、メリッサ・ローチ、シャノン・ウッドワード、ジェーン・カーティン
【作品概要】
本作は、アメリカのイーラ・グラスが司会を務めるWBEZの長寿ラジオ番組The American Lifeで、2010年に紹介された実際のエピソードをもとに作られました。
幸せを感じると気を失ってしまう主人公を演じたのは、英国俳優のマーティン・フリーマン。ドラマシリーズ「シャーロック」のワトソン役で2011年の英国アカデミー賞テレビ部門助演男優賞を受賞しています。
ピーター・ジャクソン監督の「ホビット」3部作のビルボ・バキンズ役では、第1作目の演技でMTVムービー・アワード2013ベスト・ヒーロー賞、第18回エンパイア賞最優秀男優賞を受賞しています。
またMARVEL映画『シビルウォー/キャプテンアメリカ』『ブラックパンサー』など人気作品にも出演する有名俳優の一人です。
ヒロイン役を務めたのはブラジル出身の女優モリーナ・バッカリン。「The OC」や「グッド・ワイフ」などドラマシリーズに多数出演。SFドラマシリーズ「V」において2010年、2011年連続でサターン映画祭助演女優賞にノミネートされました。
人気ドラマシリーズ「HOMELAND」で主人公の妻を演じプライムタイムエミー賞を受賞。出演映画は、『SPY/スパイ』(2015)や「デッドプール」シリーズのヒロイン役、『グリーンランド‐地球最後の2日間』(2020)などです。
主人公の弟役を演じたのは、ジェイク・レイシー。NBCドラマシリーズ「ザ・オフィス」のピート役で注目を集め、「GIRLS・ガールズ」や「ハイ・フィデリティ」などでも知られています。
出演映画は、ドウェイン・ジョンソン主演の『ランペイジ 巨獣大乱闘』やアーロン・ソーキン監督ニコール・キッドマン、ハビエル・バルデム主演の映画『愛すべき夫婦の秘密』など。
映画『世界一不幸せなボクの初恋』ネタバレあらすじ
情動脱力発作とは、突然感情の高ぶりによって体の力が抜けてしまう症状のことです。特に喜びによってその発作は起こります。
妹ライザ(シャノン・ウッドワード)の結婚式に立ち会うチャーリー(マーティン・フリーマン)は幸せを感じると倒れてしまうので、喜びを押し殺そうとしていました。
弟のクーパー(ジェイク・レイシー)も兄が倒れないよう耳元で悲しくなる単語をささやきます。
しかし、ライザのあまりに幸せそうな表情を見て遂に失神してしまい、そのまま新郎にぶつかり新郎がライザにぶつかってしまって、唇を切る事態になってしまいました。
目覚めたチャーリーは状況を聞いて、弟に慰められます。薬を飲んでいないことを心配されますが、飲むと失禁してしまう可能性があり、運動でも効果があるから飲まないのだと説明しました。
葬送行進曲をイヤホンで聴きながら職場のブルックリン公共図書館へと向かうチャーリー。
孫と手をつなぐおじいさん、幼い子供を肩車する父親、妊婦を気遣う男性らを見て失神しそうになりながらどうにかたどり着きます。
司書として働くチャーリーは職場の人々にも恋愛をしないかと言われますが、ドキドキしたり喜びを感じると失神してしまうので、安定期のような付き合い、つまり、スウェット姿を想像できる相手ならいいと話していました。
そこへ一組のカップルがやってきて、別れ話を始めます。誰もが目を引く美女フランチェスカ(モリ―ナ・バッカリン)は、彼氏からいつも騒ぎすぎると文句を言われて激怒。テーブルの上に乗って本を彼に投げつけて喚き散らします。
チャーリーは急いで止めに入り、フランチェスカをなだめます。チャーリーの冷静な問いかけに答えるうちに別れることを決意したフランチェスカは満足して帰っていきました。
チャーリーは 早退してメリーゴーラウンドに乗りに行きます。チャーリーと同じ病気だった祖父がいつもの乗せてくれた思い出の場所です。
ベルトで体をくくりつけていれば、幸せを感じても平気で気を失っていられます。チャーリーはいつも2周目には失神してしまいます。
翌日図書館にチャーリーを訪ねてフランチェスカがやってきます。昨日のお礼を言われ、会話をかわします。喜びを押し殺しながらどうにか話し終えそっけない態度で仕事に戻ります。
その態度を見ていた同僚らからデートに誘うように説得され、チャーリーは戸惑いましたが同僚らに背中を押され、勇気を振り絞ってフランチェスカをデートに誘いました。
数年デートは控えていたものの、靴に画鋲をしのばせてデートへ向かいます。
デートでは舞台を観たあと、互いの身の上話をして会話が弾みます。フランチェスカはチャーリーを家に誘いました。
喜びを押し殺しながら家へと向かうチャーリーでしたが、倒れてしまいました。
頭を打って病院に運ばれたチャーリー。そこでフランチェスカは病気について聞かされます。
大学時代に初めて付き合った女性とセックス中に失神して、目を覚ますと大勢にかこまれていてそれ以来女性を避けているのだと打ち明けました。
事情を知ったフランチェスカは、退屈なデートでじっくり関係を作ろうと提案しますがチャーリーはもう会えないと断ります。
後日、フランチェスカはチャーリーに会いに図書館にやってきます。その日は幼稚園の先生をしている弟のクーパーが遠足でやってきていたので、チャーリーは彼を紹介して仲良くなるよう勧めました。
フランチェスカは後ろ髪を引かれながら帰っていきました。
その日から、クーパーとフランチェスカの仲は縮まっていき付き合うことになりました。
