連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第31回
超人的な能力を持つ悪の存在ミスクリアンにより、無法地帯となったシカゴを舞台に、2人の女性ヒーローの戦いを描いたNetflix映画『サンダーフォース 正義のスーパーヒロインズ』。
一見すると、スーパーヒーロー映画のパロディ作品に見えますが、実は王道の展開とテーマが込められた作品なので、本作の魅力をご紹介します。
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CONTENTS
映画『サンダーフォース 正義のスーパーヒロインズ』の作品情報
【公開】
2021年公開(アメリカ映画)
【原題】
Thunder Force
【監督・脚本・製作】
ベン・ファルコーン
【キャスト】
メリッサ・マッカーシー、オクタヴィア・スペンサー、ポム・クレメンティエフ、ボビー・カナベイル、メリッサ・レオ、ケビン・ダン、メリッサ・レオ、ジェイソン・ベイトマン、テイラー・モズビー、マーセラ・ロウリー
【作品概要】
幼い頃に、ある出来事がキッカケで絶交したリディアとエミリー。
20年後に、2人はある出来事からヒーローチームを結成し、悪の組織との戦いに挑む事になります。
驚異的なパワーを武器に、ミスクリアンと戦う主人公のリディアを演じるのは、TVシリーズ『ギルモア・ガールズ』でブレイク後『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(2011年)で、アカデミー助演女優賞にノミネートされるなど、コメディ作品での演技が高く評価されているメリッサ・マッカーシー。
リディアの相棒エミリーを、『評決のとき』(1996年)で女優デビュー後に『ヘルプ 心がつなぐストーリー』(2011年)で、アカデミー助演女優賞に初エントリーで、初受賞を果たすなど、演技力が高く評価されているオクタビア・スペンサーが演じています。
映画『サンダーフォース 正義のスーパーヒロインズ』のあらすじとネタバレ
特殊な電磁波を浴びた事で、超人的な能力に目覚めた存在、ミスクリアン。
ミスクリアンは各地で悪事を働くようになり、世界中が無法地帯なっていました。
両親をミスクリアンに殺され、祖母に引き取られた、小学生のエミリーは、シカゴの小学校に転校します。
ですが、優等生のエミリーを、快く思わない同級生達は、エミリーをいじめるようになります。
そんなエミリーを救ってくれたのは、同級生のリディアでした。
気が強いリディアは、同級生の男子相手にも引けを取らず、エミリーを守ってくれました。
リディアとエミリーは、すぐに意気投合し親友になります。
それから5年後。
エミリーは、大事な試験を控えていましたが、家に遊びに来たリディアのせいで寝坊をしてしまい、試験に遅れてしまいます。
「試験なんて大した事ない」と慰めるリディアに、エミリーは「私とあなたでは違う」と突き放してしまいます。
怒ったリディアは、エミリーに絶交を言い渡し、2人は疎遠になります。
20年後。
リディアは、地元シカゴの港で働いていました。
シカゴでは「レーザー」と呼ばれるミスクリアンが暴れており、市長選に立候補した議員のウィリアムが、レーザーに命を狙われたというニュースで話題になっていました。
リディアは、レーザーにより無法地帯と化した街に住んでおり、1人で貧しい暮らしを送っています。
ある時、20年ぶりに学校の同窓会が開催される事になります。
リディアはエミリーを誘いますが、素っ気ない返事が返ってきただけでした。
同窓会当日、エミリーが同窓会に姿を見せない為、リディアはエミリーの会社に向かいます。
エミリーは科学者として成功しており、巨大な自社ビルを建設するほどの、大企業の社長となっていました。
リディアはエミリーの部屋に通され、20年ぶりに2人は再会します。
リディアはエミリーを、同窓会に連れて行こうとしますが、同窓会の事を忘れていたエミリーは「今日は行けない」とリディアを追い返そうとします。
それでも食い下がるリディアに、エミリーは困った様子を見せながら、用事で一度部屋を出る事になります。
その際に、リディアはエミリーから「部屋の中にある物には何も触るな」と忠告を受けます。
ですが、リディアは部屋を物色し、謎のレバーに触ってしまった事で、体内に薬が注射されます。
戻って来たエミリーは、リディアが注射を受けた事を知り「長年の研究が水の泡になった」と激怒します。
リディアはエミリーに謝りながら、気を失います。
映画『サンダーフォース 正義のスーパーヒロインズ』感想と評価
ミスクリアンという悪の存在により、無法地帯となったシカゴを舞台に、2人の女性ヒーローの活躍を描いた映画『サンダーフォース 正義のスーパーヒロインズ』。
