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Entry 2021/09/06
Update

『桜のような僕の恋人』映画原作ネタバレ感想と結末あらすじの考察。泣ける恋愛小説ランキング常連作がNetflixに登場!

  • Writer :
  • 星野しげみ

小説『桜のような僕の恋人』がNetflixで全世界同時配信。

2017年に発売され、泣ける恋愛小説として瞬く間にベストセラー化した宇山佳佑の『桜のような僕の恋人』が、Netflix映画として、2022年3月24日(木)に配信されることが決定しました。

晴人を演じるのは、「Sexy Zone」の中島健人。恋人の美咲には松本穂香が扮します。監督は『神様のカルテ』(2011)など、多数のヒューマンドラマを手掛けた深川栄洋が務めます。

美容師の美咲に恋をした晴人。目標に向かって頑張る美咲にふさわしい人間になるべく、諦めかけていたカメラマンへの道へのチャレンジを決意しますが、美咲は難病を発症。好きな人と同じ速度で歳月を重ねることができない、という残酷な現実が2人の前に立ちはだかります。

涙なしには読めない小説『桜のような僕の恋人』を、配信より一足早くネタバレあらすじを交えてご紹介します。

小説『桜のような僕の恋人』の主な登場人物

【朝倉晴人】
プロのカメラマンを目指すも挫折した青年。美容院で担当してもらった美咲に一目ぼれします。

【有明美咲】
新米美容師。24歳という若さで「早老症」を発症。

【有明貴司】
美咲の兄で、親代わりとして美咲の面倒をみます。

【吉野綾乃】
貴司の恋人。

小説『桜のような僕の恋人』のあらすじとネタバレ


(C)宇山佳佑/集英社 【イラストレーション/LAL!ROLE】

桜が満開の春の日。朝倉晴人は胸をときめかして、下北沢の美容院に行きました。晴人担当の美容師は有明美咲。

初めてこの美容院に来た時、担当してもらったのですが、猫のような瞳をした愛らしい美咲に晴人は一目ぼれしてしまったのです。

今日こそは、美咲をお花見デートに誘おうと勢い込んで来たのですが、なかなか言い出せません。

意を決して美咲をデートに誘おうとカット中に振り返ったとたんに、耳たぶをカットばさみで切断されました。

最初何が起こったのかわからない晴人ですが、大粒の涙を流す美咲に仰天し、次には自分の切り落とされた耳たぶを見て真っ青になり、晴人は自分の運の無さに落ち込みます。

救急搬送された病院で耳たぶ縫合手術を受け、包帯を巻いた痛々しい姿で病院を出ると、美咲が待っていました。

「すみませんでした」丁寧に謝る美咲。お詫びとしてなんでもするという美咲を、良いチャンスとばかりに、晴人はデートに誘いました。

断れるはずがない美咲はドン引きながら、「わかりました」とOKを出しました。

美咲の自宅は小田急線の梅が丘にある「有明屋」という小さな居酒屋です。両親に早くに死に別れ、兄の貴司が営むこのお店で暮らしています。

優しい兄とその恋人の吉野綾乃、そして口の悪い常連客のオヤジ相手にその日の愚痴をはくのが美咲の日課でした。

「耳たぶ切り落としたカメラマンがデートに誘うのって反則じゃない?」

急な展開に怒る美咲の愚痴を聞いていた綾乃は、「たまには楽しんで見れば?」と美咲の背を押しました。

お花見デートの日。天気も良かったのでどこも大混雑で、デートとしては大失敗です。

カメラマンになるのが夢だったけれども、辛くて今はアルバイトをしているという晴人に対して、美咲は、「夢ならなにがあってもカメラ続けなさいよ!」と言いました。

晴人は、自分にカメラの才能があると言ってくれているのかと思い嬉しくなり、思わず彼女の手を握りました。

驚く美咲に謝りながらも、「僕はあなたにふさわしい男になってみせます!」と晴人は言い切りました。

美咲に対して真心をみせたい晴人は、しばらく美咲に連絡をつけずに、即プロカメラマンのアシスタントとして働き始めます。

最初は晴人を好きでも何でもないと思っていた美咲も、そんな晴人の実直さに魅かれていき、久しぶりのデートのときに「どうして、私なんですか?」と聞いてみました。

晴人は即座に応えます。「あなたがいいんです」「美咲さんに恋をしたからですよ」「僕は、あなたを好きになれてよかったです」。