しかしクーパーは、フランチェスカの勢いに圧倒されてしまうし、同居している叔母さんが乳がんだという話を聞くと暗くなってしまって嫌だと、チャーリーに嘆いていました。
一方で、クーパーはフランチェスカが働くバーにいるべサニーという女性をチャーリーに紹介することにします。
彼女はゆったりとした話し方で穏やかな性格。そして趣味嗜好がすこし独特なのでチャーリーが、刺激を感じずに穏やかに接することができると思ったからです。
チャーリーはべサニーとデートをして、確かに刺激が少なく穏やかでいられるところに安心して付き合うようになりました。
妹の家で行われたホームパーティに参加したチャーリーカップルとクーパーカップル。
チャーリーは久しぶりにフランチェスカに会いましたが、クーパーと仲良さそうにしているのを見ながらだと少しの不幸を感じるから、フランチェスカと普通に話すことができると妹に打ち明けます。
そんなチャーリーを見て、結婚祝いに渡したラインベックの宿泊券で4人で遊びに行くよう勧めました。
平凡な田舎町であるラインベックへやってきた4人。クーパーは今日こそフランチェスカとセックスしたいと息まいていました。
そのことを聞いたチャーリーは気が気ではありません。クーパーとフランチェスカが部屋に入ってしまわないように、チャーリーは街のアンティークショップへと皆を誘って出かけました。
叔母が使っていたハンドミキサーやティーセットに喜ぶフランチェスカ。チャーリーとフランチェスカはジョークを交わしたりふざけ合って楽しそうにはしゃぎます。
その夜、それぞれベッドインしましたがフランチェスカたちが気になって仕方ないクーパー。べサニーの積極的な誘いにも引き気味でした。
クーパーは失神したふりをして、フランチェスカとクーパーのムードを台無しにします。心配したべサニーも当分セックスは辞めようと決めたのでした。
また、フランチェスカの元に叔母のがんが転移しているという知らせが来ます。ショックを受けるフランチェスカを抱きしめるクーパー。しかし、欲情したままのクーパーに対してフランチェスカは怒り喧嘩になってしまいました。
映画『世界一不幸せなボクの初恋』の感想と評価
本作は、幸せを感じると倒れてしまうという特殊な設定を活かしたコミカルでハートウォーミングな映画となっています。
マーティン・フリーマンのキュートさと設定の巧みさ
マーティン・フリーマン演じる主人公のチャーリーを悩ませているのは「情動脱力発作」という500人~2000人に1人発症すると言われている実在の症状です。
実際にこの疾患を持っている人からすると、苦労の連続かもしれませんが、本作ではマーティン・フリーマンのユーモラスな演技が、この映画に明るさとあたたかみをもたらしています。
結婚式やデート中に彼が見せる、本来ならその場にそぐわない表情は笑いを誘います。喜びを押し殺そうとすることがこんなにも笑いを誘うのかと驚くほどでした。
また、チャーリーが中年男性という設定もあり、描かれるのは結婚を視野に入れた大人な恋愛です。
ヒロインのフランチェスカは、いつもダメ男ばかりと付き合ってしまうことに嫌気がさして、真剣な恋愛を求めていたところでした。
この人物設定は、互いの相性はもちろんですがパートナーに求めるものが一致したという物語上の説得力がありました。
さらには、弟のクーパーは浮ついた気楽な恋愛を求めているキャラクターというので、兄想いながら女性に対する軽率な行動と発言をすることの納得がいきます。
チャーリーとフランチェスカが互いに両親を失っているという設定も巧みです。悲しい過去という共通点があるという点と、もし両親が登場すると親子愛に喜びを感じないようにするチャーリーという場面が生まれることも考えられ、話が広がりすぎる可能性があるからです。
自分の感情を抑えるあまりにとったチャーリーの行動は周囲の人を傷つけるものでしたが、物語の展開上仕方ないといえるでしょう。
それよりも、メリーゴーラウンドやデオドラントなどの細かな場面を生かした伏線回収が見事です。
97分間で人生における幸せについて改めて見つめなおし、テンポの良い笑いをもたらす作品となっています。
喜びであふれた世界
チャーリーは幸せを感じないように必死に暗い音楽を聴いてごまかそうとしますが、一歩外に出ると街は幸せな瞬間や人々の愛に溢れています。
子どもを肩車する父親や妊婦の手伝いをする通りすがりの男性など、チャーリーはそんな人々をなるべく見ないようにしています。さらには犬の散歩姿すらそばで見ていられません。
それは、そんな親子愛や生き物たちのかわいらしさに胸を打たれるほど心がピュアで、本心では誰よりもその喜びに触れることを求めているという現れではないでしょうか。
喜びを感じないように気を付けているからこそ、ささいな喜びに敏感になりその逆の痛みや苦しみにも気付くことができるのです。
何気なく毎日を過ごし、自分の幸せを見失っている人は、チャーリーの視点を通して身の回りを見ることで、今まで見えていなかった喜びに気づくきっかけになるのではないでしょうか。
まとめ
チャーリーが自分の症状に向き合って素直になろうと決めた最後の後押しは、見知らぬ人の優しさでした。同じセリフが全く別の意味合いを持って使われるこのシーンは必見です。
また、エンドクレジットのおまけ映像も、とても愛おしいワンシーンとなっていますので、お見逃し無いようご覧ください。