Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2022/01/11
Update

映画『ギャング・オブ・アメリカ』あらすじ感想評価とレビュー解説。実録ドラマでアメリカ暗黒街を支配した“男の人生”を描く

  • Writer :
  • 松平光冬

アメリカの暗黒街を支配したマフィア王の実像とは?

名優ハーヴェイ・カイテル主演の映画『ギャング・オブ・アメリカ』が、2022年2月4日(金)より新宿バルト9ほかにて全国ロードショーとなります。

全米最大の犯罪組織《シンジケート》を率いて暗黒街を支配した実在のマフィアの生涯を描いた、本作の見どころをご紹介します。

映画『ギャング・オブ・アメリカ』の作品情報

(C)2021 MLI HOLDINGS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

【日本公開】
2022年(アメリカ映画)

【原題】
Lansky

【監督・原案・脚本】
エタン・ロッカウェイ

【共同原案】
ロバート・ロッカウェイ

【製作】
ジェフ・ホフマン、ロバート・オグデン・バーナム、エリック・ビンズ

【撮影】
ペーター・フリンケンバリ

【キャスト】
ハーヴェイ・カイテル、サム・ワーシントン、アナソフィア・ロブ、ミンカ・ケリー、デビッド・ジェームズ・エリオット、ジョン・マガロ

【作品概要】
禁酒法時代から半世紀にわたりアメリカの暗黒街を支配した実在のマフィア、マイヤー・ランスキーの生涯を描いたクライムドラマ。

『レザボア・ドッグス』(1991)、『ピアノ・レッスン』(1993)のハーヴェイ・カイテルがランスキーを、『アバター』(2009)のサム・ワーシントンが彼にインタビューを試みる作家ストーンを、それぞれ演じます。

そのほかのキャストに、『ソウル・サーファー』(2012)のアナソフィア・ロブ、『オーヴァーロード』(2019)のジョン・マガロ、『(500)日のサマー』(2010)のミンカ・ケリー。

カルト教団による殺戮ホラー『サモン・ザ・ダークネス』(2020)の製作総指揮を務めたエタン・ロッカウェイが監督・原案・脚本を手がけ、彼の実父ロバートが実際に生前のランスキーにインタビューを行った経験がベースとなっています。

映画『ギャング・オブ・アメリカ』のあらすじ

(C)2021 MLI HOLDINGS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

1981年、マイアミ。長らくスランプ状態だった作家のデヴィッド・ストーンは、伝説的マフィアとして知られるマイヤー・ランスキーの伝記を書いて、起死回生を狙います。

しかしインタビューに応じたランスキーは、「俺が生きているうちは、誰にも伝記を読ませるな」と条件を提示。

かくしてインタビューは始まり、自らの人生を赤裸々に語るランスキー。それは、半世紀以上に及ぶギャングたちの壮絶な抗争の記録でもありました。

インタビューが終わりに近づいた頃、ストーンはFBIが3億ドルともいわれるランスキーの巨額資産を捜査していることに気付きます。

捜査協力を強いられたストーンが下すこととなる決断とは……。

映画『ギャング・オブ・アメリカ』の感想と評価

(C)2021 MLI HOLDINGS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

アメリカの暗黒街を支配し、ラスベガスを築いた男

本作『ギャング・オブ・アメリカ』は、アメリカに実在したマフィア、マイヤー・ランスキーの生涯をドラマ化したものです。

1902年、ロシア帝国領だったグロドノ(現在のベラルーシ、フロドナ)にてユダヤ系ロシア人として生まれ、8歳でアメリカに移住するも、貧しい幼少時代を過ごします。

しかし、同じユダヤ人で“バグジー”のあだ名で知られるベンジャミン・シーゲルとのコンビで、路上賭博や窃盗強盗などの稼業で名を上げます。

その後、イタリア系マフィアで構成される犯罪組織コーサ・ノストラの最高幹部ラッキー・ルチアーノとの出会いを機に、シーゲルを含む3人で殺し屋集団《マーダー・インク》を結成。1930年代には全米各地で次々と闇賭博の拠点を作ります。

さらに40年代に入り、人口わずか2,000人程度だったネバダ州の町ラスベガスをギャンブルの一大都市へと変貌させるなど、アメリカ経済にも影響を及ぼしたほど。

ちなみにランスキーが登場するほかの映画として、『バグジー』(1991)でベン・キングスレーが、テレビ映画『ランスキー アメリカが最も恐れた男』(1998)ではリチャード・ドレイファスが、それぞれ彼を演じています。

『バグジー』(1991)