美咲は、自分の気持ちをじっくりと確かめてから返事をしました。

「わたしも、あなたのこと好きになりたいです! 私でよかったら付き合ってください」。

よく考えた末の美咲の答えに晴人は大喜びです。

季節は春から夏へ。付き合いたてほやほやの若いカップルの幸せでたまらない日々が過ぎていきます。

しかし、美咲は春から時々熱を出し、寝込んだりする日が続いていました。心配になった兄と病院へ行くと、しばらくして検査結果を聞きに来るように言われました。

何か不吉な予感がして、一人で病院へ行った美咲ですが、医師の宣告に目の前が真っ暗になりました。美咲は「早老症」に犯されている可能性があるというのです。

早老症は、人より早く年を取る病。進行が早いので3カ月ぐらいで老人の身体になってしまう恐ろしい病気です。

外見だけではなく、免疫力が落ち、筋力が衰えて、体の機能が低下して……。長くは生きられない、と医師は宣告します。しかも、早老症は治療できる病ではありません。

不安におびえる美咲をさらに奈落の底へ突き落すかのように、精密検査の結果が出て、はっきりと「早老症」と診断されてしまいました。

美咲は暗い気持ちのまま晴人とデートし、彼からいきなりプロポーズされます。

「付き合って3ヵ月しか経ってなくても、君より素敵な人がどれだけいても、美咲は僕の最後の恋人だって、勝手にそう思ってるから」

美咲は顔が歪みそうになるのを我慢して「しばらく考えさせて……」と返事するのが精一杯でした。

日を追うごとに老化し最期には死んでしまう。そんな病気が憎らしいと美咲は思います。

つき合って3ヵ月でプロポーズまでしてくれた彼を絶望させてしまうのが辛くて、晴人に病気のことは言えませんでした。

プロポーズには返事をしませんが、美咲は最後の思い出として、晴人に抱かれることを望みました。

初めてのそして最後の夜が終わり、美咲はまだ寝ている晴人の顔を見つめます。

時々でいいから、わたしのこと思い出してね。美咲は愛おしくて晴人の頬にくちづけをしました。

今はまだ普通通りの24歳の姿だけれど、これからどんどん変わっていく……。お婆さんになった姿を晴人にだけは見られたくない。晴人君には今の私を覚えていてほしいと美咲は心の底から思います。

そして、美咲は黙って一人で部屋を出て行きました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『桜のような僕の恋人』ネタバレ・結末の記載がございます。『桜のような僕の恋人』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

季節は夏から秋へ。あの日、黙って晴人の元を去った美咲。以来、晴人からの連絡を無視し続けましたが、それでも晴人からは電話やメールが毎日のように届きます。

嬉しい反面、もう晴人と会うわけにはいきません。美咲は「好きな人ができた」と嘘をつき、強引に晴人を遠ざけました。

一日ごとに美咲の老化は進行します。実年齢は24歳ですが、筋力の衰えによって杖がないと歩けなくなっています。免疫力の低下による肺炎と白内障。身体の内側も外側も、もうすっかり老人です。

急速に老いていく美咲にとって一番ショックだったのは容姿が醜く衰えていくこと。美咲は、若く健康体を持つ人への妬みを感じ、心まで蝕んでいく病魔を恐れるとともにそんな自分を恥じていました。

美咲も貴司も綾乃も、支えてくれている人を含めてみんなが心をすり減らしていきました。

季節はクリスマスを迎える頃。貴司は、日々自分を責めて苦悩する美咲を見かね、独断で美咲の病気のことを晴人に話しました。

晴人は美咲の家へ駆け込みます。美咲が姿を見られるのを嫌がったので、部屋の前、襖ごしに話しかけました。

「僕は、美咲がどんな姿になっても、好きだよ。君が大好きだよ」。ありったけの想いを込め、晴人は襖の向こうに向かって呟きました。

この日から晴人は時を惜しむように有明家に通い始めますが、美咲の命の灯は消える寸前でした。

美咲のために自分は何ができるだろう?と晴人は悩み、自分がカメラマンとしていい仕事をすることだと思いつきました。

先輩カメラマンに頼み込んで、晴人は写真展に参加させてもらいます。展示するのは、今の自分にできる全力で撮った写真たち。晴人は「写真展に来てほしい」と襖越しに美咲に頼みます。

