映画『漁港の肉子ちゃん』は2021年6月11日(金)より全国ロードショー!
直木賞作家・西加奈子の同名小説を、明石家さんまが企画・プロデュースを手がけアニメーション映画化した『漁港の肉子ちゃん』。
漁港で暮らす食いしん坊で脳天気な肉子ちゃんと、しっかり者でクールな11歳の娘キクコの涙あり笑いあり、そして愛と奇跡ありの物語です。
スタッフには『海獣の子供』で知られる渡辺歩監督とSTUDIO4℃にくわえ、スタジオジブリ出身の小西賢一がキャラクターデザイン・総作画監督を、大島里美が脚本を担当。
そして肉子の声を務める大竹しのぶをはじめ、花江夏樹・下野紘ら豪華声優、キクコの声を担当する声優初挑戦のCocomiとバラエティに富んだキャスト陣が集結しました。
CONTENTS
劇場アニメ『漁港の肉子ちゃん』の作品情報
【公開】
2021年(日本映画)
【原作】
西加奈子
【企画・プロデュース】
明石家さんま
【監督】
渡辺歩
【脚本】
大島里美
【総作画監督・キャラクターデザイン】
小西賢一
【演出】
秋本賢一郎
【声のキャスト】
大竹しのぶ、Cocomi、花江夏樹、中村育二、石井いづみ、山西惇、八十田勇一、下野紘、マツコ・デラックス、吉岡里帆
【作品情報】
直木賞作家・西加奈子の同名ベストセラー小説『漁港の肉子ちゃん』を、明石家さんまの企画・プロデュースで、アニメ映画化。
パワフルな主人公・肉子ちゃん役を大竹しのぶが務めたほか、木村拓哉と工藤静香の長女でモデルのCocomiがキクコ役で声優に初挑戦。『鬼滅の刃』(2020)の竈門炭治郎を担当した花江夏樹も共演と、豪華な声優陣は注目の的です。
『海獣の子供』(2019)で高い評価を得た渡辺歩監督とSTUDIO4℃が手がけ、スタジオジブリ出身の小西賢一がキャラクターデザイン・総作画監督、『サヨナラまでの30分』(2020)の大島里美が脚本を担当。
劇場アニメ『漁港の肉子ちゃん』のあらすじとネタバレ
肉の塊のように丸々と肥え太った肉子ちゃん。その体形のせいか、生まれ持った愛情深くおおらかな性格のせいか、これまでの人生ではダメ男ばかりを引き寄せては、何度も騙されてきました。
大阪をはじめ日本中を娘・キクコとともに放浪し、男にお金を騙し取られては、ボロボロになるまで働いて借金を返済することの繰り返し。
ある時、肉子ちゃんは自称・小説家の男と同居しました。外へ働きに出ず小説を書いてばかりいる男でしたが、肉子ちゃんからお金をむしり取るようなことはしませんでした。
なんとなく家族になるのかなと幼いキクコが思っていた矢先、男は「故郷で死ぬ」と書置きを残して失踪します。
あわてた肉子ちゃんは北の港町にあたりをつけて、荷物をまとめてキクコを連れてその男を捜しに行きました。小さな漁港の町で一生懸命に男を探しますが、見つかりません。
漁港で途方にくれる母娘の胃を満たしたのは、一軒の焼き肉屋「うをがし」の焼肉でした。
妻に先立たれ、店をたたもうとしていた店主・サッサンは、目の前に現れた肉子ちゃんを‟肉の神様”だと思い、「決しておなかを壊さないこと」を条件に肉子ちゃんを雇いいれます。おまけに、サッサンが所有する漁港の船をキクコと一緒に住む家として貸してくれました。
こうして、肉子ちゃんと小学5年生のキクコの新しい生活が始まりました。
とんでもなく豪快で子どもみたいに純粋な母・肉子ちゃんに比べて、しっかりもので大人びた性格の娘・キクコ。そばで観ていても不釣り合いな母娘でした。
キクコは地元の小学校に転入します。土地の言葉をきちんと使い、運動神経がよく、まわりの友達からも「かわいい」と言われることが多いキクコは、すぐに港町に溶け込めました。
そんなキクコも母親のことは大好きなのですが、大阪出身でもないのに大阪弁で思ったことをすぐ口に出し、町中でその体型から「マトリョーシカ」と噂される母の存在を、最近ちょっと恥ずかしいと思っていました。
また学校でキクコは、同じクラスの女子グループ間の抗争に巻き込まれ、転校したばかりのころ親切にしてくれたマリアと気まずくなります。
また同じころ、いつも人の影に隠れている風変わりな少年・二宮を気にするように。キクコが肉子ちゃんと水族館へ行くために乗ったバスに乗っていたのですが、彼がバスの窓から外を見て一瞬表情をさまざまに変えているのを見てしまったのです。
それが気になって仕方がないキクコは、ある時道で見かけた二宮に「バスに乗ってどこへ行ったのか?」と聞きました。
二宮は水族館より一つ先のバス停にある公共のセンターで、模型作りをしていると答えます。自分の意志とは関係なく、突発的に顔を動かしてしまう二宮を心配した親が、何かに集中していればその突発的な症候が抑えられるのではないかと勧めてくれたそうです。
キクコは、二宮が制作中だという模型を見せてもらい、彼だけが知っている美しい漁港の街を見渡せるとっておきの場所を教えて貰いました。
肉子ちゃんとの平穏な毎日の中で、キクコは少しずつ成長し、この漁港の町をどんどん好きになっていくのですが、一方で惚れっぽい肉子ちゃんの「今の彼」らしき男性の存在が気になっていました。
