連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第56回
人の文明の通わない広大な自然は、デジタルな世界に疲れきった現代人の癒しの場。
しかし、その癒しの場は人の文明が通わないからこそ、大事があった際には人の助けのこない恐怖の場所へと早変わりします。
2021年9月10日(金)にNetflixで配信された映画『デッドリー・ハンティング』(2021)は、そんな広大な大自然である「山」を舞台とした最新ホラー映画。
今回は助けの来ない大自然で、強い殺意を持った狙撃犯に命を狙われる恐怖を描いた本作を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
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CONTENTS
映画『デッドリー・ハンティング』の作品情報
【配信日】
2021年(ドイツ映画)
【原題】
Prey
【監督】
トーマス・ジーベン
【キャスト】
デビッド・クロス、ハンノ・コフラー、マリア・エーリッヒ、ローベルト・フィンスター、ユン・ゴ、クラウス・シュタインバッハー、リビア・マテス、ネリー・タールバッハ
【作品概要】
『キーパー ある兵士の奇跡』(2020)で実在したサッカー選手バート・トラウトマンを演じたデビッド・クロスが主演を務めた作品。
『ステラ -真昼の誘拐-』(2019)を製作したトーマス・ジーベンが監督を務めました。
映画『デッドリー・ハンティング』のあらすじとネタバレ
恋人のリーザとの結婚を控えたローマンは兄のアルバート、友人のヴィンセント、ペーター、シュテファンを連れ、山の中をバチェラー・パーティ(結婚前日に友人たちと夜を過ごすこと)の代わりとしてトレッキングしていました。
職の決まらないローマンは、アルバートがペーターと企業した会社に仕事の斡旋を頼んでいましたが、腹に一物抱えるアルバートに上手く使われていると言う疑惑は晴らせずにいました。
ヴィンセントは高所恐怖症であり乗り気ではありませんでしたが、人生の岐路に立つ友人のローマンのため仕方なく同行しています。
山中の塔にたどり着いたと同時に銃声が響き渡り、5人は近隣の猟師によるものだと考えます。
アルバートは木の麓に置いてあったユニコーンの人形を土産として持ち去り、帰路に着く5人は駐車場に辿り着きます。
するとまたも銃声が響き渡り、ヴィンセントの左腕が撃ち抜かれました。
急いでヴィンセントの止血を行いハンターの誤射に文句を叫ぶ5人でしたが、次に車のタイヤが撃たれ、パンクしてしまいます。
狙撃手が殺意を持って狙撃していることを理解したアルバートは警察に通報しようとしますが、ここは深い山奥であり圏外でした。
狙撃を避けるため5人は森の中へと逃げ込みます。
ボーイスカウトのシュテファンが先導し、トレッキングの最中に見えた幹線道路で助けを求めるため、5人は幹線道路を目指しますが道中でアルバートが草間に足を取られ負傷してしまいます。
なんとか山の中の湖に辿り着いた5人は、ほとりに立つ女性を発見し助けを求めます。
しかし、その女性は傍らに置いたライフルを手に取るとシュテファンの頭部を撃ち抜き射殺し、その光景を見たローマンたちは全速力で逃走。
ペーターは足を負傷しているアルバートを鬱陶しく思い、4人バラバラで逃げることを提案しますが、兄想いのローマンがその考えを退けます。
山道を歩き、山間の売店にたどり着いた4人は店員の女性に助けを求めます。
アルバートは売店の固定電話で警察に助けを求めますが、売店の外からの銃撃で店員が死亡してしまいます。
さらに犯人の女性は銃撃を繰り返し、ヴィンセントが首を撃たれ死亡。
ローマンの機転で3人は売店を抜け出すことに成功し、コテージの立ち並ぶキャンプ場跡へとたどり着きます。
足を負傷し歩くことがままならなくなりながらも、自身を置いていくことを許さないアルバートに辟易したペーターは、日々溜まっていた愚痴を吐き出し、ローマンにリーザの件においてアルバートのことを信用するなと言いひとりで道路を目指し歩いて行ってしまいます。
兄想いのローマンではありましたが、妻となるリーザの名前が出たことでアルバートを問い詰めますが、アルバートははぐらかすばかりで答えようとせず、ローマンもまたアルバートのもとを離れました。
映画『デッドリー・ハンティング』の感想と評価
狙撃犯に襲われる恐怖
本作『デッドリー・ハンティング』は、殺人鬼に襲われ、ひとりひとり殺されていくスラッシャー映画にあたる作品です。
スラッシャー映画の中でも姿の見えない位置から一方的に殺人を行うことの出来る狙撃犯は「見えない殺人鬼」と言えます。
狙撃犯に襲われるスラッシャー映画としては『ダウンレンジ』(2018)や『ノー・エスケープ 自由への国境』(2017)が存在しますが、それぞれ異なった面白味が存在しました。
『ダウンレンジ』では遮るものが車しかない道路を軸に狙撃犯との定点での攻防が描かれています。
一方で、『ノー・エスケープ 自由への国境』では荒れた地でひたすらに主人公を追い掛け回す狙撃犯が相手であり、『デッドリー・ハンティング』はどちらかといえば『ノー・エスケープ 自由への国境』に近い作品性です。
しかし、遮るものが少ない荒地や道路と違い森で覆われた山というフィールドは、狙撃犯にとっても相手を見つけにくい舞台。
いつ襲われるかも分からない切れることのない緊張感が秀逸な作品でした。
人間的で猟奇的な殺人鬼
本作の殺人鬼はスラッシャー映画では珍しく、殺人鬼が殺人を行い始めた背景がはっきりと描かれています。
自身の子供をトレッキング中の男性に殺害されたことで、トレッキング中の男性を無作為に殺害する猟奇的な殺人鬼に変容してしまった本作の殺人鬼。
『ハロウィン』(2018)の殺人鬼マイケル・マイヤーズのように内面の全く見えない純粋な暴力性も魅力的ではありますが、本作のように背景が描かれることで血の通った人間だとはっきりと分かる殺人鬼もまた魅力的に映ります。
同情してしまうと同時にその深い猟奇性に恐れを成すこと間違いなしの本作の殺人鬼をぜひその目で確かめてみてください。
まとめ
深い森で覆われた山を舞台に狙撃犯からの逃走劇を描いた映画『デッドリー・ハンティング』。
本作は狙撃犯との攻防と同時に主人公ローマンを巡る人間関係の歪みも描いています。
一瞬の判断の迷いが命に関わる緊急事態の中で徐々に明らかになってくる、上辺だけの関係と真の友情。
切ない背景を持つ殺人鬼の魅力も合わせて、スラッシャー映画好きにぜひ鑑賞して欲しい作品です。
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