美咲は悩みに悩みましたが、晴人がどんな写真を撮ったのか、晴人の写真が見たいと強く想います。最後には「後悔したくない」と、晴人に姿を見られる覚悟で写真展に行きました。

写真展に飾られていたのは、普通の風景の数々……。でもそれらは全部、いつか晴人と一緒に見た景色だったのです。

初めてのデートで訪れた四ツ谷の桜並木、食事に出かけた新宿のレストラン、美咲が働いていた美容室・ペニーレインの写真も。夏に一緒に行った隅田川、花火を見上げたビルの隙間、プロポーズしてくれた由比ヶ浜。

季節は違っても、確かにそこに晴人と見た景色がありました。写真展に来て本当に良かった、と美咲は思います。

作品の最後に『変わらないもの』というタイトルが記されていました。それを見て、変わっていくことが怖かったけれども、変わらないものもあるんだと、美咲は嬉しくなりました。

有明家に美咲を迎えに行った晴人とすれ違いになったようなので、美咲は来た道を戻りながら、晴人の姿を探します。

そしてついに、発症してからずっと直接は会っていなかった彼が目の姿を見つけました。公園の入り口に晴人が立ち、辺りを見回して誰かを探しているようでした。

私を探してくれていると思った美咲は緊張で震える足を踏み出しました。晴人との距離が少しずつ縮んでいき、彼がこちらを見ました。彼もゆっくりこちらへ向かって歩いて来ます。

そしてあの頃のように彼の名前を呼ぼうとしたそのとき、北風が美咲の桜色ののニット帽を飛ばしました。

晴人は傍らに落ちたそれを拾い上げると笑顔を浮かべてニット帽を差し出し「どうぞ」と言います。その瞬間、美咲の笑顔は泡のように消えました。気付いてない……。

美咲は涙を堪えて口を閉ざします。これが晴人君に会える最後なんだからと、美咲は目の前にいる恋人に向かって、精一杯笑ってみせました。

そして晴人が差し出すニット帽を受け取りました。「ありがとう……」万感の想いを込めて、かすれた声でそう告げました。

晴人はニット帽を渡すと会釈して歩き出しました。小さくなっていく彼の背中を、美咲はいつまでも見つめていました。

美咲がこの世を去ったのは、写真展から数日後のことでした。

晴人は有明家を訪ねて美咲の部屋に入り、桜色のニット帽を見つけます。そこでようやく自分の過ちに気づきました。ニット帽の持ち主の老婆のことを、晴人は覚えていたのです。

あのとき、あそこですれ違った老婆は美咲だったのに、僕は気付けなかった! もういない恋人に謝っても、どれだけ泣いても、晴人の後悔は消えませんでした。

それから晴人はカメラの仕事をやめ、廃人のようになって日々を無気力に過ごします。

ある日、周囲の人々に支えられて少しだけ元気を取り戻した晴人は、貴司から生前の美咲が晴人に遺した手紙を受け取りました。

そこには、写真展に行ったけどすれ違って出会えなかったけれど、また会えることを楽しみにしてること。晴人の写真ももっと見たいということ。ずっと応援してるから、これからも素敵な写真を撮って欲しいということなど、愛情あふれる文章が、‟ありがとう”の言葉とともに書かれていました。

また桜の季節が巡ってきました。晴人の愛した美咲はもういません。ですが、満開の桜を見上げながら、晴人は恋人の顔を思い浮かべます。

美咲を写した写真は一枚もないけれど、それでもこの心に焼き付けていたいと、晴人は肩に下げたカメラを構えてファインダーを覗きます。

美咲に届くようにと願いながらシャッターボタンを押し、彼女のいない新しい季節を写真の中に収めました。

小説『桜のような僕の恋人』の感想と評価

この小説は、病魔に侵されたヒロイン・美咲と恋人・晴人の切なすぎるラブストーリーです。

美咲が発症したのは「早老症」という、普通の人が急速に老いてしまうという恐ろしい難病でした。この病気にかかると、外見が老人になるだけでなく、骨ももろくなり、免疫力もおち、内面も老人そのものになってしまうのです。