そんな頃、キクコの小学校の運動会がありました。はりきって大きなおにぎりや何段もの重箱弁当を作る肉子ちゃん。保護者参加競技の借り物競争に出るんだと、大はしゃぎです。
何度もフライングをし、結局最下位でゴールする肉子ちゃんに会場はどよめきます。
そんな肉子ちゃんをあきれながら応援していたキクコですが、肉子ちゃんがお昼におにぎりを持って突然どこかへ行ってしまったり、誰かが自分を隠し撮りしているのに気がついたりして、ちょっと変な気がしていました。
肉子ちゃんの次の恋が終わったら、またこの町を出て行かなければならない。そんな不安がよぎり、キクコは落ち込むようになりました。
劇場アニメ『漁港の肉子ちゃん』の感想と評価
キャストにピッタリの声優たち
『漁港の肉子ちゃん』の主役は食いしん坊で脳天気な見須子菊子こと肉子ちゃんと、その娘・喜久子ことキクコの母娘です。
ストーリテラーは、娘のキクコが務めます。男に騙されやすい不幸の塊のような太った母の生き様を冷静に見つめ、小さな漁港に母娘で辿り着くまでを淡々と述べていました。
美しい漁港の景色とともにスクリーンいっぱいに響き渡る、澄んだキクコの声。
この声を担当しているのが、木村拓哉と工藤静香の長女でモデルのCocomi。声優初チャレンジということですが、涼し気なハリのある声は、少女期を卒業しようとしているキクコの初々しさをひときわ引き立てていました。
可愛らしいキクコに反して、食べることが大好きで巨大な肉の塊のような肉子ちゃんには、大竹しのぶが命を吹き込みます。
小山のような大きなおなかを上げ下げさせ、扁桃腺まで見えそうな大口を開けて寝る肉子ちゃんはどこか『となりのトトロ』を思い出してしまいます。
またしょっちゅう食べ物を口にし、人一倍涙もろくて大泣きをする肉子ちゃんは、さまざまな声色で話します。怪獣並みのいびきから、食べ物を口に含んでのモゴモゴとしたしゃべり、涙と慟哭が入り混じる子供のように純粋過ぎる泣き声と、そのあまりの変化ぶりには、声を吹き込むのは大変だったろうと感じさせられます。
恥ずかしげもなく大阪弁をしゃべくりまわし、鼻歌を歌いながら毎日を過ごす肉子ちゃんを、大竹しのぶがアニメのイメージ以上に人間らしいキャラにしていたと言えます。
フレンチトーストは家庭の味
また凸凹母娘の映画作中での微笑ましい場面を一つ取りあげるとしたら、やはり2人が朝食でフレンチトーストを食べる場面でしょう。
フレンチトーストが出てくる泣ける家族愛の映画と言われて、『クレイマー、クレイマー』(1979)を思い出す映画ファンの方は多いはずです。離婚して息子を育てる父親が一生懸命にフレンチトーストを作る場面は、涙ぐましく微笑ましいものでした。
本作のプロデューサーを務めた明石家さんまも、『クレイマー、クレイマー』が大好きだとか。フレンチトーストの場面はあくまでも偶然だったそうですが、肉子ちゃんの家庭の温かみがフレンチトーストを通して描かれ、明石家さんまも喜んだそうです。
いつも全力で底抜けの明るさを持ってパワフルに生きる肉子ちゃん。そんな肉子ちゃんの口癖は「普通が一番やで」。
決して平穏な人生を歩んできたとは言い難い肉子ちゃんですが、福福しい顔を一目見れば、そのモットーに反論が出来ません。この天真爛漫さが肉子ちゃんの魅力であり、明石家さんまが西加奈子の原作小説に惚れ込んだ一番の理由ではないでしょうか。
お笑い界の国民的スターとも言われる明石家さんまのプロデュースによって誕生した本作。ものすごい形相で慟哭する肉子ちゃんの迫力いっぱいの母の愛情あふれる姿に圧倒されます。
普通に憧れながらもちょっと普通じゃない訳あり母娘が精一杯生きる姿に、さんまエッセンスの笑いと涙も加わり、本当の家族愛とは何かと教えられる作品でした。
まとめ
お笑い界の大スター・明石家さんまが初めて企画とプロデュースを手がけたアニメーション映画『漁港の肉子ちゃん』。本作は、直木賞作家・西加奈子の同名ベストセラー小説を映画化したものです。
明かるくパワフルな巨体を持つ母・肉子ちゃんとしっかり者でかわいらしい娘・キクコの訳あり母娘が強く生きる姿に、勇気と感動をもらえるハートフルコメディでした。
ラストシーンは、明石家さんまそっくりの芸人がテレビで「親の老後は娘が見てくれるというてくれて……」と言っているのを黙って聞いていた肉子ちゃんが、「ようしゃべる男やな」とか言って、プツンとテレビの電源を切って終わります。
これはまさに、明石家さんまの本音が出ているのではないでしょうか。大竹しのぶが肉子ちゃんの姿を借りて言うこのセリフは、とても意味深で、思わず笑ってしまいます。
実はこの作品には、あちこちにこのようなインパクトあるセリフがあります。肉子ちゃんの生きざまに零れ落ちそうになる涙も、ユーモアのセンスと間合いが抜群のセリフによって、いつのまにか笑いに変わっていました。
さすが、明石家さんまプロデュース作品です。