明かされるマフィア王の二面性

(C)2021 MLI HOLDINGS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

アル・カポネやフランク・コステロら、名立たるマフィアと肩を並べるランスキーですが、彼が異彩を放っていたのは、その頭脳と才覚です。

身長は160センチ代と小柄でしたが、金銭の記憶と扱い方において卓越した知識を持ち、さらに警戒心の強さから犯罪行為なども直接手を下さないなど、表に出ることを極力避けるようにしていたのです。

また、マーダーインクや賭博ビジネスで雇用を創出したり、第二次世界大戦時にはFBIの依頼で、アメリカ国内にはびこる親ナチス団体狩りも行っていました。

暗黒街でマフィアの域を超えた存在となったランスキー。しかしながら私生活では、長男が障害を抱えた状態で生まれたのを機に、妻アンナとは不和状態に。

さらには、相棒シーゲルがカジノホテル経営に失敗したことで、2人の友情にも陰りが生じていきます。

あらゆるものを支配してきた男が、唯一支配できなかったもの――彼のもう一つの顔である、悩める姿が描かれます。

光るハーヴェイ・カイテルの老境演技

(C)2021 MLI HOLDINGS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

本作は、年老いたランスキーに作家のストーンがインタビューを行い、そこで語られる人生を、1910年代から80年代までの時代を行き来しながら描きます。

その80年代の老ランスキーを演じるのは、ハーヴェイ・カイテル。

『ミーン・ストリート』(1973)や『レザボア・ドッグス』(1991)、『バグジー』では実在したギャングのミッキー・コーエンを演じるなど、数々の作品でアウトサイダーな役をこなしてきた彼ですが、ある意味ランスキーは、そうした役どころの集大成的人物といえるかもしれません。

また、自らの出自を切々と語っていくランスキーは、東欧系ユダヤ人の血筋を引くカイテル自身とも重なる面も。

80代という老境に入ったこともあってか、これまでにない深みのあるランスキー像を構築しています。

まとめ

(C)2021 MLI HOLDINGS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

「パパのようになりたい」と長男に言われたランスキーは、「お前は何にでもなれる。でも俺みたいにはなるな」と告げます。

もしランスキーがまともな職に就いていたなら、確実に敏腕経営者となっていたはず。しかし、ユダヤ人として生まれた血筋と、移民として社会を生きねばならなかったアメリカという国が、それを許さなかった。

「この世は白と黒ではなく、グレーの濃淡で出来ている」

彼は悪人だったのか?それとも…

グレーに包まれたマフィア王の実像を、その目で確かめてください。

映画『ギャング・オブ・アメリカ』は、2022年2月4日(金)より新宿バルト9ほかにて全国ロードショー

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『朝が来る』考察と解説。永作博美と井浦新が特別養子縁組を決断する夫婦を熱演

映画『朝が来る』が2020年10月23日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。 世界で高い評価を受け、カンヌ国際映画祭では欠かせない存在となった河瀨直美監督が、直木賞・本屋大賞受賞のベストセラ …

ヒューマンドラマ映画

映画『武曲 MUKOKU』あらすじネタバレ感想とラスト結末の解説【綾野剛×村上虹郎共演のおすすめ代表作】

剣を棄てた男と、剣に出会った少年。運命は2人の人生を交錯させる…。 映画『私の男』の熊切和嘉監督が若手の実力派俳優・綾野剛を主演に迎え、芥川賞作家・藤沢周の小説「武曲」を映画化。 綾野剛が主人公・研吾 …

ヒューマンドラマ映画

【映画ネタバレ】フラッグ・デイ|あらすじ感想評価と結末ラスト解説。実話でディラン・ペンは父ショーン・ペンと“アメリカの過去と現在”を演じる

愛していた父が犯罪者だった…… “実の父娘”が父娘の物語を演じる! ジャーナリストのジェニファー・ヴォーゲルが2005年に発表した回顧録を元に、ショーン・ペンが映画化した『フラッグ・デイ 父を想う日』 …

ヒューマンドラマ映画

Netflix映画『アメリカで最も嫌われた女性』ネタバレ感想と考察評価。実在の無神論者の女性が巻き起こした大論争が悲劇になった理由

「嫌われる」とは世間から気にかけられなくなり「無視」されること。『無神論』女性の変革と結末の間にあるギャップの意味に迫る 映画『アメリカで最も嫌われた女性』は、アメリカの「無神論者」マデリン・マリー・ …

ヒューマンドラマ映画

【ネタバレ】マイスモールランド|感想解説とラスト結末のあらすじ評価。嵐莉菜で川和田恵真監督が描く“日本の難民を取り巻く課題”

『マイスモールランド』は、在留資格を失ったクルド人少女サーリャの成長と葛藤を描き出す。 映画『マイスモールランド』は、是枝裕和監督が率いる映像制作者集団「分福」に在籍する川和田恵真が商業映画としての初 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学