特効薬はなく、いくら老化防止に効くサプリを飲んでも、電気療法を試みても、病気は憎らしいほど早いスピードで進行していきました。

会いたくてたまらない恋人なのに、姿を見たら与えるであろうショックを考えると会うわけにいきません。それよりも、自分もまた老いてしまった姿を見たくないのです。

美咲の気持ちは女性なら痛いほどわかることでしょう。24歳の女性にはあまりには酷すぎる病であり、それを思うだけでも涙が出そうになりました。

また美咲がどんな姿になっても大好きだと言っていた晴人ですが、実際に年老いた美咲を目の当たりにしてそれが美咲とわからなかったという事実に気がつき、悔やんでも悔やみきれません

愛する人と一緒に歳を重ねていくというごく普通のことが、どんなに幸せなことなのかと、痛感しました。

しかし、本書は悲恋だけで終わる物語ではありません。美しく咲き誇る桜の花が短命なのは皆周知のこと。それゆえに儚いものの例えにされることも多いのですが、桜の花が散る時には必ず若葉が芽吹いています。

美しい花が散ってしまっても、次世代の花を咲かせるべく顔を出した若葉に、新たな希望を見出せるのではないでしょうか

本書のラストシーンでも、晴人はずっと美咲との思い出を忘れないために、彼女のいない季節の風景をカメラに収めています。

思い出も悲しみも写真に封じ込め、次の季節に向かおうとするその姿は、やはり新しい門出と言わざるを得ません

儚く散った恋人の思い出を語る本書は、恋人が病魔によって死に別れる物語ですが、残された者はそれでも生きていくという力強さを秘めています。

映画『桜のような僕の恋人』の見どころ

涙なしには読めない小説『桜のような僕の恋人』が、2022年Netflixで映画化。主役の朝倉晴人に中島健人、恋人の有明美咲は松本穂香が扮します。

本書を読んで大号泣したという中島健人は、主演の話を聞いたときに「震えるような感動と同時にずっしりと重い責任を感じました」と言います。

また、残酷な運命に翻弄される美咲を演じる松本穂香は「読む度に、脚本全体に溢れている温かさを感じ、胸がいっぱいになりました。この物語は他人事ではなく、生きている私たちひとりひとりの物語だと感じています」と語っています。

写真展に行った美咲と晴人は公園でばったり出会います。飛ばされた美咲の桜色のニット帽を拾い上げた晴人が美咲と気がつかずに渡すシーンが最大の見どころといえます。

狂おしいほどに晴人を慕う美咲の想いは伝わらず、恋しい人が目の前にいるのに晴人にはわからないという運命のいたずらを演ずる俳優たちに注目です。

2人の俳優たちがそれぞれに感じたまま演じる晴人と美咲。

切な過ぎるラブストーリーは、小説や脚本を読んでそのリアルさを感じとった俳優たちによって、瑞々しい感性にあふれた作品となることでしょう

映画『桜のような僕の恋人』の作品情報


Netflix映画「桜のような僕の恋人」

【配信】
2022年(日本映画)Netflixにて全世界同時配信予定

【原作】
宇山佳佑「桜のような僕の恋人」(集英社文庫刊)

【脚本】
吉田智子

【監督】
深川栄洋

【キャスト】
中島健人、松本穂香

まとめ

小説『桜のような僕の恋人』は、人より早く歳をとる病気になった美咲とその恋人の晴人とのラブストーリー。

死を身近に感じ恋人に会いたいけれども、老人の姿となってしまったから会いたくないと思う美咲のいじらしさに胸がいっぱいになります。

逝ってしまう美咲は自分のことを忘れないで欲しいと願い、残された晴人は亡き美咲の面影を桜に見出してカメラに収めます。美しく切ない恋人たちの別れに涙が止まらない小説でした。

この宇山佳佑氏のベストセラー小説がNetflix映画として実写化。主役を演じるのは「Sexy Zone」の中島健人と松本穂香ですが、監督は『白夜行』(2010)や『そらのレストラン』(2019)『ドクター・デスの遺産』(2020)などを手掛けた深川栄洋が務めます。

映像化された作品は、“人間ドラマを描くことに長けた監督”と評される深川栄洋監督の手腕によって、原作に輪をかけて涙が止まらない映画になるに違いありません

ご鑑賞時には、ハンカチの用意をお忘れなく。

映画『桜のような僕の恋人』は、2022年3月24日(木)Netflixで全世界同時配信!



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