主人公のリディアを演じているメリッサ・マッカーシーは、これまで『デンジャラス・バディ』(2013年)や女性キャストでリブートされた『ゴーストバスターズ』(2016年)など、コンビで活躍するバディ映画や、チームワークものの映画で、魅力を発揮してきた女優です。
『サンダーフォース 正義のスーパーヒロインズ』でも、オクタヴィア・スペンサー演じるエミリーとの掛け合いで、コミカルなリディアを披露しており、まずメリッサ・マッカーシーの演技を見ているだけでも楽しめる作品です。
リディアは、地元のシカゴで働いていますが、その暮らしぶりから、決して裕福ではない事が分かります。
逆にエミリーは、シカゴを出て以降、科学者として成功し、大企業の経営者となっています。
正反対のリディアとエミリーが、成り行きからヒーローチームを結成するという展開が、本作の面白い部分です。
ヒーロー映画の見どころとなる、超人的な能力を使いこなす為のトレーニングの場面では、注射を打ち続け、体の変化に戸惑いながら、能力を身につけていくリディアに対して、エミリーは、1日数回の錠剤を飲むだけで透明になる能力を身につけるという、かなり不公平な事になっています。
また、地元カブスのファンで、「ヴァン・ヘイレン 」などのロックバンドを愛する庶民的なリディアと、研究ばかりしていた為に、エンターテイメントに触れてこなかったエミリーのやりとりは、全く嚙み合いません。
庶民層のリディアと、富裕層のエミリー、この2人が「サンダーフォース」を結成し、ミスクリアンのボスで「ザ・キング」を名乗る、ウィリアムからシカゴを守る戦いを繰り広げます。
この、ウィリアムは市長選に出馬した議員であり、権力者なのですが、ここに本作のメッセージがあると感じます。
世界情勢が混沌としてきている時こそ、庶民層や富裕層、そういった事は関係なく、手を取り合って、困難に立ち向かうことが大事なのです。
作品の序盤で、エミリーは「自分は特別な人間になる」と語り、「自分だって大統領になる」と言ったリディアを否定する場面がありますが、強い信念さえあれば、誰もが特別な存在になれるのです。
と言うと、王道のスーパーヒーロー映画のような印象を受けますが、本作はビジュアルから分かる通り、マーヴェルやDCなどの、今や人気ジャンルとなった、スーパーヒーロー映画のパロディ的な作品です。
リディアとエミリーは、それぞれ「ハンマー」「ビンゴ」を名乗りますが、顔が出ている為、周囲に正体はバレバレで、「ハンマー」「ビンゴ」と呼び合っているのは「サンダーフォース」の関係者と悪の組織だけだったり、敵のボスであるウィリアムが、自分に意見した部下を殺すという恐ろしい場面で、実は結構優秀な部下を殺してしまった事に戸惑うなど、スーパーヒーロー映画が好きな方なら、ニヤリとしてしまうパロディが満載です。
特にミスクリアンのクラブは、放射能を浴びた蟹に挟まれて、能力に目覚めたという、スパイダーマンに似たそれっぽい設定なんですが、両手が蟹のハサミになっただけで、明らかに一般人より弱そうという、とてもいいキャラクターです。
この、クラブとリディアの濃厚な恋愛描写が、異常な領域に達しているので、そこも見どころですね。
スーパーヒーロー映画のパロディ的な作品なのですが、クライマックスの「サンダーフォース」と「ザ・キング」の戦いは、「怪力」「透明」「高速」それぞれの能力を活かした、見応えのある場面となっています。
映画『サンダーフォース 正義のスーパーヒロインズ』は、コメディ映画でありながら、展開やテーマはスーパーヒーロー映画の王道という、エンターテイメントに振り切った作品となっています。
まとめ
『サンダーフォース 正義のスーパーヒロインズ』は、構成もよく練られた作品で、1時間40分の上映時間なのですが、ちょうど半分の50分が経過したところで、正義と悪の構図がハッキリと分かるようになっています。
作品前半は、リディアが受ける酷いトレーニングなどの、コメディ的な部分が強かったのですが、後半からは、ヒーロー対ヴィランのスーパーヒーロー映画的な展開が強くなります。
前半は、アメリカのコメディ映画特有の、しつこい笑いが多いので、はっきり言って人を選びますが、後半は一転して「ヒーローチームの誕生」「チーム内の亀裂」「市民から失う信頼」「自己犠牲の精神」という、スーパーヒーロー映画の醍醐味が詰まった作風となっていきます。
スーパーヒーロー映画好きの方はもちろんですが、メリッサ・マッカーシーとオクタヴィア・スペンサー、2人のコミカルなやりとりを見ているだけでも楽しい作品なので、コメディ好きの方には、是非おススメしたいです。
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